近頃はカガリと二人っきりで暇な放課後過ごす事が多かった。
学校の屋上とか、近くのファーストフードとかとにかく色々いった。
「寒くなってきたよなー」
もう季節は十一月下旬言ってみれば冬である。
彼女は素手で登校していて手袋つけないのか?と聞くと
「動かしにくくなる」と言って聞かなかった。
一緒に学校を出て並木道を歩いていた
「・・・そう言えば、テスト近いな。」
その言葉に彼女は嫌に身体を振るわせた。
「・・・・苦手だろ」
彼女はコクンと頷き苦い顔をする。
「今日は何処に行く?」
すると彼女は申し訳なさそうに謝ってきた。
「ゴメン!実は今日家庭教師はいっててさ・・・」
それでは仕方ないと見送るが、彼女は凄く嫌そうだった。
「アスラン、この頃よくカガリと放課後デートしてるそうじゃない。」
生徒会室でこのテンションのキラがくると誰もが「あぁ」とため息をつくようになっていた。
ふんだん温厚すぎるキラがなんでそこまでカガリにこだわるのか分からないが、
ディアッカは彼女のミリィから聞いたようで、「まぁそんなもんだろう」と頷いていた。
「でも、まぁ今のカガリにはいてあげたほうがいいんだけどね。」
そう言って富士の樹海より深いため息をつく。
「カガリ先輩なにか大変な事でも抱えてるんですか?」
キラは悔しそうな顔をして頷いた。
「・・・お嬢様も楽じゃないって事だね、きっと。」
とあやふやな返事を返す。
その事をカガリに聞きたいのだが、彼女が相談してこないのにこちらから言うのも気が引けた。
「アスラン!今日はどっか行こう!」
そう言われたのはテスト前日だった。
「まて、カガリ・・・テストは明日だぞ?」
カガリはどうしても遊びたいという顔をしてみせる。
「駄目だ、ちゃんとしないとお互いの将来の為に悪い。」
本当は抱きしめて「いいよ」って言ってやりたいのだが・・・。
と自分の中で散々苦渋を飲む。
「・・・な、じゃあ勉強会しよ?な!」
そう言って腕に捕まられると何の抵抗も出来ない。
「何処でするんだ?」
その質問にカガリはあっけらかんと答える。
「ん?お前の家じゃ駄目か?」
・・・・・・・・ん?
このお嬢様は危機感というのを未だかつて持った事がないらしい。
「か、カガリ・・・冷静に考えろ。いいのか、俺は保障出来ないぞ?」
その意味が分からないらしく
「え、保障?何の?」
と聞き返してくる始末。おそらくカガリに近づく男は一人残らず排除したんだろうと、キラの凄さが頷ける。
そういい、俺のマンションのある駅で降り、マンションへ向かった。
「おじゃましまーす!!」
そう言って自分の部屋にあがる彼女。駄目だ、都合が良すぎる。
「お!勉強部屋は此処か?」
いや、俺がいつも勉強しているのはリビングなんだが・・・
そう思いつつも勉強道具のある部屋にいとどまるカガリ。
と言うか俺の寝室自体が勉強道具を置く部屋なのだが・・・。
確かに、こじんまりとした机がある。しかし、まさか女の子からその部屋を指定するとは・・・。
絶対他の男のところにいったら、会って十分以内に傷物にされると思い生涯手放さないと誓う。
「お前の部屋シンプルだな!」
そう言い、参考書を見たり、外の風景を見たり・・・・・・ベットにダイブするな!!
「おい、カガリ・・・勉強しに・・・きたんだろ?」
「いいじゃないか、ちょっとぐらいゴロゴロさせろ!!」
彼女は何も悪びれずベットでゴロゴロしだす。
精神的に危ない状態に立たされ、急いで部屋を出た。
「アスラン?どうした?」
「飲み物入れてくる」
そう言われ大人しくなるカガリ。テストの馬鹿野朗・・こんなときでなかったら絶対押し倒すのに。
飲み物をいれ戻ってくると・・・
「Zzzzzzzz・・・」
「おい・・・・」
カガリは事もあろうか俺のベットで爆睡していた。
襲いたいという衝動に駆られるが、何とか理性で踏みとどまる。
黙って寝顔を見ていると、猫や犬の赤ちゃんよりもずっと可愛い事に気が付く。
「う・・・ん・・キラ・・・・」
自分の名前ではなく幼馴染の名を呼ばれいささかショックを受ける。
「・・・・・ぃやだ・・たすけ・・・」
恐い夢でも見ているのだろうか?
