第三章:準備+発熱

早くも文化祭が迫っていた。
いや、文化祭はハッキリ言って九月中旬なのだが、七月半分、八月は夏休みなので
準備はもやは七月に入ってから直ぐに取り掛からなければならなかった。
つい一週間前に体育祭が終わったハズなのだが・・・・。
しかし、そんな弱音を吐く暇も無く、文化祭実行委員との兼ね合いも合わせなければならなかった。
幸い、副実行委員長がミリィというとても間近な人間で助かったと思う。
「でも、ミリアリアそんな委員会掛け持ちして大丈夫なの?」
と珍しく他人の心配をするフレイ。
「うん、こういうの好きだし・・・フレイだってサイが実行委員長で少し嬉しいんでしょ?」
フレイは「何処が?」といって見せたが少し嬉しそうでなんとも可愛らしかった。
そして一週間前の出来事。そのせいで確実なまでに風邪を引いた。
しかも、タオルを貸してくれた人が体育委員なのか生徒会なのか、もしや放送委員なのか分からなかった。
でも、彼を探して返さなければという信念と、文化祭のようなお祭りごとが大好きなので休むわけにはいかなかった。
「カガリ・・・この頃元気ないけど?」
「そ、そんなことは無いぞキラ・・・。」
さすが双子。お互い事には良く気が付くようだ。
「・・・いいけど、無茶したら怒るからね?」
兄は優しくいい頭に頭をポンとつけ去っていった。
「カガリ文化祭頑張りましょう!」
ラクスは自分の歌もあるのに、こちらも必死でやると言ってくれてとても心強かった。
そして大きな壁に突き当たる。
「・・・そういえばですが、生徒会では毎年文化祭出し物するそうですわよ?」
唯でさえ全体のことで手一杯なのに・・・とため息をつきたいが、
毎年の恒例を女子が止めるわけにもいかなかった。
文化祭実行委員との兼ね合いはフレイとミリアリアとルナに任せ、 自分とラクスでどうにかして出し物のネタを絞った。
「バンド・・・は無理だな、ラクスの声向きじゃないし・・・」
「お芝居・・・ですが皆急がしのに覚える暇ありませんわよね・・・」
「じゃあ、喫茶店とか!」
「今年出来たばかりの女子生徒会にお金が回ってくるとは思えませんわ」
「う〜ん。」
結局詰まってしまう。でも一度で良いから喫茶店で可愛い格好してみたかった。
「男子生徒会と協力するのはどうでしょうか?」
そういわれ何となく負けた気分になり、反論する。
「え!嫌だ、何か男子と一緒じゃなきゃ何も出来ないみたいじゃないか!!」
「確かに気が引けますが、実際生徒会はもともと男子が多く、色々困ってましたのよ」
「何で?」
「ほら、皆カッコイイ方ばかりでしょう?だから何をするにも女子ばかり集まってしまって」
「あぁ・・・なるほど。」
「ですが・・・生徒会長が折れてくれるかが心配ですわ」
「まぁいいや、マリュー先生にあっちの先生から生徒会に話題出してもらえるようにって言っておこう」
「そうですわね」
そう、担当のマリュー先生は何かと優しく、姉さん的存在で生徒から好かれていた。
「あら、カガリさん、わかったわ、フラガ先生にいっておきます。」
そうニッコリ笑って去っていく先生を見てフレイは
「たしか、フラガ先生と出来てるって噂だから、案外通るかもしれないわよ、今回の案。」
と小さく呟いてくれた。

「俺は反対だ!!!」
そう言ったのは紛れも無く生徒会長イザーク。
「俺賛成。」
案の定女好きのディアッカは賛成。
「僕もいいと思います。」
カガリもラクスもいるしと思い言うキラ。
「僕はどっちでも・・・」
女とかあんまり関係ないニコルは保留。
「イザークも・・ニコルも、せっかく青春を謳歌してるんだから、女の一つや二つ・・・」
「やかましい!この変態教師!!」
「で?アスランはどう思うの?」
そう話を振られ、少しびっくりする。
「俺・・・そうだな・・・」
今ボーっとこの前の女の子のことを考えていた。
初蜜色の髪に、琥珀色の目、性格、態度の割に綺麗な身体のライン・・・。
無邪気に笑ったり、時々ムッとしたりとコロコロかわる顔・・・。
その子があの場にいたと言う事は、体育委員か生徒会だろう。
放送委員ならあの場ではなく室内の放送室しかしらないはずだ。
あの子の走りを見る限り体育委員のような気がしたが・・・・。
それに校舎で全く会わないので、おそらく彼女はイーストなのだろう。
「聞いてんのか貴様ぁ!!!」
そうイザークに怒鳴なれ、我にかえる。
「・・・俺は賛成だけど」
そう言ったのは彼女に会えるかもしれないと思ったからに間違えなかった。
幼馴染のいつもと違う態度、キラだけでなく、その場にいた皆がアスランがおかしくなったと体育祭直後から思っていた。
「なぁーアスラン、プライベート友達に言いにくい事あったら先生に相談しろよ?時間つくってやるから」
「はぁ?」
「この頃ボーっとしちゃって、大丈夫?アスラン」
「そんなこと・・・」
「ホント、ホント・・・上の空ってかんじでさー」
「僕達相談乗りますから、どんどん言ってくださいね!」
「言っておくが俺は聞かないからな」
「・・・ハハハ、どうも」
この反応を見て、また「コイツおかしくなった」と皆に思わせてしまったアスランであった。

