第二章:体育祭

女子生徒会、最初の仕事は体育祭。
しかも、それは六月中と大変忙しい事になっていた。
そして運動神経のずば抜けていいカガリ、何処に筋肉があるのか分からないのに出来るラクスは 選抜リレーにも選考され、とても忙しかったのだ。
開会の言葉は毎度副生徒会長で、今回はそれをミリィに頼み、
閉会の言葉はしぶしぶカガリが引き受けた。
そして、男子生徒会とその打ち合わせをする為に必死に資料作りをしていた。
生徒会室でまとめた資料をホッチキスで止めながら話す。
「すいませんわね、ミリアリア・・・開会の言葉私が出来れば良かったのですが・・・」
「いいのよ、別に、丁度何かして気紛らわせたかったの」
「どうかしたのか?ミリィ?」
そのカガリの問いかけにミリアリアは何かを必死でこらえる様な顔をした。
「・・・彼氏が、家の事情で学校やめちゃって・・・」
「遠距離恋愛って訳にはいかないのか?」
そして事の詳細を淡々と語りだす。
「・・・ロンドン・・・だってさ・・笑っちゃうよ・・」
「・・・・・お辛いでしょうに・・・泣いていいですのよ、私たちの前なんですから。」
「よしよし・・・」
そういってカガリがミリアリアの頭を撫でると本格的に彼女は泣き出してしまった。
「か、彼ね・・・君の事ずっと縛ってる・・訳にもいかないからッ・・・別れようって・・・・
わっ私はッ・・・待っててって、言って欲しかった・・・でも、彼戻ってこないからって・・・・。」
ガラガラッ
女子生徒会室の扉が開けられた。思わず皆で見上げると小麦色の肌の男が立っていた。
「おぉっと!そんなに見つめるなよ!!」
そしてミリアリアが泣いてる事に気づいたらしいその男は 「へー彼氏にでも振られたの?」と軽くあしらった。
「よければ、俺と付き合わない?あ、俺ディアッカ・エルスマン、これでも副会長」
それを聞きギョッとする。そしてその言葉に傷ついたのかミリアリアはまた泣き出す。
そう、体育祭は恒例で副会長が開会式で話すのだ。
つまり、今回はミリアリアとコイツな訳で・・・・
「俺、女子で開会式出る子と打ち合わせしたいな〜って思って来たんだけど・・・」
そしてラクスが「ディアッカ、こちらの方ですわ」とミリアリアの紹介をする。
「ビンゴ!じゃあさっそくなんだけど・・・」
「ちょっと待った、ディアッカ!」
初対面ですでに軽く先輩に呼び捨てのカガリに驚くディアッカ。
「・・・・見て分かるだろう?ちょっと出直して欲しい。」
「別に構わないけど?でも、もしコレで失敗したら理事達からとやかく言われるのはゴメンだな。」
軽くカガリが舌打ちをするのも構わず続ける。
「だいたい、仕事なんだからさ〜、いくら事情があるにせよ、しっかりやらないと・・・」
ミリアリアがディアッカを睨みだす。
「やっぱ女だもんなって言われちゃうぜ?」
バンッッそう部屋に大きな音が鳴り響く。
見るとミリアリアは立ち上がっていた。
「・・・いいわよ、ちゃんとやって見せるわよ!!あんたなんかに私の気持ち理解して欲しくもない!」
涙を拭いミリアリアは大声を出した。
そういい今出来たばかりの資料を持ち、部屋の外へ出て行く。
「お、おい、待てよ!!」
「ディアッカ・・・女の子を怒らせた罪、重いですわよ?」
ラクスは軽く微笑んで見せた。
そしてその二人の影は見えなくなる。
「乙女が泣いていたら優しくフォローして欲しいものですわ・・・」
「全くだな。」
そして最後の資料をまとめあげる。
「よし!終わりっと」
「もう夕方になってしまわれましたわね」
すでに明後日にせまった体育祭。
そういえばカガリは男子の会長と一度も対面していなかった事に気が付くが、 まぁ別にいいだろうと言う結論に達した。

体育祭当日、カガリはクラス対抗、学年対抗、選抜、長距離、と忙しかった。
しかも、閉会の言葉をあまり考えていなかったので少し焦っていた。
開会の言葉はミリィがとてもキリッとしていてかっこよかったのが印象に残る。
結局あの後二人は何とか和解したらしい。
「キラ!お前殆ど一位じゃないか!」
「カガリだって!一位総なめじゃないか!さすがだね!」
それを見たラクスはニッコリ笑い
「カガリは勝利の女神の異名持ちですもの!」
とまるで我が事のように喜んで見せた。
といってもカガリとラクスはクラスが違う。キラとカガリとミリィは一緒なのだが。
そして午前も終わった所で雲行きが怪しくなりだした。
