「メイリン・・あのさ、久々に出かけないか?」
「え・・えっと・・・ステラも病み上がりだし・・私は----・・。」
「いいじゃないか、な?行こう?」
「・・・・・あの・・その・・。」
「?」
お茶菓子を出して・・メイリンとカガリは向かい合っていた。
ラクスには・・そのアスランやメイリンの姉のことを話して・・ステラと遊んで貰っている。
「・・でも・・流石に、もう・・何年も出てないだろ?出ても・・遊廓の中だけだし・・。」
「・・外に・・出るの、こわくって・・。」
手を合わせて、不安そうにする・・メイリンに、カガリはどことなく訳を聞く。
本当ならば・・人のプライベートに立ち入ることはしたくないのだが、姉が・・会いに来てくれると、そんな時すら・・・外に出られないのはちょっと哀しい。
---まだ・・姉のことは伝えていないけど・・・・・。
「--実は・・同じ街に、お姉ちゃんが・・・・住んでて・・見ちゃって・・それ以来、逢うんじゃないかって・・恐くて・・。」
「・・・?逢いたく・・ない、のか?・・・親族だろ・?」
その・・質問に、メイリンはキュッと湯飲みを包む力を強めていた。
そして・・・哀しそうな、声を出す。
「・・こんな・・所に、いるなんて----・・言えなくて・・、お姉ちゃんは・・普通に育ってるのに・・私といたら、色町の女と・・誤解、されちゃうんじゃないかって・・・思ったんです。」
それに・・・・・・
「・・・お姉ちゃんが・・そんな・・私を見て、・・同情したり・・嫌悪を感じたり・・・・されるのも、嫌で・・。」
もう・・一年も前、メイリンは・・・・ルナを、見つけていた。
男の子と・・一緒に歩く、相変わらず元気そうな・・・お姉ちゃん。
----------・・私は・・・・?
「馬鹿・・ですよね、お姉ちゃんと・・会えたら、嬉しい癖に・・こうやって・・・。」
「・・でも・・私も・・分かるぞ、その気持ち。」
キラは・・・あっさり認めて、慰めてくれたけど。
でも・・やっぱり姉妹だと・・・・・他にも気を遣う所が・・色々あるのかもしれいない。
「・・でも・・お姉ちゃんだって・・・心配してるぞ?メイリンのこと・・・・・。」
「・・死んでると・・思ってます。」
「でも・・哀しいじゃないか、死んでる・・なんて、もう・・二度と・・逢えないなんて・・。」
その言葉に・・メイリンは少し・・考えて、口に出す。
「でも・・今どこにいるか・・」
「私が、知ってる!!」
待っていたと・・カガリは声を上げて、メイリンを店から引きずり出していた。
「行く・・ん、ですか!?アスランさんがッ!!」
「・・何だ・・その、反応は・・・。」
ルナの中で・・・アスランは、絶対に女の人なんて相手にしないと・・思っていた。
確かに・・この間逢った金髪の子は・・それなりに可愛かったし・・・。
「・・恋・・人、で・・すか?」
「・・・模索されるのは・・・好きじゃないんだが・・・。」
だって、だって、だって!!!!
「意外です!!!」
「悪かったな。」
そうして・・アスランさんの半歩後ろを・・追いかけるような形で・・ルナは付いていく。
---ちょっとは・・女の子にあわせてよね。
そんなことも思ったが・・そんな気遣いが出来るような器用な人でもないと・・ルナは溜息をつき、橋に着いた。
妹の・・メイリンと、別れて・・・・二年半。
きっと・・きっと、何処かで生きている。それだけだった。特に・・探そうとも、しなかった。
----------死を・・知ったときが、恐かったから。
ルナは・・たまたま、大天使の・・局長、ウズミ・ナラ・アスハに拾われて・・・雇って貰えている。
暫く・・その、橋で待っていると・・・・・・この間の金髪のこと・・・・高い位置で二本に結わえた・・・
「・・っ!メイリン!!!」
「お・・おねえちゃん・・っ・・!?」
思わず・・・駆けだして、抱きしめていた。
「・・・来てくれたんだな・・・アスラン・・。」
ほんのりと・・頬を染めた、愛しい人を前に・・・アスランはドクンと心臓がなるのが分かる。
昔と変わらない・・。やっぱり・・カガリを見ると・・・・・・愛しさで、胸がちぎれそうになる。
そう・・感じて、手を伸ばしていた。
「・・・っ・・アスラン?」
閉じこめたい。
俺の・・腕から、一歩だって・・外に出なくていい。
--------俺だけの・・。
「いたい・・っ・・。」
そう・・カガリが呻いて・・・アスランは手を離した。
それと一緒に・・紫色の・・髪の男を思い出す。
「あいつとは・・別れた、のか?」
「だーかーらッ!!付き合ってないッ・・!!そう・・見えちゃったのは・・仕方ないと思うけど・・・。」
気まずそうに・・目を合わせて・・・・・・次は、カガリから・・ギュッと抱きしめてくれた。
「私は・・アスランだけだって・・・・・。ずっと・・。」
「許してないぞ、---------それに・・俺は、君の思ってるほど・・優しくない。」
少なくとも・・・・誰か・・他の男と・・歩くような、そんな事。
一二度なら・・まだしも・・・・・・。
「うん・・だから・・・・アスランに、聞いてほしいんだ。・・・まだまだ・・言えないことは・・残るけど・・。」
その・・言葉に、アスランはチラッと・・ルナを見て、どうやらあっちはあっちで・・大変そうだから、そっとして置いてやることにする。
「メイリンっ・・私、アスランと・・話してから行くから・・先帰ってくれ」
