第四十八章・・・それはもう終盤



「ッ・・っな、なんで・・!!!なんで・・・・・貴方が・・ッ!!!!!!!!!!!!!!」

女だと言うのに、相手の胸倉を掴んで持ち上げていた。
シンも・・ハッとして、カガリを見て・・・・その、目の前にいるものを睨む。
まさか・・・・なのだ、シンからしてみれば、カガリが・・まさか。
半信半疑・・・・・・・・いや、断として、シンはカガリが・・そうなることなど有り得ないと、心のどこかで思っていた。
そして・・相手は----アスラン・ザラは、どうともせず・・黙って、虚ろな瞳をしていた。

「カガリ様・・ッ・・カガリ様に・・ッ・・何を・・・・・・・!!!!!」

カガリ様は・・貴方と共に頑張りたいといっていたのに。やっぱり・・たぶらかされていたんだ。
こんな奴に。
もう、左手で拳を構えていて、それを相手に投げ上げようとする瞬間だった。

「・・ストップです。ルナマリア。」
「ッ・・・!!」

廊下の・・光に照らされて、出てきたのはニコルで・・ルナはそっちまで睨んでしまう。
「下ろしてください。・・その人は、きっと何もしていませんよ。」
「嘘・・ッ!!だって・・だって・・・・・カガリ・・さまが・・ッ・・っ---・・」

死んでしまった。

ルナの・・涙を見て、ニコルの心にも不安が過ぎる。
死んでなどないはず。・・・・・それだけが、ニコルの心を支えていた。
そして・・フッと近寄り、口に手を当てると・・僅か、本当に僅か・・・・・息を、している。

「・・・生きて・・いますよ、かろうじて・・・・・・・・。」

ニコルも安心して・・ハァッと肩を撫で下ろす。よかった・・本当に・・・・・・。
さっき・・ルナを止めて・・でも、不安で仕方なくて・・・・・・・。
薄っすらと安堵の涙が浮かぶのも、気が付きながらニコルは赤ん坊の方も見る。
「ミボシ様も・・ホムラ様も、無事で・・何よりです。」
そこに・・もう・・二人、入ってきた。
銀髪と・・浅黒い、金髪。

「・・・おい・・アスラン、お前ランプぐらい付けろよ・・・・・マジ元から根暗なのに更に暗くなるぜ?」
そう・・冗談を、飛ばした・・・・ディアッカの声も、アスランの頭には響かなかった。
ただ本当に呆然としていたのだ。

でも-------確かに、耳に入ったのは・・

"・・・生きて・・いますよ、かろうじて・・・・・・・・。"





アスランが・・部屋に、入ったのは・・本当についさっきで・・・・。
そして、目に留まったものに・・少なからず驚いていた。子供と・・カガリ。
子供は・・寝言で泣いたり声を出したりしていて、カガリも・・・・・・・寝ている。
訳が分からなくて、でも・・・カガリが会いに来てくれたのかと、少し嬉しくなっていた。

「・・カガリ・・・・。」

何で子供が・・、でも、自分の子供だと知った以上抱き上げたくて堪らなくて・・・。
そっと、カガリの髪に触れていた。
でも・・・そこから伝わる体温が・・・まるで冷たくて、頬を触る。

「・・・カガ・・・リ・・・・?」

冷たい・・・。

思わず・・手を引いて、数歩後ずさっていた。
まさか・・・自分の手を動かして、見て・・・思考をめぐらせる。
・・・・・そんなはず・・・・あるわけ・・ない。
確認しようと・・足を、前に出そうとしたのだが・・・・・アスラン自身の、呼吸が引いていた。

もし

その二文字が頭を巡り、アスランの脳を支配する。

死んでいたら


そこで思考が止まった。





「・・・おい、貴様・・起きろ。」

パンと、目の前で手を叩かれて、アスランはやっとハッとする。
それを見たディアッカは「あーあ、溺愛?」と、眉を潜めてから・・カガリを見た。
カガリ・・・。
フッと、アスランの思考がもう一度動き出す。

