第四十七章・・・崩れゆく羽音



「・・まさかの・・まさか、ですよね。」

そう・・小さく青ざめて声を出した・・ニコルに、ディアッカも眉をひそめていた。
あれから・・二人はキサカにそのアビリティ・ストーンについて・・幾分か習ったのだが・・少し気になるところがある。
聖母の協力・・・・あれは、洗礼しかあり得ないとキサカは言う。だが・・。

"そんな巨大で・・まして誰も装備できないようなもの、カガリが洗礼しても・・カガリ自身が壊れてしまうだろう。"

カガリが・・壊れる。
その事実が否応なしにニコルの心には響いていた。
いつだって・・先頭を切って、国を守ってくれていた人。

それがまさか・・・。

城に・・平常にニコルは入りディアッカは影から入り中で合流し・・・・、二人で裏道行動をしていた。
カガリがいない。・・そう、シンに聞かされ・・、ニコルはまさかと・・・大聖堂を、外から覗く。
誰も・・いない。だけど・・・・・・・・・。
この間とは違い・・・・その石の廻りには、霧が立ちこめている。
そして、その・・石はキラキラと輝いていた。そして・・それに共鳴するように、ニコル自身のアビリティ・ストーンも疼く。
キンッ・・・、そう・・腕に鈍い痛みが何度も走り、ニコルは顔をゆがめて・・・ディアッカも、そうのようで顔を渋める。

「・・入れるか、中に・・・・・・。」
「はい・・あっ」

ガバッと木の陰に隠れると、その霧の中から一人の男が姿を現す。
「・・・ギルバート・デュランダル・・・・・。」
ディアッカが静かに声を漏らし・・ニコルも、その人物を見入るように草陰から見ていた。
アビリティ・ストーンに・・何度かさわり、だが・・跳ね返されているようで、触れないでいる。

「・・カガリが・・・・・気に、なります。一体・・・・・。」

どこに。






「・・・・見つかったかい?レイ」

「いえ・・・すいません。私の・・不注意で。」

まさか・・あの姫がいなくなるとは。・・・まあそんな粋な事をするのは・・ただ一人。
ラウ・ル・クルーゼ。
我が親友であり、最大のライバル。そして・・・最大の敵。

「・・オーブの・・人たちの部屋は?」
「探しましたが・・いませんでした。」
おかしい・・そう、レイは感じていた。レイが此処の扉を離れたのは・・ほんの一瞬。
ホムラと・・ミボシを、アスランの部屋に・・誰にも見つからないよう最善の注意を払いながら・・歩いたときだけ。
その・・一瞬で、カガリは連れて行かれた。

おそらく・・ラウに。

ラウはいつも・・憎しみを、悲しみを最大限戦争へと反映させるのが得意で・・・・。だから。
オーブの連中の所だろうと、レイも直ぐ探しに入った。だが・・いない。

もしかして・・。

「・・・アスラン陛下・・の、所なのでは?」
「・・だが、彼は記憶を消されていただろう?」
「・・・です・・が。」

あの薬は本当に強いと、ギルは知っている。だから・・あり得ない。
そう高をくくっていた。






「ねぇ・・アスラン。」
食事が終わると・・ミーアに、腕を捕まれて・・耳元で、囁かれてしまう。
"今日・・・一緒に、寝ましょう?"
縋るような目、当然なのかもしれない・・・ミーアはアスランとこうなるためだけに・・・連れてこられた子なのだから。
だが・・しかし。
「・・すまない。」
ミーアのことは・・事態がよくなれば直ぐにでも・・町、いや、オーブにでも避難させてやるつもりだった。
そうでなければ、この子も・・可哀想だと思う。

「な・・なんで?私と・・アスランは、明日から・・夫婦でしょう?なら・・っ」

ミーアには・・好かれているだろうが、決して愛ではないと知っている。そんな相手にすら・・媚びなければならない。
やはり・・この子は哀れだと、アスランは感じざるを得なかった。
「安心してくれ・・君は、いずれちゃんと・・・・・安全なところに、戻してやるから。」
そう言って部屋に戻ろうとするとこれでもかというくらい・・ミーアはアスランの腕を引いていた。

「・・なんで?良いじゃない・・抱くだけなんだから。・・・・・・・・他に・・好きな人が、いるわけじゃないんでしょう?」

賭だった。
部屋に・・もどれば、きっとあの人が・・寝かされていて、それをみて・・ショックを受けるのはアスランだから。
そしたら当然、ギルとの仲も悪くなってしまう。駄目、ギルも・・平和のためだと、あんなに言っていたのだから。
お願い。
行かないで。

