好きすぎて殺したいなんて絶対に間違ってるんだ。


第十二輪+憎愛



「カガリ・・・大丈夫か?あの・・変な男に、何かされなかったか?」

「うーん・・ちょっと、左胸の当たり・・肘でグリグリ押されて・・・痛かった。それだけ・・かな?」

カガリは・・・なんの、迷いもなく、アスランの家に上がり込んでいた。







よかった・・今日アスランと逢えて。

一緒に過ごせるだけで・・・どんなに、カガリが癒されているか・・・アスランに伝えたいくらいで・・。

昨日のことも・・アスランが、助けてくれた。

本当に・・優しいと思う。-----ずっと・・一緒に、いられたらいいのに。









胸をって・・・一大事じゃないか。

そう・・思いながら、アスランは徐々に心の中に溜まる沸々とした、嫉妬と・・それ以上の憎愛の感情を向ける。

「知り合い・・か?あの男とは。」
「え・・いや、知り合って程・・親しくもないが・・・----初めて、逢った・・相手ではない。」
囲炉裏で・・足を、ばたつかせながら・・・・・そう言ったカガリを、アスランは睨むことなく返していた。

「そうか・・・。何処で・・知り合った?」

「・・仕事の用事・・・・。」

「-------じゃあ・・あいつと会ったのは・・・たまたまか。」

「・・そうだ。」

くぐもった声に・・なってきたことに、カガリ自身気が付いているだろうか?
その返答を・・待っていたと、アスランは平然と・・・・・声にしていた。

「・・じゃあ・・この間、君と・・その紫色の髪の奴が・・楽器屋で、琴を弾いていたのを聞いたのは・・俺の、間違いか。」
「・・っ・・え?」

「・・その前にも・・髪を簪で上げた・・君と、隣を歩くそいつも・・・見間違いか?」

「アスラン・・何を・・・・・・?」



琥珀色の瞳が揺れて・・・・・・動揺しているのが分かる。

その瞳を見て・・・・・・アスランは微笑んで見せた。

「でも・・まぁ・・カガリが無事で・・何よりだ。」

そう言って・・優しく抱き上げて、アスランは・・・お姫様抱っこをした、カガリの顔を覗く。
カガリは・・不意を付かれたようで目をパチパチと瞬かせていた。

「痛かったろ・・?」
「・・うん。」

素直に・・そう言うと、アスランからキスが振ってきて・・カガリは真っ赤になりながらそれを受け入れてる。
そして・・寝室に、連れて行かれて・・・帯を外された。

「っ・・・アスランっ?!」

「・・・痣になってないか・・心配だから。」

「なんだ・・っ・・焦らすなよっ!!」

真っ赤になってしまうのは・・仕方がない、そういう・・いかがわしい気がなくても・・好きな人に肌を・・しかも胸を見せるなんて・・・。
それに・・さっきのアスランが・・恐かったから。
怒られていると思った・・。恐かった、翡翠の・・、目が、睨むその・・光が。
畳に座り・・・、、アスランに・・一番上の着物の袖をはだけさせられて、中にはもう二枚、入っていた。
その・・中の二枚も、同時に開けられて・・・・・白い、鎖骨と・・・上胸が晒される。

「・・っ・・。」

恥ずかしさに目をつむると・・アスランは笑って・・・・・・・さっきの、言葉を続けた。

「・・俺が・・怒ってると、思ったのか・・・・・・。」
「・・え?」

「・・君が、他の男と・・・歩いていたこと。」

「・・あ・・う、うん・・・。」

言葉に流されるように返事をすると・・・・アスランの手がするりと動き、カガリの唇に触れる。
ぞくっと・・感覚が走って・・・・・肩が震えた。

「--------正直に・・言ってくれ、・・・あの男は・・君の、何なんだ?」
「何って・・ただの・・知り合いで・・・。」

嘘付くなと、アスランは思う。知り合い?

「じゃあ・・なんで・・・・・その、知り合いと、恋人の俺で・・俺の方が、逢う回数が少ないんだ?」

ビクンと・・カガリの瞳が・・・アスランの目を見て止まった。
答えられない・・・そう言うことか。

「・・・質問を変える。----隣町・・って・・嘘か?」

「それは・・その・・・」

小さな唇を・・少し、振るわせ出して・・・・・・アスランはその表情を見つめる。


恐い・・か?俺が・・・。


もう片方の手で・・カガリの、首に触れ・・筋をなぞった。
手つきに・・少し目を細めたが・・・・アスランの目と合うと、途端に逸らす。

「じゃあ・・・・カガリ・・・俺のこと・・どう、思ってる?」

その・・質問に・・・・・答えはもう、一秒も掛からず返ってくる。

「アスランのことは大好きだっ・・愛してるし・・ずっと、一緒にいたい・・・・。」

泣きそうに顔を埋めて・・・・ギュッと座っているアスランの袴を握ってくる・・・・・姿は、まさに可愛いの一言だった。
けど・・・。

「嘘だろ・・・、カガリ。」

「な、そんなわけ・・っ」

言い返そうと・・した、カガリの目が・・・止まってしまう。
許せるはずがない、----------君を。
なんで・・・分からないんだよ。

「好きな相手に・・君は、嘘がつけたのか?つかないよな・・・・カガリが、真っ直ぐで・・優しいことぐらい・・俺だって知ってる。」
「で・・でも、私は・・本当に、アスランのことは・・・・っ・・」

