「カガリ・・・大丈夫か?あの・・変な男に、何かされなかったか?」
「うーん・・ちょっと、左胸の当たり・・肘でグリグリ押されて・・・痛かった。それだけ・・かな?」
カガリは・・・なんの、迷いもなく、アスランの家に上がり込んでいた。
よかった・・今日アスランと逢えて。
一緒に過ごせるだけで・・・どんなに、カガリが癒されているか・・・アスランに伝えたいくらいで・・。
昨日のことも・・アスランが、助けてくれた。
本当に・・優しいと思う。-----ずっと・・一緒に、いられたらいいのに。
胸をって・・・一大事じゃないか。
そう・・思いながら、アスランは徐々に心の中に溜まる沸々とした、嫉妬と・・それ以上の憎愛の感情を向ける。
「知り合い・・か?あの男とは。」
「え・・いや、知り合って程・・親しくもないが・・・----初めて、逢った・・相手ではない。」
囲炉裏で・・足を、ばたつかせながら・・・・・そう言ったカガリを、アスランは睨むことなく返していた。
「そうか・・・。何処で・・知り合った?」
「・・仕事の用事・・・・。」
「-------じゃあ・・あいつと会ったのは・・・たまたまか。」
「・・そうだ。」
くぐもった声に・・なってきたことに、カガリ自身気が付いているだろうか?
その返答を・・待っていたと、アスランは平然と・・・・・声にしていた。
「・・じゃあ・・この間、君と・・その紫色の髪の奴が・・楽器屋で、琴を弾いていたのを聞いたのは・・俺の、間違いか。」
「・・っ・・え?」
「・・その前にも・・髪を簪で上げた・・君と、隣を歩くそいつも・・・見間違いか?」
「アスラン・・何を・・・・・・?」
琥珀色の瞳が揺れて・・・・・・動揺しているのが分かる。
その瞳を見て・・・・・・アスランは微笑んで見せた。
「でも・・まぁ・・カガリが無事で・・何よりだ。」
そう言って・・優しく抱き上げて、アスランは・・・お姫様抱っこをした、カガリの顔を覗く。
カガリは・・不意を付かれたようで目をパチパチと瞬かせていた。
「痛かったろ・・?」
「・・うん。」
素直に・・そう言うと、アスランからキスが振ってきて・・カガリは真っ赤になりながらそれを受け入れてる。
そして・・寝室に、連れて行かれて・・・帯を外された。
「っ・・・アスランっ?!」
「・・・痣になってないか・・心配だから。」
「なんだ・・っ・・焦らすなよっ!!」
真っ赤になってしまうのは・・仕方がない、そういう・・いかがわしい気がなくても・・好きな人に肌を・・しかも胸を見せるなんて・・・。
それに・・さっきのアスランが・・恐かったから。
怒られていると思った・・。恐かった、翡翠の・・、目が、睨むその・・光が。
畳に座り・・・、、アスランに・・一番上の着物の袖をはだけさせられて、中にはもう二枚、入っていた。
その・・中の二枚も、同時に開けられて・・・・・白い、鎖骨と・・・上胸が晒される。
「・・っ・・。」
恥ずかしさに目をつむると・・アスランは笑って・・・・・・・さっきの、言葉を続けた。
「・・俺が・・怒ってると、思ったのか・・・・・・。」
「・・え?」
「・・君が、他の男と・・・歩いていたこと。」
「・・あ・・う、うん・・・。」
言葉に流されるように返事をすると・・・・アスランの手がするりと動き、カガリの唇に触れる。
ぞくっと・・感覚が走って・・・・・肩が震えた。
「--------正直に・・言ってくれ、・・・あの男は・・君の、何なんだ?」
「何って・・ただの・・知り合いで・・・。」
嘘付くなと、アスランは思う。知り合い?
