対談の後・・・カガリはすぐに息子と娘をあやしだすと、急に一人の者に・・話しかけられる。
「・・・すいません、----別に、重要な話でもないのですが・・」
藍色の髪の人。
翡翠の眼を持つ人。
「・・・敬語は性に合わない・・"皇子"。」
「・・では・・"姫"----あの、白い花----特別何かしてるか?」
その・・問いにカガリは微笑して
「・・いや、ただ・・毎日愛でてるぞ。子供と同じくらい。」
そう言って、カガリは寝てしまった子供たちに・・優しくキスをして、「後を」とマーナと呼ばれる女性に頼んだ。
「・・そうか。」
あの花に対する愛情なら・・結構負ける気はないのにと少し思う。
だから・・アスランは、すぐにその姫に頼みごとをした。
「部屋に来て・・花を、見てやってくれ。」
それは・・プラントでの花がアスランを見て、喜ぶような気がするのと一緒で・・きっとオーブではこの人なんだろうと思っていた。
部屋に通し・・その白い花を見ると、姫は微笑んで---手を差し伸べる。
その・・光景を何となく眺めていると・・急に姫は笑い出した。
「いやぁ、混乱させたな・・お前達、色々あったんだよ。悪かったって。」
そう言って又笑い・・会話をしていると、植物は少し・・げんなりとして見せるような気がした。
「悲しむなよ・・決めたんだから、-----お前らも寂しいかもしれないけど・・ちゃんと会えたし・・な?」
「-----君は・・話せるのか?その花と・・」
そう尋ねると・・姫は困ったように笑い、アスランに話しかける。
「植物達は・・お前が聴こえない事に悲しんでいるみたいだぞ・・?"前は聞いてくれたのに"ってさ。」
前・・、何時の事だろう?
「----まあ、話せなくても喋りかけてやってくれ、お前の事凄く好きだといっている。」
そして微笑まれて・・アスランもぎこちなく笑い返した。
すぐにすたすたと・・出口に歩いて行くその人を見て・・花に向き直る。
「・・話たいな、俺も・・・君らと。」
だけど・・花からは何の声も・・音もしなかった。
「カガリっ!」
アスランの部屋彼出ると・・すぐにイザークに呼び止められて顔をあわせる。
「・・?なんだ?イザーク」
「何だではないっ----一体・・どういう・・ッ!」
イザークが怒るのも無理ないと思い・・カガリは説明する事にする。
「・・あいつな、君が来ないなら俺がオーブに行くとか分け解んない事言い出して・・だから、消したんだよ。」
「・・・記憶を・・か?」
「ああ・・、それが・・プラントとオーブの為だと、私は思う。」
「だが・・貴様も・・アイツもそれでは報われない。」
「・・そうか?アイツはもう・・私のことなんて知らないし・・私は・・」
"あいつの残した子供がいるから・・大丈夫だ。"
「・・・・・・本当に・・いい、のか?アスランはもう時期・・結婚をする・・ぞ?」
「政略だろ?ならいいさ。」
その言葉に・・イザークは俯き・・カガリは声をあげて言う。
「・・忘れてくれと、望んで、消したのも・・私で。そんな私が・・今更、アイツの人生にどうこうできるなんて・・思ってない。」
悲しそうに眼を細めて言われた言葉にイザークは重みを感じる。
だが、馬鹿な奴らだと思う。
プラントを捨てようとしたアスランも・・その好意を無駄にしたカガリも・・・。
そして何より、想いあっているはずなのに通じない彼らが。
どうしようもなく馬鹿で、不器用だと思った。
「アスランは・・もう、腑抜けだ。----あれではプラントの行く末も心配になる。」
「・・そう、なのか?」
「・・・・・・・お前が、あいつの心から抜けたせいだからな。」
そう念を押すとカガリは「すまない」と俯いて・・イザークは言葉を繋ぐ。
「----・・あいつは・・泣いていた。"忘れたくない"・・・と。」
それを残して・・イザークは自室へ向かった。
花を見て・・またうとうととしだし・・ゆるりと眼を閉じる。
" "
君の声まで・・聴こえなくなってしまった。
そう思うと・・急にグイと引っ張り出された。
「えっ」
みれば・・アスランも花畑の中に足を踏み入れている。
腕には・・暖かい感触が走っていて誰かがいると思ったが・・見たら消えるような気がして・・そっちには向かなかった。
"綺麗だなッ"
「・・そう、だな。」
隣の人は・・嬉しそうにはしゃいでいるように思えた。
そして・・思いついた名前を呼ぶ。
「・・君は・・"カガリ"?」
そう・・尋ねると、さっきとは違う声で"そうだけど・・"違う。"と答えられたような気がした。
オーブの姫のカガリではない、アスランがつけた・・"カガリ"と言う花の精霊か何かかと思えたのだ。
でも---違うと否定されてしまったな。
隣のその者を抱きしめるように動くと・・またパッと消えてしまう。
-----地面が崩れる。
--------まただ。
見えない君。
やっと・・話せたと思ったのに、抱き寄せる事も出来ない。
そう・・足場の無い場所に立ちすくんでいるとどうしようもない頭痛に襲われ、目が開く。
・・・花の目の前で・・頭を押さえて立ち上がり、いつの間にか辺りは夜になっていた。
「・・ッ---・・」
引かないその痛みに眼を細め花に手をやると花は、さっきよりも・・ずっとしおれているように思え、心配になる。
起き上がり・・水を汲んで駆けてやった。
何もすることがなくて・・パタンとベットに倒れる。
そういえば・・一年ほど前もこの部屋にいて・・笑っていたような気がする。
誰と?