「さっきも・・いったが、俺が好きだというなら、なんで俺の傍に来ない?あんな・・変な奴と・・・・一ヶ月?---いちゃいちゃしてたらしいな。」

「・・・なんで・・そんなこと知って」

「聞いたんだ、町の人に・・・・。肩に手を回して・・・手も・・握って、きまって小間物屋の前で、髪を結ってるって。」

「それは・・っ・・」
「それは・・?何だ?----------これでも・・恋人じゃないと、言い切れるのか?」

「だって・・」

言えない。
そう思ったとき・・・アスランの歯が、カガリの首筋を噛んだ。


「つぅ・・---アスラン、やめろ・・っ!!痛いって・・・・・」

聞こえないように・・肩から服を外そうとすると・・カガリから悲鳴に近い声が挙がる。

「やぁッ・・!!!」

その声で・・正気に戻り、上胸だけを見つめ・・・声を漏らす。


「・・痣は・・ない、みたいだな。」

「・・・止めて・・アスラン・・ヤダ・・・。」


恐い。

「・・・・安心しろ・・カガリ。」

何も・・・・・君を、傷つけたいわけじゃない。


でも・・・


「俺のことを・・好きじゃない、カガリなんて・・・・興味はない。」


違う。

本当は・・・・・抱きしめたくて、堪らない。


傷つけても・・・閉じこめたって・・・・・・・・・・・。


「・・っ・・!!!!」

そう言って涙を流しだしたカガリを無視して・・・服を整えてやる、帯も・・・丁寧に結わえなおした。


「・・いいぞ?もう・・帰って。」
「な・・なんで・・っ・・なんで・・そんなこと・・きゅうに・・・」

泣き出したカガリをアスランは・・・・慰めるように微笑んで見せる。
頭を撫でて・・・・耳元で囁いた。

「・・だって・・・・・他の人を、好きな・・君に・・俺は何も・・してやれないだろ?---傷つけるだけだから・・。」

だから・・もう、行ってくれと、アスランはカガリを立ち上がらせて・・玄関まで半ば引きずる。
カガリはイヤイヤと頭を振って・・・・それでも、アスランは許さなかった。


これ以上・・見ていたら、殺してしまいそうな気がする。

だから。

「・・・じゃあな、カガリ。」

「やだぁ・・やだ・・アスラン・・じゃあななんて・・言うな・・。」

玄関まで来て・・カガリはアスランの身体から巻き付いて離れない。
お願いだ、と・・言うように・・・・。

「無理だ、カガリ・・。君は俺以外の奴と、俺に嘘を付いてまで一緒にいた、一緒にいたかったんだろ?・・・俺とは、たまに会えればいい。その程度だったんだろ?」

「違うっ・・違うって・・私は・・」

「違うのは君だっ!!!!!!!」

「ッ・・!!」

驚きで・・涙が、止まったようにこちらを見上げる瞳に、アスランは食いつくように見つめていた。
俺は毎日会いたくて仕方なかった。
君は違う、他の男と・・ああやって、遊んでいた。理由はどうあれ・・・君は。
俺じゃない奴と・・・・一緒にいる方が、楽しいんだろ?

----俺は・・つまらない、奴だから。


「遊び・・だったら、他を当たってくれないか?カガリは・・可愛いから、大抵の男なら釣れるだろ?」

「・・なんで・・っ・・違うって言ってるじゃないかっ・・・---嫌いになってほしくないって・・ただ・・・。」

「そんなことで・・浮気を許せると思うのか?!それに・・君は、あっちが本命だったんだろ?貢いでくれる、あの男が!!」

でも・・男の本能を出されて・・恐くなって、ただそれだけで・・・俺に助けを求めた。
許せるわけがない。

俺は・・・・・・


「君が思っているほど・・大人じゃない、優しくない。--------・・出ていってくれ。」


何をしてしまうか・・分からない。

---殺したいぐらいなのに。








ボロボロと涙を流して・・カガリは、その場から立ち去った。


--------優しい・・アスランを、怒らせてしまった。

それが・・・凄く、嫌で・・哀しくて。

自分のせいだと思うと・・尚更、やるせない。



ずっとずっと・・・こうなるのが恐かったんだ。

嫌われたくなくて・・離れたくなくて、嘘をついて・・・・・・---ばれて、嫌われる。

---遅かれ早かれ・・・・こう、なるかもしれないって・・・・・・分かっていた。



でも・・・・・・・


縋りたかったんだ。








アスランの優しさに・・













甘えていたかった。































































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あとがき
シリアスになる・・・・。何でだろう・・・。
2006/06/19