第十章:お買い物とバレンタインデー〜休息の時〜




今日はキラに買い物に付き合うように言われ付き合っていた。
ちょうど俺も買いたいと思っていたし、なんせ冬物完売バーゲンなので丁度いい。
「・・・あ!この服よくない!」
「うーんお前には似合うかもな」
そしてその値段を見てキラは肩を落す。
「何この値段。」
「いや、レジで30%オフってこの棚書いてあるじゃ・・・」
それを聞きキラが喜ぶ。
「じゃ、僕この服買おーっと!!」
そして自分もその棚にある自分に似合いそうな服を一着取る。
昼になったのでファーストフード店に入る。
席に付き注文をしドリンクバーを取り・・・他愛の無い会話をし、どうしても知りたい本題へ話しを移す。
「そういえば・・・キラとカガリの関係は?」
キラは無視して紅茶を飲んでいる。
「あ、デザートおいしそー、ね?アスランも頼もうよ」
「おいキラ!」
「お汁粉?あでもアスラン甘いの好きじゃなかったっけ?」
「キラ!!」
少し大きく出しすぎたか、店の中の人皆に注目されてしまう。
「アスラン、声大きい。」
キラは普段通り落ち着いた口調に戻る。
「すまない。」
「関係か、そうだな?アスラン的にはどんな関係だと助かる?」
どんな関係・・・?
「・・・恋人以外。」
正直にそう答えるとキラはニッコリ笑う
「正解」
そう言うとまた紅茶を飲む。
「でも、大切。ラクスと同じくらい。」
未だに分からない。なんで恋人とカガリが同じくらい大切なんだ?
「僕達兄妹なんだよね」
そう言われ飲み物が口から出そうになる。
「・・・・兄妹?」
それはない。アスハとヤマトなんの接点もないじゃないか。
「僕も中学入ってから知ったから、アスランが気づかないのも無理ないと思うよ?」
え?本気?そう思いその話を聞く。 「カガリがね、小さいときの写真見つけたら、母親じゃない人が出産直後の赤ちゃん二人抱えてて。」
そして一息つく。
「写真の裏に、キラ&カガリだってさ。最初は嘘だと思ったよ。」
「・・・どうして・・そんな・・」
「僕は家に帰って出産直後の僕が見たいって親に言ったら困られた。」
キラはその時を思い出ししみじみしている。
「それに誕生日も一緒。」
キラは丁度届いたパスタを食べだす。
「分からないけど、僕たち捨てられて違う人に拾われたみたい。」
「そんな・・・キラ、お前のお母さん達は・・・?」
「僕とカガリが同じクラスで仲良くしてるって知って驚いてたよ。」
平然とした顔で言うキラ。
「それに僕は今の父さん母さん大好きだし、カガリともあえたし、いいと思ってる。」
こいつのポジティブさには感銘すると思った。
「いいでしょ?僕とカガリの関係。コレにて終了!!」
キラはもう半分以上のパスタを食べ終えて言った。


帰り、コンビニに寄りたいと言うキラにつき合わされコンビニによる。
「何買うんだ?」
「う〜ん、僕も買うけど、アスランにも買って欲しいな〜。」
そう言いすこし見て回ると小声で「アスランこっち」と呼ばれ傍に行く。
「・・・・・・・・。」
「うわ、微妙な反応。」
だ、だって、お前・・・それ・・・。
「そ、なきゃ困るでしょ?カガリが。」
避妊具をわざわざ友達と買わなければならない訳が分からない。
たしかに、今までそういう相手がいないから保健体育の時間に配られたのしか持っていなかったが・・。
「アスラン、勢いでいっちゃいそうだから、最低限の節度をと思って。」
こんな恥ずかしい事をあっけらかんと言える親友に驚く。
「・・・あのな・・」
「つけないでするのは勘弁してよね」
キラは冷たく言い放ち、そのうちの一つを取り男の人がしているレジの方へと行ってしまった。
覚悟を決め、自分もそのうちの一つを取り、キラの後ろへ行く。
「お待ちのお客様、こちらのレジに・・・」
・・・行けるか。女性のところにこんな物持って!!
そう思い無視し並んで買った。
恥ずかしい、非常に恥ずかしい。
コンビニから出て、キラに質問をする。
「・・なぁ、こういうものって男が用意するのか?」
「当然でしょ?アスラン受け?」
そんな事はないが・・・・恥ずかしいだろ。
そしてその顔を見てキラが笑う。
「実は自販で売ってます。」
その言葉にピクリとくる。
「キラァァ!!!!!!」
思わず真っ赤になりガクガク首を揺らす。
「ついでにー僕が買ったのは隣にあった薬用リップでした。」
何てことしてくれるんだお前は・・。
「でも、カガリに手出すんでしょ?コレくらい当然。」
あぁ、これが俺に対する仕返しかと気分が暗くなる。
キラはコレでも足りないくらいだとため息をもらすが、どうやら認めつつあるようだった。







