出ていけなんて・・本心じゃない、傷つけるのが恐いんだ。


第十三輪+理由



なんで・・・あんな事、言ってしまったんだろう。

そう・・思ったのは、カガリと・・・・離れてから、三日ぐらい経ってからだった。


--あれから・・・一度も、南町で・・カガリを見ていない。

別れたのだろうか?あの男と・・・・。

-----やっぱり・・・・自分を・・アスランを、好きでいてくれていたのだろうか?

・・・・・・・違う。


カガリは・・・・好きじゃない奴と、一緒にいたりしない。











「・・なーんか、俺、アスランの観察日記付けたくなってきましたよ、この頃。」

「今度こそ・・女に振られたよな、あいつ。」

アレはもう確定だと・・半ば哀れんだ目を向けるディアッカと・・・、呆然と物思いに耽る、アスランを眺めて・・シンは言っていた。
やっと・・梅が咲く季節、そして・・桜、・・・春が来るというのに。
「まっ、俺はちゃんといい子見つけたしっ!!今アタック中だけどなっ!!本物の春には間に合わせる!」
「・・へぇ〜本物の春にはもう散ってたりして。」
そう・・言った相手に、喰い掛かるディアッカを・・たまたま通りかかったニコルは必死で止めていた。


----桜か。


母の・・曲、カガリの・・・・・曲。

愛して病まない曲だった。











アスランに・・・別れを告げられたことを、ひっそりと伝えたのは・・ラクスだけだった。

「・・・そう・・・ですの・・。」

「・・うん。」

それだけだった。

それだけで・・ラクスには、伝わる気がしたのだ。

ずっと・・一緒に育ってきたから、ここで生き続ける苦しみも・・その中に隠れる、楽しさも・・・、辛さも。
全部全部・・一緒に見てきた、唯一の人だったから。






十の時だ。

初めて・・・店で・・その、性行為の場所を・・目撃して・・・。
カガリも、ラクスも・・絶句していた。
それまでは・・ただ、ただ、お酒のお酌をする職業だと思っていたから・・。

-------------そして逃げ出した。



ラクスを・・置いて。











恐くなったのだ、あの・・店に、居続けることが。

いつか自分も・・ああやって、誰かに身体を犯される日が・・来ると、覚悟することが・・・・恐くて・・。


-----そんな覚悟・・いらない。

でも・・走っている最中・・ラクスに・・申し訳なくなってきて・・・・・・。
それに・・もう、帰れる家も、迎えてくれる人も・・・・・いないんだ。

-------それが・・また、恐かった。


---泣いていた。





・・・・・そして・・出会う。

最初は驚いた、慰めたと思ったら・・・泣き出して・・カガリがおどおどしてしまった。
家に上がれば・・・母親が、死んだという。綺麗な人だった、まだ・・若い。


そして漠然と・・・"仲間"だと思ったのだ。

-----独りぼっちの・・仲間。

言ってみれば・・ただの、傷の舐め合い。


でも・・・・・。


いつだったか、アスランは・・私に言ってくれた。



「・・・・俺・・カガリがいて・・よかった。・・・・ありがとう。」
「いや・・そんなの、おあいこだって・・・。私も・・。」

「違うんだ・・本当に・・・、君のような人・・今まで、周りにいなかったから・・・その・・。」

「?」

「太陽みたいだと・・思う、カガリがいれば・・・明るくなるような、気がする。」

「・・・?そうか?」


「ああ、俺も・・そう思う。きっと・・・今まで君の周りにいた人・・みんな・・そう、思ってると・・思うけど・・・。」



そう言われて・・・頭に、浮かんだのは・・・・ラクスだった。
ラクスは今頃・・どうしているのだろうか?

「・・君が・・きっと、傍から・・いなくなったら・・・・・・淋しいし、また・・暗いところに・・戻りそうな気がする。」

今思えば、アスランはこの時私に告白をしてくれようとしていたのだと思う。でも・・私は・・・。
アスランが・・言うのが、本当で在れば・・・。



-------ラクスは?



