第五十一章・・・全てはそう、ただその為



ハイネは・・自身のイグナイデットを出して、アスランに向けてから・・・・事の重大さに気が付く。
やば・・・陛下に・・・・槍、向けてる。

そう頭で考えたものの・・・・仕方ないと、割り切ることにする。・・・・・それにハイネ自身・・・アスランを許せそうにはない。





もう・・友達だか知り合いだかのハイネに構っている有余はない。--------中にいる・・カガリの身の安全が最優先だ。
ここまで走って・・アスランもカガリのこと以外にも政治にだって頭を回しはじめる。
国民に・・・・カガリが、危険な状態だと知られてしまった、一刻も早く・・・国、・・それより自分自身のために・・・、

カガリを・・ッ。

イージスを抜き・・・・アスランは、初めて・・・・ハイネに殺気のある視線を向けていた。







聖母の身体を・・トンと、巨大アビリティ・ストーンに触れさせると、まるで個体が液体になったように石が反応する。
形は崩さない・・・だが、まるで海水に入れるよう・・・・その身体は、石の中に引きずり込まれていく。
そしてその間だ終始石は輝きを続けて・・・全部身体が入ると、さらに光り輝いた。
その後・・・石を見ると、水に浮くような形で・・・聖母カガリが、石の中に埋められる。
しかし・・ギルは気が付かない。うっすらと開いた瞼に。
フッと・・その石に触ることを試みると・・・初めて拒絶されず、触れることが出来た。

「・・・・君の意志・・・使わせていただこう。」

そう・・この石と、この・・聖母なら出来るはず。







キンッキンッと硬質な音を立てて交わらせた刃、だが・・・シンの方が早いのは歴然だった。
しかしレイも負けずと能力を使い・・・・、シンも手や肩にまとわりつく氷を自分の炎で溶かす。
戦闘が・・長引けば、当然他の兵に見つかる可能性も上がる・・・・。
シンは二本ある小太刀を、器用に動かし、一本でレイの剣と交じ合わせ、空いたもう片方を、足に刺そうとする。
だが・・レイもそれを許さぬよう、自分の手を片方剣から離し・・自分自身の手に硬質な氷の刃を作りそのシンの剣に対応させていた。
シンもそれに苛つき、レイの身体にフルに炎を送ろうとするが、レイもシンに氷を張り付かせようとするため結局攻防でプラスマイナス零。
なら・・なおさら、早さで勝負だと・・・・シンは一度体を離し、もう一度襲いかかる。








槍と・・剣では大分リーチの差があるものの・・・トリプルAのアスランに勝つのは至難の業だと・・ハイネは思う。

だが今更話し合いなどする気はお互いも毛頭なくて、刃を交じ合わせるのみだった。
だが・・防戦一方になるのは、アスランのイージスの力が強いから・・・・。長さがある分、ハイネの武器は言うことを聞かない。
それに・・・重さだって巧く使わなければ半減される。

---流石頭脳派アスラン・ザラ・・・・・・。的確にハイネのイグナイテッドの威力を半減させる戦い方を選んでくる。

射抜こうとした槍を、カンッと弾かれ、一度床に着きそうになるのを、ハイネはぎりぎりの所でくい止めるが・・・
ガッとアスランに先を踏まれ床に着き・・・・アスランはそれを瞬時に凍らせ、床から取れなくしてしまう。
そうなると・・ハイネは一度武器をブレスレットにしまい、もう一度出す他無くて、炎で溶かす暇すらない。
・・しかし、しまえば当然アスランは懐に入ってくる。
実際・・・考えている暇もなく、ハイネは槍をブレスレットにしまうと同時に、後ろに飛び上がり・・
もう一度槍を出そうとすると、アスランも一直線にハイネへと飛んできて、脇腹をかすり、血が噴き出した。