「おい、ラクス・・何処行くんだ?!」
「ふふ、それは行ってみてのお楽しみですのよ」
今日、自分とカガリは放課後遊ぶ約束をしていた。
それは・・・・・。
「スーパー?」
「えぇ、明日は大切な日でしょう?」
カガリはそれを聞いて「ラクスの誕生会は終わったよな・・・?」と考え込んでいた。
カガリの顔はどこかキラと似ていて、でもキラより多い表情がとても可愛らしい。
そして、例の棚の前まで来る。
「・・・チョコレート・・・?」
そう、明日はバレンタインなのだ。


チョコレートを買い、自分の広い家に入る。
「おじゃましまーす!」
そう元気良く入るカガリは、何処か幼くて妹のようで放っておけない。
「バレンタインデーですのよ、明日!」
カガリはあぁと頷き、頭の上は?が飛んでいた。
「好きな男の子にチョコレートを送る・・・大切なイベントですわ!」
そう説明すると、
「じゃあ、お父様にも、生徒会の奴にもだ!!」
それを聞き、アスランは?と心で突っ込みつつ、カガリらしいと思った。
「食事とかなら、少しは出来るが・・・お菓子となると・・・」
カガリは顔をしかめていたので、ニッコリ笑う。
「一緒に作りましょう、生徒会の人たちのは一緒に・・・。本もありますし。」
そう言うとカガリの顔はパッと明るくなった。
その嬉しそうな顔がこちらまで幸せにしてくれているかのようだ。

作っていると、初めての割には上手だと気が付く。
「お上手ですわ、カガリ」
その声にエヘヘと返すのもまたカガリらしい。
ラクスは今、生徒会用、父用、キラ用を作っていた。
カガリも幾つかにボールを分けているのでおそらくそうだろうと思った。


「何を作るのです?」
「う〜ん。生徒会用にはチョコチップ入りのココアパンケーキにして・・・。 キラとシンにはトリュフで・・・・」
そして色々考えているようで頭を捻らせ、
「お父様にはブランデー入りので・・・。」
そこで言葉が止まり、目が下に向く。
「もう一つ、おありなんでしょう?」
そう、それにしてはボールの数が多い。
「・・・アスラン・・何が欲しいかな・・・?」
そう聞かれ、知っている範囲で答えてあげようと勤める。
「たしか・・・甘いものが好きではなかったと・・・」
その言葉にカガリはショックを受けたようだ。
「えぇ!!じゃあ・・チョコあげられないじゃないか!!」
「ビターにすれば宜しいのでは?」
「う〜ん。・・何となく決まってはいるんだが・・。」
「大丈夫ですわ、カガリがあげるのですから。」
そう言うとカガリはありがとうと微笑んでくれた。
自分はというと、生徒会にはクッキー、キラには・・・・・・・・。
「ところで、キラに何やるんだ?」
その問いにニッコリ笑う。
「生チョコにしようと思いますのよ」
生チョコか〜とカガリはため息を付く。
「私も、アスランに生チョコ作ろうと思ってたんだよな〜」
それを聞き少し笑う。
「大丈夫ですわよ、被っても。」
そして二人でチョコレートを作った。


当日になった。
当然、女子生徒会メンバーは男子生徒会の元に行く。
「・・・ちょっと、何で私まで・・・。」
「まぁまぁ、人付き合い!」
「私、アスラン先輩には特別に作りました!!」
その言葉にカガリがギクッとするのを横目で見る。どうやら中学生にはこの二人が付き合ってる事は出回って無いらしい。
「ともかく、皆様喜んでくださるといいのですけど・・・。」
それは自分の場合特にキラだった。
私とキラが出会ったのは本当はとても幼い時で、キラが泣いているのを見て放っておけなかったのが話しかけたとき。
そして、中学の時アスランの友達として再会。
当時はアスランと見かけ上付き合っていたのだが、キラに逢いこの人以上の人はいないと思った。
泣き虫で、優しくて、頼りになる。頼ってくれる・・・。たしかに勉強が出来るとか、運動が出来るとかあるが、
何より性格が大好きでたまらない。


