第十四話:クリスマスの冬の抱負




季節は冬に近づき・・・マフラーとコートが必需品となる。

そして、冬休みが訪れようとしていた。

「クリスマス・・・・どういう予定?」
フレイは嬉しそうに尋ねてくる。
「・・い、一応ディアッカと一緒に居る事になってるけど・・・。」
ミリィは少し躊躇って口にする。
「私はキラと一緒ですわ。」
キラ、そうフレイが始めて聞いた時フレイは"微笑の皇子"とラクス・・ぴったりすぎてキモチワルイといったような気がする。
「フレイはどうなんだ?」
「お互い親のパーティーに顔出さないと・・でも・・同じパーティーなのよ!!」
そうバンバンと叩いて、フレイは艶やかに微笑む。イザークが見たらきっと赤くなるだろう。
「カガリは?」
ミリィにそう尋ねられ、
「私は・・お父様のパティ-に参加しないと。」
だから・・男と会う約束なんてあるはずが無い。
「大丈夫ですわカガリ・・・見えないところで繋がっていますわ。」
「?」
ラクスにそう言われ頭に?が浮かぶ。
「私キラと会えるのが夜に限られますの・・少し残念ですわ。」




そうして、クリスマスパーティーは訪れる。

アスハの令嬢。
それがこの場でのカガリの名。
それに似合うだけの態度。そして気品。威圧感。
すべて父ウズミ・ナラ・アスハから教わった。
マーナに綺麗に化粧をしてもらい、着たくもないが一応綺麗なドレスに身を包む。
だが、絶対に引きずらない長さ。

「ありがとう、マーナ」
「・・いえ、カガリ様綺麗ですよ」

マーナは少し微笑んでくれた。あのカガリの口から"ありがとう"と出てきたのがよほど嬉しいようだ。

「カガリ・・いくぞ。」

そう声をかけてくれたのはキサカ。ボディーガードのような人で唯一カガリを呼び捨てに出来る使用人だった。
「あぁ。」
今日のパティーは財閥・・建築家、それにデザイナー、芸能人。ともかく沢山の人がくる、いわば年中行事だった。
だが、カガリは三年間アメリカに行っていて・・この場に顔を出すのははじめてだ。
「よしっ」
薄いグリーンのドレス。胸元がかなり開いている。
そして高いヒールをものともせず歩く。---気を付けないと転んでしまうのだが。

「あれ?カガリじゃない?」

そう紫の服を着ているフレイに話しかけられた。
脚のスリットが信じられない高さまで来ていて、胸の大きさが強調されるようにピッチリとした服。
「あぁ・・イザークとは?」
「見つかんないのよねー・・どっかに居たら、とっ捕まえてくれない?アイツ私が此処に居るの知らないのよ。」
そうフレイは大きく溜息を付いて見せた。
「分かった。」
そう言うと、パーティーが始まるようで暗くなり、舞台にスポットライトが当たる。
「今日のパーティー、存分に楽しんでいってくださいな。」
そう聞きなれた声と姿を目にする。
「前座で歌わせていただきます、ラクス・クライン・・"静かな夜に"」
そして会場にラクスの美しい声が響く。
「ラクス・・・スッゴク唄巧いな・・・・・。」
会場に居るもの全て息を呑む巧さ。
そして舞台に歩いていく。
時々、お父様の知り合いと会い適当に頭を下げて通った。
ラクスが歌い終わりステージから降りてきて直ぐに話しかける。

「ラクスッ!巧いな!!」
「カガリ!」

ピンクのドレス。ひらひらとレースが付いていてとても綺麗だ。

「父に呼ばれて・・私も来てましたの。」
「私もだ、当のお父様は帰国できないから・・今は私がアスハの代表らしい。」
「あら、大変ですわね」

そんな事を話しているといつの間にか食事タイムになっていた。
「カガリ、お疲れになられたら・・あのドアから出ると良いですわ」
そう耳元で囁かれ、うんと答えた。





適当に食事を取り、あの場所へと足を運ぶ
「フン、やはり貴様も居たのか。」
「・・当然だ。」
イザークとアスラン随分と金持ちで、そしてこの場にも呼ばれていた。
そして疲れると毎度此処に溜まりに来る。
パーティー会場の裏。誰も居ない庭。

「ディアッカは・・今日はミリアリアの為に休みだそうだ。」

そう聞きイザークは少し眉を潜める。


---俺だって・・フレイと一緒にいたいと、そう思って尋ねた。
「あ、別に良いわよ。パーティーなんでしょ?いってらっしゃい。私は全然悲しくないから。」
・・・ブッチン。
「フン、一人寂しく過ごせばいい。俺はパーティーに行く。」
「あっそ、じゃ行ってらっしゃい。」

・・・-----・・。フン。あんな女。

「さっき・・ラクス・クラインが歌っていたが・・・いいのか?」
「----・・俺とラクスとはなんでもない・・婚約もなかったことにした。」
・・・あんな可愛い婚約者・・・ま、こいつには勿体無いがな。


「あれ?イザーク・・アスラン?」
パーティー会場からの扉が開き、聞きなれた声が飛び込んできた。
「---ッカガリ?!」
アスランはガッと立ち上がり近寄っていく。
---------・・気のせいか?今目が輝いたぞ?
カガリは後ろに大きな男を付けていて、ボディーガードかなにかか・・・?
いや、でもボディーガードをつけるのは相当な金持ちの証拠・・・・。

「カガリ・・お前・・・。」
「カガリ・ユラ・アスハ。って事になるな、この場だと。」

アスハ・・・アスハ!?