「一雨ふるのかしら?」
ミリアリアは折角の体育祭なのにと肩を降ろす。
「良かったね、カガリ」
そうキラが耳元で囁く。彼にはどうやら閉会の言葉を考えていなかった事がばれてたらしい。
ポトッ
大粒の雨が降り出し、急いでレジャーシートなどの始末を伝えるために放送室に走った。
放送室と言っても体育祭用で外に屋根つきで出ているいたってシンプルな機械だ。
かなりダッシュで来たのだが、既に人がいて放送を流していた。
「す、すまない・・・急いできたのだが・・・」
そこにいた男の人はこちらに気がつき目が合う。
キレイな緑色だと思い少し見つめてしまい我に戻った。
「あぁ、別に・・・俺も今来た所だし・・・」
そう言って彼は指示を繰り返す。
「あ、じゃあ私は現地に言って指示出してくる、人が騒いでると聞こえないかもしれないからな!」
そして、そこにあるメガホンだけを取り、グラウンドに走っていった。
「・・・傘ささないのか?」
と言った声はカガリには届いていなかった。
『雨のため、今日の体育祭は中止といたします、父母の皆さんは・・・』
本格的に土砂降りになった雨に関わらずそれの音に負けないくらいの大声で放送を流す。
「すいません、第一駐車場には・・・」
「この道を右でまっすぐいけば・・・・」
とちゃんと個人への対応も怠らない。
『生徒は急いで椅子にシートをかけて校内で待機、雨に濡れすぎて風引かないように暖かくしてろよ!!』
『女子、男子生徒会及び体育委員、積極的に他人の面倒みろよな!』
客だけでなく、生徒への配慮もと思い必死で声を上げる。
だいたい、梅雨の時期に体育祭ってのが間違ってると思いながら、それでも声を上げ続ける。
男子、女子生徒会、体育委員も動き出し車で来た父母への対応などにも手を焼いた。
一通り騒ぎが過ぎ、一息ついた所で自分がびしょ濡れになっている事に気が付く。
「あ、やばい、メガホンが・・・・」
流石に学校の機械を壊すのはマズイだろうとメガホンを雨に当たらないように手で覆う。
にしても働いた後の雨とは良いものだと実感する。
さっきまで大声で騒いでいたせいか、体温はちっとも下がった気がしない。
しかし実際触ると相当冷たく、風邪ひくかな?と少し笑った。
「お、おい・・お前、まだこんな所に・・・!!」
グイッっと腕を引かれ少々驚き目線をその先に向ける。
そこにはさっき放送機械の前で会った奴がいた。
彼は傘をさしトランシーバーとタオルを肩からさげ、少し呆れた顔をした。
「よ!そっちも仕事終わったみたいだな!お疲れ!」
それを聞くと彼は少し肩を落す。
「お疲れじゃない!びしょ濡れじゃないか!大体、人がいなくなったなら校内に・・・」
とか、
「体温だって相当下がってるんじゃ・・・」
とか、
別に、お前に心配されなくてもと少し思う。
と同時に、彼が一瞬停止し少し目線を逸らす。
そして傘を突き出してきた。
「いや、いいよ、こんだけ濡れてりゃ後は一緒だって!!」
そういいメガホンだけ渡す。
「でも機械はそういう訳にいかないから、コレだけ傘の中に入れてやってくれよ」
それを聞き、彼は余計ため息をついた。
「・・・お前、制服は?」
「え?セントラルの委員会室だけど?」
「近くだよな、・・・制服もってこい、良い所がある。」
そう言われグラウンドから近い女子生徒会室に乗り込み制服をもち走って戻ってきた。
「・・・傘させよな」
そうブツブツいいながら連れて行ってくれたのはシャワー場だった。
そこには7つのシャワー場が並んでいた。
「ここは部活終了後のみ許されるシャワー場じゃ・・・?」
「実際お湯はいつでも出る。ここで見張っててやるから入ってきた方がいい。」
このシャワー場は基本的に大きな大会直後のみ許される。
だからといっては可笑しいのだが、男女共用なのだった。
「でも、鍵が・・・」
「右から三番目、去年鍵が壊れたらしい。」
そしてトランシーバーで連絡を入れる。
「イザークか、悪いが所用で少し戻るのが遅れる。」
話を聞いてるともう生徒が帰りだした事が分かった。
「ほとんど片付いたからいいってさ」
そう言われホッと肩を降ろす。
ッックションそうクシャミをすると軽く笑われ
「風邪引くぞ?いい加減にな」
最初会った時はとっつきにくそうな奴だと思っていたが案外そうではないらしいと 気づき、すこし嬉しくなる。
「悪いな、ホント・・・ダッシュですますから!!」
