第六章・・・軽すぎる体重



「カガリ様が?」

そう・・王都の一角にある・・人知れぬバーで、紫と赤の混じった髪の子は声をあげた。
「ああ、今---ザフトとして・・この街にきている。」
それを聞いて・・バーのものは顔色を変えたが、直ぐにムウは笑い飛ばした。
「どうやら潜入中のようだ、我らがお姫様は。」
そう言うと・・その場にいたものはハッと肩を撫で下ろす。
そして次々にそうだよな、カガリ様がなと笑い出した。

「で・・?なんでわざわざここに?危ないんでしょ?」

そう朱色の髪・・ツインテールの少女はシンに尋ねる。
シンは「みんなにもカガリが此処に来ていることを知って欲しかった」と答えた。

「今日の昼ね、ザフトの人たちが・・きっとカガリ様が聖母だって気がついたのか・・探りに着てね、言っちゃったのよ一人。」
「はぁ?!誰だよ・・!!」
「小さい子・・。カガリ様ほら・・行方不明扱いじゃない?でもいるって「いつか元に戻す」って言ってくれたってその子しゃべっちゃって」

そうショートの子は溜息を付いて、シンも溜息を付いた。

「て訳で・・シンも・・ムウさんも早くヘリオポリスに帰ったほうがいいとおもう。」
「・・でも・・ルナ。」
「シン達がいなくなったら・・私たちどうすればいいか、分からないよ。」

そうメイリンにも言われて、シンはシュンとしてしまう。
「まー・・ここにも探りいれられちゃうかもね・・大丈夫か?」
そうマスターのバルドフェルトに尋ねるとニカッとら割れて

「安心安心、この街の姫様に対する団結は強いからな」

そう言われムウもそりゃそうだと笑った。

「そうだ・・新しく増えたんだ、女の子。ミリアリアって言う・・・、まだヘリオポリスにいるんだけど、こんどつれてくる。」

シンは俺たちの近くにいるよりこっちの方がいいと判断したようでルナもバルトフェルトも頷いた。

「わかったわ、部屋もちゃんと用意しとく。」
「仲良くなれるかな〜」

そう微笑むホーク姉妹をそこのものは微笑ましい気持ちで見守っていた。
これが・・本来あるべき女性の姿だ。そう感じている。






「おはよう、ミリアリアさん」
「おはようございます」

そうマリューさんとニコル君に挨拶を受けて「おはようございます」と返した。
ここの生活はのどかで・・反乱軍とはとてもおもえない。
皆優しくて、辛い出来事さえ、忘れてしまいそうになる。
だが、不意に両親や・・彼氏・・その者たちを思い出すと・・胸が痛くなった。
だれか・・誰でもいい・・生き残っていて。

「ミリアリアさんは・・戦うの嫌だろうから・・。安全な王都に身を寄せる事になるけど・・良いかしら?」

そうマリューさんに尋ねられて・・信用できるかなと思って頷いた。

「安心してください、あそこにはホーク姉妹がいて・・二人とも良い人ですから。」

ニコル君には愛くるしく笑ってもらえて、不安が解けるように感じ笑い返した。
それと・・何となく気がついていたのだが・・この人たちは、ユラ・・じゃないカガリと同じように腕輪をつけて、
それにその下の地肌に石が埋め込まれているのも知っていた。
カガリたちと一緒・・。

「その石って----・・・・強くなれる石・・なんですよね?」
「ええ、そんな所よ」
「私も・・」

そう言いかけるとカランと戸が開きシンとムウさんが帰ってくる。

「ただいまー」
「おかえりなさい」

そうしてさっきの言葉の続きを言った。

「あの・・私も、みんなの役に立ちたいんです・・だから・・」
マリューさんは「困ったわね」と微笑んで見せて、シンは溜息を付いた。
「カガリがいないと・・出来ないからな〜これ。」

ムウさんがそう説明してくれてそうなのかと、落胆する。
せっかく・・此処にいるのなら、役に立ちたい。

「でも・・石だけが力じゃありませんよミリアリアさん。」

ニコルはそう言って、微笑んでくれた。
そしてシンから短剣を渡される。

「護身用、それに・・少しでも剣術に慣れておいてもいいだろ?」

そういわれて嬉しくなった、だって・・人の役に立てるかもしれないと感じたから。

「それと、もう少ししたら・・此処から移ったほうが良さそうだ。---どっかいい場所探さんとな。」
「アルテミスでも行こうかしら?」
「あそこか・・、あそこはもう殆どプラントのようなもんだからなぁ・・マリューもきついだろ。」
「平気よ?貴方達に買われたことにすればいいのだから。」

