朝起きて・・なんだか、いつもと違う気分だと・・深く思う。
何故?
「おはようございます!カガリ様!」
「ん・・・、、、おはよ・・・」
寝起きで・・眠たそうに目を擦るとルナは何だか新鮮なカガリ様を見てもう胸いっぱいです!と笑ってみせる。
カガリも笑い返すが・・正直、今日ある公務を思うと・・あまり笑っていられないと言うのが心情でもあった。
ギル・・それに、余り面識もないラウ・・・・。
この二人が、今のプラントを動かすものだとカガリは理解していた。
アスランは・・まだ、恐らく・・この二人の意見の最終決定を下す事しか出来ない。
それまでの過程・・・、そしてその政策の末を・・理解しているとは思えないから。
「よし・・っ、頑張るぞ!」
この間の食料物資の件、そして・・あのアビリティ・ストーンのことも・・色々話し合わなければならない。
「この度は・・女王、よくおこしになさいました。」
「まさか・・高貴な方とはしらず、こないだのご無礼をお許しください。」
そう・・二人の男性に頭を下げられ、カガリも勘ぐりながら挨拶を仕返す。
一緒に・・来てもらったルナとシン、ニコルも頭を下げた。そして・・ニコルとカガリは席に座りカガリとニコルは席に着く。
同時に・・ギルとラウも席についてアスランも座った。
「それでは・・会議、といきましょうか。」
仮面の男が開始の合図を言い・・話し合いがスタートする。
食料また・・鉱山物資の話が一段落し、仮面の男は切り出すように話を変えた。
「それより・・いつになれば、本当のラクス・クラインをもどして頂けるのでしょうか?」
国際問題に発展しかねません、と付け加えて。
「戦力が・・そちらに傾いたままだと、こちらとて平等な話し合いもしずらいですしね。」
「オーブは平和宣言にのっとり・・自国からプラントを責めるような事は一切しない。」
そう切り返し・・ですがとその男も食い下がらない。
「聖母ラクス様は・・もとより、プラントの人・・そちらがその気ならばこちらとて考えがあります。」
その・・発言を、止めたのはアスランだった。
「クルーゼ参謀、もう・・いいです。貴方の意見は分かりました、しかし・・この国ではまだ女性の規約が出来たばかり、もう少し・・」
王に言われてはと、その男はほくそえんでから・・口を引き、カガリは逆に質問を投げる。
「何故・・聖母が必要なんだ?また戦うつもりか?・・それとも、あの聖堂にある大きなアビリティ・ストーンか?」
「それは・・是非私も聞きたいね、ギル。」
便乗するようにラウはギルを向く。そう・・あの石の研究を・・ギルは前々からしていたとラウは知っていた。
「平和の為・・ですよ、女王。あれは・・使い方さえ間違えなければ非常に良い力となる。ご存知でしょうか?」
「・・・継承者であるはずの・・私が知らぬはずないだろう。だが、その方法とやらを・・見つけられたと言うのは大変疑わしい。」
カガリ自身、アビリティ・ストーンは危険なものではないと理解していた。しかるべきものがつけて人のために使えば良い。
だが・・今のザフト軍は何だ?どう見たって・・能力の乱用だ、そしてそれのせいで土地が枯れている。
それを、この男は知っているのだろうか?
