いやだってなんだって、仕事は仕事なんだっ・・。


第八輪+仕事



「・・・それ・・本当?」

「・・はい、私も・・まさか、・・・・こんなに高いとは・・・。」

そう・・ラクスが口を濁すのも・・・・・分かる、金額だった。
いつものお茶菓子屋で・・・ラクスとキラは互いに悶々としている。
まさかだった・・ここまで、カガリが高いとは。
それも・・八の時からいるのであれば、生活費も含まれるから・・当然のことなんだろうとも思う。しかし・・。

二百五十両・・は、ないだろ。

せめて・・百両程度だと、思いこんでいたキラには・・とても痛くて、---キラだって、十から大天使で働いているためか結構貯金がある。

だが・・それだって、百五十両程度だった。---------あと・・百両?

カガリが・・振袖新造になるまであと・・五ヶ月ほど、どんなに頑張ったって・・・あと四十両が限界だ。

「ついでに・・振袖新造であれば・・およそ、二倍・・多くて三倍の価格になるそうで・・・・。」

このままでは・・・・、そう・・キラは落胆したが、すぐに・・頬をパンと叩いた。
確かに・・・五月までに、この・・値段は無理かもしれない、けど・・僕が副隊長になって・・・成果を上げれば・・。
一年半後の・・花魁になるまでなら、間に合うかもしれないっ。

「・・花魁に・・なるまでは、買われたり・・しない、よね?」
「はい、基本的に・・・私とカガリは、特別ですから・・・。自分の意志を通すことが出来ますし、よほどお金を入れ込まれなければ店も許しませんわ。」

「・・カガリには・・申し訳ないけど・・・・・・・・・・一年ぐらい、掛かっちゃうと思う。」
「・・でも、迎えに来てくださる方がいれば、頑張れますわよ。」
「うんッ・・ありがとう!ラクス」

そうして微笑んだ相手に・・ラクスはほんのりと頬を染めていた。・・・ここ最近・・何度か顔を合わせているけど・・本当にいい人。
欲を言えば・・・恋人に、なってほしいほどで、でも。

そんなこと・・いえませんわ。

知ってしまったらキラ様は・・・・私に更に同情してしまうようなきがする・・。
それは・・申し訳ない。
そう思ってラクスは、心配そうにのぞき込むキラに微笑み・・キラは曖昧な笑顔を向けていた。
可愛い子だと思う。・・カガリのことを・・本当に、助けたいみたいで・・でも。
ラクスだって・・・きっと、出たがってる。・・・そう、見える。

それに・・・。

「ラクスは・・本当に優しいよ。・・・・カガリの傍に・・君みたいな・・優しい子が居てくれて・・良かった。」

ちょっと・・、なんか、気になる。
容姿が可愛い・・それもあるのだろうが・・・本当に性格美人だと思うのだ。
自分自身も・・ラクスと居ると、癒されるほど。

「いえ・・私も、カガリが居てくれて・・助かっていますし、それに・・優しさならキラ様の方が上ですわ」

そう微笑んだ・・ラクスの肩を、立ち上がったときに抱いた。

「?!」

「おごるよ、ありがとう。」

まるで・・恋人のように・・・・その店を出る姿を見てミリィはクスリと笑う。
あの二人・・絶対秒読みね。
そして同時に・・良かったと、心の底で思っていた。ラクスにも・・カガリのように好きな人が出来れば・・辛くとも希望になる。

-----きっと、それは幸せなことだから。









店を出て・・ラクスは未だに少しだけ頬を染めて・・その肩を抱いて歩く相手を見上げる。
心臓に・・悪い、といか・・・・そんなことをされては、・・・どうしたって嬉しいわけで。

「えっと・・キラ・・様。」

「いいよ、キラで。」

そう言って・・微笑むキラに、ラクスは何も言えなくなって・・・でも嬉しい気持ちで満たされる気がする。
こういうときは・・素直に、申し上げるべきだと。思った。

「嬉しいですわ、・・・キラと・・こうやって、歩けるのは・・。嬉しいです。」

「・・僕も、・・嬉しいよ。」

やっぱり・・この子、いい子で・・可愛い。
クスリと笑い・・キラは、その女の子を抱く手に力を入れて、もっとくっつくようにする。
カガリも・・ラクスも、両方出してあげたい。
多分・・、、ラクスは・・知れば知るほど、好きになるような・・そんな予感があった。









「もう!アスランっ起きてくださいよ!!ったく・・練習のしすぎだっ」
「いいんだよ、シン。性欲を抑えるのは運動が一番だ。ヘトヘトになればそっちにまで元気が回らないから!」
「だーーーっ、下ネタ走りすぎですよあんたはッ!!この頃俺等まじでアスランさんと会話してないじゃないですか!!」

