第十五話:寂しくない




ドレスのカガリがザラ邸に入り一時騒然とした。

アーサーは驚き、他のメイドとボーイはコソコソと話を始める。
そしてボディーガードのキサカさんも家に着くと快くカガリをたのむといってくれて・・・。
冬休み・・カガリと一緒に居られると思うと夢みたいだ。
と・・言っても丁度二週間ほど・・・、やっぱり夏と同じくらいか。



カガリの洋服に目をやる。
庭で見た時薄暗くて良く分からなかったのだが・・パーティー会場に入った途端、その綺麗さに驚いた。
でも・・キサカさんの前でそんな事言えない。だからずっと此処に来るまで言うのを躊躇っていたのだが、やっとソレを口に出す。
「綺麗・・・だな、カガリ。」
そう、本当に綺麗。
薄緑色の服はカガリの金髪を際立たせる。それに・・ぱっくりと空いた胸元から見える肌、鎖骨。
腰の細さ、肩の狭さ。----そう女性の部分を強調される服。
見惚れるのも・・仕方ない。
「きれい・・かなぁ?」
カガリは首をかしげて、でも嬉しそうに頬を染めて喜んでいた。

・・・----可愛いな。

「新入りっ!---随分とまぁ綺麗なかっこうして・・・・」
そうアーサーも食いついてきて、カガリは微笑む。
「何だか、アスラン様の花嫁みたいですね!」

---ブッ

そう心の中で噴出して、カガリを見るとカガリは
「花嫁か〜、綺麗だよなー。」
と、自分の事とは思っていないようだった。




アスランの家はやっぱり落ち着く。
アーサーとも仲いいし・・・・、
チラッとアスランを見あげると微笑まれ、何だか嬉しくなる。
「部屋・・行くか、もう今日は疲れただろう?」
そう言われ、腰に手を回される。
「え・・あ、うん。」
ゾクッと何か感じたが・・・気のせいだろう。


アスランの部屋に行き、疲れただろうからと風呂に入るように言われた。
「アスラン先は入れよ。お前の家だ。」
「いや・・カガリが先だ。」
「いいって。」
「駄目だ。」

そうやって話し合っているとカガリはポンと手を叩いた。

「一緒に・・」
「却下。」

・・----本当に・・カガリは・・・。自分が女であるとしっているのだろうか。
「なんだよー・・キラなら一緒に入ってくれるのに・・・」
その言葉にアスランはブッと噴出さざる得ない。
一緒・・・、---いや・・でも、まぁ二人は恋人なんだし・・・。
少し悔しさを持ちながらカガリを見ると不満げにカガリは声をあげた。
「・・・・アスランが嫌なら、別にいいけど・・---。」
そう頬を膨らませてカガリはシャワー室に歩いていく。

でも---恋人でもない俺を誘うのは・・どう考えたって間違ってるだろう・・?
カガリは---どうしてこうも疎いんだろう。

そうボンヤリ思ったが・・・今更ながら凄いシチュエーションだと思った。
だって・・好きな子と二人っきりで、シャワーどちらが先に使うかを言い争うなんて・・・・。

微妙に赤く火照る顔を押さえて、カガリ専用の薄き緑色のバスローブと寒く無いように羽織るモノを出しておいた。
カガリが上がり、いつもの格好をして出てくるとなんとなく安心感を持つ。

「あいたぞ?」
「あぁ・・」

恋人みたいだと、思うと嬉しくて。
なんだか笑ってしまう自分が居た。



アスランが風呂から上がって、見れば髪の毛がびちょびちょだ。
「お前・・ちゃんと拭いて来いよ。」
アスランは小さめのタオルで拭きならが
「今拭いてる」
と揚げ足を取る。
寝室に行きベットの上で、座っているアスランの後ろから藍色の髪に手を掛けた。

「・・・?カガリ・・・・」
「綺麗な色だなー。」

指を通すと湿った髪が指にまとわり付く。
ちゅっとふざけて髪にキスをすると、アスランは大きく溜息を付いた。
「?」
クルッと視界が90°変わる。
「・・アスラン」
向き直ったアスランに手首をつかまれベットに倒されたらしいと推測できた。
綺麗な翡翠に覗き込まれて、見入ってしまう。
綺麗・・すぎるだろう。---そうぼんやりと思っていると横髪に触られて同じように髪に唇を落とされる。