「じゃあ・・なんで・・・・・その、知り合いと、恋人の俺で・・俺の方が、逢う回数が少ないんだ?」
ビクンと・・カガリの瞳が・・・アスランの目を見て止まった。
答えられない・・・そう言うことか。
「・・・質問を変える。----隣町・・って・・嘘か?」
「それは・・その・・・」
小さな唇を・・少し、振るわせ出して・・・・・・アスランはその表情を見つめる。
恐い・・か?俺が・・・。
もう片方の手で・・カガリの、首に触れ・・筋をなぞった。
手つきに・・少し目を細めたが・・・・アスランの目と合うと、途端に逸らす。
「じゃあ・・・・カガリ・・・俺のこと・・どう、思ってる?」
その・・質問に・・・・・答えはもう、一秒も掛からず返ってくる。
「アスランのことは大好きだっ・・愛してるし・・ずっと、一緒にいたい・・・・。」
泣きそうに顔を埋めて・・・・ギュッと座っているアスランの袴を握ってくる・・・・・姿は、まさに可愛いの一言だった。
けど・・・。
「嘘だろ・・・、カガリ。」
「な、そんなわけ・・っ」
言い返そうと・・した、カガリの目が・・・止まってしまう。
許せるはずがない、----------君を。
なんで・・・分からないんだよ。
「好きな相手に・・君は、嘘がつけたのか?つかないよな・・・・カガリが、真っ直ぐで・・優しいことぐらい・・俺だって知ってる。」
「で・・でも、私は・・本当に、アスランのことは・・・・っ・・」
「さっきも・・いったが、俺が好きだというなら、なんで俺の傍に来ない?あんな・・変な奴と・・・・一ヶ月?---いちゃいちゃしてたらしいな。」
「・・・なんで・・そんなこと知って」
「聞いたんだ、町の人に・・・・。肩に手を回して・・・手も・・握って、きまって小間物屋の前で、髪を結ってるって。」
「それは・・っ・・」
「それは・・?何だ?----------これでも・・恋人じゃないと、言い切れるのか?」
「だって・・」
言えない。
そう思ったとき・・・アスランの歯が、カガリの首筋を噛んだ。
「つぅ・・---アスラン、やめろ・・っ!!痛いって・・・・・」
聞こえないように・・肩から服を外そうとすると・・カガリから悲鳴に近い声が挙がる。
「やぁッ・・!!!」
その声で・・正気に戻り、上胸だけを見つめ・・・声を漏らす。
「・・痣は・・ない、みたいだな。」
「・・・止めて・・アスラン・・ヤダ・・・。」
恐い。
「・・・・安心しろ・・カガリ。」
何も・・・・・君を、傷つけたいわけじゃない。
でも・・・
「俺のことを・・好きじゃない、カガリなんて・・・・興味はない。」
違う。
本当は・・・・・抱きしめたくて、堪らない。
傷つけても・・・閉じこめたって・・・・・・・・・・・。
「・・っ・・!!!!」
そう言って涙を流しだしたカガリを無視して・・・服を整えてやる、帯も・・・丁寧に結わえなおした。
「・・いいぞ?もう・・帰って。」
「な・・なんで・・っ・・なんで・・そんなこと・・きゅうに・・・」
泣き出したカガリをアスランは・・・・慰めるように微笑んで見せる。
頭を撫でて・・・・耳元で囁いた。
「・・だって・・・・・他の人を、好きな・・君に・・俺は何も・・してやれないだろ?---傷つけるだけだから・・。」
だから・・もう、行ってくれと、アスランはカガリを立ち上がらせて・・玄関まで半ば引きずる。
カガリはイヤイヤと頭を振って・・・・それでも、アスランは許さなかった。
これ以上・・見ていたら、殺してしまいそうな気がする。
だから。
「・・・じゃあな、カガリ。」
「やだぁ・・やだ・・アスラン・・じゃあななんて・・言うな・・。」
玄関まで来て・・カガリはアスランの身体から巻き付いて離れない。
お願いだ、と・・言うように・・・・。
「無理だ、カガリ・・。君は俺以外の奴と、俺に嘘を付いてまで一緒にいた、一緒にいたかったんだろ?・・・俺とは、たまに会えればいい。その程度だったんだろ?」
「違うっ・・違うって・・私は・・」
「違うのは君だっ!!!!!!!」
「ッ・・!!」
驚きで・・涙が、止まったようにこちらを見上げる瞳に、アスランは食いつくように見つめていた。
俺は毎日会いたくて仕方なかった。
君は違う、他の男と・・ああやって、遊んでいた。理由はどうあれ・・・君は。
俺じゃない奴と・・・・一緒にいる方が、楽しいんだろ?
----俺は・・つまらない、奴だから。
「遊び・・だったら、他を当たってくれないか?カガリは・・可愛いから、大抵の男なら釣れるだろ?」
「・・なんで・・っ・・違うって言ってるじゃないかっ・・・---嫌いになってほしくないって・・ただ・・・。」
「そんなことで・・浮気を許せると思うのか?!それに・・君は、あっちが本命だったんだろ?貢いでくれる、あの男が!!」
でも・・男の本能を出されて・・恐くなって、ただそれだけで・・・俺に助けを求めた。
許せるわけがない。
俺は・・・・・・
「君が思っているほど・・大人じゃない、優しくない。--------・・出ていってくれ。」
何をしてしまうか・・分からない。
---殺したいぐらいなのに。
ボロボロと涙を流して・・カガリは、その場から立ち去った。
--------優しい・・アスランを、怒らせてしまった。
それが・・・凄く、嫌で・・哀しくて。
自分のせいだと思うと・・尚更、やるせない。
ずっとずっと・・・こうなるのが恐かったんだ。
嫌われたくなくて・・離れたくなくて、嘘をついて・・・・・・---ばれて、嫌われる。
---遅かれ早かれ・・・・こう、なるかもしれないって・・・・・・分かっていた。
でも・・・・・・・
縋りたかったんだ。
アスランの優しさに・・
甘えていたかった。