暗いところに・・戻って、しまうのではないだろうか?
私のせいで・・・。
私だけ・・こんな、アスランと・・一緒に幸せに暮らしていて・・・。

ラクス・・・は・・・あの中に・・一人だ。



まだ・・あの頃は、ステラもメイリンもいない。--本当に・・一人。




------------------・・戻らなくては・・・・いけない・・。

「カガリ・・・?」

「・・いや・・なんでもない。」


それが・・あの、店に戻った、最大の・・・・理由だった。

それぐらい・・カガリは・・ラクスが大切で、ラクスも・・カガリが大切で・・・・・・・。



そうやって一緒に育ってきた。













「・・・頑張りましょうね、カガリ」

「うん・・。」



アスランとは・・・・どうしよう。

出て行け・・と言われた・・、行ったら・・・怒る、かな?
でも・・大天使の場所は・・分かるし・・・・。

そう・・考えていると、マリューさんに呼ばれる。どうやら・・お酌のようだ。

「今日から・・二人とも、宴デビューね。」

頑張って。

そう・・優しく言われて、カガリも・・ラクスも頷いた。











「どうしたのさ・・アスラン、みんな心配してるよ?」

「・・キラ・・・・。」

夕食を・・サボった、アスランにキラはわざわざ持ってきてくれたようだった。
コトンと・・音を立てて、出されて・・アスランは腹が減っていたことに気が付く。

「・・ディアッカ達がね、恋の病だって・・・言いふらしてたけど・・・、この間・・言ってた子?」
「・・----ああ・・・。」

ポツリと・・親友のキラに、本音を漏らしていた。
結婚したいほど・・好きな子が、浮気をしていた・・・と。

「・・・浮気、するような・・子だったの?」

「・・・・いや・・。」

「じゃあ・・やっぱり、何かの勘違いとか・・・それに・・。」

キラの頭に浮かんだのは・・ラクスと、カガリで・・・・。

言っていた。好きでもない人と・・歩かなければならない、恋人のように・・振る舞わなければならない・・。
もしかしたら・・、アスランの恋人は・・色町の子なのかもしれないと・・漠然と思った。

「・・色々・・事情があったのかもよ?その男と・・どうしても、一緒にいなきゃいけない・・とか。」
「言ってくれればいいじゃないか・・、なんで・・隠してまで・・。」
「だって・・アスラン、自分の彼女が訳ありで・・"他の男と歩かなきゃならないから、許して"って・・言ってきたら、どう思うのさ?」
「・・そりゃ・・。」


嫌だけど・・。


「だから・・隠してたんじゃ、ないのかな・・?その子。」
「・・・・。」

黙って・・考え込んでいる、親友を後目に・・・・キラは立ち上がっていた。
--僕だって・・ラクスが、あんな金髪マッシュルームの男と・・歩くの、耐えられないもん。
でも・・・だからって、ラクスに・・・負い目を感じてほしくはない。
ラクスは何も悪くない。
時々・・申し訳なさそうに、瞳を合わせてくれるのが・・逆に、申し訳なくも思う。

「・・こんど、逢ったら・・・・聞けると良いね。」

「・・・ああ・・ありがとう、キラ。」

今度・・・・。
それはもう・・運任せかもしれない。


----------・・馬鹿だ、俺は。

また・・こんなに、枯渇してる。

許せない・・それは・・・・・変わらないのに。許せなくても・・・。

傍にだけは、いて欲しいなんて。

殺したいくらい・・・・・閉じこめたい。

そうまでしても・・・・傍にいたいんだ。









そしてきっと・・




君を傷つける。




それが・・恐いくらいに分かるから・・・・。









だから・・、君を解放したのに。































































+++++
あとがき
独占欲・色欲を我慢するアスラン話。
次からすこーし周りも動いたり・・する、かも?
2006/06/20