十五のシンは・・もっとかまえと言っているらしく・・だが、無理な相談だった。
剣道でなら・・構ってやっても良いけど。

「何なら・・お前も色町行ってみるか?いいぞ〜野禽は、可愛いお姉ちゃんいっぱいで。」
「俺、年上趣味ありませんから。」

そう・・話していると、そこにアスランの朝食を届けに来たのか、大天使食堂に勤めるルナマリア・ホークが表れる。
そして・・ギロッとシンとディアッカを睨みつけた。

「あ・の・ね、アスランさんは紳士なんだから・・・そんな人の前で遊廓の話なんてやめてよねッ!!」

そう言われ・・自分より二下のくせに偉そうに説教する相手を見て・・・シンは少し悪態を付いてやりたくなる。

「お前みたいなガキには分からない世界なんだ。」
「・・行ったこともないシンに言われたくないわよッ」
そして・・これも毎度のことなのだが二人のにらみ合いが始まり、ディアッカはそれを面白いようで眺めていた。
アスランは五月蝿いと布団に潜り、また寝息を立てる。



「まーまー、ルナマリア。怒るなって、男はそうやって出来てるんだからっ」

「まるで不変の真理みたいな言い方しないで下さいよッ!!アスランさんと・・キラさん、イザークさんはそんな所には填りませんッ」
「わかんねーぞ?運命の人が遊廓にいれば・・。」
「そ、そうですけど・・万に一つありませんッ!!!!」

ぎゃあぎゃと叫びだした三人にアスランは本当に勘弁してくれと頭を抱える。
眠たいわけではない・・だが、

あと・・・・一週間・・かぁ・・・・。

何とか・・・イザークやキラに付き合って貰って極力体を動かし続けて・・カガリのことを考えないように勤めていた。
だがやっぱり、風呂や・・寝るとき、どうしたって考えてしまう。

それでも・・前に比べれば、ましだろうか。

カガリを・・アスラン自身が傷つけるなんて有り得ない事態で・・・・・。でも、それをしてしまわないかと心配になるのは・・。
心の何処かで・・やっぱり、カガリの意志を無視してでも・・手に入れたいのだと思う。
けど、その度に・・・アスランの腕の中で信用したような笑みをこぼす・・カガリが見えて。

はぁ・・と、溜息が出るのが・・もう一日に数十回あった。









「「合格です、二人とも。」」

タリアと・・マリューにそう言われて・・・・・カガリとラクスは共に手をぱぁんと合わせる。
そう・・・たった今、二人は・・・・振袖新造になる資格を貰ったのだ。
それは、カガリからしてみれば・・・アスランと共に暮らすための第一歩。

「でも・・実際なるのは・・ラクスが二月から、カガリは五月から・・・。中間をとって、三月四月でもいいけれど?」

「「中間」」

そう・・二人で答えて・・また嬉しそうに微笑み合う。すると・・マリューから思っても見ないセリフを聞かされた。

「でも・・ね?ほら実践も無しに・・いきなり接客とは行かないでしょう?だから・・二人には宴にも出席してほしいの。」

え・・と少し固まるが、マリューはニッコリと笑い
「大丈夫よ、本当にいい人達の所にしか・・使うつもりはないし、それに・・一対一はまだ控えて置くから。」
当然だと・・思う、夜の部屋で・・男性と一対一なんて・・・・・恐い、何をされるわけでもないが・・。
だが、そう・・少し安堵していると、タリアから・・・・・・更に・・いや、言うなれば・・嫌な、セリフを聞いた。

「それで・・外で、遊びたいという客も多くいるのよ、だから・・それの予行練習もしてもらわないと。」

・・・予行・・練習・・・・?
「で・・でも、タリアさん、私・・ちゃんと付き合ってる奴居るし・・」

「好きな人じゃ意味無いでしょ?嫌いな人にも・・恋人と同様に接せなきゃ駄目なのよ?」

カツンと言い放たれて・・肩を下ろす。
確かに・・お金を貢がれれば・・・カガリもラクスも・・断れなくなるときが来るかもしれない。
その練習と・・言われては、本当にぐぅの音も出ないのだ。
「安心してね、二人とも、・・肩を抱かれる程度までしか・・許可していないから。」
そう・・言われて、それならまだ・・・・・と、ラクスとカガリは胸を下ろす。本当に・・口づけも許可できてしまったらそれこそ最悪だ。
「と・・言うわけで、週四日・・その人達と待ちに出ること、よくて?」

「「はい」」

・・・・・はぁ・・・。


そう二人同時に溜息が出て・・・顔を見合わせていた。











翌日・・早速、その人達の説明を受ける。

ラクスの相手は・・・、ムルタ・アズラエルという資産家。
カガリの相手もまた・・資産家の、ユウナ・ロマ・セイランという人だった。

「まぁ・・・この二人を耐えられたら・・他の客はまず大丈夫でしょうね。」

そう・・タリアが呟いたのを二人は聞き逃さなかった。つまりは・・そう、相当の性格なのだろうと察しが付く。 それに・・マリューには「この人達相手じゃ、本当に疲れるだろうから・・宴はこれが終わってからね」と・・そこまで心配して貰っている。
そして・・その人物の性格を少し聞かされて、どう対処して良いか考えていた。

