「ルナッ・・・?!・・ど、どうしたんだよ・・カガリの護衛は・・・・」
「シンッーーーーーーーー・・。」
泣きじゃくる彼女にシンはアタフタして、結局抱きしめて部屋に入れる。
あの・・気の強さが取りえのルナに一体何が・・、そう思い肩を撫でて涙を拭ってやった。
「・・どう・・した?ザフト兵に襲われたのか?・・カガリと喧嘩したのか?」
「ッ・・ぐっ・・ぅ・・。」
嗚咽がまじり・・肩を震わせて、言葉も間々ならないルナに・・シンは優しく手を差し伸べてやる。
本当に・・珍しい、・・・ベットで初めてのとき以来だ。こんな姿のルナを見るのは・・・・・。
シンに・・・何と言えば良いのだろうとルナは考えていた。
だって・・カガリ様が・・プラント王と子供作るほど仲が良いのよなんて・・いえるはずもなく。
そして・・それ以上に、あの憧れのカガリ様が、憎い国の王と恋に落ちていた事が堪らなく許せなかった。
両親を・・殺した。シンの親だって・・カガリ様の・・ご両親だって・・・・・・全部全部。
プラントに・・・ザフトに・・あの、ザラに、殺されたんじゃないの?
"・・・・でも・・ルナ。プラントのものだから、ザフトの者だから・・・悪いなんて事はない。"
悪いに決まってるじゃないッ・・・、殺したのよ!?私たちの・・・・・大切な者を、奪ったのに・・ッ
"・・私の父は・・アスランの父に殺された。"
"アスランは・・アスランで、パトリックは・・パトリック。私はカガリだし・・・お父様はお父様だ。"
血が上った頭で必死にカガリ様との会話を思い出す。
分かってる、私だって・・・・・・こんな、恨んだままじゃ、なにも解決しないことぐらい。分かってる。でも、
そんな・・脳で、整理できるような・・・・軽いことじゃ、なかったのに・・・・・・・・・・・・・っ・・。
"分かっている、国民が・・ルナが、それを嫌がるのも・・分かっている。"
分かった上で・・・・・・・・・・・カガリ様は・・あの王を選んだの?
何で・・、どうして・・・・・・・・?
「っ・・・・・・・・・ぅ・・ぅ・・ッ・・」
私は・・今まであの・・カガリ様の、何を見ていたのだろう?
カガリ様は・・いつだって・・国民のために駆けていらして・・いつだって・・笑顔で。
尊敬していたのに。
"・・私達は、頑張りたい。家柄で・・自分の事を、決めて欲しくはない。"
それが・・、本音?
では---私たちに向けられていた、あの・・カガリ様は何?
あの・・王を語るときの、カガリ様の寂しいそうな顔は・・一体、誰だって言うのよ。
「ルナ・・?」
「・・かが・・り、さま・・・って・・、何?-----いつも・・国の為で、笑っていて・・頑張って・・・・。」
それが・・カガリ様のはず。
「・・・?そうか?あいつ・・結構泣き虫なんだぞ?ああ見えて。」
「え?」
「ルナは・・ほら、カガリの事買いかぶりすぎなんだよ。前から思ってたけど。」
「・・・・?」
「俺と始めてあった時とか・・マジ印象がガキだったし。まー・・大人になるにつれやっぱ成長してるとは思うけどさ。」
「・・どんな・・ふうに?」
「そーだな・・」
シンは・・そこで初めて、昔はカガリが大嫌いで堪らなかったと言いだした。
カガリの・・アスハのせいで、あいつらがちゃんと国を守らなかったせいで・・親が死んだって思っていたと。
「でも・・さ、やっぱアイツも俺と一緒の被害者で・・。何かそれに気が付いて・・・。」
どうでも良くなった。・・・・・・・・そう、シンは笑う。
「・・・でも、それ言ったら・・カガリには説教食らわせられたんだけどな。」
『恨みを共通するから、仲間になるんじゃない。・・・夢を共通するから、仲間になるんだッ!!』
「・・だってさ、ほんと・・カガリらしいセリフだよな。」
本当に・・私は、今まで・・・
何、見ていたんだろう?
ルナも・・・何だか、ぐちゃぐちゃな気分だった。
カガリ様は・・昔も今も、一貫していること言っているのに。何でこうも私は取り違えて見ていたんだろう。
でも・・、確かに、カガリ様の志は、立派だと思う・・誰も恨まず、・・・許せる、心の広い人なんだと、納得も出来る。
でも、やっぱり。
理解しても、心のどこかで否定する・・・自分がいて、それを・・簡単に取り創れそうにはなくて。
ガバッと・・シンに抱きついていた。
「・・ルナ・・・まじ、俺任務中といえど・・男だからさ。」
「・・・良いわよ。今日は・・・・・カガリ様の過去を、教えてくれた代。」
「代って・・、まあ・・良いけど。」
今日は・・帰れそうにないから・・シンにいっぱい慰めてもらおう。
そう決め、シンの胸板に・・・顔を鎮めた。
「・・御久しぶりです・・アーサーさん。」
「ニコル・・ッ!丁度良い。今日・・不信なやつが、尋ねてきて・・・・」
「不信?」
それは・・・プラントの二番街の一番小さな宿屋。・・・言ってみればオーブのプラント支部だった。
「・・キサカさんを出せって・・急に、知らない人が・・」
知らない人が・・キサカさん、尋ねてくるかなぁ・・・・??
