「アスランっ」
そう呼べば振り返ってくれる優しい彼。
その彼に後何回嘘をつくのだろうと心の中で密かに数える。
「---------っあ・・・やぁ・・やだぁ!!!!やめてっ・・・・・ぃ・・・・・」
苦すぎる記憶。
『アスラン』
そう何度も何度も心の中で叫んだけど、アスランは来てくれない。
「はなしてぇ・・・・・・・っ」
必死で抵抗して、相手を蹴って・・泣き叫ぶのに、誰も助けてはくれない。
「お父様、逢いに来ました。」
そうして立つ。
白いカーテンの中のベッド。
「すまないな・・カガリ・・。」
少し、顔色の悪いお父様が横たわっていた。
「バレンタインデー・・チョコレート作りました。少し・・ブランデーも入ってるけど、食べられると思います。」
それを受け取って嬉しそうに微笑むお父様に涙が出そうになった。
お父様が入院したのは、文化祭直後だった。
そして、それと時を同じくしてセイラン家がこのアスハカンパニーの権限を取って出るようにしてきた。
支えるという嘘をついて。
そんなの分かりきっていたから、当然反発するものが多い。
だが実際問題、奴の権限は非常に大きい。
お父様もそれを見逃す事は出来なかった。
「・・・・・は?」
「カガリちゃんだよね・・テスト勉強どう?未来に向けて頑張ってるかな?」
そう、セイラン家の子息に聞かれる。前々から交流はあったが・・・。
お父様にも注意しろと繰り返し言われていた。当然キラにも言ってある。
いわば要注意人物。
「・・・・・・・・ぼちぼちです。」
曖昧に返すと、そいつは笑って
「じゃあ僕が家庭教師やってあげる。なぁに心配ない無料だよ。」
勘ぐってやろうと思った。だから了承した。
「そう・・それは良かった」
チュっ
「え・・?」
おでこにキスをされその場所を押さえる。
「お近づきの印。」
侮辱された
そう感じたが一度応じた事に答えない訳にもいかない。
そして最悪の事態となった。
テストまで後二日と言う日。
いつも通り、勉強机で待っているとユウナは何も持たず現れた。
「・・・今日は、ちょっと違う勉強しようか?」
訳が分からないと首を捻る。
「・・・・・んっ?!!」
強引にキスをされ、歯に割って入られた。
「なにをするっ!!」
「う〜んちょっとね、僕色に染めようと思って。」
逃げなければ・・そう思ったが、既に腕を捕まれ身動きが出来ない。
「離せ・・っ!!離せといっている!!!」
「大切なお父様がどうなってもいいのかな?」
「・・・・・・・・・え?」
お父様・・
「今・・最悪だよね〜、僕なら・・助けられる。」
「嘘付けっ!」
「じゃあ亡くなっても良いの?」
何を証拠にコイツは言っているんだ?確かにお父様は今死ぬか生きるかの瀬戸際にいる・・・。
「いう事・・聞く気になった?カガリ・・・」
お父様に何を・・・っ
「何をした!!!!」
「ひ・み・つ」
その態度にカッとして我を忘れそうになった。
「良いの?言うこと聞けば、明日にでも回復させてあげられるのに・・・」
あながち嘘でも無いらしい・・・だがっ・・・
「・・何を・・すれば?」
ガタンっ
ソファーに思いっきり押し倒され、首筋を咬まれた。
「 」
アルファベットの8番目。
「えっ・・・・」
そして服を脱がされ、鎖骨に痕を付けられる。
「---------っあ・・・やぁ・・やだぁ!!!!やめてっ・・・・・ぃ・・・・・」
叫ぶ声もただ虚しく空を仰いだ。
『アスラン』
心の中で何度も彼の名を呼ぶ。
抵抗しても、抵抗しても、お父様が頭に過ぎる瞬間にその力をなくす。
そして下着を着けたままなのに、大きすぎる手のひらが生で自分の胸に触れる。
そして自分の手で歪んだ胸を見て相手は微笑んでみせる。
イモチワルイ。
背中に悪寒が走った。
そして、下に手を回される。
--------お願い止めて。
「ぅ・・・・・」
無理やり、自分の中に太くゴツゴツとした指が入ってきた。
「いやぁ!!!いやぁあぁぁぁ!!!!!!!!」
拒絶するように泣き叫ぶと、流石にその抵抗に飽きたのか相手は直ぐに指を抜いた。
---助かった・・?