「カガリ・・そうか、君は令嬢だったのか。」
アスランはどこか嬉しそうにしていた。
----・・あぁ、そうか。
イザークは一人合点をした。

「イザーク!---フレイが探してたぞ?」

----------・・え?


「ほら、フレイのお父さんデザイナーだろ?だから・・・」
探してる・・あの女が?
「すっごく綺麗な服だったし・・・見たらビックリするぞ、お前」
そう目の前で笑うカガリに少し感謝をする。

「ふん・・可愛げない・・・・---だが、仕方ないから行ってくるぞ。」
「そうしろ、フレイも待ってる。」

・・・・・---素直に言えばいいものを。

そう少し頬を赤くしながらパーティー会場へと戻っていった。





「そちらの人は?」
「あぁ、私のボディーガードのキサカだ。」

・・・確かに体格がいいし、身長も大きい。喧嘩をしたらきっと誰にも負けなさそうだ。

「アスラン・ザラです、はじめまして」
そう深々と礼をして、カガリと向き合う。
「ラクスがな、此処に行ってみろって・・・そしたらアスランとイザークが居た!」
カガリの服に目をやると胸元がかなり開いていてクラッとくる。
なんでそんな・・・過激な格好で歩いているんだ・・?
「アスラン、あそこに椅子がある・・少し休みまないか?」
カガリはパーティーで疲れたと言ってアスランの手を持つ。
「カガリ・・・。」
ボディーガードがいたんじゃ・・・二人っきりには到底なれそうにないな・・・。
そう心で溜息を付き、カガリの手の引く方へ歩いていく。
二人でポスッとすわり、寒空を眺める。

「綺麗だなーアスラン。」
「そうだな・・。」

コテンと頭を倒され、ドキッと心臓が鳴った。
金髪のサラサラとしたのが頬に触る。
「カガリ・・。」
自覚が無い。本当に・・・・。
ボディーガードがいるのに。
俺は何も出来ないじゃないか。

「あっ・・そうだ!冬休み・・またお前の家でバイトしようと思うんだが・・いいか?」

---------・・・・は?

そういえば・・・そう、カガリは令嬢・・。なのに・・なんで使用人なんて・・・?
「俺は・・構わないが、良いのか?カガリは・・・。」
お嬢様なのに。
「あぁ!お前の家でのメイド生活は・・中々教訓になった!!」
そう、あれのおかげで・・キサカやマーナ・・それに他の使用人。みんなに感謝がもてた。
皆皆・・頑張って働いてくれていたのだと。

「キサカとかの・・苦労が少しだけ分かったしな!」

そう言ってカガリはそのキサカさんを見上げる。
「そう思うのなら・・もう少し大人しくなって欲しいものだ。」
そうその人は笑って、カガリは頬を膨らませる。
「---いいんでしょうか?大事なお嬢さんをうちで・・・?」
そう、言うとキサカさんは
「-----・・カガリがそう、望んでいるなら止められないからな」
そして大きく溜息を付いた。
「じゃあ、キサカからお父様に連絡してくれッ!私は今日の夜からザラ家の使用人をすると。」
そう言い、カガリは綺麗に微笑んで見せた。

・・・・-----・・また、身体に悪い日々が続くのか・・?


嬉しさとそして悔しさが感情を覆った。

愛しい人に手が出せない。

そばにいるのに・・・唇にキスも・・できない。




だがカガリはそんな俺の気も知らないように微笑んでグッと腕を組んだ。
「よしっじゃあ、ザラ家についたらまた"ご主人様"だなっ」
----あの時、夏に・・カガリにちゃんと想いを伝えておけばよかった。

そう後悔の念が出てくるが押し殺す。

・・・キラには・・申し訳ないが・・。


----何とかして・・カガリが、俺の方に振り向いてくれるように・・頑張りたい。

友情と愛情で愛情を取るのかと言われれば・・そうなってしまうのかもしれない・・。


だが・・。

ごめん・・キラ。


----俺は、・・・・カガリが好きだ。



そしてグッと心に決める。


もう・・悩んだりしない。



-----頑張ろう。


そしてカガリと共に歩き出す。

キサカさんは後ろから黙って付いてきてくれた。









アスランの腕を掴みながら・・やはり、何かが変だと感じていた。
アスランが変なのではない。

---カガリ・・そう自分自身が"変"なのだ。

パーティー会場につきアスランは人とぶつかりそうになれば軽く引っ張って避けさせてくれたり・・
そういう・・事をされると、何かがトクンと音を立てる。
・・・・?
前まで・・・こんなことなかったのに。
あの日だ。
あの石を渡した日・・あの時初めてトクン・・そうハッキリと聞こえ出した。
ずっと前にもそんな事が何度かあったかもしれないが・・・・。
不思議そうにアスランを見あげると、アスランは「どうした?」と微笑んでくれる。

---トクン。

ほら・・また・・・。
冬休み・・・アスランと共に居る中でこの音の原因を突き止めたいと思う。



































































+++++
あとがき
あーあ、アスラン生殺し。(苦笑)
鈍感カガリが動き出しました!
どうなるんだろう・・・・(汗)
2006.04.02