"お父様"
その・・、人を思い出し、胸が締め付けられるような痛さを感じた。
「・・離せ・・ッ・・離せキサカっ!!!」
「いう事を聞けっ!!・・これ以上前にはっ・・」
そう・・人ごみの中、カガリは必死にもがいていた。
「・・・っお父様、お父様がっ・・」
"殺されてしまう-------"
そう・・十二と言う今よりずっと小さな身体をジタバタとしながら・・その台の上を眺めていた。
あるのは・・ギロチン台、研ぎ澄まされた歯が・・太陽の光に反射して、揺ら揺らと光っている。
「・・---お父様が・・っ殺されても・・いいのか!?キサカっ!!!」
「ウズミ様とカガリ・・両方に死なれたほうがずっと困る!!」
断固として聞かないキサカに苛立ちを募らせて・・だが、どうしようもない体格と力の差で・・カガリはそこで大人しくしているしかないかった。
『・・これから・・処刑を行う。』
そう口を開いたのは・・嫌に冷たい眼をした男の人で・・たしか、パトリック・ザラ・・プラントの王だった。
ひたひたと、音を立てるように・・・登場し、また痩せこけたお父様を見たとき・・息を呑んでしまう。
「「「「ウズミ様っ!!!」」」」
国民からもそう・・声が上がり、お父様は黙って・・処刑台の台に頭を置いた。
本当に?
殺されてしまう・・の、だろうか?お父様は・・
お父様は何をした?・・悪い事なんて・・していないじゃないか。
なんで?どうして・・
お父様が・・あんな所に--------っ
ギィンッ!!!!!!!!!!
-----お父様あぁぁぁぁぁぁ!!!!
そう・・叫ぼうとしたのを、キサカに口を押さえられた。
堕ちた・・首、
断片からは・・血が、波打つように流れている。
アレが・・
"お父様"
「カガリっ?!」
「ッ・・・・・!!!?」
そう・・声をあげられて、目の前に入ったのは・・綺麗なアメジスト色で・・。
見渡せば・・そこは・・カガリが姫の時愛用していた部屋だった。
「・・・ゆ・・め・・・?」
久しぶりに見た気がする。
「・・ずいぶんと、うなされてたね?---大丈夫?」
お父様の・・死ぬときの夢。
今でも思い出せる、あの鮮血の色。
匂い。
感情。
「・・ああ、少し、な。疲れただけだ。」
そう微笑むと・・キラも笑って、そしてポンと頭を撫でてくれた。
「・・城は落としたから、・・でも、これから・・プラントが・・どう動くかは分からない。」
・・・そんなこと、言われなくても分かっている。
大体・・今は反乱軍に過ぎないカガリたちに・・---国としてプラントと・・対立できる力はほぼない。
だが、国民は・・了承している。全部とはいえないが・・・。
「・・プラントと・・コンタクトを取る。---話し合いで、終わればいいんだが・・・・」
終わらないだろうな、多分、
そう意を込めて言葉を言うと、・・キラは「僕らは・・最期まで、ね?」
と微笑まれる。
そう・・キラはこの国の皇子なのだ。
ただ---・・違う所へ養子として預かられていたが・・・。
「・・ああ、ここは・・私たちの国、オーブの国だ。」
お父様が・・守ろうとした国、カガリを・・育てた国。
大切な国。
アスランたちが・・身を寄せたのは、・・オーブの中で最もプラントの勢力が強い、アルテミスだった。
「・・・・ッ---。」
そう・・唸った相手に、馬に乗りながら声をかける。
「・・起きたか・・、イザーク」
イザークも・・城の外に出されていた、だが・・イザークを倒すほどの腕前・・、一体誰なのだろう?
そう・・考えていると、自分の馬に乗りなおって、イザークは・・低い声を鳴らした。
「・・ディアッカ・・それに、キラだった。」
"キラ"
その声に・・腹が重くなる気がする。ユラ・・と名乗ったカガリも・・、五年間も親友でいたキラも・・
いとも容易く、
離れて行ってしまう。
「戦力は・・アレだけではないでしょう。」
そう・・イザークより先に目覚めたレイは・・低く声をあげた。どうやら・・負けたのが相当悔しいらしい。
「・・そう、だな。」
キラ・・ディアッカ・・そしてシンと呼ばれた少年、カガリ----------・・。
戦力として言えば、申し分ない。
だが・・それだけではないと、アスランだって知っている。
昔・・矢を放たれた・・それに、もっといなければ、話にならない。
でも、この気に城を落としたという事は・・相手も、カガリにもそれなりの覚悟と自信があるのだろうと伺える。
------・・戦わなければならない?
君と・・・。
アルテミスについて・・、そこの、香水の臭さに・・少なからず眉を潜めた。
城にいたザフト軍は・・アルテミスにいったと、住民から言われた。
アルテミス・・か、そう長居しないだろう。
「・・マリュー大佐、---オーブ軍、纏められるか?」
そう、尋ねると「ええ、ちょっと難しいけど」と苦笑いで答えられた。
あれから・・オーブの軍は、三日間で着実に帰ってきていた。
みな・・姫の帰りを待っていたと、口々に言ってくれる。
「・・城を、とって・・終わりなら良かったんだけどな。」
世界はそんな簡単には回ってくれないらしいと溜息を付いた。
そして・・キラが、もうじき---プラントに手紙を届ける頃だと思う。
"我らオーブの土地は・・オーブが治める"そんな内容の手紙。
プラントとの・・これから、どうしよう。そう・・悩んでいると、ラクスがガチャンと入ってきた。
「・・カガリさん、・・国民が、お顔を見たいと大勢仰っているようですの。ですから・・見せてあげてはいかがでしょうか?」
確かに・・五年間、この苦行に絶えた国民に挨拶をしないのは・・とても失礼だと思った。
「・・一週間後、すると・・伝えてくれないか?」
「はい、分かりましたわ。」
ラクスはどうやら・・国民と仲良くなっているらしく、城を取り戻してから・・外に出かけるようになっていて、羨ましく感じる。
「・・その、セレモニー・・私が取り締まってもよろしいでしょうか?カガリさんの負担も減りますし・・」
お祝い事なんて、久しぶりだとラクスは可愛らしく微笑んでカガリも微笑み返す。
---容だけであれ・・父の国を取り戻した。
それは・・事実だ。
「お願いする・・・ラクスがやれば、きっと華やかなものになるだろうから・・」
「ありがとうございますわ」
そうして・・去って行く可憐なラクスの姿を見送り・・また考え込んでいた。
戦争・・か、嫌な響きだ。
だが・・父を、殺した・・国、---後にはアスランが治める・・国だ。
あの国と・・戦争?王のパトリックに----・・冷静な判断が下せるとは思わない。
もう・・彼は最愛の妻をなくしてから・・可笑しくなってしまったのだから。
きっと、見えていないのだろう。全て。・・・顔をあわせたことは・・数えるほどある、だが、、、
一度だって、色彩を・・瞳には宿していないように思える。
もし・・下すとしたら・・・。
それは・・参謀のギルと・・もう一人、クルーゼと呼ばれる男だと思う。
どうするつもりだ・・、オーブを・・。プラント・・を。
カガリ・・アスラン、--プラントの聖母ラクス。
これらの人間を・・殺して、どうする気なのだろう?
そう・・考えながら、ふらりと---窓から外へ・・出た。