そう思ったのもつかの間。
「抜いてよ・・カガリが、僕のを」
涙でクシャクシャになった自分の顔を見てそれでも楽しそうに奴は命令した。
抜き方なんて分からない。
知らない。
そうアピールした。
「教えてあげる。」
ジッとそのチャックが開き、それが露になり息を呑む。
しゃがんでいる私の顔にそれを近づけてきて、もう気が動転してどうしたらいいか分からない。
「やっ・・・・んあ・・・」
口の中にそれが入ってきた。
酷く大きく、それが入ると息すら間々なら無い。
「っ-------っ・・・・・--ん・・・・っ・・」
お父様。
それを必死に思って何とか吐きそうになるのに耐え抜いた。
「もっと口使わないきゃ」
そう腰を振りながら奴に言われる。
-------噛み切ってやろうか。
そんな殺意さえ沸く。
だが・・・・・・・・
『お父様・・・・・・・・・・。』
もういい、さっさと終わってくれ。
その思いで奴の言いなりになった。
最後白い粘液が喉に進入し、相手は気を失った。
私はそれから逃れようと口を離すが、顔から肩にかけて諸に浴びてしまう。
--------喉と口にこびり付く嫌な臭いと感覚・・味。
そして肩を震わせて泣き崩れた。
気持ち悪さでゴミ箱に何度も吐いた。
そしてそいつを置き去りにしてシャワーを浴び、その部屋を後にする。
「私は・・何も知らない・・何もして無い・・・っ」
それを馬鹿みたいに何度も何度も繰り返し言っていた。
そして自分の部屋で何も無かったように一晩過ごす。
朝起きると、あぁ悪夢だったんだと、何も私はして無い、されていない。そう想った。
「あら・・・カガリ?」
ラクスに朝たまたま会う。
「おはよ、ラクス」
「-------その痕・・どうされましたの?」
「え?」
そして自分の鎖骨に目をやった。
真っ青になる。
「カガリッ?」
やられた。
夢じゃない。
逃げるように、私はアスランの家に行く。
もう会いたくない。
そしてキサカからメールが入っていた。
"ウズミ様はなんとか一面をとりとめられました。"
「・・・・・・・・。」
・・嬉しいが・・っ
そしてアスランにベットに寝かされ、アスランならと気を許した。
早く・・あいつの感覚を忘れたい。
好きな人に抱かれたい。
だけど-----
痕
それを唐突に思い出し、手を止めてしまった。
アスランは拒絶されたと少し悲しそうな顔をする。
ゴメン・・・。
そして、その日・・なんとかユウナには逢わずにすんだ。
これもラクスとキラのお陰だった。
そして二人に事情を聞かれる。
キラは真っ青になってその話を聞いていた。
何処まで言って良いか分からなかった。ただ、脅されて、卑劣な事をされたと教えた。
あえて二人は聞いてこなかった。
「辛かったでしょうに・・・」
ラクスは泣きそうになって抱きしめてくれる。
可哀相なのは私じゃない。
被害者は私じゃない。
「アスランッ・・・・・」
その声を聞いたとき、キラは「カガリが壊れてしまう」と言った。
今、アスランに会ってもどう話して良いかわから無い。
アスランをただの逃げ場として扱った自分が許せない。
「どうしていいか・・分からない・・・・っ」
それからキラとラクスは泊まりに来てくれた。
そしてその傷が言えるように、その事には触れないでいてくれた。
だけど・・・
アスランとは話せなかった。
申し訳ない。
罪悪感でいっぱいだ。
私に彼女の資格なんて無い。
嫌いだ・・こんな自分。
暫くして、お父様の容態が回復してきた。
良かった・・終わったんだ。
ほっと胸を下ろしたのも・・つかの間だった。
運悪く、下駄箱で遭遇してしまう。
"何で俺にだけっ"
彼の目がそう言っていた。
お前だから言えない。
お前だから・・・・・・。
その日、セイラン家から手紙が届いていた。
"カガリへ"
お父様の病気良くなって・・本当に良かったね。
------・・そうだな・・アスラン・ザラ?だっけ?
