第十七章:真実及び実行。




三人は言われるがままにシンの部屋に入った。
この部屋に来るまでの間ラクスの顔が晴れることはなかった。
「ラクス?」
キラに心配そうに覗き込まれ、やんわりと微笑み返したつもりが引きつっている。
キスマーク・・やっぱり・・それ以上のことも・・?
ラクスは悪い方に考える自分の思考をストップさせた。
見なければ、聞かなければ分からない。
真実を知らず想像するのはただの愚。

----静かに息を呑んだ。


「えっと・・・セイランの・・事は知ってますよね?・・ユウナ・ロマ・セイラン。」
「はい。一応」
そしてアスランもさっき知ったと言った。
「カガリが・・ユウナからお父様のことで脅されていた事も知ってますわ。」
此方の情報を全て出して、相手の情報も全てもらわなければ。
そう思いアスランの存在を無視する事にした。
「---ラクスっ?」
キラはアスランがいるからマズイという顔をするが、シンの様子を見てるとそうも言ってられない。
「・・・何の・・話だ?」
アスランは新事実に酷く眉を潜めた。
「俺は・・知りませんでした・・・。あぁ・・そうか・・だから・・・」
一人合点してても仕方ないので話を続ける。
「で・・これは・・父を通じて知ったんですけど・・カガリさん、婚約も迫られてたらしくて・・・」
「「婚約?!」」
キラとアスランは目を大きく開いた。
「・・・・もう半年以上前・・ですけど。」

-------俺の知らない間に・・カガリ・・・。
何があったんだ?


「カガリは私たちに・・脅されて酷い事をされたと言っていましたわ。」
「あ・・でも、カガリ内容言ってなかったよね。」
酷い事・・・・・・・それは写真の事・・だろうか。
「でも・・僕たちに言わないんじゃ・・そうたいした事じゃ-----」
「・・・・・逆ですわ。キラ・・・恐くて・・言えなかった・・カガリがアスランにずっと言わなかったように。」
そしてラクスはアスランの顔を見据えた。
「・・・・・・・・俺だけ・・何も知らされて無いのか?」
「・・・・去年の冬のテストの時・・・・覚えていらっしゃいますか?」
あの時・・カガリと一週間しゃべれなかったあの時の事か?
「・・・・・・・その時ですわ、カガリがその酷い事をされたのは。」

-----・・・・酷い事?

「・・・・・俺・・その・・内容・・・分かったかも・・しれなくて・・・・--------。」
これ以上・・アレを見せて・・・良いのだろうか・・。
だが・・・・
「・・・・ユウナから・・前に・・写真が送られてきてて・・・。」
その写真をインストールしたパソコンをいそいで立ち上げた。
この人たちには知る義務がある。責任がある。
こんなに傍にいて、カガリさんの辛さを知らないなんて逆に許されない。
モザイクが初期のままの・・三回モザイクを外した状態でも恐くて、その画像は保存できなかった。
だから初期のその写真を見せる。
「・・・・・カガリ?」
三人は食い入るようにその写真を見つめていた。




ユウナとの食事が済み、このままでは終わらない事を予感していたがまさに的中だった。
「・・このまま・・・帰れる・・なんて思ってないよね?」
そのニタニタ顔、ぜったいぶっ飛ばしてやる・・・・・・・。
「・・・・・な、何を・・・・・」
わざとそう答えた、そしてユウナは運転手に命令をする。
「セイラン家に帰って。」
そして此方を嬉しそうに眺めてきた。
「・・・・カガリ」
そして手の甲にキスをされた、気持ちの悪さでその手を引いてしまう。
「今日のメイド服・・可愛かったよ。僕的にはもっと短い方が可愛らしいと思うけど・・まぁ・・・・」
そして耳元に奴の口が近づいてきた。
「・・・僕だけが見れれば、それでいいから・・良いけどね」
それはアスランとのピアスが付いてない方の耳。
そいつは口を開き耳を己の口の中に含む。
「・・・・・・・っ・・」
気持ち悪い・・キモチワルイ・・・・・・・・っ!!!!!!!
無意識に必死で押し返すが、男の力に叶うはずもなく、押し返せない。
だが・・覚悟はあった。
こいつの家に上がってしまえばこっちのものだ。
そう自分に言い聞かせた。



