想いだけで変われるような状況なんてないんじゃないか・・?


第十四輪+逆接



ひっそりと・・・カガリは、明け方の遊廓を後にした。

目指すは・・・・・大天使。

昨日遅くまで文を書いたせいか・・少し目が腫れているが気にしない。

---逢う訳じゃない。

逢う・・許可が、ほしいのだ。

怒って・・嫌いに・・なっているなら・・・・。


---哀しい・・けど・・・・・・。

お別れになるのだろう。

--------・・そうすれば・・逆に、何も感じない・・人形のようになれる。

男の客に・・ただ、媚びを売り、金次第では床に入る。
哀しいけど・・楽な、道なのだ。

けど・・まだ、残していたい。

・・ときめいて、恋をする・・・・アスランに愛し愛される、潤った心でいたい。

なにより・・・・・


愛していたい


-------アスランを。


四十分ほど・・小走りで駆けていけば、塀になった中に・・立派な建物が見える。
正門には・・・・堂々と"大天使"の文字があった。

ここで・・アスランが、暮らしているのかな?
そう思うと・・入りたくて、でも・・当然扉は閉まっているし・・中には門番も、いるだろう。

---アスランにこの手紙が・・届くかも・・心配だ。

自分で言うのもいやなのだが・・・・アスランに釣り合っていると感じたことは一度もない。
歳も・・容姿も、ずっとずっと・・自分より上で・・・・・・。
きっとカガリが・・こんな手紙頼んだら、妹かと勘違いされる。
・・そうじゃないとしたら・・アスランのファンか何かだと思われるだろう。

そう考えて・・カガリは正門を後にする。裏門や・・抜け道があるはずだ。
そうして・・城壁のような場所を回っていると、小さな・・ちょうど子供が通るような門を発見する。
キィッと・・小さく音を立てて、カガリはスルリとその中に入った。

だが・・・・。

「あれ?今・・何か・・・・・。」
「ッ・・!!」

カガリと・・同じくらいの女の子の声。
出て直ぐの・・草むらに隠れたは良いものの動いたら・・・音が出るし・・このままでも・・・・・・見つかってしまう。
「誰?シン?また朝ご飯盗み食いに来たの?」
そして・・ガッと草むらを外され・・・・叫ぼうとしたその子の口を、カガリは押さえていた。

「わ・・悪いッ!!驚かせて・・・・ッ・・その、怪しい奴じゃないっ!!ただ・・ちょっと、知り合いが・・中にいて・・」

「んぅ・・ぐ、はまひへよッ!!!」

口を押さえられて・・その子はもぐもぐと喋り・・カガリは、その・・容姿と、声に・・目を開く。
「・・・メイリン?」
「・・・え?」

似ている。髪の色も・・・顔の・・作りも。
手を離して・・カガリは見入るように・・その子を見ていた。

「・・ごめんっ・・口・・塞いで・・。」
「いいですけど・・貴女・・・。」

その子も・・目を、パチパチとさせ・・カガリを見る。
-----誰かに似ている。
いや・・今は、そんなことより・・・。

「メイリン・・・・って・・・・知り合い・・なんですか?貴女の。」

「ああ・・仕事仲間で・・」

「いくつです?」

「十・・二、かな。」

「・・・・・。」

生きて・・いた、の・・・・?
まさか・・----っ・・!!


「・・・その子・・私の妹です!!逢わせてくださいっ・・そしたら、貴女がここに入ってきたこと、誰にも言いませんから・・っ」


「え?メイリンの・・?メイリン・・そんなこと、一言も言ってなかったけどなぁ・・。」

でも・・似てる、雰囲気とか・・・。
そう思ってカガリは了承することにした。

「全然構わないんだが・・メイリン、外に出るのが好きじゃないみたいで・・、何とか連れ出してはみる。」
「ほんとですかっ!?約束ですよ!!」
「ああ、その変わり・・と、言っては何なんだが・・これ、アスラン・ザラに・・渡して貰えるか?」

スッと・・胸から出した文をその子に見せる。
だが・・・・その子は少し眉をひそめてしまった。

「いいですけど・・アスランさん、女の子の文は捨てちゃう主義みたいですけど・・それでもいいなら・・。」

やっぱり・・貰うんだよな、こういうの。
アスランは・・一言も言ってなかったけど、当然持てるんだよな。

-----当たり前か、あんなに格好良くて優しいんだから。

「ああ・・多分・・名前見てくれれば、、、捨てたりはしないと思うんだが・・。」
捨てられたら・・どうしようか・・。
ううん・・そこまで・・・・・嫌われてはないはずだ。

「メイリンとは・・そうだな、文にあるんだが・・アスランとの待ち合わせ場所、同じ時に・・メイリンも・・そこに連れて行く。 アスランと一緒に・・来てくれ、アスランが来ないようなら・・・勝手に文を見ても構わない。」
日時は・・・・・明後日。

「じゃあ・・・私も、そこにいきます。」


メイリンが・・生きてるなんて、信じがたかった。
けど・・。
姉として・・・嬉しくて、ルナは心を弾ませていた。











渡せたっ・・!!

