歯車が・・・・壊れるのと、酷く似ている感覚だと、思う。
----------止まってしまうような気がしていた。
「・・おいおい・・・・アスラン、この頃ホント、大丈夫か?」
「・・どう・・で、しょう?」
そう・・ムウと・・キラはアスランを見る。
いや・・・別に仕事に当たり障りがあったわけではない。
稽古を・・サボっているわけでも・・ない、だが・・・・・。
「あいつ・・この頃・・・・・顔、動いてないだろ?」
「・・・・。」
何をやっていても・・何にも興味がないように見える。
からくり人形のようなのだ。自分の意志で・・・・動いているようには見えない。
これにはもう・・・仕事に何か起こらなければいい主義の・・イザークさえ心配しているのだ。
もう・・そんな状態が二週間も続いている。
「はぁ・・・・・仕方ないねぇ・・、息抜き・・にでも、無理に連れて行くか。」
「?」
「キラもな。」
「はい?!」
「ほら・・この間言ったこと、忘れたのか?」
「え・・・あぁ!!」
ぱんっと手を合わせて・・・・キラは思う。
アスランも・・お酒とか飲めば少しは笑ってくれるかもしれない。
それに・・なんてったて、ラクスと・・カガリが相手ならば・・・・・・特にカガリとアスランは・・性格も合いそうだし・・。
----そう、思っていた。
駄目だった。
何をしても・・・・・・・・・・・。
つまらない。
あの日・・あれから、カガリに・・・・帰り際言われた。
"・・・・辛いようなら・・一回、別れよう"
強要する・・言葉じゃない。
分かってる・・・・・・けど・・・・・・。
君の口から・・・別れるなんて・・・・・・。
怒りすら通り過ぎて・・ただ、虚しかった。
それからだ。
---------------・・君がいない世の中なんて・・本当に興味はない。
つまらないだけだ。
--------死んでも・・いい・・かも。
いっそ・・死のうか。そうすれば・・葬式ぐらい、来てくれるかもしれない。
俺のために・・泣いてくれるかもしれない。
「・・アスラン・・・・?」
「なんだ?」
伏目のまま・・・キラを見るとキラは困ったように笑う。
何やってるんだろう・・こんな、情けないの・・カガリにはとてもじゃないけど見せられない。
そう思ったのは・・今のキラの笑い方が・・カガリに少し、似ていたからだった。
「ムウさんが心配してね、今日の夜・・出かけようって。」
「遊廓ならお断りだ。」
「社交辞令、それに人付き合いだよ。」
「・・・・・。」
なんだって・・いい、もう。
その態度を・・・・キラはOKと取ったようで・・・アスランの前から去っていった。
「・・・カガリ」
せめて・・家ぐらい、教えてくれても良かったのに。
「かがり・・元気・・ない。すてらの・・咳の・せい?」
困ったように・・訪ねてくるステラに、カガリは笑って頭を撫でてやる。
ステラのせいじゃない。
----私自身・・頑張らなくちゃ、いけない。
アスランと・・・・一緒にいるために。
「カガリ・・どうしたら、元気出る?ステラ、いいこいいこしてあげる。」
いつも・・カガリがステラの頭を撫でてやるように、ステラはカガリの頭を撫でてくれた。
やっぱり、ステラが大好きだと思う。・・・ここから、出されてほしくないと思う。
---------こんなにも・・優しくて、無垢だから。
「ありがとう、ステラ。元気出たぞ。」
「ほんとう?ステラ・・頑張った?いいこいいこして?」
「ああ、ステラはいい子だ。」
カガリより明るい金髪を撫で・・・ステラは猫のように微笑んでくれる。
そのまま頬をすり寄せて、カガリに抱きついてきた。
「カガリ・・元気ないの、すてらいや・・。かがり元気、すてらも・・元気。みんな・・げんきなのがいい。」
「うん、ステラ・・元気か?」
「うんッ!かがりがいるから・・すごく、元気なのッ!!ステラ、あったかいの!カガリといると・・・」
------アスランも・・そんなこと、言ってくれていた。
自覚はない・・が。
「よかった、ステラが元気だと・・私も嬉しい。」
そうして・・ギュッと抱きしめていると、安心したのか・・ステラは眠りについてしまう。
本当に・・子猫のようだと、カガリは思い・・・・布団に入れてやった。
「今日は・・一対一・・だけど、いけるわね?二人とも。」
タリアに・・そう、話を切り出されては、それはもう変わらない事実なのだろうとカガリは思う。
だが・・タリアの言葉に、声を上げたのはマリューだった。
「いきなり・・じゃ、きついわよ。二対二でいいんじゃない?相手も・・若い子で始めてくる子だから・・一人だと緊張しちゃうわ。」
「そうかしら・・まぁ、貴女が言うなら・・いいけれど。」
その言葉に・・カガリとラクスは顔を見合わせて喜んでいた。
これは・・花魁としての、初めての・・・・訓練。
本当で在れば・・一度目の客は、会話何てしない。
二度目に・・少しだけ、話して・・三度目からが本番だった。
でも・・・・・一度目と、二度目・・その時に、花魁の目に適わなければ、三度目はない。
つまり、相当貢ぐか・・・相手との相性が良くなければ三度目は有り得ないのだ。
けど・・今日は訓練、つまりは・・・・三度目の状態。
---------ユウナのような・・・奴だったらどうしようか。
そんなことを・・・ラクスと二人で考えていた。
でも・・まだ、四人で良かったと思う。
アスラン以外の誰かと・・・・部屋で二りっきりなんて、本当に・・申し訳ない。
けれど・・これをしなければ、年季が明けるのは・・相当、遅れる。
--------アスランとの・・結婚だって、遅れてしまう。
それは駄目だ。
これ以上・・・遅らせちゃ。
・・・・待っていてもらえる内に・・。
顔を・・真っ白にするべきか・・ラクスと話し合う。
結果・・別に、本番じゃないからいいかと、話は落ち着いていた。
そうだ、相手にも・・・こちらが相手をする気がないと見せてやりたい。
だって・・私の相手は・・・・アスランだけだから。
「簾でも垂らして逢いましょうか?---いいですわよね、それくらい。」
「そうだな。」
正直・・二人で、いかに相手と接触を持たないようにするかを談議しあっていた。
もう・・ユウナやアズラエルのような者とは・・関わりは持たないぞッ!!
そう・・・・・・心に決めて。
「へー・・本当に、華やかな所なんですね〜」
「だろ?」
「・・・・・。」
五月蝿い、がやがやと・・・。
提灯が至る所に照らされている街は、夜だというのにやけに明るい。
どの店からも・・似たような楽器の音、男と女の・・笑い声がする。
カガリと・・アスランの、間にあったような・・・・静かさがない。
そう・・思っていると、その中央に・・・他の店より少し大きくそびえ立つ建物を見る。
その周りだけは・・静かで、人通りは少ない。
「ここ、結構遊廓の中でもトップクラス・・っていうか、トップの店だから・・凡人は近寄れないらしい。」
「・・僕・・結構凡人なんだけど・・。」
「大天使の副長の、ギルっているだろ?あの人が此処の女に惚れたらしくて・・・結構この店自体に金を貢いでるらしい。
だから・・大天使は、破格の値段で入れるって訳。」
じゃなかったら俺だってキツイと笑うムウに・・キラは少しホッとする。
お金持ちだけが来るのなら・・カガリ達に危害が加わる可能性も低いはず・・・。
それにしても・・今日のラクスとカガリは・・少し楽しみかもっ。
そう・・胸を膨らませて、キラは店に入る。
アスランは・・・逆に暗い面もちで店に入った。