そう思い、その人がいる部屋に向かい、戸を開けた。
「・・・、、、、ディアッカじゃないですか?」
「あッ・・ニコルっ!!!」
まじひでぇよ・・と、ディアッカは椅子に縛られたまま言葉を吐いてみせる。
それに・・アーサーは驚き、ニコルは笑っていた。
「この人・・オーブ軍ですよ。アーサーさん。」
「うそっだぁ!!だって・・ザフト軍の名簿にある名前だったし・・」
「元、ザフト、現オーブですからね、ディアッカは・・・・」
「えぇ!!?す、すまないディアッカ君・・・悪人ずらだったから・・てっきり。」
「くそ・・お前、どさくさに紛れてそんなことまで言いやがって・・・・・・・」
そう・・暴言を吐くディアッカの縄をニコルは解き、・・・・・・ディアッカもやっとキサカの所に向かえた。
その、宿屋の・・調理室から地価に伸びる・・その階段。
「・・うわ・・・・・・すげぇ・・」
「入り口は沢山あって、実はザフトの所にもあったりするらしいですよ。」
「まじ・・!知らなかった・・・。」
「僕もです、でも・・見つかると困るから・・って、キラさん自身、あまり使っていなかったらしいですよ。」
「へぇ〜・・・。」
そんな事を言っていると、階段の下にたどり着き、ランプを前にして扉を開けた。
中は・・その道よりもじめじめとしてなくて、寧ろ爽やかなくらいだった。
そしてそこには、体格の良い、めちゃめちゃに強そうなオッサンが座っている。
「・・御久しぶりですキサカさん。」
「ニコル・・と、新顔だな。」
「ディアッカだ、よろしく。」
そう言い・・ディアッカは早速本題の事を口にすると、ニコルは「まさか」と声をあげる。
「・・オッサンが反応しないのを見ると・・もう、その情報は入ってきてるって、事だな。」
「・・まあな、伊達に情報収集を五年もやっていないさ。」
そう・・昨日だと、キサカは説明をする。金色の髪の綺麗な顔立ちの男。
それが・・ミボシとホムラにそっくりな子供を抱いて馬に乗り、プラント城に入っていったと。
「・・レイ・・だな、きっと。」
アイツが・・頼まれたという事は、手引きをしたのは・・ラウか、ギルだろうと推測を立てる。
小さく口に出すと、ニコルは
「・・カガリさんが言ってました、ギルとラウは危険だって・・・・・前ギルと言う人に・・カガリさんは殺されかけましたしね。」
「・・人質・・だな。」
「ああ。」
そう三人で顔を見合わせ・・・どうしようかと策を練っていた。
「・・アビリティ・ストーンの話・・・・・聞きましたか?」
ニコルがそうして・・あの大聖堂にあるアビリティ・ストーンの話を始め、キサカはそれに聞き入った。
キサカも・・実はカガリが幼い頃から付き人をしていたせいか、その事についてはカガリ並に詳しいのだ。
「・・危険すぎる話だ。・・・・だが、ホムラとミボシはそれの・・人質であることが、ハッキリしたな。」
「・・でも・・どうするよ?どうやって・・・」
「・・一応・・僕は夜が開けたら、ザフト城に戻ります。その時・・カガリさんに伝えておきます。」
「けど・・知ってても、どうしようもないんじゃ・・・・・」
「じゃあ・・ディアッカ、貴方潜入してくださいよ。誰にもばれないように。」
「はぁ・・?!・・俺潜入超苦手・・・・・・・・。」
「つべこべ言わない。僕も手伝いますから。」
そう話し終えたのを聞き、キサカは
「・・ならば・・・この事態を、私はキラ君等に伝えよう。」
「・・時間、掛かるじゃん。」
「なに、私の力を使えば・・そう難しくもない。三時間で十分だ。」
そうして・・ニコルとディアッカは、城にもぐりこむ事となり、二人で当然別々のベットに寝転がる。
暫くすると・・ニコルはディアッカに質問を投げかけていた。
「・・なんで・・・・ディアッカは、オーブにきてくれたんですか?」
疑うわけではなく・・ただ、その理由を聞きたいと、ニコルは笑う。
「・・ミリィとか・・いたし、差別が嫌だ・・とか、色々だな。」
ディアッカの真面目な言葉に・・ニコルは実は僕・・結構勘ぐってたんですよと、付け加える。
「・・ま、直ぐ信じろってのが難しいと・・俺は思う。」
「あはは・・、確かにあのときのマリューさんとムウさんは強引でしたから。」
でも・・
「僕・・あの反乱軍の結成当時からいたんです。・・でも最初当然小規模で・・いつか、ほんとに・・殺されるんじゃないかって怯えてました。」
あのころ・・まだニコルは十になったばかりで、でも・・。
「・・カガリさんが一番・・頑張ってましたし、シンも・・一年後ほどに加わって・・、次第に・・街の人も協力してくれて・・・・・」
そして。
「敵だと、親の仇だと・・思いこんでいた、あなたが・・仲間になってくれて。----本当に嬉しかったんですよ。」
その、あどけない・・・自分よりも二歳年下の・・でも自分よりずっと大人びた奴を見て、ディアッカは「そうか・・」と声を漏らした。
親の仇・・・・・・・そう、思われているのは当然で、でも・・こうやって、ミリィも・・コイツも分かってくれる。
それに今のあのオーブの城で・・ディアッカもそれなりの地位につかせてもらえたのは・・やはり、偏見しないカガリのお陰だと思う。
「・・ま、俺も・・そう言ってもらえると・・、結構嬉しかったりするんだけどな。」
照れくさく、でも・・まあたまには良いかと弱音を漏らすとニコルはやんわりと微笑んで、ディアッカもニィッと笑い返していた。
朝、・・・部屋を誰かが訪ねて、ルナかなと・・少し考え、戸を開けた。
だが、
「・・あ、あの・・カガリ様・・・・・・・・お話が・・・。」
・・ミーア?
「・・かまわないが・・」
そう・・答えると、おもむろに腕を引かれ・・・大聖堂に、連れて行かれた。