そう話すのをミリィはどうしたものかと考えているとシンは笑って

「大丈夫、ちゃんと王都に俺が連れて行くから・・、俺たちがアルテミスに移る時・・送っていくよ。」

危険には巻き込まないと言われるのと同時に足手まといだと言われたように感じて、ミリアリアは顔をしかめた。










「--------・・ヘリオポリス・・ですか?」

そう声に出したのはディアッカだった。

「ああ、どうやら・・あの街にも・・反乱軍がいるとの噂があってね」
「・・・また・・焼くのか・・。」

そうボソッと口にしたのをユラは聞き逃さなかった。

「いや・・ちゃんと・・誰も逃げられないような作戦を立てれば・・平気だろう。」

アスランもソレに同意する。人が死ぬ所は・・極力・・見たくはない。
だが・・ユラの考えを知るものは恐らくこの場にはいない。
そして、ユラはどうやれば此方に隙間なく見せ・・あちらを逃がすかを考えていた。

「作戦立てといこうか。」

そう話して、ユラは的確な指示を出して兵を分散させる。
そして・・ユラ自ら、その街の捜索に乗り出すこととなった。

「・・・ユラ一人じゃ危険だ・・俺も行く。」

アスランはそう言いきってユラも「分かった」と頷く。
だいたい・・あいつらは定期的に場所を変える。もうその時期だろうとカガリも知っていたのだ。
するとレイは急に俺も行くと言い出した。

「・・黒髪の・・炎使い・・俺の失敗で取り逃した---俺が捕まえたい。」

そう言われユラは許可してギルも笑ってレイを見ていた。





その日の夕方・・・またアスランとユラは一緒に街の外に出る。
一週間半ほどだが・・ユラはどんどんその剣術の精度をあげていた。

「・・・この分なら、昇段試験受かるかもしれないな。」
「本当かっ」

鎧を身にまといそれでも身軽にクルクルと周るユラを見て、アスランは笑みがこぼれる。

「転ぶなよ」
「平気だって!!」

この頃・・ユラと一緒にいると終始笑みがこぼれている自分に気がついていた。
キラとまた違う空気のユラに心が優しくなるような気がしてならない。

「・・・そうだな、今日は少し・・昇段試験に向けた練習をしようか。」

そう言うとユラはぱっと向いてシュッと剣を構えた。
昇段試験・・Bランクからは相手が人になるのだ。
ただし、剣術なので能力を使うことは許されない。
アスランも直ぐに愛刀のイージスを出してユラに向ける。

「行くぞっ!!」

そう声がして、走りこんできたユラの剣をイージスで止めその力の弱さに驚いた。
---これで、増強しているのだろうか?
そう思うが、力が無い分素早く、そして急所を狙おうとする姿勢は素晴らしい。
だが・・これでもアスランの剣術トリプルAには程遠く、簡単にはじき返してしまう。
ズザザザっと音を立て地面をユラの足が擦りばねのようにもう一度飛び掛ってきた。
甘いなと身体を横にずらすと勢い余ったユラが地面にぶつかりそうになる。

「きゃぁっ」

そう声がして、アスランは急いでぶつかりそうになった身体を支えた。

「・・・・・び・・びっくりしたぁ・・」

カガリは今自分が「きゃぁ」と叫んだ事に焦っていて、
ばれていないかと心配になりながらアスランを見るとアスランは全く気が付いていないようだった。

「----・・軽い・・な・・・。」

アスランはそんなユラの心情など分からず、ただ支えた時の軽さに驚いて起き上がらせて覗き込んだ。
この軽さでは、突進してきても体重が足りず、相手を押し切る事も出来ない。
それに・・鎧を着けて・・・この軽さはヤバイだろう。
・・・・腕の力も・・全然ないし。
ユラの腕を引っ張りガッと腕を出した。

