いつかは前倒しで来ることが多い。


第十六輪+運命



歯車が・・・・壊れるのと、酷く似ている感覚だと、思う。


----------止まってしまうような気がしていた。


「・・おいおい・・・・アスラン、この頃ホント、大丈夫か?」
「・・どう・・で、しょう?」

そう・・ムウと・・キラはアスランを見る。
いや・・・別に仕事に当たり障りがあったわけではない。
稽古を・・サボっているわけでも・・ない、だが・・・・・。

「あいつ・・この頃・・・・・顔、動いてないだろ?」

「・・・・。」

何をやっていても・・何にも興味がないように見える。
からくり人形のようなのだ。自分の意志で・・・・動いているようには見えない。
これにはもう・・・仕事に何か起こらなければいい主義の・・イザークさえ心配しているのだ。

もう・・そんな状態が二週間も続いている。

「はぁ・・・・・仕方ないねぇ・・、息抜き・・にでも、無理に連れて行くか。」
「?」
「キラもな。」
「はい?!」
「ほら・・この間言ったこと、忘れたのか?」

「え・・・あぁ!!」

ぱんっと手を合わせて・・・・キラは思う。
アスランも・・お酒とか飲めば少しは笑ってくれるかもしれない。
それに・・なんてったて、ラクスと・・カガリが相手ならば・・・・・・特にカガリとアスランは・・性格も合いそうだし・・。

----そう、思っていた。









駄目だった。

何をしても・・・・・・・・・・・。




つまらない。




あの日・・あれから、カガリに・・・・帰り際言われた。

"・・・・辛いようなら・・一回、別れよう"

強要する・・言葉じゃない。
分かってる・・・・・・けど・・・・・・。







君の口から・・・別れるなんて・・・・・・。

怒りすら通り過ぎて・・ただ、虚しかった。
それからだ。


---------------・・君がいない世の中なんて・・本当に興味はない。


つまらないだけだ。







--------死んでも・・いい・・かも。




いっそ・・死のうか。そうすれば・・葬式ぐらい、来てくれるかもしれない。

俺のために・・泣いてくれるかもしれない。



「・・アスラン・・・・?」
「なんだ?」

伏目のまま・・・キラを見るとキラは困ったように笑う。
何やってるんだろう・・こんな、情けないの・・カガリにはとてもじゃないけど見せられない。
そう思ったのは・・今のキラの笑い方が・・カガリに少し、似ていたからだった。

