第二十九章・・・言霊



居るはずないと・・分かってはいるんだ。
けど、辛い時---頼りたいと思ってしまう。
それは・・ただの依存だと、思って、分かってもいるんだ。
あの・・草原に踏み込めば、何処からともなく声がする。

<え・・?>

聞きなれた・・深い声。

<いるのか・・カガリ?!>

アスラン・・か?

<どこだ・・何処にっ!!>

-------そうか、あれから・・彼も、此処に足を運んだのか?

<っ・・!!>

不意に、城でであった・・悲しそうな顔が浮かび・・同時に・・
お父様を殺したものの・・"息子"なのだという事実も・・くっきりと浮かんできた。

<お願いだ、・・出てきて・・話をしたい・・カガリ!!>

アスランを・・愛していると、アスラン以上に・・愛しい人が・・来るとは思わないと、言ったのは本当だった。
だが・・、アスラン。

-----・・遠い。遠すぎるんだ、私とお前は。

敵対国だぞ?
それに・・お前の父は・・私の父、オーブの国王を・・殺しているんだぞ?

<・・また、来るよカガリ・・だから、君も来てほしい。>


-------・・会いたく・・ない。

愛しさに・・かまけてしまう。
お父様の死を・・思い出してしまう。

--------苦しい。

分かっているんだ、殺したのはアスランの父で・・アスラン自身ではないと。
でも、でもな。


"----死んだんだぞ!!!!!"


悲痛に・・叫んだ、シンの言葉。
昔・・家族を殺されたのが、アスハのせいだと・・言われたのを思い出す。
それは・・国民の、怒りと・・嘆きを、シンを通して・・聞いたような気分だった。
そのシンが・・怒りを出して、叫んだ言葉。

"・・ウズミ様を・・殺したのだって、パトリック・ザラ-----あんたらのボスなんだからな!!!!"

思い出してしまう。
お父様の、鮮血。脈どおりに・・流れる血。
顔の無い・・身体。
それを・・したのは-----

愛しい人の、父なのだ。

それも・・国王、アスランだって・・いずれ・・その地位に付く。
オーブの・・国民は、許さないだろう?
私が・・パトリックを・・許せないように。

アスランは・・そいつの、"息子"なんだからと。

その・・息子に・・恨みが無くても、-----恨みたくなる、それが・・人だ。


「・・・アスラン?」

そう・・泣きたくなって呟いた。
頼りたい、させてほしい人。
愛しい人。

「・・-----・・やめ、に、しよう?」

悲しすぎる恋だった。
初めての・・恋だった。

きっと、



「・・ありがとう」


最後の・・恋だと思うけど。

---進まなくちゃ、いけない。
オーブのために。

「・・ずっと、ずっと---・・」


"愛してるからな"






それだけ、変わらない---真実。



「もう、ここには----くるなよ。」




二度と・・会わないように。









「・・にしても、ここは風俗店が多いな・・」
そうぼやいたアスランにイザークは「まったくだ」と悪態を付く。
もとより・・イザークは差別する事に疑問を持っていたせいだと思うが・・だが、本当に・・変なことだと思える。
なんで、同じ人・・しかも弱い立場のものを・・絶対に殺さないと言う条件付でだが、ここまで虐げるのだろう?
そう・・以前なら考えないような考えが・・頭に浮かぶ。
「・・変、だよな、こんなの。」
静かにそういったアスランに・・イザークはただ頷いた。





その後、兵を集めて・・プラントに一時退却を決め、早々にアルテミスを出て・・違う村に向かう。
あの・・街にはもう、いたくない。
そう考えたのは・・あのような環境を作ったのが、紛れもなくプラントだったからだろう。

「・・イザーク」
「・・なんだ?」

馬に乗り・・アスランは・・少し決心したように声を出した。

「・・悪いが・・先に行ってくれ、・・用が・・あるんだ。」
「?」
「次の村で一日・・一日、もどってこなければ・・先にプラントに戻ってくれ。」
「・・・・----王都に・・行く、気か?」

そう・・尋ねられて、アスランは苦笑する。
王都ではない、カガリに・・会いに行くのだ。
逢いたい。
話をしたい。

「・・いや。」
「・・ユラ・・いや、カガリか?」

その問いに・・アスランは、本音を零してしまう。

「・・ああ。」
その晴れやかな口調に・・イザークは大きく溜息を付いて、口にした。

「・・できてたのか?」
「まあな」
「----戻って来い・・プラントにはお前が必要なのだからな。」
「・・・・・・・。」

その問いを・・無視して、アスランは馬を走らせた。









鬱葱とした・・森の中、たった・・二十平方メートルほどの・・草原、そしてその半分ほどの芝生。
そこが・・アスランと、カガリの・・場所。

「カガリ・・?」

同じ時間に・・同じ場所に来るなんて滅多にないことだと自覚しながらも・・発した言葉に、応答がくる。


<・・・アスラン?>

「カガリっ!」

だが・・それは、この間と同じ・・近くにいない・・遠くからの声。
思わず・・草に手をやると・・どうやら、その草達の・・反響が声になって耳に届いていると思える。
だが・・確かに、カガリは此処に来た。そんな気がした。

<・・-----・・やめ、に、しよう?>

・・・・・・・・・・?

「・・やめ?」

何を?
そう考えた脳裏に・・嫌な、最も嫌な・・・選択肢が浮かんだ。


<・・ありがとう>

泣き入りそうな声で・・そう、言われて、アスランも泣きたい衝動にかられる。
何が・・ありがとう?
何が終わり?
俺は・・・

<・・ずっと、ずっと---・・愛してるからな>

君の事を・・愛しているのに?

<もう、ここには----くるなよ。>


そんな事を・・言うのか?君は?

だが、彼女が・・そう、言うのだって分からないほど子供でもない。
国の為・・なのだろう、互いの。

でも・・・

俺から・・君を取る事なんて、許さない。
それがたとえ・・君でも・・・・
・・・お互い、こんなに愛していると分かっていてそれでも・・そう、言う君なら---なお更。







「プラントは・・どう、言ってきてるのかしら?」

マリューさん、キラ・・ラクス、それに当然カガリで・・今後について話し合いをしていた。

「・・国として認めるには・・・まだ早い、だ、そうだ。だが・・無駄な争いはしたくないとは言ってきている。」
「・・国として認めない・・?勝手に侵略して来たのに?」
「・・まあ、仕方ありませんわよ、ザフトには・・物資が足りなさ過ぎますもの。」

そういう・・ラクスの言葉には一理ある、だが・・

「アビリティ・ストーンを・・乱用させすぎた罪だ、しかない。・・私とラクスが・・どうにかして---もどせれば、一番良いんだけどな。」

そう・・口にしておきながらカガリには確信ににた、自信があった。
二人の聖母が・・出逢うなど、有り得ない話なのだ。
もとより・・カガリはその、文献を・・よくよく読んでいた。
今まで・・その、聖母が生まれるようになってから・・であった事などない。
実際カガリとラクスだって、会おうとしたことは何度もあるのだ。互いの父が・・仲が良かったから。

だが・・逢う事はなかった。

何故だろう?行こうとした日・・嵐が来たとか、モンスターが異常発生するとか・・
信じられない事ばかり、起こって---・・まるで、自然が邪魔するように、---不思議な出来事が起こる。

「そうですわね、折角・・私とカガリが出会えたのですから、」

ラクスも・・どうやらその確信を持っているらしく・・お互いに強く頷いた。






































































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あとがき
愛にかまっていられないカガリさんです。
2006/05/12