"・・・生きて・・いますよ、かろうじて・・・・・・・・。"

「カガリッ」

思わず・・声に出して、叫んだ後・・・・近づいていた。
ルナはそれを少し怪訝な面持ちで見てから・・目を逸らす。
気が付いたら、抱きかかえていて・・・黙って、カガリを寝室のベットへと運んでいた。
冷たい体、・・・筋肉も・・硬直しているように思える。-----まるで・・石のようだ。
パタンと・・閉じられた扉を・・・・シンは「どういうことだ」と、頭を働かせてい考える。

「・・・どういう・・こと、・・・・・ディアッカ。」

ルナが暗く口を開き・・ディアッカも答えていた。

「あいつら・・夫婦だし。こんな時ぐらい良いんじゃないか?」
「ふ・・夫婦???」

シンは・・寝耳に水のような顔になり・・赤ん坊に視線を移す。言われてみれば・・あの二人の生き写しのようにも・・・見える顔立ち。
でも・・まさか。

「ともかく・・ミボシ様とホムラ様を・・・・・オーブに返します。ルナと僕・・で、帰ります。」

「えッ・・・ちょ、なんで・・・っ」

「・・これからは・・軽く戦争になりますから。」

戦争・・?いや、もっと小さな事を言っているんだとシンも理解する。
だが・・実際一対一で望むならば弓使いのニコルと・・・・まだ戦いなれしていないルナは、外すべきだと言うのも分かっていた。
けど実際シンが聞きたいのはそんなところではない。

「カガリが・・・アイツの?」

そう・・声を漏らすが、誰にも聞き取られず・・流されてしまった。






「・・あなたは・・信用の置ける方ですから。・・折り入って相談があります。」

その・・言葉から始まった・・相手の話に、イザークは少し眉をひそめる。
信用?・・・・・・・・知らない奴なのに?
だが・・相手は気にもとめないように、さっさと言葉をせかしていた。
ギルの考えていること、ラウの・・考えていること。
同じ駒を使うのに、その方法は酷く違う。

「で、ですね。どちらにせよ・・その話で行くと、どちらかは滅びるしかなさそうです。」

あっさりと・・言い切る、ニコル。
それもそのはずだと・・イザークは思う。コイツの言う・・・。

ギルが、聖母の力とあの巨大アビリティ・ストーンを使い・・世界を征服するような話と・・・。
そして、ラウの----犠牲者として選ばれた、カガリが・・死ぬ、もしくは・・意識が消える。
その時、オーブのものは・・迷わず戦争を選びプラントを滅ぼしに来るという話。
今のプラントには聖母がいない。・・・あちらに残っている聖母、ラクス・クラインが・・・・父親を殺された事を恨んでいたとしたら・・・

もう、この国・・・プラントだって、おしまいだ。

「ま、でも・・・あの巨大アビリティ・ストーンが正常に作動して、僕たち個人のアビリティ・ストーンの能力を取られ切ってしまったら、 デュランダル参謀の勝ち・・・そして、その制御が上手くいかず・・オーブがプラントを攻め両滅ぼしになれば ・・クルーゼ参謀の勝ちです。」

どちらにも・・厄介な話だと、ニコルは言い・・イザークもそれには同意する。だが・・あの参謀等が・・そんな大それた事を・・・。
「ついでに・・前・・国王を殺したのも・・・・あの、二人ですよ。」
それは・・ザフトの一部で本当に流されている噂で、でも・・そう、証拠があったとしても、
今のザフトの実質的権限を握る二人に誰も逆らうことは許されなかった。

「・・・・なぜ、俺に・・そんなことを?」
安易に・・出てきた質問だった。例え・・そうだとして、何故・・・・?
「だって・・あなた、いい人でしょう?協力してくれるって・・・言ってますよ、ディアッカが。」
パッと出された親友の名に・・イザークは驚いてしまう。
あいつが?・・・まさか。

