なんで・・・あんな事、言ってしまったんだろう。
そう・・思ったのは、カガリと・・・・離れてから、三日ぐらい経ってからだった。
--あれから・・・一度も、南町で・・カガリを見ていない。
別れたのだろうか?あの男と・・・・。
-----やっぱり・・・・自分を・・アスランを、好きでいてくれていたのだろうか?
・・・・・・・違う。
カガリは・・・・好きじゃない奴と、一緒にいたりしない。
「・・なーんか、俺、アスランの観察日記付けたくなってきましたよ、この頃。」
「今度こそ・・女に振られたよな、あいつ。」
アレはもう確定だと・・半ば哀れんだ目を向けるディアッカと・・・、呆然と物思いに耽る、アスランを眺めて・・シンは言っていた。
やっと・・梅が咲く季節、そして・・桜、・・・春が来るというのに。
「まっ、俺はちゃんといい子見つけたしっ!!今アタック中だけどなっ!!本物の春には間に合わせる!」
「・・へぇ〜本物の春にはもう散ってたりして。」
そう・・言った相手に、喰い掛かるディアッカを・・たまたま通りかかったニコルは必死で止めていた。
----桜か。
母の・・曲、カガリの・・・・・曲。
愛して病まない曲だった。
アスランに・・・別れを告げられたことを、ひっそりと伝えたのは・・ラクスだけだった。
「・・・そう・・・ですの・・。」
「・・うん。」
それだけだった。
それだけで・・ラクスには、伝わる気がしたのだ。
ずっと・・一緒に育ってきたから、ここで生き続ける苦しみも・・その中に隠れる、楽しさも・・・、辛さも。
全部全部・・一緒に見てきた、唯一の人だったから。
十の時だ。
初めて・・・店で・・その、性行為の場所を・・目撃して・・・。
カガリも、ラクスも・・絶句していた。
それまでは・・ただ、ただ、お酒のお酌をする職業だと思っていたから・・。
-------------そして逃げ出した。
ラクスを・・置いて。
恐くなったのだ、あの・・店に、居続けることが。
いつか自分も・・ああやって、誰かに身体を犯される日が・・来ると、覚悟することが・・・・恐くて・・。
-----そんな覚悟・・いらない。
でも・・走っている最中・・ラクスに・・申し訳なくなってきて・・・・・・。
それに・・もう、帰れる家も、迎えてくれる人も・・・・・いないんだ。
-------それが・・また、恐かった。
---泣いていた。
・・・・・そして・・出会う。
最初は驚いた、慰めたと思ったら・・・泣き出して・・カガリがおどおどしてしまった。
家に上がれば・・・母親が、死んだという。綺麗な人だった、まだ・・若い。
そして漠然と・・・"仲間"だと思ったのだ。
-----独りぼっちの・・仲間。
言ってみれば・・ただの、傷の舐め合い。
でも・・・・・。
いつだったか、アスランは・・私に言ってくれた。
「・・・・俺・・カガリがいて・・よかった。・・・・ありがとう。」
「いや・・そんなの、おあいこだって・・・。私も・・。」
「違うんだ・・本当に・・・、君のような人・・今まで、周りにいなかったから・・・その・・。」
「?」
「太陽みたいだと・・思う、カガリがいれば・・・明るくなるような、気がする。」
「・・・?そうか?」
「ああ、俺も・・そう思う。きっと・・・今まで君の周りにいた人・・みんな・・そう、思ってると・・思うけど・・・。」
そう言われて・・・頭に、浮かんだのは・・・・ラクスだった。
ラクスは今頃・・どうしているのだろうか?
「・・君が・・きっと、傍から・・いなくなったら・・・・・・淋しいし、また・・暗いところに・・戻りそうな気がする。」
今思えば、アスランはこの時私に告白をしてくれようとしていたのだと思う。でも・・私は・・・。
アスランが・・言うのが、本当で在れば・・・。
-------ラクスは?
暗いところに・・戻って、しまうのではないだろうか?
私のせいで・・・。
私だけ・・こんな、アスランと・・一緒に幸せに暮らしていて・・・。
ラクス・・・は・・・あの中に・・一人だ。
まだ・・あの頃は、ステラもメイリンもいない。--本当に・・一人。
------------------・・戻らなくては・・・・いけない・・。
「カガリ・・・?」
「・・いや・・なんでもない。」
それが・・あの、店に戻った、最大の・・・・理由だった。
それぐらい・・カガリは・・ラクスが大切で、ラクスも・・カガリが大切で・・・・・・・。
そうやって一緒に育ってきた。
「・・・頑張りましょうね、カガリ」
「うん・・。」
アスランとは・・・・どうしよう。
出て行け・・と言われた・・、行ったら・・・怒る、かな?
でも・・大天使の場所は・・分かるし・・・・。
そう・・考えていると、マリューさんに呼ばれる。どうやら・・お酌のようだ。
「今日から・・二人とも、宴デビューね。」
頑張って。
そう・・優しく言われて、カガリも・・ラクスも頷いた。
「どうしたのさ・・アスラン、みんな心配してるよ?」
「・・キラ・・・・。」
夕食を・・サボった、アスランにキラはわざわざ持ってきてくれたようだった。
コトンと・・音を立てて、出されて・・アスランは腹が減っていたことに気が付く。
「・・ディアッカ達がね、恋の病だって・・・言いふらしてたけど・・・、この間・・言ってた子?」
「・・----ああ・・・。」
ポツリと・・親友のキラに、本音を漏らしていた。
結婚したいほど・・好きな子が、浮気をしていた・・・と。
「・・・浮気、するような・・子だったの?」
「・・・・いや・・。」
「じゃあ・・やっぱり、何かの勘違いとか・・・それに・・。」
キラの頭に浮かんだのは・・ラクスと、カガリで・・・・。
言っていた。好きでもない人と・・歩かなければならない、恋人のように・・振る舞わなければならない・・。
もしかしたら・・、アスランの恋人は・・色町の子なのかもしれないと・・漠然と思った。
「・・色々・・事情があったのかもよ?その男と・・どうしても、一緒にいなきゃいけない・・とか。」
「言ってくれればいいじゃないか・・、なんで・・隠してまで・・。」
「だって・・アスラン、自分の彼女が訳ありで・・"他の男と歩かなきゃならないから、許して"って・・言ってきたら、どう思うのさ?」
「・・そりゃ・・。」
嫌だけど・・。
「だから・・隠してたんじゃ、ないのかな・・?その子。」
「・・・・。」
黙って・・考え込んでいる、親友を後目に・・・・キラは立ち上がっていた。
--僕だって・・ラクスが、あんな金髪マッシュルームの男と・・歩くの、耐えられないもん。
でも・・・だからって、ラクスに・・・負い目を感じてほしくはない。
ラクスは何も悪くない。
時々・・申し訳なさそうに、瞳を合わせてくれるのが・・逆に、申し訳なくも思う。
「・・こんど、逢ったら・・・・聞けると良いね。」
「・・・ああ・・ありがとう、キラ。」
今度・・・・。
それはもう・・運任せかもしれない。
----------・・馬鹿だ、俺は。
また・・こんなに、枯渇してる。
許せない・・それは・・・・・変わらないのに。許せなくても・・・。
傍にだけは、いて欲しいなんて。
殺したいくらい・・・・・閉じこめたい。
そうまでしても・・・・傍にいたいんだ。
そしてきっと・・
君を傷つける。
それが・・恐いくらいに分かるから・・・・。
だから・・、君を解放したのに。