それから・・一ヶ月、なんとかアスランはプラント全州に、女子差別撤廃の憲法を通した所だった。
前々から・・参謀のギルがそうしたほうが良いと急かしていたのと・・それに。
きっと・・・・カガリ姫もそれを、望むだろうから。
理由は・・ただ、それだけだった。
そして・・毎日、首に掛かる・・赤い石を見ては、その姫の姿を浮かべていた。
部屋に戻ると、つい最近枯れた・・白い花がめに入り悲しくなる。
その・・花びらを手に取り水洗いをした。
此花は・・元より、まだ芽が出たばかりのときに摘んで乾燥させ使う薬草だったのだが・・・
つい・・最近、見つけた本でこれの花びらを使うものを発見したのだった。
"思い出し草"
この・・ページに、入っていた、紙切れを見あげ、とても驚いたのを今でも覚えている。
・カガリ=ユラ
・白い花
・金髪
・金褐色
・草原
・オーブ
そして最後に
"忘れたくない。"
まさかと・・思う。もしかして・・前にも接点があったのか?
前、決まって夢に出るのは何処かの花畑で・・それが、草原?
何だか有り得ないと思いながらも・・それを作ろうとしている自分がいた。
「結婚式・・ねぇ。」
ディアッカは苦笑し、カガリを見る。
「で、姫さんは?」
「別に、祝いに行くだけさ。」
それを聞いて・・キラとラクスは心配そうな顔をする、ルナとシンその他のマリュー達も少し頭に?を飛ばした。
「僕は・・護衛につけないね、まず掴まっちゃうし・・それに、ラクスの出産も近いから・・傍にいてあげたい。」
「キラ・・、ですが・・・あちらでカガリさんに何かあったら・・・」
「俺とルナで・・・・」
「それが心配だからこういう話になってるんだぞ、シン。」
そうディアッカに釘を打たれシンはむすっとする、たしかに・・・シンとルナでは心もとないと皆は感じる。
「僕も行きましょうか?」
そう・・ニコルも言い、ムウは「俺も行きたいが軍の指揮がな〜」と苦笑する。
「まーニコルがいれば・・」
「なんだよ、俺たちだけじゃ頼りないみたいな言い方!!」
心外だとシンは喚いて・・カガリは笑って頼りにしているぞというと「もちろんだ」と返ってきた。
結婚式・・か、そうだ祝いにアスランが気に入ったお茶の葉でも大量に持っていくか。
そんな事を・・ボンヤリと考えてミボシと・・ホムラにキスをする。
小さな子供の頬に水が伝いカガリはその二人を抱きしめた。
首が・・やっと少しだけ据わった我が子。
アスランとの・・・
大切な子供。
息を殺して泣いて、そのわが子は小さな手でカガリの金髪を引く。
「ごめんな・・ッ-----母さん、情けなくて・・・」
すると・・急にミボシとホムラも泣き声を上げた。
今までにないくらい・・大きく泣いた。
「-----ミボシ・・ッホムラ--------っ」
一緒に泣いてくれる我が子にカガリも声を出してなく。
嗚咽が混じって、でも泣くのを止められそうになくて。
選んだくせに。
"・・その程度の想いなら・・いいんじゃないか、別に"
アスラン
お前だけには・・・・・・・・言われたくなかった。
その程度の・・想い?
涙で、鼻水で息も出来ないのに。
胸が詰まるのに。
泣き崩れて、ベットのシーツを掴み顔をうずくめる。
これが・・お前の記憶を消した、私への・・・・報い・・なのだろうか。
愛している人の・・・結婚に、どうともしない顔で参列しなければならない。
「・・・アスラン・・・・・・・・・」
愛して
我が儘すぎる思考を巡らして、どうしようもない事だと理解しながら・・・日が昇るまで泣いていた。
「レイ・・悪いが・・君に頼みがある。」
そう・・今日、二度目の会議室でギルに言われる。
それは・・・先ほど命を受けた、兄ラウと・・同じような内容だった。
"一人でいい。連れてきて欲しい。"
刻一刻と近づく結婚式、アスランは気にもとめずにいた。
ただの・・披露宴だし・・・・・・・。
別に、好きじゃなくたって・・夫婦にはなれるだろうと。
花びらに申し訳思いながら煎じ、奥の部屋から色々と他の薬草も持ち出していた。
でも・・もし、接点があったのなら・・・
なぜ、消す必要があったのだろう。
カガリ姫について深く考えれば、薬草の本の忘れ薬に書いてあることと同じような症状が脳に襲うことをアスランは知っていた。
だから、極力考えないようにしながら薬を作る。
「なーんか・・このごろアスラン、来てくれないの。」
高さ4m、横幅3m、縦幅3mの球形に近い石を見て、ミーアは隣に座るハイネに愚痴を零す。
「せっかく・・オーブから帰って来て・・優しくなったのにっ!!」
プンプンと怒るミーアにハイネは優しく頭を撫でてやった。
「ほーら、そんな怒ると折角の顔が台無しだぞ?」
「ええっ!顔だけがとりえなのにッ?!」
そう・・わざとらしくおどけるミーア、そして二人は笑い出した。
「あーあ、アスラン・・・・ミーアの事、すきになってくれないかなぁ・・」
その・・言葉に、一抹の悲しさを抱いたが・・・ハイネは笑い、「そう・・なるといいな」と言ってやる。
「・・ねぇ?ハイネは・・・ミーアの事、どうして・・・・連れてきてくれたの?似てたから?ラクス様に。」
でも・・ミーアはそんな事望んでなかった。
アスランが・・もし、このハイネのように自分を気に駆けてくれていれば・・アスランと結婚しても悔いはないと思う。
想ってくれる人が良い、・・・・・だから。
「ねぇ?」
ハイネは・・私のこと・・・・どう、想ってるの?
