「アスランっ」
「キラッ・・!!」
城内で--------顔を合わせた二人は手を取り合う。
すぐに会議室へと入り、キラは状況を把握する。
「・・分かった。」
状況は正にせっぱ詰まっていると言うところ・・・・・・-----・・ラクスはまだあそこにいた方が安全かもしれない。
もしもの時に・・守れなかったら・・それが一番恐い。
そう思って・・親友を見て-------・・キラはポンッと親友の頭を叩く。
「・・な・・っ!」
「悲惨だよ。顔が・・----カガリがそんな君の顔、みても喜ばないよ。」
自分以上に悲痛な顔をする親友にキラは心を和ませるように言う。
「--------・・カガリが・・・いない、この状況で-----------笑っていられるはずがないだろ・・。」
クッと指を組み、額に当てる。
震える声でそう答えるとキラも「そうだね・・。分からなくもないよ・・」と、沈んだばかりの空を見上げた。
「・・だからこそ------・・頑張らなきゃ、でしょ?アスラン。」
「・・ッ・・分かってる!!」
感情的になり・・ガツンとテーブルを叩き、アスランは立ち上がる。
もうじき・・封鎖の時間だ。・・聖堂の硝子は特殊な加工がされていて・・アビリティ・ストーンの力無くして、壊れるはずがない。
そして--もしも、デュランダルが・・その力を出す出さないだけは制御できても・・・聖堂の周りを軍で囲んでしまえば・・・お終いだ。
奴らは逃げられず・・・・・・・・・・カガリは、助かるはずだ。
そう、自分が組み立てた図式に抜け目がないか、それを必死で探す。
無い・・・・--------・・無い、はずだ。
そう・・溜息をつき、アスランも出たばかりの月を見上げた。
深夜・・零時を回った頃、大聖堂の入口から・・細い管で扉の隙間から大量の石油、油が注がれる。
そしてその作業が終わる頃・・・中のデュランダルは、その巨大なアビリティ・ストーンに触れいた。
「・・どうしても・・・・・・こちらの言うことを聞くのは嫌なのかね・・・?」
大聖堂に・・予め隠して食料などを貯蔵していた。
勿論・・もしもの為の逃げ口も既に作ってあるが・・此処から出てしまっては今までの全ては意味を成さない。
ちっ・・----そう、柄にもなく舌打ちをして・・デュランダルは上がった月を見上げる。
死んでしまっては・・捕まってしまっては・・・・それは終わりを意味するのだ。
「レイ。」
「はい。」
忠実な部下に・・指令を告げ、デュランダルはその場所から静かに影を消した。
「・・・にげ・・・るの?」
「----・・まぁそう言うことだろうな・・」
大聖堂には・・油の匂いが立ちこめ、最後の二人となったミーアとハイネの姿があった。
ミーアは納得行かないように・・石に埋もれた人を見上げる。
「・・・・・この人は・・何で、私達に力を貸してくれないのかしら・・」
平和のため・・・そう、そのはずなのに。
そう考えていると・・・・----辺りには火が回りだし、ハイネはミーアの手を引いていた。
「・・生きていれば、、またチャンスはあるだろ?・・死んだら・・・・・・・・・・終わり、だからな。」
そう言われたハイネの声も・・ミーアには虚しく響いて・・涙が流れる。
「嫌よ・・だって、だって・・・-----外は平和じゃないもの!戦ったり・・虐げたりする所で・・・・・・生きるのは、嫌っ。」
私は戦えない・・・だからこそ、捨てられてしまう。
その怖さで足がすくみ・・ハイネはそのミーアの足を賢明に歩かせ・・何とか、地下通路から大聖堂の外へと出る。
「まだいたぞッ!!!取り押さえろッ!!!!」
その瞬間・・-------・・そう、兵士の叫ぶ声がして、ミーアとハイネは駆け出した。
「・・・眠って・・しまっていましたわ・・・。」
そう・・・地下から地上へと繋がる場所で・・ラクスは小さく伸びをして辺りが暗くなり・・月が出ていることに気が付いた。
気のせいか・・・・・・・・ものの焦げる匂いがする。
「・・キラ・・っ・・」
大丈夫・・・・なのでしょうか・・・・・?