自分で見たときと同じように、モザイクを外す機械を三回押す。
「・・・・・何・・コレ?」
キラは構図が理解できず、頭の上に?を飛ばした。
「・・・・・・・・・酷いっ・・・」
そうラクスは口を押さえる。
外しながら、これ以上明確で生々しいのは見たくない。
ましてや・・カガリさんのなんて・・・・・・・姉のように慕っている人のこんな姿・・・
「どうなってるんだ?」
アスランもまだ理解できない。

もう一回、モザイクが外された。
「・・・・・・・え?」
--------ちょっと待って。
顔から血の気が引いていくのが分かった。
カガリ・・・・・・・・・?
表情こそ見えないが・・・凄く・・泣いているんだろうと・・直ぐに分かった。
自分の・・大切な妹が・・・・・・・・・?
こんな下劣な事・・やらされるなんて・・・・・
冷たく、何かが降ってきたように頭がひんやりする。
「・・・・・嘘でしょ・・カガリがこんな事っ!!」
大きな声を上げてしまう。
目にはいっぱい涙が溜まっているのが自分でも分かる。
「キラっ・・・・」
ラクスはそっと手を伸ばし、キラの震える肩を抱いていた。



理解できない。
画像が・・画像としてしか頭に入ってこない。
カガリがいるのは分かる・・だが・・・・・
それ以上の事を脳が考えるのを停止してしまったようだ。
よく無い気がする・・・とてつもなく・・・・・。
「アスラン先輩・・まだ・・分らないんですか?」
そして二回クリックされ、完全にモザイクが外れた。
「は・・・・・・・。」


そこに映った余りにも生々しい光景に、女子として生理的に受け付けないものを感じざる終えない。
「カガ・・?」
アスランはゆっくりと画面に手をやり、目を閉じたり開いたりを繰り返した。
「-----・・ですからカガリさんが・・危ない・・・・・・・・・」
そしてそのDVDの入っている封筒を見る。
「・・・・・見ますか・・・コレも。」
シンはその画像をパッと消し、もういいでしょうと目を伏せた。
「・・・・見よう・・。」
そう言ったのは恋人のアスランだった。
「・・・・・・・真実を・・私たちが見て良いか・・分かりませんが・・。」
カガリは・・それを望まないから・・・・・・・・・。

「俺は何も知らされてなかったんだっ!!!」

アスランは無意識で声を荒げた。
知らされないのなら・・自分で知るしかない。
彼女の口から聞けないなら
「・・・・・。・・・・・分かりました。」


そしてその映像は流れ始めた。




何とも言いがたい時間が流れた

ただ、自分達が理解できるのはカガリが叫んでいるという事。

泣いている・・・・・。

悲鳴にも近いその声を聞いても、差し伸べる手さえ与えられなかった。

目の前で行われる強姦にも近い行為に、ただ目を見張るだけ。





そしてDVDは停止になった。



「-----カガリっ・・・・」

キラは小さく息を呑み、焦点の合わない目を元に戻す。


その画像を見て、未だに何の感触ももてない自分がいた。
「-----・・・・・。」
そしてフラッシュバックのようにその画像がもう一度頭を流れる。
カガリが悲しそうに、苦しそうに、辛そうに・・・
同時に憤りが生まれた。
カガリの身体を汚したユウナに・・その大事な事を一言も自分に告げなかったカガリに・・・・。

静かに確実に、今の出来事の一つ一つが消化されていく。
それが進むたびに、いつもの自分では考えられないような怒りがこみ上げてきた。

--------近々このことについてカガリと語り合う時がくるだろう、その時
自分は冷静でいられる自信がなかった。



奴の家に着きいっそう強く鞄の中のスタンガンを握り締めた。
それは強力なもので、軽く気絶するものを選んであった。
「いらっしゃい・・カガリ」
そうして、第四リビングに通される。
「此処は僕の部屋みたいなもんだから・・ゆっくりくつろいで良いよ。」
そんな事出来るかと悪態を心で付くがまあいい。早く近寄って来い。
「・・・・・今日は大人しいんだね。」
「煩い方がいいか?」
そう鼻で笑う。
「・・・・・・・一生掛かったって・・私の心はお前のものになったりしない。」
だから大丈夫なんだと・・笑ってやった。
すると珍しく怒ったように歩いてこられる。
--------もっと近づけ・・
そして強引に肩を寄せられキスをされた。
----------今だッ
バチッ
そう音がしてユウナが腹を抱えた。
腹じゃ気絶しないかと、首の近くの肩にもう一度電気を流す。
「っ・・・・・・・・」
バタンッ・・・。
そう音がして、目の前の奴があっけなく倒れた。
そして、その倒れた奴を尻目に部屋を捜索しだす。
こいつを倒しても警備員が来ないって事は・・・屋敷全体の監視カメラはないのか・・。
だが、本と本の間に普通のビデオカメラを発見した。
「-----趣味?」
おそらく映像に収める気だったんだろうと呆れため息を付き、それをとめた。
そしてその部屋の自分の入ってきた扉ではない方のドアを開ける。
ガチャッ・・ガチャガチャっ
----開かない。
だが、すぐにその倒れた奴のポケットを調べる。