「・・もし、もしも・・今此処にディアッカがいたら・・・・捕まえますか?」

その・・意地悪な質問に、イザークは眉をひそめてから口を開いた。

「・・今は、貴様の話が本当かを確かめる方が先だ!」

そうして・・三人は、イザークの協力もあり・・一日でザフトの隅々まで、出来る限り調べ尽くす。
デュランダル参謀の部屋に行き・・イザークが、外で監視をしてくれている御陰でニコルとディアッカは先ほどよりもっと深く調べることが出来ていた。

だが・・・それでも、やはり限界があり・・・・必要最低限の情報のみ。

例えば・・そう・・、石を洗礼した・・聖母はどうなるか、とか。
クルーゼが、何を・・・企んでいるかとか。


だが、、どれも。





「・・・・今更・・って、奴だ。」


そう・・ディアッカが吐き捨てた言葉に、シンは・・・顔をしかめてしまった。
今・・一連の話を聞いて・・・・・・・もう。
その、ふざけた・・・ゲームとも言える、二人の陰謀に・・巻き込まれている。
実際・・カガリは意識を無くしてしまい・・・・ギルは、あの巨大なアビリティ・ストーンを手に入れてしまった。
・・・いつ、オーブに情報が漏れて・・戦争になっても・・・いつ、その巨大なアビリティ・ストーンが作動しだしても・・・・・・
おかしくない。

「どう・・し、よう---私が・・ッ」

ちゃんと・・・カガリ様を・・守れなかったから・・ッ・・。
ルナの顔が蒼白になるのを見て、イザークは怒ったように喰いかかる。
「終わってしまったことを、どうこう悩むより・・先の事をみんか!!」
その渇に、ルナはハッと頭を上げていた。
ニコルも「そうですね」と言い・・これからどうするかを、話し合うことにする。







「・・・・カガリ・・・・」

冷たい、でも・・生きているその、愛しい人の頬にアスランは手を這わしていた。
苦しむ気配もない、・・ただ、寝ているように、何をしても起きず・・冷たい。

いつか・・フッと呼吸が止まってしまうのではないだろうか?

そう考えると恐くて、アスランは一分ごとに唇に手をかざしてしまう。
だが・・・・・本当にカガリを救うべく、アスランは頭を巡らせていた。
体を温める薬草を出すべきか、それとも・・この状態は生物学的には非情に冬眠に近い。
なら・・身体を無駄に暖めて、エネルギーを燃焼したら・・その分、呼吸をできる時間も減るのではないか?

色々考えた末、やはり意識の回復が先・・そう思えて・・・・・だが、この・・状態で、どうやって意識を回復するのかアスランにはほとんど分からない。



キィッと扉が開くと、その先には確かニコルと呼ばれている男の子が、ちょこんと姿を現していた。
「僕の調べたところによりますと・・・・、意識の回復は・・そう・・簡単な事じゃないらしいです。」
その言葉に、アスランは身の毛がよだつような気持ちになる。
カガリが・・二度と、目を覚まさないなんて事・・・・・・

「その、方法がないわけではないそうなんですけど・・正直なところ、その治す方法まで見つからない、もしくはない・・状態で。」

それは・・つまり、今のところないと言うことになる。
そうアスランはニコルの言葉から察し泣きそうになっていた。
でも・・。

"・・がんばろう・・お互い、国民にも・・認めてもらえるように、私も頑張るから・・お前も・・・・"

そうだ・・。カガリは、今まで頑張ってきた・・・・だから。
「・・・探そう、カガリを・・・、オーブとプラントを・・」
"助け出すために。"

口で・・言うのとは、裏腹に・・・・どうしたって、意識がカガリに向いていく、だが・・これはもう仕方ないことだ。
・・・・愛している人。
取り戻すため。

そして・・君が守りたい世界を・・・・守るために。



腹をくくって・・アスランは、ニコル達の話し合いに首を突っ込んだ。































































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あとがき
アスラン漢になる!編・・・?
まだまだ終盤引き延ばします。
2006/05/31