「・・・・・いる、から。だから・・俺は君を抱けない。」
「っ・・」
やっぱり・・カガリ様と・・・・・・そういう関係・・だったの?
でも、でも・・そしたら、やっぱり・・-----
「駄目!!アスランッ・・・お願いだから・・・・っ・・・」

「離してくれ。」

「でも・・でも・・っ・・」


そう・・泣きそうな顔で言ってくる少女に・・アスランは疑問を募らせていた。
ちゃんと助けてやると言っているのに・・なぜこの子は・・。

「・・・君のことは・・ちゃんと、カガリと話して・・オーブにでもひきっとってもらえるよう頼むから。」
「無理よ・・っ!!だって、もう・・・・」
言葉を吐き出しかけてミーアは自分の手を自分の口に当てる。
危ない・・ミーアの口から・・・・・言ってしまうところだった。

「・・・・・・しら・・ない、から。私。-----------どうなっても・・。」

消えそうな声で言われた・・毒を吐くような言葉に、アスランは少し不快感を示す。
なんだ・・この、言い草は。まるで・・・。

-----俺の知らないところで、何か・・・・起こっているような気がする。






「・・・はじめまして、・・・イザーク・・さん、ですよね?」
そう・・ひょっこりと姿を表したのは、知らない顔の奴だった。子供っぽい笑顔が妬けに印象的で、
礼儀正しく頭も下げている。

「誰だ・・貴様は。」
「・・僕・・オーブ兵のニコル、と言います。」
オーブ兵・・・・・、それを聞き、頭に過ぎるのは・・決まってシホとディアッカだった。
その、少年は少し此方をうかがい・・・・唐突な事を口に出す。

「国家のピンチです。お互いに。」
「・・・?」
「・・あなたは・・信用の置ける方ですから。・・折り入って相談があります。」

それは・・今日、一日・・・・・もとよりスパイ担当のニコルと、ディアッカが
・・・・・・勝手に人の書斎に入り込んで見つけた極秘情報の賜物だった。






「・・ねえ・・カガリ様・・・拉致られたんじゃ・・・・・・・・・。」
ルナが顔を蒼白にして、シンに・・・聞き、シンは頭を横に振る。まさか・・カガリが何の抵抗もなしに・・掴まるはずがない。
いつだって・・カガリは・・最後の最後まで足掻いてきたのだから。

「有り得ない・・ルナも知ってるだろ?カガリは・・・」
「・・でも、これ以上・・・・カガリ様にの身に何もなかったって言うのは・・無理よ。」
「けどッ」
あの参謀・・、切り札もってるみたいだったし・・それに。

「・・私の・・せい、だから・・・・・・・っ」

まさか・・あの後で・・いなくなられるなんて。
謝っても・・ないのに。

「・・・王に・・言いましょう?あの人なら・・・協力してくれる。」

多分だけど。
そう言うとシンも同意して・・二人でその・・王の部屋に向かう。

「・・ま・・アイツ・・・悪い奴ではないとおもうけど・・・・。」

その言葉にそうであるはずだと・・ルナは思う。あんなに・・カガリ様に思われていた人だもの。
その人なら・・まだ、信用が置けるかもしれない。





そうして・・その人の部屋への道を曲がり、やっと付いたと言うとき。
その人の・・部屋の扉は半開きで、・・中からまるで赤ちゃんのような泣き声が聞こえてきていた。

「・・赤ちゃん?」
「・・・・・・・みたい・・だな。」

そうして・・ルナと、シンはその半開きの扉に手をかけると、中はランプ一つ灯さない・・暗い部屋。
でも・・その廊下からの光で、いる人物はハッキリと見える。

ソファーに・・寝ている人の輝く髪。

時が止まったように立ち尽くす、男の人。

そして・・、その・・輝く金髪の向かいのソファーに寝る・・

双子の・・・赤ちゃん。













シンが・・ものを言う前に、足が動いたのはルナだった。

急いで・・その、輝く金髪の持ち主に近づき・・・・肌を触る。


-----つめ・・たい。


心の中で、何か、何かが弾けた気がして・・・。







殴りかかっていた。































































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あとがき
ルナ活躍中!
2006/05/29