「じゃあ、今日はこの辺で・・・さようなら、カガリ、フレイ」
「じゃ、私もサイのと帰るから、じゃーね、カガリ!」
ラクスは今日パティーか何かで忙しいらしく、フレイは彼氏と一緒にかえるそうだった。
生徒会室で一人、ボーっと文化祭企画資料に目を通す。
男子生徒会との話は上手くいったのかとか、実行委員に手を貸さなくていいんだろうか?とか
色々考えると元より熱があるのに更に頭がパンクしそうだった。
フラフラになりながらも、セントラルの廊下を歩く。
夕日が眩しく、しかしその夕日すら歪んで見えるほど熱があるようだった。
今日はミリアリアと帰る予定だったのだが、このタオルの持ち主を一刻も早く見つけるべく、その誘いを断ったのだ。
放送委員は違った、体育委員はもう仕事が終わったせいか収集がつかない。
となれば、残すは男子生徒会のみなのだ。
きっといる、と思い必死で歩くのだが、身体が意識についてこなくなりつつあり少し焦った。
タオルはいつ出会えてもいいよう、あの日から毎日カバンに入れていた。
「・・・動け・・・馬鹿」
そう身体に言い聞かせるが、足が重く言う事を聞かない。
そこは丁度資料室の前で、滅多に人が通る場所でもない。
しいて言うなら、アルバムとか、前年度の資料とか、本当にごく一部の人間が使う部屋なのだった。
もちろん、女子生徒会は前例がないので此処をよく使い運営法などを学んでいたのだが・・・。
そしてもう一般生徒最終下校時刻のチャイムが鳴り響く。
あ〜あ、と思いつつも、不可抗力だと思いため息が出た。
「おい、もう下校時刻過ぎ・・・」
後ろから話しかけられ聞き覚えのある声だと思い首を動かす。
案の定と言うか、なんと言うか、あの彼がまさか運良く現れるとは、と嬉しくなった。
「・・・よ!」
「よ!じゃない!一体こんな所で何で止まってるんだ?」
「ね・・・いや、深い訳があるんだよ、コレには」
熱があると言いたかったのだが、そんな事言ったらこの前の彼の努力を水に流すようで言えなかった。
「よく分からないが・・・急いで帰れよ?」
そして彼はもう一つ疑問を投げかける。
「なぁ、何で顔だけこっちむいてるんだ?」
確かに可笑しな態勢で話している。実際足が重すぎて身体ごと振り向けないのだ。
「いや、だから・・・コレにも深いわけが・・・・」
彼は少し怪訝そうな顔をする。そりゃ当然だが・・・。
あ、そうだ!と話題を変えるようにタオルをカバンから出す。
「コレありがとうな!」
そう言って渡そうとするのだが、腕が後ろまで上がらない。それを見て彼は私の前に来る。
「よく分からないが、どうしても振り向けないってことは良く分かったよ」
とすこし笑い、タオルを受け取ってくれた。
それで安心したのか、身体が真後ろに倒れそになり壁につかまり何とか静止する。
「おい、どうかしたのか?」
彼の綺麗な目が自分の目を覗き込む。
「いや、いや・・・大丈夫・・・私は・・・ぜん・・・ぜん・・・」
もう駄目だと思いその場でしゃがみ込み頭を抱える。
クソ、折角返せたのに、此処で倒れちゃ何の意味も無い。
その様子を見て気が付いたのか彼は私のおでこに手を伸ばす。
おでこなんて触られたら、一気にばれるだろうが!と思い腕を捕まえ止める。
「・・・やっぱり、熱あるんだな?」
やばい、手も相当熱い事に今更気がつき彼を見上げる。
すると彼は私の手を解きおでこに手をやりため息を発する。
「歩け・・・・ないんだよな。」
「すまない・・。」
いや、なんてバツが悪いんだと情けない気分に陥っていた。
彼は私の手を取り立たせると足からひょいっと持ち上げた。
「うわぁ!ちょっと何っ!!」
流石にこんな抱っこの仕方は無いだろうと抗議する。
他にどんなのがあると聞かれ、お姫様、とか普通にとか言うのだがどれも却下された。
保健室につくと先生は既に帰ったらしく、彼のため息が聞こえた。それを聞きまたバツが悪い。
「・・・っわ、わるかったな、いつも迷惑かけて・・・・」
そういうと彼はまたため息をだし
「自覚があるなら、家で寝てたらどうだ?」
そういわれぐうの音も出ずベットに置かれる。
チョコンと座って彼を見上げていると彼はニッコリ微笑みそして何故かデコピンをされた。
「なっいきなりなにすんだ!」
「たった今寝てろっていっただろう」
氷水を私に渡すと、先生呼んでくると外に出てしまった。
渡された氷水を頭に乗せベットの上でゴロゴロするのだが、本当にダルイ。
憂鬱な気分で窓を長めていると外はもう夜に近かった。