そう言ってカガリとアスランは歩き出した。
「静かに・・話がしたいんだが、お前の家じゃ駄目か?」
「駄目だ。怒って・・何をするか・・・・・・・・分からないから。」
「?」
「・・・独占欲が強いんだ、俺は・・・。」
こういうところが・・・・凄く優しいと、カガリは感じる。
本当なら・・怒るところだ、浮気・・の疑いだって・・・・・・。
「じゃあ・・・寺子屋でいいか。」
そうして・・石段を登り詰め・・・・その縁側に、アスランとカガリは腰を下ろした。
「--また・・俺が不快になる・・話か?」
「・・・・・そう・・かも、しれない。」
家に・・しなくて良かった。---そう・・心から感じる。
でも今度こそ、嘘を付かずに・・・・話してくれようとしているカガリは・・やっぱり、一番だと言ってくれる心に・・・・嘘が無いような気がして・・。
そんなカガリを・・言葉次第では・・・・傷つけてしまいそうになる、自分が恐かった。
「色々・・あって、これからも・・時々、他の男の人と・・歩かなきゃならないことが・・・あると思う。」
-------・・浮気癖・・・・・・・でも、出来たのだろうか。
そう・・考えた自分と、
信用しているからこそ・・・・・、こうやって、これからあることを・・言ってくれている。
そう考える自分がいた。
「で・・さ、結婚の・・・事・・なんだが・・・。」
「・・・嫌・・・・・・・なの、か?」
「嬉しいけど・・私・・・・まだ、どうしても・・離れちゃいけない・・から。」
「?」
「私がいないと・・駄目なんだ。倒れちゃって・・喘息、起こして・・・・・傍にいないと・・死んじゃいそうで・・守って・・やりたいから・・。」
「・・・え?」
「だから・・治るまでは・・・・・・一緒に・・なれ・・ない。」
カガリの・・想いが伝わるはずなんて、
無かった。
「・・・・・何だ・・それ?」
「え?」
俺以外の奴なんて・・・・
------------------守らなくて良いよ。
「アスラン・・・?」
俺だって・・苦しいのに。
---カガリがいないと・・こんなにも、駄目なのに。
君はその相手を守って・・・・・俺を、後に置くのか。
命が大切だと・・・言う、その正論は分かる。けど・・でも・・・・・・。
「アスランっ・・・・--私だって・・・・・・。」
「・・・っ・・。」
独り占めしたい。
カガリの・・細い腕が背中へと回されて・・アスランはカガリの胸の中に蹲っていた。
命が・・掛かっているんじゃ、君は・・どうしたって、その相手の方に行くんだろ?
俺なんて・・構って、くれないんだろ。
-----暗いところに置いていくんだ。
そうやって。
なら・・・。
俺は・・・・・どうしたらいいんだ?
まるで・・・太陽のないところに置かされた、雑草のような気分だ。
生きてゆけない。
--------死んでしまう。
「言って置くが・・女の子だぞ?」
「なんだって・・一緒だよ。」
俺が・・二の次にされるんだから。
男だって・・女だって、関係ない。カガリは・・・俺のモノだ。
俺が・・・愛して、俺を・・愛してくれる。
それだけでいい、そのはずなのに。
「・・・私は・・アスランが好きだ。」
「知ってる。」
「愛してるし・・結婚だって・・・・したい。」
「・・うん。」
「けど・・・・・・・私は・・アスランに・・釣り合わない。」
「そんなこと無い。」
釣り合わないなんて・・まさかだ。むしろ・・・・・・・アスランの方が、絶対に釣り合わない。
カガリのように・・明るくない。第一・・・・・・独占欲が強すぎる。
壊したい、閉じこめたいなど・・考えるのは日常茶飯事で、殺したいとだって・・思う。
「だって・・アスラン、辛いだろ?今・・。」
何も・・・容姿や歳だけを・・カガリは言っているわけではなかった。
もっともっと・・・・状況的にも。
「私は・・沢山、アスランから・・優しさとか・・貰ってるのに・・・・・返せない、むしろ・・仇で返してる。」
「・・それは・・っ」
「・・・・・だから・・アスラン。-------私が返せるように・・なるまで・・・・・待っていて・・くれないか?」
「・・・・・?」
「今は・・全然・・返せない。」
アスランが望むように、結婚してやることも・・ずっと傍に居続けることも。
出来ないから。
「でもなっ・・本当に・・愛してるんだっ・・それだけは・・・・・分かって、ほしくて・・信じてほしい。」
アスランの首元にすり寄った・・カガリは必死に声を上げている。
そんな・・可愛い・・・・仕草。
思わず抱きしめていた。髪に・・沢山、キスをして・・・・唇もあわせてしまう。
これはもう・・何かの中毒症状のようだった。
カガリが・・いなくなると、気が・・・変になってしまう。
「・・・待ってる・・よ、俺は。-----------やっぱり・・嬉しくはない・・けど。」
「・・・・頑張って・・早く・・・・傍にいてやれるように・・私も努力するから・・・。」
泣きそうな声の・・・理由を、アスランは分からなかった。
けど・・・。
「カガリが・・・・俺だけを、見続けてくれるなら・・・・・・・・なんだっていい。」
苛々は・・する。
怒りたく。
殺したくも・・・・なる、けど。
それだって・・・。
「カガリが・・いて、くれるだけで・・・・・・」
それが、最低条件なのだから。
だから・・。
俺を・・・想う事を、止めなければ・・・それでいい。