ちぃ・・っと心で悪態を付き、傷口を塞ぐために、焼き、皮膚をくっつける。

アスランもさすがにそれに驚いて、・・・剣を構え治した。








不思議・・な、感覚と言えばいいのだろうか?その石に触れると、何処からともなく意識が流れ込む。
これは・・・聖母カガリのか。
耳に響くように聞こえるその聖母の言葉に・・・ギルもガンと言いつける。
言う・・いや、心で強く圧す。そして・・・意識を半ば乗っ取る形となり・・・精神的に疲れているのか聖母の声はふっと止んだ。
そして・・スッと・・・・・周りから発せられる力を吸い取る。






「「・・っ?!」」

急に、だった。
壁を蹴り返したシンと・・・その剣を受けた、レイの動きが止まる。
何が・・・起きた?

そう---------お互いに、自分の力が抜けるのが分かり、剣を離す。

まさか。
そう思い・・・シンは、炎を出そうと試みる。

--------・・で、ない。

そして、その石は効力を無くしたように・・・・力さえもなくなっていた。







それは・・大聖堂前で剣を交えていたハイネとアスランも同様で、お互い驚き刃を治める。
「・・・---やったのか?参謀が・・」
そう・・小さく、終わったかのように言い放ったハイネを・・・アスランは殴りつけていた。
その拳を受けて・・ハイネは、抗議の声を出す。

「もう・・終わったんだ、アスラン。---参謀がもう・・・・終わらせた、なら・・お前が足掻く必要もない。」

聖母の力を使い・・・・ギルが、力を手に入れた、ならもう・・争い事など無くなるはずだ。
それなら・・こうやってハイネとアスランが戦う必要なんて無い。

-----そう、ハイネは声を掛けたつもりで、でもアスランにはそうは届かない。

「何も・・終わっていない・・ッ・・」
カガリが・・・終わった。アスランにはそう聞こえていた。
酷く歪んだ顔だと思う、だが・・・・カガリが・・・・。
そうしてアスランは急いで、

-------さっき自分が振るっていたモノと思えないほど・・重たいイージスに驚きながらアスランはその扉の鍵を壊し、中に入っていた。







「・・・・・・・ッ・・か・・がり?」

綺麗・・だった。一言で言うのなら・・・だが。
まるで・・意識を通わすかのように、カガリの前に・・そのカガリが閉じこめられている巨大な石に額を密着している男が目に入る。
その姿に・・アスランは、・・・・血が上って、イージスを突き立てようとすると・・相手はこちらを見る。

「・・・陛下ではありませんか・・、どうされたのです?今は・・・」
「・・何を・・した?」

その・・アスランの様子に、ギルは溜息をつく。・・・思い出していたのか。
だが・・もう、石の力を失った相手。そう・・力負けはしないと、ギルも置いてあった剣を持つ。

「・・・力を無くした今なら・・陛下にも分かるでしょう・・、これが、本来あるべき姿なのです。」

選ばれた者以外・・・石の力に頼らないような・・・。

「・・・この・・カガリが、本来あるべき姿だと----言えるのか、・・・・デュランダル・・」

どうにかして・・いや、どうやっても、アスランはこの男を殺してやりたくて堪らない、なのに・・手に力が入らない。
カガリが・・あんな、冷たいところに・・・閉じこめられてしまった。
出てこない・・話さない、触れられない?
そう・・思うと、急に全てがどうでも良くなってしまって・・・・・なのに、アスランの手は、剣を離そうとはしないのだ。

カガリが・・いない、世界なんて-------------・・どうだって、いい。

そうなのだ、アスランは・・・・カガリがいたから、政治に興味を持ち・・この国を変えたいと望んだ。
なのに・・もう、それを成し遂げても・・一緒に笑ってくれる・・・・・・君がいない。
結婚しようと・・・・・言ってくれる、カガリは・・・・・いないのだ。