案の定鍵は壊れており、そこを使用させてもらう。
制服を高台にのせ、シャワーを回し温度を調節するととてもいい温度のお湯が出てきた。
「うわ〜気持ちいいーーー!!」
体操着を着たままお湯を浴びていた。
もう此処まで濡れればあってないようなものだった。
そして決定的な事に気づき、壁越しにいるであろう奴に話しかける。
「おい、居るか?」
「何だ?」
「タオルがない。」
コレでは制服が着れないと今更思った。
というか下着もビッショリで、かといってナシで帰る訳にもいかない。
「・・・俺が持ってる奴でよければつかうか?」
そういえば肩からさげてたのを思い出す。
「え!いいのか、お前が良いなら是非!!」
おもむろにガチャっと開けると彼は少し焦って見せた。
「悪いな、まだ体操着着用中だ。」
そういってニッコリ笑うと、彼は目線を逸らしてしまった。
「な、なんだよ、からかっただけだ怒るなって」
差し出されたタオルをとり、「ありがとな」と告げ、またドアを閉める。
タオルは汗の拭いた臭いとかは全く無く、しいて言うなら彼の臭いが少しした。
下着の濡れようは仕方ないと思い、体操着を脱ぎタオルを使い制服を着た。
そして外に出る、雨はさっきよりも激しくなっていた。
「すまない、タオル洗ってかえすな。」
そういうと彼は「あぁ」とそっけなく返事をした。
何か怒らせるような事をしたかと頭を巡らせる。
「なぁ?お前、怒ってる?やっぱタオル借りない方がよかったか?」
そう聞くと彼はまた目線を逸らし、「別に・・・そういう訳じゃ・・・」と答えた。
この態度には少しムッっとこざるおえない。しかし、その原因を作ったのが自分だと思うと 怒る事もできなかった。
「・・・とにかく、傘の中入れ。」
「嫌だ、この大きさじゃお前が濡れちゃう」
そう言ったのだが彼は無理にでも腕を掴み、傘へと入れてしまった。
でもまぁ親切な奴だと思い、またちょっと嬉しくなった。



アスランside

放送をながしていると、女の子が物凄いスピードできて自分の前で急停止した。
「す、すまない・・・急いできたのだが・・・」
その子は少しハスキーな声で息切れで荒々しく謝ったが、
蜂蜜色の髪も琥珀色の目もとても綺麗で目を引いた。
「あぁ、別に・・・俺も今来た所だし・・・」
そう言い、出きるだけ見てる事をばれない様に放送を繰り返す。
「あ、じゃあ私は現地に言って指示出してくる、人が騒いでると聞こえないかもしれないからな!」
そこにあるメガホンだけを取り、そしてまた彼女は物凄い速さでグラウンドに走っていった。
「・・・傘ささないのか?」
と一応言ったのだが既に遅かったようだ。
放送を何度か繰り返し、生徒会のメンバーがいそうな所に足を運ぶ。
「アスラン、イザークが「お前はグラウンドに人残ってないか見て来い」だそうです。」
「分かった」
ニコルにトランシーバーを渡される。
「何かトラブルがあった時様だそうですよ。」
一応走り回るかもしれないと思いタオルを肩にかけ、グラウンドを見に行く。
すると人は殆ど出口の方にスムーズに流れており、少々驚いていると傘もささず一人静止してる人がいた。
急いで近寄ってみると、さっきの子だという結論が出る。
「お、おい・・お前、まだこんな所に・・・!!」
グイッっと腕を引っぱると、彼女は綺麗な目を大きく見開きこちらを見返す。
そしてさっきの人だと気づいたらしく二カッと笑った。
「よ!そっちも仕事終わったみたいだな!お疲れ!」
お疲れって・・・お前。すぶ濡れじゃないか・・・。
相当頑張って仕事をしていたのか、雨など視界には入ってなかったようだ。
「お疲れじゃない!びしょ濡れじゃないか!大体、人がいなくなったなら校内に・・・」
とか、
「体温だって相当下がってるんじゃ・・・」
とか、
注意をしてみるものの、聞き流されている事に気がつき、少しむっとして彼女を見る。
そして彼女をまじまじ見ていると彼女は本当にズブ濡れなのだ。
なのでさっきの活動的な印象と打って変わり、下着のライン、肌の色が透けて見える事に気が付く。
赤くなりそうな顔、見入りそうになる目を必死に剥がして傘を突き出してきた。
今まで女性に対して余りに無頓着だった自分を恨む。こんな事ぐらいで赤くなってしまうとは。
「いや、いいよ、こんだけ濡れてりゃ後は一緒だって!!」
そういいメガホンだけ渡す。