トクン

そう、なった瞬間・・・ボンと頬が熱くなった気がした。
でも・・気のせいだろう。カガリ自身アスランにやったことだし・・別に恥ずかしがるような事でも・・・。
だが、アスランはそれだけでは止まらなかった。
首筋をスッと這われて、ゾクッとする。

「ぁ・・あ・・アスラン・・。」

駄目だ。

心臓が・・・ドクドクいってる・・・。
「嫌・・だったか?」
アスランは止めてそう覗き込んできた。
「いや・・ちがう・・嫌・・じゃない---けど。」
脈がいう事を聞かない。
アスランはフッと笑って手を止めてパタンと寝転がった。
暫く硬直してから、そのドキドキを治める。

----・・私らしくない・・どうしたんだ・・?

そう、頭の中に過ぎった。
ただ・・それだけのこと。キラにもこれぐらいの事なら泣いている時幾らでもやってもらっているではないか。
いつも通り・・いつも通りにしよう。
そう思って、アスランの頬にキスをする。

「おやすみ・・アスラン」

だが、声も・・唇もぎこちない。
「おやすみ、カガリ」


そういわれて二人でまたクイーンベットで寝る。


寒くて、アスランの布団にもぐりこむとアスランは快く迎えてくれた。


・・・あ、大丈夫だ。

さっきまでの心臓の音は消え、静かに眠りについた。




横でスースーと寝息を立てるカガリを見ていると・・やはり自分は男として扱われていないような気がする。

・・・でも・・カガリの話を聞いていると・・キラも、男の扱いを受けていないように思えた。
カガリは・・異性というモノを正しく認識しているのだろうか?

そしてカガリは寒いのか脚まで絡めてくる。

「・・・・----・・はぁ」

バスローブから出たさわり心地の良い生脚。こんなカタチでなく・・ちゃんと触りたい。
心臓は嫌なくらいばくばくと音を立てて、何もせずとも下半身に熱は集中し始めた。

-------そんな状況だと言うのに・・君は。

何も知らず・・・スヤスヤと寝てしまうなんて。
また溜息を付き、必死で別のことを考えて寝ることに専念した。





起きるとカガリはいない。だがちゃんと温もりを残していった。
コンコンとノックされ、ガチャンと入ってくる。

「ご主人様、朝食だそうだ。」

とうぜんそれはカガリでニッと笑ってこちらを見ていた。
「あぁ。」
可愛いメイド服を着て、迎えに来てくれるカガリが可愛くて手を繋いで食堂に行く。
そして二人で食事を取った。

「そういえば・・アスランの両親、あんまり家に居ないんだな。」
「あぁ・・まぁ、二人とも忙しいし・・・。」
「----寂しくないのか・・・?」

そうカガリは心配そうに聞いてきてくれて、それだけで心があたたかくなる。

「大丈夫だ。」
「そっか・・・。」

カガリはふーんと言って、また食べる事に専念し出す。

「カガリの父親は・・忙しいのか?」
「あぁ・・結構な」
「寂しい?」

そう聞くと、カガリはピクッと食べるのを止めて瞳を開いた。

「・・・---・・カガリ?」
そう、だった。カガリは父親が唯一の肉親なんだ・・寂しいよな。


「・・・・・寂しくない。」


カガリはスッパリそういい切ってまた食べ始める。

「・・・・?」
「小さい頃は・・寂しかった。けど・・キラがいてくれたから・・・。」

----------・・キラ・・か。

ガクッと肩が落ちそうになるが・・仕方ない。でも、諦めない。

「けど・・もう、今は大丈夫。一人でも・・寂しくない。」


寂しくなんてない。

キラが支えてくれた、ラクスが優しくしてくれた・・アスランが迎えてくれた。

-------・・寂しくない。


キラも・・ラクスも---もうお互いの一番を見つけてしまった。



----置いて・・いかれてしまった、けど。


想いが消えるわけじゃない。



・・・・それに・・今は、アスランが・・・迎えてくれる。


だから・・寂しくない。




そう言い聞かせて、立ち上がる。

「じゃあ・・私、仕事してくるな。」
「あぁ。」


・・・・寂しいわけ・・・・・・ない。


































































+++++
あとがき
えっと・・・、話が重くなる予感(爆)
最後の方はもうカガリ自分自身に言い聞かせてるイメージです。
2006.04.03