「・・おはよう、・・ホムラ、ミボシ・・・」
金色と・・藍色の髪を撫でて・・カガリはベットから身体を起こした。
「おはようございます、カガリ様・・。ホムラ様と・・ミボシ様は、まだお休みのようですね。」
そうマーナが微笑んで・・小さな身体をトントンと撫でると、二人は少し身を捩って見せた。
「・・そうだな、起きたら呼んでくれ、母乳を与えないといけないから。」
そう言って二人を眺めると・・マーナは嬉しそうに微笑んでいた。
「子供だと・・ばかり、思っていたんですけどねぇ-----速いものです。」
「私はまだまだ子供だ・・。歳だって、もう少しで19だしな。」
そうして・・もう着慣れたワンピースに着替え、朝食に出向いた。
「おはようございます!カガリさん」
「おはよ!ラクス!!」
お互い、見詰め合って・・カガリは「てぃ」とふざけ交じりでラクスのおなかを擦る。
「・・カガリさんに早くお会いしたいと・・動いているのですわ、きっと。」
大きくなったラクスのおなか・・、それを毎日愛しそうに見る者も、近寄ってくる。
「おはよ、カガリ・・・ラクスおなかの具合どう?赤ちゃん・・元気?」
「はいっ!今にも出たいと・・言っているみたいですのよ。ほら・・」
そうして・・キラの手を引いてラクスはおなかに当てる。キラも・・嬉しそうに微笑み、ラクスの顔を覗き込んでいた。
食事中・・キラは、チラリとカガリを見てから・・話題を切り出す。
「そういえば・・さ、今日・・プラントの使者と・・皇子・・・・もう、先代が亡くなったから・・王になるけど・・アスラン来るんだよね?」
「ああ、だから・・キラとラクスは虎さんの店に・・行っていてもらえないか?暫く・・外に出られなくて不自由な思いをさせるが」
「いいえ、----ですが、私のせいで争いが起こる様であれば・・私は戻りますわ。」
そうキリッとした瞳に言われカガリも「わかった」と答える。
だが・・子供を生むまでは勘弁して欲しい。それがキラとカガリの願いだった。
食事が終わり・・正装、軍服に着替えて、シンと・・それにルナと逢う。
「今日は・・護衛、宜しくな!まあ今回はあっちもただの対談だと言ってきているし・・」
「安心してください!もしもの事があれば・・私が!」
そう敬礼しているとシホも少し遅れてだが登場する。
「すいません、遅れました。」
ルナは上官のシホに敬礼をして・・シンも適当にだが敬礼をしてすぐに不貞腐れた顔になる。
「・・シン・・っ!失礼のないようにするのよ!」
「でも・・この間・・ッ」
そう・・この間不覚ながら、村を焼いてしまった。
ザフトの・・あの、水と氷を使う奴・・・・前に一度城であった奴に。
「・・・----手は出すなよ?」
そうカガリが釘を刺すと「わかってる」とシンは言い返した。
朝・・その使者と皇子を出迎えに城の外に出る。
白馬の皇子・・と、言うにはあまりに冷たい目にルナは息を呑んだ。
だが・・確かに、かっこいい。藍色の髪の人も・・銀髪の髪の人も。
「・・・カガリ・・、シホ」
そう・・呟いたのは銀髪の人で・・藍色の髪の人は馬から降りて・・カガリに深々と礼をした。
「・・はじめまして、王妃。プラントの王になります。アスラン・ザラです。」
「・・・はじめまして。皇子・・、いや王か。オーブの王妃・・カガリ・ユラ・アスハだ。」
カガリ。
その名前に・・少し引っかかりを覚えて、アスランは顔を上げる。
だが・・直ぐにイザークが・・礼をして、その王妃を睨みつけた。
「・・イザーク・ジュール・・、使者としてやってきた。」
その態度に・・シンは「何だこいつ、敬語くらい・・」そう先走ったシンをルナが叩く。
「・・・酷いな、イザーク・・・始めましてじゃないだろう?」
そう・・クスクスとシホとカガリに笑われて・・イザークは、なんだかホッとした気分になった。
「・・今日から・・一週間滞在予定、それまでの・・お部屋を案内いたします。」
シホはそう言って・・アスランとイザークを引率していき、カガリとルナとシンは・・一足早く、王の間へと足を運んだ。
「・・たっくもう!シンってば・・いつまでたっても子供なんだからっ!」
「・・うるさい!あれだって・・堪えたんだ!!」
「どこがよ?!」
「アイツ・・皇子の方、村を・・俺と戦った奴で、ぶん殴ってやろうかと・・」
そう・・後ろで楽しそうに話すカップルをカガリは微笑んで眺めていた。
「・・アスラン様はこちら・・イザーク様は・・もう少し向こうです。お二方とも・・荷物を置いて、着替えて・・王の間にきてください。」
そう・・言われて、アスランはその指定された部屋の扉を見ていた。
・・見たことある。
そうか・・前、オーブに・・まだ、プラント領だった時のオーブに派遣された事があった。
そう・・思い、扉を開けた。
「・・イザークは・・こっち。」