キラ・・か?
そう・・もうプラントでは・・・ザフトでは裏切り者扱いの親友の名前を頭に浮かべたが、この城でキラといた記憶なんてない。
誰?イザーク・・それともあの頃はまだいた、ディアッカ?
ベットのシーツに手をやると、心ではなく身体が温かくなり疼いた気がした。
心臓がトクンと音を立てて、何ともいえない温かさに襲われる。
懐かしい・・この感じ。
細い指が髪を梳く感触がふいに思い出されて・・頭の痛みが激しくなり気を失った。
泣き喚く子供に母乳を飲ませ、飲みながら眠る我が子にカガリは苦笑する。
「・・ホムラ・・お前よくこんな騒がしい所で眠れるな。」
そう・・言ったのは、片割れのミボシが泣き喚いているからで・・ホムラをベットに戻しすぐにカガリはミボシに母乳を与える。
泣き止んで飲みだしたミボシが・・どこかアスランに被る。
翠瞳、藍色の髪。
「・・・・---アイツも・・昔はこんなんだったのかな?」
ミボシの頭を撫でて・・飲み疲れて眠るその額にキスをした。
そして兄の待つベットに横たえ・・カガリは外を見る。
一年、速いような、遅いような・・そんな一年だったと思う。
まず・・オーブの再建。どうかんがえても・・いってみればテロ集団が城を落としてしまったような状況にも関わらず・・
国民は付いてきてくれた、確かに・・カガリ自身の力も在るが、ラクスのあのカリスマには何度も助けられてきたし・・・。
それに、攻めてこようとした小国の軍も・・キラの前にはあっけなく倒れて・・。
プラントとは・・一応、平和宣言をしたものの・・お互いまだ腹の探りあいが続いている。
そして・・何より。
「・・・・にん・・しん--------」
その、医師の判断に、驚いたのはカガリだけではない。
マーナも・・キラもラクスも。
まだ・・18の少女が妊娠?いや、皇女が妊娠?!
「・・誰の子?」
そう・・やや暗く尋ねてきたキラを・・無視してしまう。
アスランとの・・子供だ。
最初・・初めての時だろう。
思考より先に涙が溢れて、カガリはその場に泣き崩れてしまった。
嬉し泣き・・だが、本当にこれでいいのだろうかとも思っていて・・
だって・・生まれてくる子供には・・一生父親を・・もたせてあげられない。
それに、カガリ自身----アスランの面影を子供に見てしまうような気がしてならない。
でも
アスランとの子供・・何も後悔なんてしない、子供にも・・させない。
父親がいないのなら・・その分私が愛してあげるから。
そう・・決意して、出産を決意した。
それから・・一ヶ月と少しか。
生まれた子供に・・絶句したのはキラで・・。
「-------アスラン・・と、だったの?」
そう尋ねられ・・黙って頷いた。
「・・でも・・アスランは何も知らないから・・----忘れさせたから。」
「・・・・・・・いい、の?」
「いい。---これで、良かったんだ。」
そう・・言いきったカガリに、キラは黙って頭を撫でてくれる。
その時・・ポタポタと涙が流れた。
ごめんなアスラン。
来てくれると言って、くれて・・嬉しかったんだ。
でも---そんなの許されない。
愛してるといいながら・・諦めてごめんな。
でも、
国とお前・・、それに・・お前の国を思うと・・
どうしても、選べなかったんだよ。
アスラン
まだこんなに
"愛してる"
そう・・考えた思考を消す。
もう、アスランの心に・・カガリが存在しないように。
私から・・アスランへの愛も・・
消さなければならないと・・、誰にも本当は知られてはならないと。
思っているのに。
涙は・・やっぱり、止まる事を知らない。
「アスラン」
そう、笑って・・見てやることも・・もう、
許されないから。