「アスラン・・・たすけて・・・・」
するとカガリは寝ながら泣き出す。
「・・・・・お父様・・・。」
そう言って大人しくなるカガリ。
「俺は此処にいるよ、カガリ」
そう言いカガリの涙を指で拭う。するとまたスースーと音を出して寝入ってしまった。
そのまま部屋にいると、いつ理性が崩壊するか分からないので、毛布をかけ部屋の外に出る。
しかし、それでも泣いていたカガリを部屋に一人にするのは少し気が引けた。
もう6:30をまわるだろうと思いカガリを起こしに行く。
「カガリ、もう時間だ・・・起きて」
彼女は身悶えして、また寝息を漏らす。
「ほら、カガリ・・大好きなお父様が心配するぞ。」
カガリは少し目が覚めたようでうぅと唸った。
「・・・早く起きないと犯すぞ」
するとビックリして身体を起こし顔を赤くし口をパクパクさせた。
「起きれるじゃないか」
時間を確認し、カガリはもう一度毛布を被る。
「こら、寝るな!帰る支度しろ!」
必死で毛布を剥がそうとするが、カガリもいつもに増して抵抗する。
「いーやーだ!!今日は11:00まで帰らないって決めたんだ!!」
「あと五時間もあるじゃないか!」
「いいだろ!?お前の勉強の邪魔しないから!!」
彼女は涙声だった。それに驚き、一度手を止めて質問をする。
「・・・カガリ?どうかしたのか?」
毛布の上から抱きしめる。彼女は抵抗をやめ大人しくなった。
触れているからこそ分かるのだが、彼女は息を殺して泣いていた。
小さな方がカタカタ震えていて、でも理由は言いたくないようだった。
「・・・分かった、此処に何時まででもいていいから。」
そう言うと彼女は震えた腕で毛布の中から抱き返してくれた。
しばらくして彼女は泣き止んだようだったが、ばつが悪くてなかなか出てこれない様だった。
そして少しすると毛布から出てきて「ゴメン」と小さく謝った。
「・・・そういえばさ、お前飯ってどうしてるんだ?」
「え?普段は外食か出前だけど?」
それを聞きカガリはため息を漏らす。
「もういい、今日は私が作ってやるよ」
そう言って冷蔵庫にあるものをチェックする。
「・・・なんでキャベツだけ異様にあるんだ?」と野菜室を見て言われる。
そしてその他諸々見て彼女は言った。
「ロールキャベツの素材だけ、何故か調味料込みであるんだな」
そう言われ、前母が来たのを思い出す。
「あぁ、前母さんが来たときロールキャベツ作ってくれたからな・・・」
ロールキャベツは俺の大好物だった。
「被るが、ロールキャベツでいいか?」
そして普段だれも使わない、青色のエプロンを着ける。
その姿に少しクラッとくるが、あぁと平常を保った。
手際よく作る姿をみて少し驚く。
「・・・お嬢様だから、てっきり出来ないかと・・」
「それは金持ちの子供に対する偏見だ」
そう言われるが、実際俺の家だって金持ちで、俺自身料理の才能があるとは言えなかった。
「見られると恥ずかしいから、席座ってろ!」
と頬を染めながら言う彼女を可愛く思い後ろに立つ。
「だー!!目線が気にな・・・」
後ろからガバッと抱きつくと彼女は制止してしまった。
「どうぞ、続きして。」
カガリは頭をユサユサ動かし離れろ!と必死で言ってきた。
「何だ・・・」
腕を放すと、それはそれで名残惜しくなるから、なお抱きつくな!と念を押される。
そして大人しくリビングのソファーで待つ。
暫くすると出来上がったのか、ロールキャベツのいい匂いと共にカガリがやってきた。
「ご飯、あと十分で炊けるって、だから先ロールキャベツだけでも食べよう!」
そう言われ食べだすと、母とは違う味付けだが確かに美味いと思い顔を上げる。
「ど・・どうだ、実際作るのは初めてだったんだが・・・」
それにしては上出来中の上出来だろう。
「いや、凄く美味い。」
すると彼女は嬉しそうに頬を染め微笑んだ。
しばらく一緒に食べていて思ったが、やはり礼儀作法は素晴らしく、目を引いた。
彼女の事を見つめていると、こっちの目線に気づき見つめ返してくれる。
反射的にキスをしようと思い顔を近づける。
ピーピーピー・・・。
どうやらご飯が炊けたらしい。その音で我に返ったカガリはスッとたち台所へ向かう。
あぁ、炊飯器めと思っているとカガリは炊き立てのご飯と戻ってきた。
「・・・ご飯って・・」
「ん?」
「カガリみたいじゃないか?」
「何処が?」
「白くて穢れの無い所が」
その言葉を聞き、カガリはそうか?と笑って見せたが、実際苦笑に近かった。
感に触る事を言っただろうか?と思いしばしグルグル考えていたが、答えが出ないので止めた。
「あ、あのさ、突然なんだが・・私たちって・・付き合ってるのか?」
その質問に対して少しビクンとする。
いや付き合ってるだろう、抱きしめるしキスするし・・・。しかし一度も付き合うという言葉を口にしてはいなかった。
「俺は・・・そう、思ってたけど?」