そんな中、先生を呼びに言っている時、彼女の言動が頭の中でちらつかせていた。
声をかけた時、まさかと思っていたら、そのまさかでどれ程嬉しかった事か。
熱で動けないほどダルイのにそれを俺に隠そうとしたのが思いやりだと気づき嬉しいがため息が漏れた。
だっこの時、実際アレ以外の方法だとどうしてもパンツが見えると思ったから出来なかった。
そしてまさか、保健室の先生が留守というのはこの状況ではとてつもなく心理的に危ない。
それにさっきベットの上で無意識だろうが潤んだ瞳で見つめられたらノックアウトに近かった。
なんとか平静を保ち、気づかれないようデコピンで交わし、先生を呼んでくると言って部屋を出なければ あの後自分が何をしだすか見当がついていた。
それに、あのきしゃな身体に対してあの態度の大きさ。謝る時の俯き加減申し訳なさそうな顔。
男っぽいかと思えばさしてそうでもない。触れているところから伝わる熱が何とも言えず心地よかった。
職員室の前で止まり、ノックしようと思うと中から人の声・・・・でも結構特殊な声がした。
ドアの間からチラッとのぞくとフラガ先生と・・・ラミアス先生だろうか・・・・・・・・・・・・・。
絶句。
噂には聞いていたがまさか、しかも、学校でキスはないだろうと思った。
「・・・。」
しかも、長い。
ここら辺は生徒として先生の肩をもってやろうという粋な心で待っていたのだが、 一、二分たっても一向に終わる気配ナシ。
これはもう思い切ってノックしてやるしかないと思いノックをし、わざとらしく声を上げる。
「すいません、アスラン・ザラです。先生が残っていれば・・・。」
するとフラガが暫くしてドアを開けた。それはもう恋人の顔ではなく先生の顔に戻っていた。
「お!アスラン!どうした、こんな時間に」
「いえ、女子が・・・動けないくらい熱出して保健室で寝てるんです。」
それを聞きラミアス先生も飛んできた。
「それって、何て名前の子かしら?」
「えっと・・・」
よくよく考えれば、彼女の名前を未だに聞いていない事が発覚する。
「髪が蜂蜜色で、目は琥珀色です。」
そういうとラミアス先生は大きく頷き
「私の知り合いの生徒だわ、あの子の家ならしってるから、私送って帰ります。」
そういってフラガ先生に頭を下げ荷物をまとめ、保健室に行くラミアス先生。
「さて、じゃ坊主は俺と帰るか?」
「え?」
フラガ先生は家が近いらしく徒歩と自転車、時々バイクと使い分けて学校に来ていた。
「今日は徒歩だ、光栄に思え!」
「別に・・・」
暗くなった夏の帰り道蝉がミンミン五月蝿かったがそれも心地よく感じた。
「先生達付き合ってたんですね。」
それを聞くとフラガは思わず咳き込む。
「え?それって・・・」
「はい、さっき見てましたよ。俺」
はっきり言うとフラガ先生はやれやれと頭をかく。
「いったりはしませんけど・・・その、質問してもいいですか?」
「プライベートに立ち入りすぎなきゃね」
「キスって・・・どれぐらいがめあすなんです?」
その質問を赤くなって言うアスランにフラガ先生は噴出した。
「・・・・。」
「いや、悪い悪い、あんまり可愛い質問だったから・・・」
明らかに楽しまれてると思いながらも、早く先生の回答が聞きたかった。
「う〜ん人それぞれだな。」
「え?」
「短きゃ一秒以下、長かったら永遠だ」
「永遠?」
「そ。」
フラガ先生は大人っぽく笑って見せた。
「坊主にもそのうち分かるようになる」
そのセリフを聞き、絶対ですね?と念を押したくなった。

「やっぱり、カガリさんだ!」
うとうとしていたのだが、その声で目が覚める。
「マリュー先生?」
そこには女子生徒会担当のマリュー・ラミアス先生の姿があった。
「えぇ、さっきアスラン君が貴女が保健室で寝てるって・・・」
頭がボーっとしすぎて「へぇ、アイツの名前か」と聞き流してしまった。
「私、車だから、貴女の事送っていくわね」
そしてその行為をありがたく頂戴した。





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あとがき
妄想・スリップザラ発動。
無意識潤目カガリ発動。
キャラ崩れが・・・。