言おう。
今日こそ・・言おう。
朝・・井戸の前で、パンッと顔を叩いて・・覚悟を決めていた。
カガリと・・共に暮らすようになって、三週間が過ぎている。
些細なことで・・衝突はあるが、結局お互いに和解はしているし・・何より・・・。
ずっと・・側にいて欲しい。
「カガリっ!」
「なんだ?」
白昼・・・・・縁側で鼻歌を歌うカガリの横に腰を掛け、持ってきた二人分のお茶を置く。
「あの・・・」
決心を鈍らせたくなくて・・・アスランは唐突に話を切りだした。
「・・・・俺・・カガリがいて・・よかった。・・・・ありがとう。」
突然すぎた話題に・・・カガリは少し、頭に?を浮かべるが直ぐに笑顔になる。
「いや・・そんなの、おあいこだって・・・。私も・・。」
喰ったいなく笑う、顔。でも・・・おあいこだなんて思ったことはない。
本当に・・あの時、真っ暗だった。
出口があるはずなのに・・・・そこに向かう気力さえないような自分。
けど・・
「違うんだ・・本当に・・・、君のような人・・今まで、周りにいなかったから・・・その・・。」
「?」
カガリが・・いたから
「太陽みたいだと・・思う、カガリがいれば・・・明るくなるような、気がする。」
あの、暗い場所から・・・まだ完全に抜け出せたわけではないと思う。
母へを失ったことの喪失感、父への苛立ち、下らないプライド。
自分一人では・・・どうしようもない、感情の渦。
「・・・?そうか?」
きっと・・カガリは、自然体で・・そう、出来る人間で・・・
そう言う人が・・・・傍に、居続けてくれたらと・・願う。
「ああ、俺も・・そう思う。きっと・・・今まで君の周りにいた人・・みんな・・そう、思ってると・・思うけど・・・。」
その・・太陽のような少女を、独占したいと考えるのは・・罪なのだろうか。
そうなのかもしれない、けど・・
「・・君が・・きっと、傍から・・いなくなったら・・・・・・淋しいし、また・・暗いところに・・戻りそうな気がする。」
俺が。
また、どうしようもなく・・・・・・・暗い場所に戻ってしまうから・・だから・・。
--------------ずっと・・傍に・・。
そう・・切り出そうとしたとき、カガリの顔が曇るのが分かる。
--------引かれた・・かも、しれない。
そう・・不安になり、カガリの顔をのぞき込んだ。
「カガリ・・・?」
「・・いや・・なんでもない。」
一瞬眉をひそめたのは・・・気のせいだろうか、そう・・暗い気分に陥っていると・・・・トンと、肩に・・金髪のものが当たった。
「・・・カガリ・・。」
身体を預けるように・・寄り添われ、アスランの心臓はドクンとはねる。
気持ちまでは・・たぶん、伝わってはいないだろうが・・少なくとも引かれてはいない。
そう確信して・・アスランもカガリの頭に自分の頬を乗せた。
結局・・・言えないまま、その日が終わろうとしてしまう。
ああ・・と自分自身に呆れて・・・・・アスランはカガリと同じ布団に潜り込んでいた。
「・・起きてるか?」
「・・なんだ・・・・。」
自分の情けなさに打ちひしがれているアスランなど分からないカガリは・・普通に声を掛けてきて、何だか余計に切ない気がした。
「・・私・・も、感謝してる。--------アスランに逢えて・・こうやって、一緒にいられて・・・すごく嬉しいぞ。」
その・・たった、一言。
それだけで・・・顔が赤くなるのが分かる。
俺は何もしていない、カガリに・・・側にいて欲しいから、こうやって家に捕まえているだけ。
傍にいて・・・---ただ、自分のために。
それが・・凄く醜い気がした。
「・・・事情も・・聞かずに・・こうやって泊めてくれるし・・」
でも・・そんな、繕ったような・・・・それでも・・カガリがそう思ってくれているならそれが全てでそれで良いとも思う。
なら・・そう、カガリも嬉しいのならば、ずっと一緒にいればいい。
「・・でも・・いつまでも・・・・・・・・・・・こうやってはいられないよな。」
「・・え?」
「いや・・なんでもない、ゴメンアスラン・・寝よう?」
「・・・」
その・・たった一言に、背筋が震えるのが分かった。
--------どこかへ・・行く気なんだ。
俺を置いて。