キラ・ヤマトは君の実の兄らしいから良いけど。
"ユウナより"
脅した。
そして急いでユウナに電話を入れる。
「どういうつもりだっ!?」
そして相手はまた小ばかにするように笑った。
「やだな〜カガリ、別れてくれなんて酷い事言わないよ。」
じゃあなんだ、もっと酷い事・・・・?
「僕と・・結婚しない?」
----っそうか・・こいつ・・・っ!!
「目当ては財産か?」
「人聞き悪いな〜カガリだよ。」
嘘だ。
「本当だよ、僕ずっと前から君の事好きだったんだよね〜」
お前なんか大嫌いだ。
だいたい・・そうだよ、アスランをアイツがどうにかできる訳・・・
「お父様も・・邪魔なようならもう一度ってね・・。」
その言葉にゾクッとする。
アスランは無理でも、コイツは確実にお父様の命を握っている。
「でも僕そういうの嫌だから・・・できれば・・ね?分かるでしょ?」
受話器を壊れそうなくらい握り締めた。
頭が・・割れそうに痛い。
そして今日また来たキラとラクスに泣きついた。
キラはその手紙を破りそうに成ったが、物的証拠として取っておかねばならない。
「ユウナなんかの言いなりになる事は無いっ!!」
「・・・・・いっそ、盗聴器でも仕掛けて置ければよかったのですけど・・・。」
ラクスは慎重に、ちゃんとした公の場が動く方法を考えてくれる。
盗聴器・・・?
この部屋にそれが無いとも限らない・・・・・・・・・
そう想った瞬間背筋がぞっとした。
でも、アイツはこの館の南館にしか入っていないと心を落ち着ける。
そういえば・・一度アスランの電話をあの館の自分の部屋で取った事を思い出す。
「・・・あの時か・・?」
夜の十二時までキラとラクスと話し合った。
「アスランに・・どう・・伝えるの?」
伝える--------?
「嫌!!!!!」
不意に大きな声が出る。
彼に伝える?
やめて。
ボロボロと涙が溢れ出した。
知られたくない。
私が、彼以外の男に抱かれていた事なんて・・・・
「カガリ・・・」
ラクスはやんわり抱きしめてくれた。
ラクスはまだ、キラに胸元の痕の事を言ってはいなかった。
それは・・私を守る為。
「大丈夫ですから・・・。」
そしてシンとゲームをしている最中。
「・・・・・コレ・・俺の家の郵便ポストに・・入ってましたけど。」
その渡された写真、全体にモザイクが掛かっていた。
「--------っ!」
あの時の・・写真?
こんなのまで・・セットされていたのか?
真っ青になると同時に証拠をまた一つ掴んだ気分になった。
「・・・・・カガリ・・さん・・・・ですか?」
そう真っ赤な瞳に覗き込まれる。
「--・・っ。」
その写真を見てシンは
「これ・・セイラン家のユウナ・・ですよね?」
それも・・当たりだ。
「・・・・・やっぱり・・きな臭いと思ってました。」
そしてシンはガバッと抱きしめてくれた。
「俺っ!カガリさんの味方ですから!!アイツに酷い事されたら・・俺が・・慰めますから!!」
そう、幼い背中に手を回す。
「ありがとう・・シン・・」
皆・・優しい。
そう感謝が沸いてきて、シンを思いっきり抱きしめた。
「俺も・・小さい頃からカガリさんにお世話になってますから・・。」
少し頬を赤らめ、ニッコリ笑ってくれるシン。
「・・・・アスラン先輩は・・コレを?」
首を横に振った。知らしていないと。
「まぁ・・普通そうですよ。大丈夫!きっと何とかなります!!」
キラとラクスのことも少し話すと
「あの二人が付いて、俺が付けば百人力ですよっ!直ぐに証拠掴んで、豚箱に送りましょう!ね!」
そう元気いっぱいに言われ救われた気分になった。
それから、何とか部屋の盗聴器を見つけ、壊すと疑われるから、分かりやすい場所におき直し、
その後その部屋で重要な会話は一切しないようにした。
そして今、奇跡的にアスランと何事も無く付き合えている。