「・・・-----・・カガリ・・。」
やっと逢えた相手は・・・石の中で、まるで聖なる像のように見える。
最初・・出会えた喜びと、あまりの美しさに止まったが・・・-----・・そんなことを言っている場合ではない。
直ぐにその石へと手を伸ばしたが、どうすることも出来ない。
カガリに触れることも出来ず・・必死に、話しかけていた。
剣で斬りつけようにも・・中にカガリが居る以上そんなことをしてもしもの事があってからでは遅い。
アスランはその場に座り込んでいた。
「あら・・皆さんお久しぶりですわね。」
そう・・ラクスは会釈をしながら城内を悠々歩き、自分の客間・・兼、自分が頼んでその部屋に置いて貰った人の居る部屋へ行く。
その相手は・・ベットの上に座り、こちらを見てビクッとした。
「初めまして・・ミーアさん。私はラクス・クラインですわ。」
「・・・はじめ・・まして。」
何処か恐怖感が相手を支配しているように見え、ラクスは少し哀しい気持ちになる。
何をそんなに怯えているのか・・。と、その人の隣りにラクスは座った。
「・・今まで、ご迷惑をおかけしてすいませんわ。」
プラントにこの人が戻ってきてしまった。
---------・・私は・・・、どうなるの?
今では反乱軍とまで呼ばれる・・敵方に居た私は・・・。
そう・・自分の身を心配し・・涙が溢れた。だが・・自分なんてまだ・まだ全然良いではないかと思う。
-----・・ハイネは・・。
ハイネは、殺されてしまうかもしれないのだ。
他人より自分のことばかり・・こうやって心配になってしまう私なんて、それ相応の場所にいるのがふさわしいのかもしれない。
色々な感情が混ざって、ミーアはうつむき泣いていた。
ラクスはその細い肩を抱きしめて背中を撫でる。
「・・恐かったですね・・。もう大丈夫ですわ。」
「・・ッ・・嘘・・だって・・」
「・・・、、本当に、もう。大丈夫です。」
後はカガリさんだけ目覚めれば・・。
そう、ラクスはミーアの涙を拭いて、一緒に部屋を出た。
途中・・様々な兵士に見られたが、そんなことは一切に気にせずミーアの手を引いて大聖堂まで来る。
扉は壊れ、中はまだ焦げ臭い。
あの美しかった面影は一切ないが・・・、キラキラと輝く石とその前に座り込んだ人間だけが月明かりでもハッキリと見えた。
「・・アスラン。」
その声に・・アスランはラクスとミーアを見て、また視線をカガリへと変える。
ラクスはミーアに「どうしてこうなられたか分かりますか?」と訪ねた。
ミーアは・・・首を横に振ったが、思い出したように口にする。
「私・・寝室にいて・・、一瞬酷く明るくなって・・・その後・・カガリさんの洋服選ぶように言われて・・」
その説明だけで・・ラクスには洗礼したのかと納得がいった。
だが・・それではどうやって中に入ったのか分からない。
ツカツカと歩いて・・近くに行けば行くほど・・変な気分にさせられる・・その石にそっと手を付けた。
その瞬間、個体の物体が触れた場所だけ液体へと変わり、ラクスを取り込もうとする。
急いで手を離して・・ラクスはアスランにキラを呼ぶよう頼んだ。
だが・・アスランはカガリの方ばかり見て、動く気配がない。
「・・アスラン・・・・・-----貴方は、一国の王なのです。・・自覚を持って下さいな。カガリさんの頑張りを・・無にするおつもりですか?」
ラクスの言葉に・・アスランはハッとして、カガリを見て走り出した。
ミーアはアスランとカガリの関係に納得がいく。
「全く・・アスランは何処に行った!!」
思わず切れてアスランを呼び捨てにしたイザークを部下は必死になだめていて・・。
そこにキラも顔を覗かせる。
「ねー君。アスラン見なかった?」
「俺も今探している!!」
そう・・話しているとその大広間にアスランが走ってきた。
「キラっ・・ラクスが・・。」
「え?!ラクスがどうしたの??」
「貴様ッ・・!!兵に指示もしないで・・」
そう、胸ぐらを掴み上げたイザークに・・アスランはその手を止め「すまない」と謝る。
直ぐに・・そこに集められていた兵を見て、アスランは大声で言う。
「残念ながら・・主犯デュランダルは捕まえられなかった。今後・・街の警備を強化する。」
やっとまともに指示をし出したアスランにイザークは手を下ろした。
「反乱軍は、牢に入れるだけでそれ以外の処罰を禁じる!いいな。後のことは追々伝える。」
それだけ言って・・キラを見て、アスランはキラと共に大聖堂へと向かった。
「キラっ!」
「ラクス・・----。カガリ・・!」
そう・・キラも驚き、その石に触るが・・ラクスと同じような現象は全く起きない。
ラクスはそれを見てから・・キラの手をギュッと掴んだ。
「・・絶対離さないでくださいな。」
「え?」
「私がカガリさんを引っ張り出します。」
ラクスの言う意味が、二人にはよく分からず首を傾げる。
キラが握った左手とは逆の手を、ラクスは石の中へと入れた。
「え・・っ!!」
急に・・ラクスがその石へ吸い込まれそうになり、キラは腕ではなく急いでお腹へと手を回す。
アスランも驚いたが・・・、、キラの身体を支えに入った。
気が付けば、ラクスは上半身が石に浸かった状態で・・その中でカガリの手を捉える。
「カガリさん!」
口を開ければ、ラクスは苦しくなり・・急激に瞳も重たくなった。
だが・・---、無意識でカガリの手を掴む。
"ラクス!ラクスなのか?!"
そう聞こえラクスも"そうですわ、もう・・アスランに逢えますわ!"と力強く言った。
そして・・ラクスの意識が途絶える。