すると彼女は少し辛そうな顔をしたので心配になり尋ねる。
「カガリは・・嫌かそういうの」
首をフルフルと横に振り安堵する。
ご飯を食べ終えいざ勉強という時に、カガリはまた俺の部屋で勉強すると勘違いをし中でスタンバイしていた。
もうテスト前とか関係ないと思い覚悟を決める。
仕方ないだろう、好きな異性とベットのある部屋で二人っきりなんて。とても我慢はできない。
そう思い質問してくるカガリに何処と無くボディータッチをする。
彼女も嫌ではないらしく、素直に擦り寄ってくれて嬉しかった。
そして三十分ほどして、彼女にキスを落とした。
ビクンと大きく肩を動かすが、少し恥ずかしそうにはにかんだだけだった。
そしてそのまま耳の下にキスを落す。
そのままお姫様抱っこをし彼女をベットに運ぶ。
彼女も事の自体の大きさに気がつき少しジタバタしていた。
上から重なると、恥ずかしそうに下を見て、抱きしめてくれた。
服の上から肌を触ったりうなじを舐めたりしていると、彼女の体の力が抜けてきている事に気が付いた。
もういい・・・かな?そしてブラウスのボタンに手を掛けた時、彼女は急に何かを思い出したようで抵抗しだす。
今まで全く抵抗しなかったので驚き、彼女の顔を覗き込む。
「・・・・ごめ、アスラン・・・今日は駄目だ・・。」
そう弱弱しく呟く彼女には手が出せるはずもなく、手を出すのを止める。
「ホント・・ゴメン・・・」
泣き出しそうになる彼女を抱きしめる。
「・・・泣くなよ。また手だしたくなるから。」
そう言いベットを離れる
「・・・ゴメン、風呂入ってくる。」
彼女は分かったと呟き、そのままドアを閉めた。
風呂の中で俺はまた答えの出ない疑問と格闘していた。
何で今日は駄目なんだとか、本当にこんな時間までこの家にいていいんだろうか?とか。
風呂を上がり部屋に戻ると彼女はまたベットの上で寝ていた。
そして・・また泣いていた。
見ていられなくなり添い寝をしだす。
彼女は一体なんでこんなに苦しんでいるのだろうと疑問を持つ。
「触るな・・・・」
そう寝言で言われ、さっきの事かと思い焦る。
「・・・助けて・・・・・行かないで・・キラ」
本当に自分の事だったらどうしようと思い悩む。
「アスラン・・・・傍に・・いろ」
そう言われてため息を付き、カガリの頭を撫でるが、よくよくカガリの言葉を思い出す。
俺でもなくキラでもなくお父様でもない人間に触られているのか?という単純な疑問。
しかし、所詮夢だろうと考えを停止させた。
ガチャ!ガチャガチャ!!!
そう激しく鍵をあける音がする。
誰だと思い、また焦りだす、母はこの家の鍵を持っているし・・もしかして空き巣?!
どちらにせよ一大事だった。
ガチャン!ついにドアが開いたらしく、人が中に入ってきた。
バン!!そう音をたてこの部屋のドアがあく。
いっそ寝た振りをしてしまえと、だまっていると・・・
「・・・・・・・・・・・・アスラン?一体誰と寝てるの?ねぇ!!!」
と物凄い形相のキラに叩き出される。
「いや、まだ傷物にはしてないぞ!!」
と念を押すが、キラは腕をポキポキならしていた。
「と言うかお前・・・どうやって・・・」
「むかーし、君のお母さんが僕のお母さんに一応何かあったときの為にって鍵置いていったんだよ」
明らかにまだ母親と空き巣の方が楽だったと思った。
そして少し冷静になったキラはカガリを起こす。
「カガリ、起きて・・・大変だ。ここにいちゃマズイよ。」
その言葉を聞き飛び起きるカガリ。
「・・・まさか・・。」
カガリは顔面蒼白になる。
「電話、かかってきたんだ。」
「嘘だろ!!!あぁ・・もう・・・」
カガリは頭を抱えた。
「でもこの家はまだ見つかってない・・・でも・・・。」
時間の問題だと言わんばかりである。
「ゴメン、アスラン・・・でも・・どうしよう!キラ!?」
カガリは慌てていて手の着けようが無い。
「落ち着いてカガリ・・・君は少し遅くまでいすぎた・・・」
そう言いカガリの頭を抱き撫でるキラ。それを見てむっとするのは当然だった。
「でも、わかるだろう?この部屋がバレれば、アスランにだって迷惑がかかる。」
「分かってる・・でも、まさかこんな早く・・・」
カガリは嫌そうに伏せている。
「ともかくこの家から出て、手はうった。」
良く分からないが、カガリが大変危険だという事は理解する。
「俺には・・何か手伝える事・・ないのか?」
その質問にキラは怪訝になりながらも答えた。
「カガリを大切にすること!」
それだけいい、詳しくは明日と言われ、猛ダッシュでマンションを出て行かれた。
「・・キラ、すまない・・・」
「何言ってるの、ラクスと連絡とったから、あ、今来たタクシー乗って」
中には既に一人の乗客がいた。
「助かったよ、ラクス。」
ラクスはフードを外しニッコリと微笑んだ。
「当然ですわ、カガリのピンチなのですから。」