すきって、そう・・言ってくれたなら、
ミーアは・・私は・・・・・・
「・・・同情、だったかな、やっぱり・・・最初は。」
苦笑交じりにそう言われ・・「そう」と溜息を付いた。
今まで、身体しか求められなかった自分を・・落ちぶれた生活から救い出してくれた人に、ミーアは期待をしていた、でも。
「・・・そっか・・そうだよね。」
ただの・・同情だったんだよね。
そう・・気持ちをにけりをつけミーアははっきりとハイネに告げる。
「私・・今のアスランなら、きっと・・好きになれると思うの。ラクス様が戻ってくるまでの間でも・・幸せでいられると思うの。」
でも、でも・・それは、やっぱり。
「ハイネの・・お陰だわ、・・・・助けてくれて・・ありがとう。」
そう・・頭を下げ、ハイネは極力自分の本心を出さないようにミーアに笑いかける。
「礼なんて・・いいよ。」
式まであと・・・・・二週間。
「じゃあ・・頼むな、ホムラとミボシ・・・・」
そうマーナに言うと「ええ」と言われる。
「ですが・・この時期のお子さんを二三週間も母親から離すのは気が引けますわ」
「公務だ・・仕方ない、戻ってきたらもっと愛でるから。」
「はいっきっとこの子達も喜びます、こんな立派になられたカガリ様に・・」
長々と話され「そんな立派なんかじゃない」と笑い返しておいた。
「ごめんな・・ラクスも、立ち合えなくて。出産・・・」
「いいえ・・・頑張って行ってらっしゃいな。」
「・・・・・・気をつけてね、カガリ。」
二人にも・・励まされ、カガリは馬に乗る。
「・・じゃあ・・行きましょうか。」
ニコルはそう、言い・・カガリ達は馬を走らせた。
大聖堂に・・足を運ぶ、それは・・ミーアと会うためではなく、そこにある石が・・気になったからだった。
アビリティ・ストーンと酷く似ている・・・・・その石。
ミーアが時々研究史に来る人がいると言っていて、どうやらそれの指揮はギルが取っているらしいとアスランは知っていた。
だが・・その、内容を深く聞いたことはない。
大聖堂に入ったその酷く大きい石をみてアスランは大きく溜息を付いた。
これだけの・・石があり・・・・・もし・・聖母がこの国にいたら?
それこそ・・アビリティ・ストーンが大量に出回ってしまい、そしてその強すぎる力は必ず人殺しに使われるような気がしてならない。
溜息を付いているとミーアが駆け寄ってきた。
「綺麗よねっ、この石!」
「・・・・・確かに、綺麗だ。」
透明の石、それに・・触れると妙な違和感を感じる。
「なんかね・・さっき来た研究者が言ってたんだけどー、これ、普通のアビリティ・ストーンじゃないんだって。」
それもそうだと・・アスランは思う、こんな透明度の高い、そして大きいアビリティ・ストーンを見るのは初めてだ。
そして何となく、そこで力を使おうとしても・・その能力は欠片も発揮されなくなる。
・・・・・?これが・・この石の力なのだろうか?
「それと、この石、全部のアビリティ・ストーンの中心だって・・言ってたきがする。」
そう言い終え、ミーアは偉い偉い?とまるで甘えるように言われて・・アスランも「助かった」と言えば、その顔はほんのり赤く染まる。
「・・優しくなった、気がするわ。アスラン。」
「・・・?そうか----あんまり実感はないが・・」
見違えるほど、優しくなった相手に・・ミーアは心を揺らす。
もとより・・顔もタイプだし・・・・それにこの人の困った顔や笑った顔は・・恐らく普通の女の子であれば誰だって心臓がなるだろう。
この人と・・国の為といえど・・結婚、か。
ハイネのように・・本当にこの人が・・自分を気に駆けて、もしも、恋心を抱いてくれたら?
ミーアは何処となく・・ハイネが自分に好意を寄せていたと知っていた、言ってくれれば・・きっと、恋人にもなっていたと思う。
だけど・・私は・・・・
国の為に、何かしたい。
誰かの・・・・・・・役に立ちたい。
だから・・・。
「私・・アスランの事・・好きよ。」
きっと、いつかは・・・心の深いところでもそう・・思える。
「そう・・か、ありがとう。」
ちょっと、引き気味に微笑んだアスランを・・ミーアは悲しそうな眼で見ていた。
やっぱり・・優しくなったといえ、好きになってくれたわけではないのだ。
「すまない・・俺には恋とか・・愛とか、よく----分からないから。」
カガリ姫のように・・
誰か・・一人に・・恋焦がれる感覚。
それを・・・・・失ったように・・・・・・・・思えてならない。