ガラガラッとドアを開けると
「待ってました!!」
とディアッカが嬉しそうにする。そしてそこには既に五万と可愛いラッピング袋が置いてあった。
その中にウンザリとした顔の人が二人。
「こんな量!一体どうやって食べきれと言うのだ!!!!」
本来とても情に厚いイザークは全部食べるつもりらしい、乙女としてその心使いは感心する。
「・・・甘いの・・苦手なのに・・。」
そう言ったのはアスランで、それを聞きカガリとルナマリアは硬直しかける。

「あ、アスラン先輩!!あの・・えっと・・私!先輩の、特別甘さ控えめで作ったんですよ、食べてください!!」
そうやって威勢良く渡すルナをカガリは黙って見ていた。
「・・あ!そうだ!!私たちから、お前らに作ってきた。ありがたく食え!」
ニコルはありがとうございますとニッコリ笑ってくれる。
イザークはこれ以上増やすなよ・・・。と言いながら、直ぐに開けて食べてくれた。
「あ!ランキングとって無いのに食うな!!」
その言葉にミリィは呆れたようだ。
「ラ・ン・キ・ン・グ?」
ディアッカは嫌な汗をたらたらと流しだす。
「毎年恒例なんだよ!」
そう言いきり、みな付き合わされるように貰った数を数える。
「僕は・・・51個です。」
「うわ!上げたな!!俺45・・・・。」
「・・・全く下らないな・・。66だ。」
その後の二人が一向に数え終わらない。
「俺は・・132だな・・。」
「僕は130・・・かな?」
その数字にため息を付く。
この言葉に女子は愕然とした。
「130・・・って・・そんなに?」
ルナマリアは敵の多さを思い知ったようだ。
「今年も一番ですね、アスランは。」
「嬉しいのか嬉しくないのか分からないがな。」
そういい、チラッとカガリを見るが、カガリのほうは気が付いていない。まったく間の悪いカップルだと思う。
一方カガリはカガリでいらぬ事を悪い方へ考えているように見えた。
「あ、じゃあ私はこれで・・・まだ渡す奴いるんだよ。」
気まずくなったのか、カガリは急いでその部屋を後にし、女子はそれぞれ流れ解散というようになる。
「アスラン先輩!私のチョコ、食べてくださいよ〜」
そう言われ、アスランはルナのラッピング袋を取り、少し見てから大量にある山からゴソゴソと探し物をする。
「あ、あった・・。コレ、えっとメイリンか・・あいつも今日くれたんだよ。」
同じラッピング袋だから直ぐ分かったと、アスランは話していたがルナは面白くないようだ。
「妹に先越されるなんて・・・。アスラン先輩、絶対私の方先に食べてください!!」
そういい拗ねたのか、ルナマリアは教室から去っていく。
「で、ミリィ・・・俺へのチョコは?」
「・・知らないわよ。」
ミリィはため息を付き、廊下へ出て行こうとする、それを必死でディアッカが追いかける。
「バカップルだな・・・全く」
そう言ってイザークも出て行った。




みないなくなり、部屋には俺とキラとラクスだけになる。
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
「・・・・・俺、邪魔だな。」
いかにも、キラとラクスに早く行けオーラを出され部屋の外に出た。
カガリはきっと下駄箱で待っているだろうと思い、そっちの方へ進む。



「わぁ!!いいんですか!コレ!!」
「あぁ、お前のために作ったんだぞ!!」
そう聞きなれた声がして焦った。
「へ〜!コレ!!トリュフじゃないですか!!作れたんですね、こんなの!!」
「お前な・・・失礼じゃないか??」
そう笑いあうカガリとシンを影から見ていた。でも何か気が引けるので物陰に隠れ、会話を聞く。
そして、トリュフ?と頭に疑問が過ぎる。だってイザークが食べていたのはパンケーキだ。
おそらく生徒会に配られたのはそうだろう。なのに・・・。
「お前、甘いもの好きだろ?だから、特別だ。」
そう言う言葉が聞こえ嫌な気分になる。自分は貰っていないのに。
「でも、お前もモテそうだよな・・・私のなんて要らなかったな。」
「いいえ!!ホラ、転校してきたばっかりだし、今年は極端に少ないんですよ。」
「でも、袋パンパンだぞ?」
「あ・・30個は入ってるんで・・・。」
「十分多いじゃないか!!」
カガリは少し拗ねた声を出した。
「持てる奴は・・・そうだよな。やっぱり私のなんて要らないかな。」
「何でですか?嬉しいですよ、貰えるだけ。」
シンはくったいなくそう答えていた。
「いや、でも・・・甘いのが嫌いだったりしたら・・・」
「それは迷惑だと思います。」
「・・・そう・・だよな。」
そしてシンは少し急いでいるからと、帰ってしまった。
少しムッとして、カガリの前に出るのを躊躇っていた。彼女はその場で鞄をゴソゴソ漁りだし、何かを掴み出した。