アズラエルは・・どちらかとういうと、貢ぎたいより・・貢がれたい主義のようで・・それに、理想像も高い。
女の子らしく・・それでいて可憐。まさにラクスだろうと思う。
カガリの相手は・・別で、どっちかと言えば自分色に染めたい人間のようだった。だから・・わざと飾り気のないモノで行く。
ようするに、相手は貢ぎたい主義なのだろう。

「幸運を祈りますわ。」

「私もだ。ラクス・・・頑張れっ」

そう互いを励まし合い・・・・二人は店を出る。







「はじめまして、カガリちゃん。僕はユウナ・ロマ・セイラン。・・よろしくね」
「初めまして・・どう、お呼びすれば宜しいでしょうか?」

くそっと思いつつも・・敬語で言うと相手はチッチッチとわざとらしく舌をならなす。

「君、さばさばして男っぽいんでしょ?いーよ素で。僕はそう言う子を僕色に変えていくのが好きなんだから。」

ああ・・本当に、説明で聞いた通りだと・・カガリは少し溜息をついたが、それを悟られないように元気な声を出した。
「じゃあ・・ユウナッ!宜しくな!!私はカガリっ」
「うん・・そうそう、そう言う挨拶期待してたよ、カガリ」
にんまりと笑う相手に・・カガリも笑顔を合わせて笑う。まぁ・・いいか、どうせただ一緒にいるだけだし。



そう思っていると・・手を引かれて、小間物屋に入っていた。

「今日は髪飾り、プレゼントしようと思うんだよね〜・・うーんコレもいいし・・これも。カガリはどれが良い?」
「私は・・飾り気の少ないのが・・」
「あっそれは駄目、安心してちゃんと似合うの選んであげるから。」

最初から・・意見を聞く気がないのなら聞かないでほしいと少しふてくされると・・ユウナは微笑んで
「ほ〜ら、そんな不機嫌な顔しないの。今・・君は僕の相手をしてるんだからね。」

頬を・・両手でむぎゅっと押されてイヤイヤと頭を振ると、相手は満足したように笑みをこぼす。
そして・・・・離したと思うと、急に太い指が耳に触れた。

「ひゃッ・・!」

「・・・ちょっと・・予想以上の子かも。」

その・・まるで、品定めをするような目に、ビクッと背中に悪寒が走るのが分かる。
だが相手は直ぐに手を離して・・・・パッと簪に向き直った。

「そうだな・・うーん・・・・これと・・これ、それに・・。」

おいおい・・幾つ買うつもりだよ・・・。そう・・突っ込もうと思ったとき、そいつはそれを全て買ったようで・・一緒に買った櫛までこちらに向けている。


「僕が髪、結ってあげる。」
「えぇ・・っ・・」

流石に嫌だと声が出ると・・相手は笑い、
「嫌だなぁ・・そんな、露骨な反応。」
「あ・・ごめ・・」
「いいよ、カガリ・・慣れてないんだろ?接待。」
「ああ・・すまない。」

素直に・・これだって、仕事なのだと・・・、そう思わなきゃならないのに。と、自分に言う。
正直・・アスラン以外の奴に、髪などを触られるのは・・納得いかないんだが・・・。

「素直だねぇ・・カガリ。僕、そう言う子好きだよ。」

別にお前に好かれても・・・・そう思ったが、一応微笑み返して置いた。---これも・・仕事、か。・・・・面倒だ。
すっすと髪をとかされて・・・櫛ならまだしも、指先までまで解かれる。


「綺麗な金髪だね・・髪質も良いし・・」

「そうか?あんまり手入れもしてないが・・。」

店の外で・・急にそんなことをやられては人目について・・・・少し嫌だとカガリは思った。だが・・仕方ない。
すると、後ろからまた・・耳に触れられてビクンと肩が上がる。
その態度を・・・・気に入られたのか、包むように触ってくる。

「や・・、流石に・・触りすぎ・・っ」

アスランの手じゃないのに。反応してしまうのは・・・・・やっぱり、どうしようもないことで・・・。でも嫌悪感が募るのも確かで・・。
相手は・・それでもやめようとせず、耳元で話しかけてきた。

「可愛いね、カガリ。----・・処女?」

「なッ!!」

それはさすがにセクハラだと手を払いのけると・・「もうしないから」と言われて・・許すしか無くなる。
「ちゃーんと髪結ってあげるから、機嫌治して」
そう言われて・・髪を結われて、鏡を見ると・・まぁ、下手ではない。

「どう?気に入った?」
「・・・器用なんだな、お前。」


そうしている内に・・二時間が過ぎて、店に返される。



「思ったより、良かったよ。・・・じゃあね、」

「ああ・・。」



そう言って・・・見送ろうとすると、手を出されて・・握手かと手を伸ばした。

「ぅつ・・っ」

急に・・口元に持っていかれて吸われる。そして・・ほんのりと赤い痕が出来ている。



「じゃ、カガリ。」



その痕を見つめて・・・やられた・・と、心の中で憤慨する。

客じゃなきゃ・・蹴り飛ばしてやるのにっ!!


そしてその手を急いで洗いに行った。































































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あとがき
ユウナの絡みが異様に笑えてくるような気がするのは・・気のせい?
ユウナと絡ませるのは好きです。アスカガのために☆
2006/06/18