「でも機械はそういう訳にいかないから、コレだけ傘の中に入れてやってくれよ」
そういう問題ではない。それにさっき触って思ったが体温だって相当危ない。
「・・・お前、制服は?」
「え?セントラルの委員会室だけど?」
それを聞いて安心する。このグラウンドからセントラルまではおそらく男子には見られない。
「近くだよな、・・・制服もってこい、良い所がある。」
そういうと、彼女は頷いて物凄いスピードで去っていった。
そして戻ってきたは良いがまた傘をさしていない。
「・・・傘させよな」
向かう先はシャワー場。基本的に大きな大会直後のみ許される。
だからといっては可笑しいのだが、男女共用なのだった。
そこには7つのシャワー場が並んでいた。
「ここは部活終了後のみ許されるシャワー場じゃ・・・?」
「実際お湯はいつでも出る。ここで見張っててやるから入ってきた方がいい。」
「でも、鍵が・・・」
「右から三番目、去年鍵が壊れたらしい。」
そしてトランシーバーで連絡を入れる。
「イザークか、悪いが所用で少し戻るのが遅れる。」
『お前なんていなくてもちゃんと作業はすすんでる!客も皆帰った!!』
そう言われ一安心する。
「ほとんど片付いたからいいってさ」
彼女は肩の荷が下りたのか少しホッとした顔をした。
「ッックション」
彼女があまりに可愛らしいクシャミをするから思わず笑うと、少し恥ずかしそうな顔をした。
「風邪引くぞ?いい加減にな」
彼女はまたニコリとしまた申し訳なさそうな顔をした。
「悪いな、ホント・・・ダッシュですますから!!」
面白い子だと思い、微笑んだのもつかの間、とんでもないシチュエーションな事に気が付く。
そう、高校一年生の女の子のシャワーの番犬をしているのだ、自分は。
しかも、めったに・・・というか、初めて見惚れた女の子が壁一つ挟んでシャワーとは・・・。
急に嫌な汗が流れてきた。
「うわ〜気持ちいいーーー!!」
と言う声が聞こえ正直ビクンとする。
いや、会って間もない女の子に何をする訳じゃないと自分を必死で落ち着かせる。
「おい、居るか?」
その女の子は相変わらずさばさばとした口調で話しかけてくれて、助かったと思った。
「何だ?」
「タオルがない。」
想定の範囲外の出来事だった。
だからって自分にはどうにも・・・と思っていると、さっき肩にかけたタオルの存在に気が付く。
「・・・俺が持ってる奴でよければ使うか?」
そういい、また酷く後悔する。タオルを渡す=彼女がドアを開ける=どうしても見てしまう。
と自分が答えた後にまた嫌な事を考え出してしまった。
「え!いいのか、お前が良いなら是非!!」
そういわれ、自分で言った事を半ば後悔した。
いや、彼女は何の悪気も無く言っている。なのにこの自分の下心は、と少し男という性が嫌になった。
そして何の前振りもなくガチャっと開き、正直焦る。
「悪いな、まだ体操着着用中だ。」
そういってニッコリ笑う彼女は微笑ましいとして、やはり下着のラインが・・・・。
そんな目線気づかれる訳にも行かないのでまた視線を逸らしてしまう。
「な、なんだよ、からかっただけだ怒るなって」
いや、怒ってるんじゃない・・・。そう言いたかったが言葉が詰まった。
そしてまた嫌に心拍数が上がってきており、心拍数に比例するかのように、雨はさっきよりも激しくなっていた。
そして彼女はなにくわぬ顔でシャワー室から出てきた。
「すまない、タオル洗ってかえすな。」
そう言われ心情を悟られないよう「あぁ」とそっけなく返事をした。
彼女はまだ俺が怒っていると感じたのか濡れた蜂蜜色の髪を手でとかしながら
「なぁ?お前、怒ってる?やっぱタオル借りない方がよかったか?」
その仕草に目をとられ少し見入ってしまう。
コレではまずいとまた目線を逸らし、「別に・・・そういう訳じゃ・・・」と答えた。
俺の態度には少しムッっとしたのか少し膨れたが、すぐに元にもどった。
「・・・とにかく、傘の中入れ。」
次こそ濡らす訳にはいかないと言うと、
「嫌だ、この大きさじゃお前が濡れちゃう」
とまた引かれてしまう。しかし、そんなのにも構ってられないので腕をグッと引き傘の中に入れると
彼女は少し微笑んで見せ、傘の中にスッポリと収まった。
その姿をみて、どうしようもなく抱きしめたいと言う衝動にかられたが耐えて見せたのは言うまでも無い。





+++++
変態・誠実ザラ発動。
天然・おてんばカガリ発動。