「ですから・・カガリ女王、是非貴方からも助言いただきたいのです。平和のために。」
「・・・・・それは、そちらのその内容を教えていただかないと・・なんとも答えられない話だがな。」
その腹の探り合いに・・アスランはストップをかけた。
「今日は・・もう、良いでしょう。・・・・デュランダル参謀・・少し残っていただこう、色々聞きたいこともある。」
ニコルは終始・・三人の顔色を伺い、それを適度にメモしていた。
そうして・・カガリ達は会議室を後にし、カガリの部屋に戻る。
「たー、足いてぇ・・疲れた・・」
「ほんとね・・」
そう悪態を付くが二人とも護衛だから仕方ないと割り切り・・ニコルはカガリに三人の様子を説明し出す。
「・・クルーゼ参謀も・・デュランダル参謀も、要注意です。クルーゼ参謀は・・きっと好戦的なのでしょう。」
「だろうな、それに・・何か切り札を持っているようすだったしな・・・」
「デュランダル参謀は・・恐らく、カガリさんを利用、若しくは・・平和の為に、何かしたいように思えます。」
そう・・言われるものの、カガリはラウなんかより・・ずっとギルを睨んでいた。
アスランを・・殺そうとして、私を殺そうとした。
きっと・・・・・・・邪魔、なのだろうと、容易に想像できる。
「あと・・あの王、参謀からあまりあの巨大なアビリティ・ストーンの事を伺っていないようでしたね。」
だから・・最後に引き止めたのかと、そう・・言われて頷く。
アスランは・・やはりまだ、あの二人に舐められている若しくは・・アスラン自身あまり政治に興味がないのかもしれない。
「・・・デュランダル参謀・・先ほどのアビリティ・ストーンの話、まだ私にはとおしてもらった覚えがないのですが?」
いつもより・・強気な王の瞳に、ギルはやれやれと頭を振る。
まったく、いつもの様に・・流されてくれていればいいものを。
「・・もうしわけない。まさかカガリ皇女にあの石の存在を知られているとは夢にも思わなかったのです。」
「そんな事はどうだっていい、あれは何をするためのものなのか・・ハッキリと伝えていただこう。」
机にパンと手を突いた王に・・仕方なくも説明をすることにした。
「あれは・・聖母の力を宿せる特別な石なのです。」
そういうと・・アスランはそんな事ができるのかと・・眼を見開いて見せた。
道中・・レイは腕の中の者達を見て、少し・・申し訳なく感じる。
だが・・
これも、世界の為だと。
ギルと話を終え・・アスランは廊下を一直線に歩き出した。
当然、
カガリ姫の部屋に。
コンコンと・・・戸を叩くと、中からはあの護衛の・・ルナマリアだっただろうか?その子が顔を出した。
「何の・・用です?」
「いや・・カガリ姫、いや、皇女とお会いしたい。」
丁寧かつ紳士的に言うとその子は少し眉を潜ませてから、「大聖堂にいきましたよ」と教えてくれる。
そして・・アスランは少し小走りで大聖堂に向かっていた。
「・・うわぁっ、本当に美味しいっ!!」
「だろ?私のお墨付きの茶だ。アスランも好きだしな!」
クッキーや飴、そんなものを一緒にほおばりながら・・ミーアはその皇女様と話していた。
かっこいい人だと思う。だって・・此処に来た時の第一声が・・
"こんなムサイ所、よくいられるな!遊びに来てみたぞ!"だもん。
それに・・こんな自分と歳も変わらない人が、頑張って・・皇女様なんて、ホントあこがれちゃう。
「いいな・・私もカガリ様の国、行ってみたいです!絶対・・楽しいっ!」
「お?何なら来るか?そうだな・・アスランと結婚して、ハネムーンとかで来るのも有だし!」
「あ!是非・・!!アスランも・・オーブ好きみたいだし・・・・。」
そう言うと・・カガリ様はそうなのか?と尋ねてくる。
「はい!オーブから戻ってきたら・・急に優しくなって、ホントビックリで・・」
「・・そうか、良かった、、、な?」
「はい!」
嬉しそうに微笑むミーアに・・カガリもつられて笑う、でも・・実際ハネムーンでこられたら泣くだろうと思うが。
・・だが、納得・・しなければならない事だって沢山あるのだと、言い聞かせた。
そうワイワイと会話していると急にアスランが入ってきて・・走っていたようで少し息を切らせている。
「・・いた・・カガリっ!」
カガリって・・失礼しちゃうわとミーアは眉を潜めた。
だって、何だか・・アスランは・・カガリ様と一緒にいるのが楽しくてしょうがないように見える。それに今呼び捨てだったし。
「・・・・・・?王・・どうかしたのか?」
その言葉に・・目もくれず、アスランは置いてある椅子を真ん中・・といっても少しカガリよりにつけ、腰を下ろした。
それをみて・・ミーアは少し憤慨し、わざとらしくアスランに尋ねる。
「お茶、カガリ様からいただいたの、飲むでしょ?」
まるで妻のようなセリフ。それをわざと吐いたのに・・アスランは一度目をあわせて「ああ」としか答えない。
ふわっと・・直ぐに目を逸らして、カガリ様を見ていた。
「どうかしたのか?」
「・・・・・。」
そう・・尋ねられて、アスラン自身・・どうしてだろうと単純な疑問が浮かぶ。
探していた・・何故?走ってまで・・・。
「・・逢いたかった・・の、かな?」
「かなって・・なんでお前が疑問系なんだよ。」
変なのと目だけで、爽やかに笑う相手に・・アスランも瞳を細めて笑みを零す。
ああ、そうか、ただ・・。
こうやって・・・過ごしていたいだけなんだ、きっと。
"逢いたかった"なんて、ミーアには一度だって・・使ったことないじゃないっ!!