不安になって・・草むらから辺りを覗くと、恐いほどの炎の前に・・人が二人、見えた。
-----・・追われて・・いる・・・・・?
一人は女性のようで・・走るのに疲れて・・倒れそうになっている。
助けようと・・身を乗り出すと・・・・相手もそれに気が付いたようで・・・女の子の方だけが、こちらに駆け寄ってきていた。
だが・・途中、つまずいてしまい・・それでも賢明にこちらに手を伸ばしている。
行かなければ・・と、衝動的にラクスの身体が動き・・その女の子を抱きしめて・・・・周りの兵に見つからないように穴へと入った。
「・・はい・・ね、が・・・・ハイネが・・ッ・・」
すすを被り・・煙を吸いすぎたのか、その子は苦しそうに必死に何かを伝えようとしている。
「・・・死んじゃう・・ッ・・・!!!助けて・・ッ・・・ハイネを・・っ・・」
その子の頭を・・・数回撫でると、すすを被ったところが綺麗になり・・・・美しいピンク色の髪が見えた。
これは・・・、と、その子の顔を確認する。
「・・・・貴女が・・・、今まで・・大変でしたわね・・。」
そう・・呟いて、ラクスはその少女を抱きしめた。
あそこは・・寂しい場所だ。
偽物の・・・この子ならば、本当に・・・退屈で堪らなかったに違いない。
意識が途絶えたその子に・・ラクスは立ち上がり・・今はもう兵に囲まれるその人の元へと走る。
どうやら・・兵は剣を抜いたようで、殺されそうになっていた。
「ミーアッ・・何で戻って・・っ!!」
その言葉に・・兵がいっせいにこちらを向く。
「--------・・私は、ラクス・クライン・・・この国の聖母ですわ。」
ざわっと・・・兵が戸惑い・・・ハイネもラクスを見据えていた。
「--・・ザフトの皆様・・この方を殺してはなりません・・。貴方も・・彼女を思うなら、死に急いではなりませんわ。」
偽物・・・----・・そう、捉えたのかザフトの矛先はラクスに向き・・ラクスはその人達に目を向ける。
一人の・・ザフト兵がラクスに襲いかかった瞬間、その切っ先は止められていた。
「・・キラッ!!」
「ちょっと、君たちラクスに何しようとしてるのさッ!!!!」
怒りの頂点と言わんばかりにザフト兵を押し返し・・「アスランッ!!」と大声を出す。
「・・ミーア・・・?」
「ラクスですわ、アスラン。」
ミーアとは違う・・意志の強い瞳にアスランは頷き・・「ラクスの指示通りに。」とその辺りの兵に告げた。
「・・ミーアは・・・?」
「ミーアさん・・と仰るのですね。・・・あちらですわ。・・この方にも・・ミーアさんにも無粋なことはしないよう、くれぐれもお願いいたしますわね。」
「・・・-----。」
「・・もう、こちらが押し切っているのは一目瞭然でしょう・・?無駄な争い・殺し合いは避けて通ってください。」
冷静な判断を・・とラクスに付け加えられ・・アスランは渋い顔をして頷き、ハイネを捕捉し・・ミーアを抱きかかえる。
「・・ミーアさんが起きられたらお話がしたいですわ。」
「分かった。」
この子は・・此処まで意見を言う子だっただろうか・・。
そう思いラクスを見ると・・隣にはキラが立っていて、キラはラクスの手を握りしめている。
それをアスランはぼんやりと眺めて・・・やっと火が治まりつつある大聖堂へと・・足を運んだ。