そう・・カガリの胸が弾む。
良かった・・あの子なら・・メイリンの姉ならば・・絶対・・・アスランには届くだろう。

----------・・来て・・くれるだろうか?アスランは・・・。

そう・・思ったが・・あとは、アスラン次第だと思う。
アスランは・・・・嫌いだとは言っていなかった。だから・・・---逢ってはくれる。
そう・・信じていたかった。






「・・・・・え?」

「金髪の・・女の子からです。」

「・・ッ・・!!」

ルナの差し出した文・・・アスランは急いで取り・・その割に、慎重に解いていた。
その様子に・・ルナは深く溜息をついて、その場を後にする。




++++++++++

アスランへ

この間のこと・・・・アスランにちゃんと言いたくて・・書いたんだ。
アスランは・・愛してないって・・言うけど、本当に・・私は、アスランのこと好きで・・。
一番だ、今も昔も・・これからだって。
だから・・怒らないでほしいんだ。
・・嫌いにならないで・・・ほしい。
事情は・・・色々、あるけど・・。
何があっても、私が好きで・・愛してるのは、アスランだけだから。
今度のアスランの休みの日・・・・橋で会おう?
いやだったら・・・・こなくても・・いいけど・・・。
勝手な文でゴメンな。

カガリより

+++++++++







嫌なわけ・・ない。---けど・・・・・・。

逢って・・傷つけるのと、逢わないで・・傷つけるの・・・

どっちが・・酷いだろうか?


逢って・・家にでも・・あげたら・・・。

柱に・・くくりつけてしまいそうな気がする。

二度と離れられないように。


そう・・暗い、考えに頭を取られているときだった。


「あ、私も行きますから。」
「は?」

ルナの・・・突拍子もない一言で・・少し考えが変わる。
ルナが一緒ならば・・家に上げる心配もない、傷つける心配も・・ぐっと少なくなるじゃないか。







「カガリさんッ!!何処行ってたんですか・・!!大変です・・ステラが・・・熱を・・。」

「なんだって・・!!」

春が近いとはいえ・・まだまだ冬のこの季節、ステラは・・また熱を出してしまったらしい。
急いで・・部屋に戻り、ステラを診る。

「・・大丈夫か・・?ステラ。」

「・・・・カガリ・・カガリぃ・・。」

苦しく・・甘えるような声、小さくて・・気管も音をヒューヒューと立てていた。
喘息・・だ、苦しいだろうに・・・。
お粥を持ってきたメイリンと、医者を呼んできてくれたラクス・・・・。その三人で、ステラの看病に当たっていた。

「・・ステラ・・ほら、あーん。」

「・・。」

ぱくっと・・レンゲを銜え・・熱そうに目をつむるステラに、カガリは何度もお粥に息を掛けて冷ましてやってから食べさせていた。
食べ終われば・・・切なそうにカガリを見て・・いつの間にか寝入ってしまう。

「・・やっと・・寝ましたね・・よかった・・大きな喘息こなくって・・。」
「カガリ・・つかれたでしょう?後は私達でやっておきますから・・。」
「え・・でも。」
「タリアさんと、マリューさんに・・このことをお伝えしてきて下さいな、それだけでいいですから。」

いつも、いつも・・・ステラは熱を出すとカガリがいないと・・誰も寄りつけなくなってしまう。
カガリ自身は・・見たことはないが、喘息なのに暴れ出すらしい。
大抵・・八つには、喘息は治るのに・・今も引きずっていると言うことは・・もう、一生の病気なのかもしれない。
二階に上がり・・カガリは、マリューとタリアの部屋に入った。

「ステラが・・また、熱だしたんだ。医者代と・・薬代、使わせて貰った。」

そう言うと・・タリアは少し・・・・・困った顔をしてみせる。

「・・いつまでも・・続くようなら、あの子・・本当に客前にもでれないままね。」
「タリア・・。」

マリューさんも・・少し切なげに瞼を下ろし、カガリはその二人を見ていた。
たしかに・・ステラは、喘息持ちだけど・・・・でも、毎日って・・訳じゃない、一ヶ月に・・二回程度、大きいのは・・三ヶ月ごとぐらいだし・・。

「それに・・カガリでなければ、看病できないのも・・厄介な点なのよ。」
「それって・・どういう・・ことだ?」

二人の言っていることが・・理解できず、カガリは目をパチパチとさせる。
アイコンタクトが・・終わった後、マリューは静かに声を出した。

「ステラは・・カガリが・・此処からいなくなったら・・もしくはカガリの・・仕事の邪魔になるようなら・・・・・出さざるを得ない・・わ。」

「-----・・ッ・・そんな!!!!」

「だって・・そうでしょう?・・此処は孤児院じゃないの、店、なのよ?商売にならない子を・・置いてはおけないわ。」

「・・でも、それじゃ・・・っ---あんまりだ!!」

「誰か・・いい人が、ステラを買って・・ステラもその人に懐けば・・・・いいのだけれど・・。」

ぽろっと・・言った言葉に、カガリは・・・それこそ、運命の出会いだ・・と、思った。
そして・・パタンと、障子を閉める。
階段を下っていると、不意に・・・マリューの言葉を思い出す。


-----------カガリが・・此処からいなくなったら・・もしくはカガリの・・仕事の邪魔になるようなら・・・・・出さざるを得ない・・わ。


「・・・・・--------・・そっか・・そう・・だよな。」




--------あと・・二年もすれば、俺は大天使で・・・幹事食に就ける。だから・・そしうしたら・・"結婚しよう"。




・・・やっぱり・・・・・・無理・・・だ、


ごめん。




-----------アスラン。































































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あとがき
あっれー・・シリアス?!
2006/06/21