「あった・・・・」
鍵を使いドアを開け、中に入った。
そして驚きの光景を目にする。
-----------っなんだこれ・・。

気持ち悪いほどのDVDの中に、"カガリの成長"というシリーズがあった。
五歳・・七歳・・十歳・・・・・・・・・。
随分と前からまぁ、つけられていたんだと・・気持ち悪くなる。
そして、ベットの上のところには自分の無数の写真が飾ってあった。
しかも、どっかのポルノとでもくっつけたのか、自分の顔に見知らぬ女の体という組み合わせのも沢山ある。
そして一枚、アスランと共に歩いている時の写真ではアスランに無数の画鋲が刺してあった。
そのネガがないか探すが、どうせデジカメかと探すのを諦める。
正直なところこれだけでストーカー罪で逮捕できる。
そして、もう一つ・・大事なものを探す。
「・・・・・・・・麻薬は・・」
沢山あるDVDのなかで、シリーズで買ったボックスが目に付いた。
そしてそれを開ける。
中には袋に入ったサラサラとした粉がこれだけでざっと三十個は入っていた。
「あったっ・・・・・・・・」
自分の携帯を取り出し、急いで警察に連絡を入れた。
警察は中々信じてくれず苦労したが、本腰を入れて捜査してくれると言われガッツポーズをとった。
そして、アスランに迷わず電話を入れた。

「・・・・・・もしもし?」
暗い・・?声をしたアスランがでて、少しビックリする。
「アスランっ?!カガリだッ・・・あ、とくに用事とかは・・ないんだけどさ。」
嬉しくて、嬉しくてたまらない。
やっと全てが終わったのだと。
「ともかく・・声聞きたかったんだ・・・。ちょっと良い事があってな・・へへっ」
変な内容の電話だと自分でも笑えてくる。
「カガリ・・。」
そう呼ばれ「ん?」と聞き返した。
「いや・・無事でよかった。」
そしてPI--と電話は切れてしまう。

次はシンに連絡を入れた。
「・・・カガリさん?!」
シンは驚いたように電話に出た。
「聞いてくれっ見つけたんだっユウナの部屋で・・・・麻薬っ!!警察にも電話した!来てくれるって」
こんなこときいきいと語るのは変だけど。
「おかしな事・・・されませんでしたか?」
「あぁっ大丈夫・・・っていうか、コイツの部屋に私が小さい頃からのDVDボックスがあるんだよ・・・まったく趣味の悪い・・。」
「ストーカー罪じゃないですか。それって」
シンは笑いながらそういった。
「だよなー、これでも訴えられないかな?」


カガリさんの電話越しの声に、キラ先輩とラクス先輩は安堵の息を付いた。
自分だけこの声を独占するのは悪いと思い、皆に聞こえるように設定する。
「まぁこれで私もやっとセイランから手が切れる・・・・・」
実は自分達は今カガリさんのことが心配でセイラン家に車で向かっているのはあえて伏せた。
何もなかったならそれでいい。
「・・・っ・・ユウナッ!?」
電話越しのその声に、驚く。
「カガリッ?!」
キラさんは自分の携帯を取って出て、カガリッカガリッと叫び続けている。
アスランさんは黙って、カガリさんの状況を聞いていた。
PI-------・・・・。
電話が途切れ、さっきの明るい車内とは打って変わり静かになる。
「・・・・車を飛ばしてくださいな。」
ラクスは運転手に静かに言った。




