居るはずないと・・分かってはいるんだ。
けど、辛い時---頼りたいと思ってしまう。
それは・・ただの依存だと、思って、分かってもいるんだ。
あの・・草原に踏み込めば、何処からともなく声がする。
<え・・?>
聞きなれた・・深い声。
<いるのか・・カガリ?!>
アスラン・・か?
<どこだ・・何処にっ!!>
-------そうか、あれから・・彼も、此処に足を運んだのか?
<っ・・!!>
不意に、城でであった・・悲しそうな顔が浮かび・・同時に・・
お父様を殺したものの・・"息子"なのだという事実も・・くっきりと浮かんできた。
<お願いだ、・・出てきて・・話をしたい・・カガリ!!>
アスランを・・愛していると、アスラン以上に・・愛しい人が・・来るとは思わないと、言ったのは本当だった。
だが・・、アスラン。
-----・・遠い。遠すぎるんだ、私とお前は。
敵対国だぞ?
それに・・お前の父は・・私の父、オーブの国王を・・殺しているんだぞ?
<・・また、来るよカガリ・・だから、君も来てほしい。>
-------・・会いたく・・ない。
愛しさに・・かまけてしまう。
お父様の死を・・思い出してしまう。
--------苦しい。
分かっているんだ、殺したのはアスランの父で・・アスラン自身ではないと。
でも、でもな。
"----死んだんだぞ!!!!!"
悲痛に・・叫んだ、シンの言葉。
昔・・家族を殺されたのが、アスハのせいだと・・言われたのを思い出す。
それは・・国民の、怒りと・・嘆きを、シンを通して・・聞いたような気分だった。
そのシンが・・怒りを出して、叫んだ言葉。
"・・ウズミ様を・・殺したのだって、パトリック・ザラ-----あんたらのボスなんだからな!!!!"
思い出してしまう。
お父様の、鮮血。脈どおりに・・流れる血。
顔の無い・・身体。
それを・・したのは-----
愛しい人の、父なのだ。
それも・・国王、アスランだって・・いずれ・・その地位に付く。
オーブの・・国民は、許さないだろう?
私が・・パトリックを・・許せないように。
アスランは・・そいつの、"息子"なんだからと。
その・・息子に・・恨みが無くても、-----恨みたくなる、それが・・人だ。
「・・・アスラン?」
そう・・泣きたくなって呟いた。
頼りたい、させてほしい人。
愛しい人。
「・・-----・・やめ、に、しよう?」
悲しすぎる恋だった。
初めての・・恋だった。
きっと、
「・・ありがとう」
最後の・・恋だと思うけど。
---進まなくちゃ、いけない。
オーブのために。
「・・ずっと、ずっと---・・」
"愛してるからな"
それだけ、変わらない---真実。
「もう、ここには----くるなよ。」
二度と・・会わないように。
「・・にしても、ここは風俗店が多いな・・」
そうぼやいたアスランにイザークは「まったくだ」と悪態を付く。
もとより・・イザークは差別する事に疑問を持っていたせいだと思うが・・だが、本当に・・変なことだと思える。
なんで、同じ人・・しかも弱い立場のものを・・絶対に殺さないと言う条件付でだが、ここまで虐げるのだろう?
そう・・以前なら考えないような考えが・・頭に浮かぶ。
「・・変、だよな、こんなの。」
静かにそういったアスランに・・イザークはただ頷いた。
その後、兵を集めて・・プラントに一時退却を決め、早々にアルテミスを出て・・違う村に向かう。
あの・・街にはもう、いたくない。
そう考えたのは・・あのような環境を作ったのが、紛れもなくプラントだったからだろう。
「・・イザーク」
「・・なんだ?」
馬に乗り・・アスランは・・少し決心したように声を出した。
「・・悪いが・・先に行ってくれ、・・用が・・あるんだ。」
「?」
「次の村で一日・・一日、もどってこなければ・・先にプラントに戻ってくれ。」
「・・・・----王都に・・行く、気か?」
そう・・尋ねられて、アスランは苦笑する。
王都ではない、カガリに・・会いに行くのだ。
逢いたい。
話をしたい。
「・・いや。」
「・・ユラ・・いや、カガリか?」
その問いに・・アスランは、本音を零してしまう。
「・・ああ。」
その晴れやかな口調に・・イザークは大きく溜息を付いて、口にした。
「・・できてたのか?」
「まあな」
「----戻って来い・・プラントにはお前が必要なのだからな。」
「・・・・・・・。」
その問いを・・無視して、アスランは馬を走らせた。
鬱葱とした・・森の中、たった・・二十平方メートルほどの・・草原、そしてその半分ほどの芝生。
そこが・・アスランと、カガリの・・場所。
「カガリ・・?」
同じ時間に・・同じ場所に来るなんて滅多にないことだと自覚しながらも・・発した言葉に、応答がくる。
<・・・アスラン?>
「カガリっ!」
だが・・それは、この間と同じ・・近くにいない・・遠くからの声。
思わず・・草に手をやると・・どうやら、その草達の・・反響が声になって耳に届いていると思える。
だが・・確かに、カガリは此処に来た。そんな気がした。
<・・-----・・やめ、に、しよう?>
・・・・・・・・・・?
「・・やめ?」
何を?
そう考えた脳裏に・・嫌な、最も嫌な・・・選択肢が浮かんだ。
<・・ありがとう>
泣き入りそうな声で・・そう、言われて、アスランも泣きたい衝動にかられる。
何が・・ありがとう?
何が終わり?
俺は・・・
<・・ずっと、ずっと---・・愛してるからな>
君の事を・・愛しているのに?
<もう、ここには----くるなよ。>
そんな事を・・言うのか?君は?
だが、彼女が・・そう、言うのだって分からないほど子供でもない。
国の為・・なのだろう、互いの。
でも・・・
俺から・・君を取る事なんて、許さない。
それがたとえ・・君でも・・・・
・・・お互い、こんなに愛していると分かっていてそれでも・・そう、言う君なら---なお更。
「プラントは・・どう、言ってきてるのかしら?」
マリューさん、キラ・・ラクス、それに当然カガリで・・今後について話し合いをしていた。
「・・国として認めるには・・・まだ早い、だ、そうだ。だが・・無駄な争いはしたくないとは言ってきている。」
「・・国として認めない・・?勝手に侵略して来たのに?」
「・・まあ、仕方ありませんわよ、ザフトには・・物資が足りなさ過ぎますもの。」
そういう・・ラクスの言葉には一理ある、だが・・
「アビリティ・ストーンを・・乱用させすぎた罪だ、しかない。・・私とラクスが・・どうにかして---もどせれば、一番良いんだけどな。」
そう・・口にしておきながらカガリには確信ににた、自信があった。
二人の聖母が・・出逢うなど、有り得ない話なのだ。
もとより・・カガリはその、文献を・・よくよく読んでいた。
今まで・・その、聖母が生まれるようになってから・・であった事などない。
実際カガリとラクスだって、会おうとしたことは何度もあるのだ。互いの父が・・仲が良かったから。
だが・・逢う事はなかった。
何故だろう?行こうとした日・・嵐が来たとか、モンスターが異常発生するとか・・
信じられない事ばかり、起こって---・・まるで、自然が邪魔するように、---不思議な出来事が起こる。
「そうですわね、折角・・私とカガリが出会えたのですから、」
ラクスも・・どうやらその確信を持っているらしく・・お互いに強く頷いた。