キッと・・睨んだのはアスランで、なんで、女に関心がないんじゃなかったの?と心で愚痴を零す。
いや、確かに・・カガリ様は綺麗だし、性格だっていいんだろうけど・・。
「・・アスラン・・っ、ね?カガリ様と三人でお話しましょうよ、ミーアだって・・カガリ様とお話したいもの!」
そう言うと、カガリ様は笑って「そうだな。」といってくれるのに対して・・アスランは関心がなさそうな眼をこちらに向けていた。
その目だって・・前に比べればずっと刺がない。けど、でも。
「お前さ・・もうちょっと、女の子に気使えよ。」
「は?」
呆れたように・・カガリ様はアスランに突っ込み、アスランは訳が分からないと言う顔をしてみせる。
「ほんと・・・ミーアだって困るよな、こんな気の使えない相手じゃ。」
しょうがないやつだ、まったくと・・カガリ様も、アスランを見て微笑んだ。
その顔が・・とても、綺麗に、ミーアには映っていた。
「な?ミーア」
「え、えっと、はい!・・・・一応式挙げる相手なんだし・・もうちょっと、かまってくれても・・」
ね?と、アスランの翡翠を覗き込むと「そうか?」とあいまいな言葉を返されて・・カガリ様は溜息を付いた。
そして・・時間が過ぎ、カガリ様が帰ると言い出すとアスランも帰ると言う。
「アスラン・・もうちょっと・・・・」
「いや・・今日はかえる。」
あわせていた眼を・・フッと逸らしたと思うと、その目は既に・・前方に歩くカガリ様を捕らえていた。
タッタと・・アスランは小走りで、その人を追いかけて・・扉が閉まる。
「・・・・・まさか、ね?」
小さく・・ミーアは呟いて、残ったお茶を一気に飲んでいた。
「カガリ・・、部屋まで送るよ。」
後ろから・・来たアスランに腕をつかまれて・・振り返ると、ゆるりと微笑んだ笑顔を目の当たりにしていた。
満面の、笑みで、答えそうになるのを堪え、カガリは「どうも」と素っ気無い返事を返す。
「・・・いいのか?ミーア、寂しそうだったぞ?」
「別に・・あの子は悪い子じゃないが・・好きなわけじゃないし。」
カガリの隣を歩きながら・・アスランは何だかこんなことが前にもあったような気がするという錯覚に陥る。
あっただろうか?そんな事。
ちらりと・・隣を伺うと、綺麗な金髪が揺れて・・それに手を伸ばしていた。
「・・っ?」
「・・すまない・・、本当に・・綺麗だとおもって・・」
夢で見た・・カガリと同じだ。本当に綺麗な金髪だと思う。
指先で髪を弄り、そっと・・・偶然に耳に触れるとビクンと肩が動いた。
「あ、・・悪い。」
触るのに・・熱中していた。そしてパッと手を離して・・その人が機嫌を損ねていないか気になり顔を覗く。
何度も瞼をパチパチとさせて・・少し潤んだ金褐色の瞳と目があう。だが、すぐにパッと逸らされてしまった。
「っ・・王、お前・・少し、一国の長として軽いんじゃないのか!?易々女性の髪に触るなんて・・」
王?
「アスラン、だ。それに・・俺は、女性の髪に軽々しく触ったり・・・・」
あれ・・、いま、やったのか。
言いかけた言葉を紡ぎ、変だなと・・心の中で思った。いやでも・・触りたかったんだから・・仕方ないじゃないか。
「ほらみろ、王は王らしくあるんだぞ!!・・じゃあな、王!!」
フイッと・・顔を逸らせて立ち去ろうとしたカガリの腕を掴み、もう一度、さっきと同じ事を繰り返した。
「王・・じゃない、アスランだ。」
分からない。
けど・・ムカついた。
王ではない、俺は。アスランだと。
その言葉に・・カガリは少し身を振るわせる。アスランなんて・・呼んでしまったら・・、また思い出して、頭痛が・・。
名前でなんて・・呼べるわけないじゃないか。
極力・・思い出させることはしたくない。
だが此処で下手に意地を張るのも、、、変だろう。
「・・・・・・・・・・・アスラン、分かったから、、ちゃんと、"アスラン"って・・呼ぶから。」
もう・・触るな、行かせてくれよ。
「いったな、ちゃんと・・会議とかではいいが・・こういう時は・・ちゃんと名前で呼べよ、カガリ。」
「・・・・・・・・分かったって。」
ぶっきら棒な返事をして・・カガリは自分の部屋へと足を急がせていた。