アスランが部屋に入ると、シホは・・敬語を崩しイザークも「ああ」と答える。
「・・あえて、良かったと思う。」
そう少し視線を逸らしてだが・・いったその相手にイザークも「俺もだ」と返した。
部屋に着くと・・やはりというか、前使っていた部屋で・・チェスも置いてある。
「・・また、対局しましょうね。」
「あたりまえだ、毎日来い。」
そう言うと・・シホも微笑んで、イザークも少し笑った。
「・・・・ッ・・ここにも・・"カガリ"が・・」
そう、驚いたのは・・その部屋に庭に確かにあの白い花が咲いていることだった。
アスランの部屋と同じ・・白い花。
だが・・此方の花は既に咲き、しかもアスランの部屋のものより・・幾分も生き生きしているように見える。
「・・お前たちは・・・・----」
俺は・・ここでも、この花を・・育てていたんだっけか。
そう・・ボンヤリと思い出すが・・いつ何処で手に入れたかは結局分からず、着替えて王の間足を進めた。
「さて、用件は・・皇子が王へ即位した事と・・あとは・・?」
そのわざとらしい言い方に・・アスランは声をあげる。
「・・知っていると思われますが・・今のプラントのラクス・クラインは偽者です、ですから・・本物を返して欲しい。」
率直に言うと・・王妃は顔を顰めて・・イザークに顔を向けた。
「・・プラントではまだ、女性に対する権限が確立されていない。・・そんなところ、聖母でなくても、女子一人足を踏み入れる事は許さないつもりなのだが?」
そんな事・・言われずとも分かっていると思いながら、イザークは答える。
「それは・・今の王が決める事、女性の権限が保障されるのは・・近い未来だと私は考えておりますが----」
そう、サファイアの瞳はアスランを睨みつけた。
その目に・・面倒だと言わん限りのアスランにイザークは舌打ちする。
"こんなのはおかしい"そう・・言っていたではないのか?お前は----・・。
その、考えすら・・カガリと共に・・忘れたのだろうか?
「・・だ、そうだ、"皇子"・・・・ラクスがこの国にいるにせよ、いないにせよ・・今のそのプラントに・・私は何もしたくはないのだ。」
その・・口調に、アスランは苛立ちを感じる。
「・・考えておきます。」
そう・・適当に流すと・・急に、バンと音を立てて・・人が入ってきた。恰幅のよい女性。
「カガリ様っ・・ホムラ様と、ミボシ様が・・起きた早々泣き出して・・多分、母乳か・・カガリ様だと・・」
この大切な会議中に・・、赤ん坊か?そう・・アスランが感じていると王妃は立ち上がり・・その、今連れてこられた子供の方に駆ける。
「・・すまない・・ただ、私に逢いたいだけのようだな、今は---」
そう・・して、その車の付いたベビーベットを引きずり自分の椅子の横に置いた。
「・・・悪い、少し待ってくれ。」
その・・姿に、アスランもイザークも・・?を頭に飛ばす。
オーブの王妃は・・未婚のはずだと。
「・・既婚・・・・・なの、ですか?」
そう・・口を開いたのは、イザークで・・カガリは微笑んで見せた。
「いや、未婚だ。未婚だって子供は作れる。」
そりゃそうだとルナは思うが・・本当に誰との子供なのだろう。
カガリ様は・・いつも笑って「聖母だから」という。だが・・そんなの嘘だ・・だって・・
イザークは立ち上がり・・その子供を見た。
「・・ッ!!」
男の子と思われるほう・・それは、金髪に、金褐色の瞳・・カガリ譲りなのだろう。
そして・・もう一人の女の子。
藍色の髪に・・まだ翡翠とは呼べないが・・翠の瞳、大人になる頃には・・もっと深くなるであろうその色。
そしてパッと・・アスランを見る。
「・・・・・まさ・・か・・」
その・・声に応えるように、カガリは伏せた。
「・・ホムラ、コイツがイザークだ。ミボシも」
まだおぼつかない首を支えて・・カガリは精一杯微笑んでみせる。
その・・顔に、イザークは何もいえなくなって・・・・もとの場所に戻りアスランに声を掛けた。
「・・覗いて来い、貴様も」
「俺は子供に興味など・・」
「いいから、行け!」
ガツンと蹴り飛ばされ、何なんだと啖呵を切りながらも・・アスランはその子供の顔を見る。
そして・・思ったままを口にした。
「女の子の方は・・あまり、似ていないのですね。」
男の子は・・そっくりなのに。
「・・ああ、ホムラは私にで・・ミズホは父親ににてるから。」
「やっぱり・・!いらっしゃるんですね!相手っ!」
そう手をパンと叩いたルナをシンは少し可愛いと思いながら見つめる。
「そうなら、早く式挙げちゃいましょうよ!喜びますよ、きっと!みんな!」
「いや、喜ばないぞ、きっと。----相手、一応有名人だから。」
そして・・ルナの目と合ったカガリの目は酷く寂しそうで、ルナはパッと喜ぶのを止めた。
イザークも・・その今の言葉で確信する。
あの子供は・・。
カガリと・・アスランの---------・・。