「ムウさんが心配してね、今日の夜・・出かけようって。」
「遊廓ならお断りだ。」
「社交辞令、それに人付き合いだよ。」
「・・・・・。」

なんだって・・いい、もう。

その態度を・・・・キラはOKと取ったようで・・・アスランの前から去っていった。


「・・・カガリ」


せめて・・家ぐらい、教えてくれても良かったのに。









「かがり・・元気・・ない。すてらの・・咳の・せい?」
困ったように・・訪ねてくるステラに、カガリは笑って頭を撫でてやる。
ステラのせいじゃない。

----私自身・・頑張らなくちゃ、いけない。

アスランと・・・・一緒にいるために。

「カガリ・・どうしたら、元気出る?ステラ、いいこいいこしてあげる。」

いつも・・カガリがステラの頭を撫でてやるように、ステラはカガリの頭を撫でてくれた。
やっぱり、ステラが大好きだと思う。・・・ここから、出されてほしくないと思う。

---------こんなにも・・優しくて、無垢だから。

「ありがとう、ステラ。元気出たぞ。」
「ほんとう?ステラ・・頑張った?いいこいいこして?」
「ああ、ステラはいい子だ。」

カガリより明るい金髪を撫で・・・ステラは猫のように微笑んでくれる。
そのまま頬をすり寄せて、カガリに抱きついてきた。

「カガリ・・元気ないの、すてらいや・・。かがり元気、すてらも・・元気。みんな・・げんきなのがいい。」

「うん、ステラ・・元気か?」

「うんッ!かがりがいるから・・すごく、元気なのッ!!ステラ、あったかいの!カガリといると・・・」


------アスランも・・そんなこと、言ってくれていた。

自覚はない・・が。


「よかった、ステラが元気だと・・私も嬉しい。」


そうして・・ギュッと抱きしめていると、安心したのか・・ステラは眠りについてしまう。

本当に・・子猫のようだと、カガリは思い・・・・布団に入れてやった。










「今日は・・一対一・・だけど、いけるわね?二人とも。」

タリアに・・そう、話を切り出されては、それはもう変わらない事実なのだろうとカガリは思う。
だが・・タリアの言葉に、声を上げたのはマリューだった。
「いきなり・・じゃ、きついわよ。二対二でいいんじゃない?相手も・・若い子で始めてくる子だから・・一人だと緊張しちゃうわ。」
「そうかしら・・まぁ、貴女が言うなら・・いいけれど。」

その言葉に・・カガリとラクスは顔を見合わせて喜んでいた。

これは・・花魁としての、初めての・・・・訓練。

本当で在れば・・一度目の客は、会話何てしない。
二度目に・・少しだけ、話して・・三度目からが本番だった。

でも・・・・・一度目と、二度目・・その時に、花魁の目に適わなければ、三度目はない。

つまり、相当貢ぐか・・・相手との相性が良くなければ三度目は有り得ないのだ。
けど・・今日は訓練、つまりは・・・・三度目の状態。

---------ユウナのような・・・奴だったらどうしようか。

そんなことを・・・ラクスと二人で考えていた。


でも・・まだ、四人で良かったと思う。

アスラン以外の誰かと・・・・部屋で二りっきりなんて、本当に・・申し訳ない。
けれど・・これをしなければ、年季が明けるのは・・相当、遅れる。

--------アスランとの・・結婚だって、遅れてしまう。

それは駄目だ。
これ以上・・・遅らせちゃ。

・・・・待っていてもらえる内に・・。












顔を・・真っ白にするべきか・・ラクスと話し合う。
結果・・別に、本番じゃないからいいかと、話は落ち着いていた。

そうだ、相手にも・・・こちらが相手をする気がないと見せてやりたい。
だって・・私の相手は・・・・アスランだけだから。

「簾でも垂らして逢いましょうか?---いいですわよね、それくらい。」
「そうだな。」
正直・・二人で、いかに相手と接触を持たないようにするかを談議しあっていた。
もう・・ユウナやアズラエルのような者とは・・関わりは持たないぞッ!!

そう・・・・・・心に決めて。









「へー・・本当に、華やかな所なんですね〜」
「だろ?」
「・・・・・。」

五月蝿い、がやがやと・・・。
提灯が至る所に照らされている街は、夜だというのにやけに明るい。
どの店からも・・似たような楽器の音、男と女の・・笑い声がする。

カガリと・・アスランの、間にあったような・・・・静かさがない。

そう・・思っていると、その中央に・・・他の店より少し大きくそびえ立つ建物を見る。
その周りだけは・・静かで、人通りは少ない。

「ここ、結構遊廓の中でもトップクラス・・っていうか、トップの店だから・・凡人は近寄れないらしい。」
「・・僕・・結構凡人なんだけど・・。」

「大天使の副長の、ギルっているだろ?あの人が此処の女に惚れたらしくて・・・結構この店自体に金を貢いでるらしい。
だから・・大天使は、破格の値段で入れるって訳。」

じゃなかったら俺だってキツイと笑うムウに・・キラは少しホッとする。

お金持ちだけが来るのなら・・カガリ達に危害が加わる可能性も低いはず・・・。
それにしても・・今日のラクスとカガリは・・少し楽しみかもっ。
そう・・胸を膨らませて、キラは店に入る。


アスランは・・・逆に暗い面もちで店に入った。































































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あとがき
アスランやる気0男です。
2006/06/21