アスランは黙って自分の手を合わせ握った。
カガリ・・無事でいてくれ。
今、何も出来ない無力さが悲しい。
カガリが・・今、泣いていたら・・・・・・・・・・・。

怒っている。カガリにも・・・俺を悲しくさせたくなかったのは分かる。
けど・・・それ以上に、恋人としてやるせない憤りと言うものを感じていた。
でも優しくしたい。
彼女が傷ついている時支えるのは自分でありたい。
シンでなく、ラクスでなく・・キラでない・・・俺が。


ユウナが肩を押さえながら、それでも此方に寄ってくるので逃げ回り、鞄のあるリビングに戻った。
「・・・・カガリ・・っ・・」
そう自分の物として見ているユウナを気持ち悪く感じ、スタンガンを構えた。
「く・・来るなっ!!」
ユウナはそれをみて切なそうな顔をした。
「・・君の事が・・小さい時から・・・大好きだったんだ・・・・・・」
そうポツンと言われ、情がわいてくるのは間違いだろうか。
「・・・もっと・・違う方法で来ればよかった・・・お前、極端すぎたんだ。」
スタンガンを下ろす。もうコイツが私を襲ってくるような事は無いと思えた。
「ちゃんと、正々堂々と・・言えばよかったんだよ。」
ユウナはその場でカタカタと震えて崩れてしまった。
泣いている。
「泣くなよっ!!男だろ?!」
情け無いな・・コイツ。
ため息を付くとスカートに泣きつかれた。
「・・カガリィ・・・・・・・っ・・っ・・・」
何だこのベストオブヘタレは・・・・・・・・・・
しかたないから頭を数回撫でてやる。
「ほら、泣くなっ」
すると警察の人がバンッとこの部屋の扉を開けた。
そしてユウナは連行される、当然だ。

セイラン家の外に出て息を吸うと、世の中の空気って良いもんだと思えた。
警察の人にその場でアレコレ事情を聞かれたが、詳しい事は後日になった。
そしてパトカーに運ばれそうなユウナを見て、ため息を付くと一台の車が数台のパトカーの傍に止まる。
「カガリッ」
キラが出てきて抱きしめられた。
「うわっ・・キラ?・・ラクスッ!!・・シンも?!」
そして一人、遅れて出てきた。
「・・・・・・・アスラン?」
何でお前が此処に・・・・・・・・。
すると警察の人に呼ばれ、
「あの男が君と顔をあわせるまで署に行かないとダダをこねてな・・」
まったく困った奴だとおもってユウナがいるパトカーに近づく。
「カガリ・・・」
「なんだよ。」
「好き・・・だ。」
「そうか・・・・」
そして車のガラスは閉じられた。

「一件・・解決・・ですかね?」
シンに覗き込まれる。
「・・・・・・・そうだな。」
そしてほかの三人の方へ向き直った。
「-----ところで・・三人は・・」
何で?そう聞こうと思ったとき

--------パシンッ

「え?」
叩いたのはラクスだった。
「・・・・・・・心配・・いたしましたのよ・・。」
そしてラクスは抱きしめてくれる。
「-----何で・・頼ってくれなかったんですの・・?何で・・教えてくださらなかったの・・・?」
泣きながらそう言われ、キラも目を背け言う。
「本当だよ、カガリ・・・・・。あんな事・・されたなんて・・僕たちにくらい・・・教えてくれても・・・・・・・」
あんな事?
「・・・・ユウナにされた事・・先ほど皆で見てしまいましたの・・・DVDがアスランのポストに送りつけられて・・・・」
--------アスランの?
さっき慰めた奴にまた殺意にも近い感情が沸いた。
そして、動転した目でアスランに目を移す。

真っ直ぐ見据えられ、逆に目が離せない。

怒っていた悲しんでいた、恐かったけど優しい目をしていた。

「・・・・・・・・・アスラン・・。」


知られたくなかったのに。

----あなただけには。
















+++++
あとがき
ヘタレはヘタレのままで終わりました。
ユウナの余韻でアスカガ一騒動ありそうです。
つうか・・ユウナのヘタレさ加減、ほんと面白い。
麻薬って・・今更ながらやっぱり無理な展開です。(苦笑)
+++いいわけ。
でも、ストーカー罪だけじゃ手が切れないんじゃないかと不安になって。
ユウナとは出来るだけ関係を消滅させて終わりたかったものですから。
本編みたく殺したい勢いなのですが(そんなに嫌い・・?)、それは可哀相かと(人ですし)。
だから無理な展開に走りました。スイマセン。(土下座;)
2006.03.04