ただ・・・飾り物のように、存在する---------カガリしか・・いない・・・・。

"・・がんばろう・・お互い、国民にも・・認めてもらえるように、私も頑張るから・・お前も・・・・"

君が・・・・カガリが・・いないのに・・・・・ッ・・・。




"女ボケして・・国を投げろと言う・・お前なんて・・・・キライだ。 "


「・・・・・・・」



"-----私がいて・・駄目になる、お前なんて・・見たくない。"


「・・・・・・・・っ・・!!」



---------そうか・・だから・・・俺は。

そうして・・アスランは剣を構え・・・・・その相手に斬りかかろうとする。



----・・君がいなくても、剣を握るのか。









斬りかかろうとしたのを、後ろからハイネに止められ・・・・、アスランはただがむしゃらにハイネを突き飛ばそうとする。
石の力がなくなっただけで・・・こんなに非力になるなんて。
そうして、ハイネに後ろから両腕を押さえられながら・・アスランはカガリを見上げる。
聖母・・・いや、女神だ。

俺の・・っ

「・・・・っ・・」

絶対に・・・そこから、連れ出してやるから・・・、・・・・カガリ・・ッ。

そう・・心に誓って、後から来たデュランダル派の兵に抑えられる形でアスランは大聖堂を後にする。
「悪く思わないでください・・陛下。これも平和の為なのです。」
「・・・・・・---------・・」

こんなの・・平和のためなものか。

そう悪態を付いて・・・・アスランは、大聖堂を放り出されて・・・・これから・・本気でどうしようかと考えを巡らせる。
カガリを・・早く、あんな冷たいところから出してあげたい。



---俺は・・カガリを守る。・・カガリが守りたいモノも、全部・・。


---------君が・・いつ、目覚めても・・悲しまずにすむ場所にしてやりたいから。









「・・・しかし・・まだ、マシなのは----デュランダルがカガリを意識不明にしたと、・・それさえも流れたことだろうな。」

ディアッカの傷を、やや怪訝な面もちで見ながら・・・イザークはそう説明をする。
あれから・・シンは、アスランの部屋に行き・・倒れているディアッカをベットに寝かせ・・アスランは混乱した会場に行き、兵を纏めた。
イザークは市民の会場に出向き・・・どこからともなく流れる、
その"平和主義者のハズのデュランダル参謀がオーブの女王をやったらしい"という市民の情報に耳を傾け
・・そして一部のデュランダル派に、説得まで試みていた。

「・・で、どうするんですか---------・・攻めて来ちゃいますよ、オーブ・・・」

そう・・ふてくされて、シンは自分の腕を見る。------------使えなくなってしまうなんて。
だが・・それは、アスランも・・ディアッカも、イザークも--------他の兵もで、正直ザフトは混乱状態だった。
聖母もいないんじゃ・・本当に一般兵には慰めにならない。
それに・・もしも、オーブが攻めてくるようなことがあれば・・それこそ壊滅だ。

「だがよ、俺が思うに・・・あの石の半径何メートルって奴なんじゃん?その・・あれの効力って。」

確かに・・それもそうだと思う。つまり・・オーブ兵だって、この城に来れば・・・・力を無くすと言うことか。
だが・・・結局力がないモノ同士が戦えば、どうせ相殺・・・・。死人だって減りはしない、つまり憎しみも・・・・・。

「・・・・・キラと・・ラクスに、連絡を取れるか?----この状況を・・抜けるのに、どうしたって・・・必要な人たちだ。」

「・・あー・・出来無くないぜ?」

キサカさんに・・頼めばと・・ディアッカは思い、それを了承する。


この・・自分たちの姿を見て・・シンは小さく溜息をついていた。----俺、何やってるんだろ?

なんで・・・親を殺したザフトと・・一緒にいるんだ?・・カガリが・・殺されかけてるのに・・・何も出来ない?



--------ムカツク。































































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あとがき
うーんちょっと展開が急でしょうか・・?
2006/06/08