「なっ・・なんだ?いきなり・・---」
「-----細すぎる・・。ちゃんと食べているのか?」

有り得ない・・この細さ・・元から骨が細いようにも見える・・。

「食べてるさ・・見てるだろう?いつも---」

隠すように腕を払って服を下ろした。ばれたら大変だ。
「力が人より無いのは生まれつきなんだ」と啖呵を切ってアスランを睨むと、アスランはやれやれと眉を潜める。

「・・・15だろう・・?お前・・もう少し筋肉がついていても・・」

そう言うものの・・ユラは良く動くし・・---正直なんでこんなに筋肉がつかないのかが不思議だった。
だが---筋肉がつきやすい、着きにくいに関わらず、つけなければいけないのだ。
-----でないと、軍人は・・ザフト軍は勤まらない。

「努力するさ・・っ!」
「---それしかないな。」

付き合うよ、そう微笑むとユラも嬉しそうに微笑んでくれた。




結局その日はユラと二人で郊外をブラブラと歩いて、
モンスターが出たら戦うが・・だが、川原で寝そべって薬学の話などをして過ごしていた。

「これと・・これ、本には載ってないが調合すると、睡眠薬になるんだぞ。」
「---そうなのか?」
「ほら・・こうやって。」

その薬草を束ねて鼻の近くに持ってこられて、クラッとする感覚が体を襲った。
一気に眠さが押し寄せるような・・感覚。

「な?」

寝そべって身を隣に置きながらユラは笑ってアスランは眠たいながら頷いた。

「・・でだ・・今使ったやつの一つを・・これと使えば・・---」

そしてまたパッと鼻に寄せられて、その匂いに頭が冷める。

「目覚し草になるんだ。」

眼を見開いたアスランにユラは笑って薬草の説明をしてくれた。

「本に載っていないだけで・・実際何億と言う調合の仕方があるんだって・・聞いたことがあったんだ。で色々試して遊んだ。」

アスランが知っているのは、せいぜい小さな回復草ぐらいで・・いや一応知っているのだが、腹の痛み止めとかその程度だった。

「・・物知りだな・・ユラは」
「いや・・好き勝手遊んでたら出来た代物ばかりだ。」

それを聞いてアスランは少し・・はっとした。

「・・ユラは・・オーブの国民だったのか・・。」

そう・・プラントではこんな薬草は高すぎて・・だいたいこんな川原にだって生えてはいない。
それにそうだとすれば・・ユラの女に対する態度は納得がいく。

「・・だめか?オーブ出身のものが・・・ザフトに入っては?」
「いや・・だが---」

考えの違いは・・歪みを産む。
--------でも、ユラにこの軍から抜けて欲しいとは・・思わない。

「お前だって・・プラントの今が全て正しいと思っているわけではないだろう?」

そう言われ、「え?」と声をあげる。
それは・・父を・・王を否定する事になるからだ。

「だって・・キラから聞いたが・・女性に対して"護るから、その代わり参政権はない"と言っても
・・生存権だけで・・女性はどうしていったらいい・・?ただ、子供を生むだけの道具として使われる女性に
人間の権利があるようには思えない。」

そうはっきりと、否定されてアスランは驚いた。
常識が違うとはいえ・・ここまで違うものなのだろうか。
だが・・実際、アスランは何も分からないのだ。
酷い事というレベルも・・、それに・・道具といっても最低限度のモラルは存在するものだと考えているし・・・。
そう思っているとユラは哀しそうに微笑んであることを提案した。

「・・・今度・・行ってみるか?売女の所・・----客としてじゃなくて・・ただ、見学する為に。」

キラが言っていた、アスランは知らないと。
ラクスにも手を出した事もないし・・出し方もよく分かっていないと。
となれば・・酷い・・という事にもしっくり来ないでいるのだろう。
見なければならない。皇子は・・その国の実状を。
そしてそれが、プラントを変えてくれることを信じて。






「アスランと・・・?」
「ああ・・行ってくる。ちゃんと・・アイツも知らないと。皇子なんだから。」

そう言っているカガリの顔は苦々しく歪んでいた。
そんな情景、女の子のカガリからしてみれば有り得ない事で・・信じがたい事だと、キラも思っていた。

「・・・私も・・ちゃんと・・こういう人たちを助けようとしているんだと・・生身で感じる機会だし・・行ってくるよ」


オーブの姫として・・、こんはふざけた世界放っておけはしないから・・・。































































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あとがき
GOGOってかんじです(不明)
カガリが男前☆男前カガリもラブです!!
ついでにこの世界での生存権はただ生きる事を許される権利?です。
日本のように「生存権=健康で文化的な最低限度の生活」ではない設定ですのでご了承してお読みください。
2006/04/30