迷惑・・か。そうだよな。だって132だぞ?
そう思い、アスランにあげるのは止そうと思った。
何となく悲しくなって、この場で作った生チョコを全て食べようと決める。




出てきたのは、どうやらチョコらしい事に気が付く。ラッピングが淡いグリーンでまさにカガリらしい。
そして、それを空けた瞬間、なにか手紙のようなものが落ちた。
背中を向いていて見にくいが、そのチョコをカガリは自分の口に入れようとしていた・・・何故?
「カガリ?」
そう不思議になって声をかけると、彼女は一個目のチョコを丁度口に入れた後のようだった。






アスランにあげようと思っていたチョコを口に入れた。
苦い。
そう思って苦笑する。
まるで今の自分の気持ちのようだと。
生チョコはスッと口の中で溶け広がり、また苦さで口をいっぱいにした。








カガリの口の周りにほのかにココアパウダーがついていた。
そして、今落とした紙を拾い驚く。



"アスランへ"


カガリは気まずそうに顔を背けた。

「コレ・・・俺に・・・・?」
本当に質問していた。俺にくれる予定のものを、なんでカガリが食べちゃうんだよ、と。
「・・沢山貰ってたし・・・。いらないだろ。それに、甘いの・・嫌いなんだろ?」
指先に付いたパウダーを舐め、次のに手を伸ばそうとするのを止めた。
「・・・欲しい。」
その言葉にカガリは少し眉をひそめた。
「・・・なんでだよ。チョコが食べたいなら、他の人から貰ったの食べればいいだろ?」
その子供染みた嫉妬のような言葉に笑いがこぼれた。
「・・・カガリのが欲しいんだよ。」
そう笑いながらもこの場に俺がいなかったら本当に全部食べつくす気だったのかと思い少し不愉快になる。
二個目のチョコを丁度口に入れたときでカガリはばつが悪そうに残ったのを差し出した。
残りはあと四個・・・・。最初は六個あったのに・・・とガッカリする。
そこで、一つ良い案が浮かんだ。


「カガリ、足りない。」
「食べちゃったんだよ。仕方ないだろ?」
「まだ、残ってる?」
「え?」
思いっきりチョコを持っていない腕で腰から抱き寄せ背中に手を回しキスをした。
「・・・ん〜〜!!ん!!!っ!!」
カガリが嫌になるくらいに口の中で暴れる。当然だ。俺のチョコ食べたんだから。
カガリの口の中はビターチョコでいっぱいだった。
唾液とチョコを混ぜ、それを口にいっぱいにする。
「っ・・・んぅ。」
カガリは苦しくなったのか暴れずに口を離したいと言わんばかりな動きを見せるので、唾液とチョコの混ざったものを吸い上げた。
「っっ・・・・っぁ・・アスラン!!?」
吸い上げきれなかった唾液を口から零さないようにして、また呼吸を整えるのに必死なカガリが言葉を発する。
顔は耳まで赤く、唇はビターチョコで濡れていた。その顔が行動が艶っぽくて見惚れる。
だからニンマリと笑うのは仕方ない事だった。
「な!!何笑ってるんだよ!」
カガリは納得いかないと、怒っている。
「美味しいな。」
その言葉に機嫌を損ねたのか、カガリは目を逸らしてしまう、
「怒ったか?」
「当然だろ?!」
カガリから貰ったチョコを口に入れる、それはスッと溶けその後に深い苦味と多少の甘さを残した。
「・・・美味しいよ、チョコも」
その言葉にハッと振り返り、嬉しそうな顔をしてくれたのが嬉しかった。
箱を閉じ、カガリの近くに寄る。
「・・・チョコが美味かったなら・・・いい。」
「カガリも。」
ふざけて言うのだが、彼女は顔を逸らしてしまう。
愛しくて思わず額にキスを落とし、口にも落す。
さっきとは違い優しく、甘いものだった。
「・・美味しかったか・・チョコ・・?」
「うん。」
そう答えると恥ずかしそうに「が、頑張って作ったんだぞ?」と念を押された。






















+++++
あとがき
ごめんなさい、チョコでキスするアスランが書きたくて堪らなかったんですよ。
まぁキス魔降臨です。カガリにする事ならなんでも降臨しますアスランは(きっと)
キラとシンはカガリにとって特別な男の子なのでトリュフです。
前半のキラとアスランのやり取りは気に入ってたりします。
後半もぶっちゃけ短編で出しても良い内容してます。
今甘甘ですが、一瞬どん底に落ちる予定でいます。(変な予告)
2006.03.02