第二十六章・・・城落し



「・・・っ----・・いつ、見ても凄い光景だよな。」

そう・・シンがつぶやいて、ラクスも外から見るその光景を・・ボンヤリと眺めていた。
カガリとルナ・・二人に、色とりどりの光が取り巻いているように見え、そして・・シュンと消えたと思うと、またパァッと輝いた。

「よし・・っ!終わり・・。大丈夫かルナ?」
「・・っ・・はい!」

ルナは初めての感覚に少々戸惑いながら手を動かしたり、石のはめ込まれた腕を眺めていた。
そしてパッとカガリに向き直り、深々と御礼をする。

「あ・・ありがとうございました!!」
「いや・・、裁きも良かったし・・----力試しに使ってみろよ。」

そう・・・言われルナは頭に?を飛ばしながら、うーんと唸ってみせる。

「・・イメージ的には・・---ま、今手に入れた力を出す感じだ。」

そう言われて、ルナは手に神経を集中させて、また唸る。
それから色々アドバイスを受けて・・三十分後、なんとか能力は発動した。
ただ一度、シンと・・ラクスの間を通り抜けた・・風。

「・・っ!でた・・っ!でた!!でましたっ!!カガリさん!!シンも・・っ見た!!」

そう声をあげてはしゃぐルナマリアに、ラクスは笑って

「まだ・・在るみたいですわよ。」
「そうだな・・」

そう言われて・・ルナは考えてしまう。

「回復か・・増力じゃないか?・・女の子だし。」

シンに言われて・・ルナは自分の腕を触り・・先ほどと同じ、だが攻撃する気持ちでなく護る気持ちで力を使う。

「・・っ・・あ!」

クゥッと手に・・暖かさと力が宿った気がした。

「・・増力ですわね、おめでとうございます!」

そうラクスさんにも褒められてルナはやったと飛び上がってシンに抱きつく、だが・・シンは少し顔を逸らしてしまった。
それをみて・・カガリはくすくすと笑う。

「ルナが心配か?シン。」
「・・っ---言うなよ!---・・。」

そう恥ずかしそうな目で見られて、ルナも笑い「大丈夫だから」と微笑んで見せた。





夜、カガリはボーっとベランダから城を眺めていた。
戦う・・事になるのだろう、当然。
だが、夜は・・時間を分けてたが、強いものは兵を連れて訓練に出る。
きっと・・明日の夜いっても、アスラン、イザーク・・レイ、そのうち一人は確実に訓練でいないだろう。

「・・アスラン---------・・」

大丈夫・・、かな?
そう・・心配してもどうせ届かない望みだと断ち切る。
明日にならないと分からない。
・・明日・・出逢うとも限らない。
-----だが。
お互い・・生きていれば・・、それで良いとも思う。
そして、どこかで出逢えれば・・なお、いい。






次の日・・・あっという間に夜になり、カガリ達は店を出た。

「・・ちょっと待って。」

そう・・マリューに言われて・・振り返ると、ふんわりとした暖かいものに包まれるような気がする。

「・・さすが、マリューさん。凄いですね。」

そう・・キラが手をグーパーしながら言う。

「ほんとだ---・・すっげぇ、初めてだぜ---こんな増力!」

ディアッカも急に力が強くなったような気がするとはしゃぎ出し、シンも驚いてみせる。

「では・・私からは、これを。」

そうして、ラクスは術を使い・・またふんわりと暖かくなる。

「私のは・・術の能力をあげるものですの。」
「・・すごいな、珍しい!」

そうカガリも始めてみる術の増力に・・アビリティ・ストーンから力がわくような気がした。
だが・・所詮、自然の力。使いすぎれば・・オーブもプラントのように枯れてしまう。

「・・術の効力は・・そうね、多分一時間半ぐらいだと思うから・・それまでに頑張って。」
「私のもですわ。」

一時間半・・それだって他の術者に比べればずっとずっと長い。だが・・城を攻めるとなれば、足りないような気もする。

「・・この店は・・私とバルトフェルトさんに任せて・・シン達・・頑張ってね。」
「負けたら承知しないんだから!!」

そう、ホーク姉妹に激励され、シンは「あはは」と微笑んだ。

「・・じゃあ・・いってくるな。」
「・・ま、もしもの事がない事を祈る。」

そう・・バルトフェルトにも頭をポンと撫でられて、カガリ達は城に向かう。




キラは直ぐに見張りを気絶させ、ディアッカは少しバツの悪そうな顔をする。

「・・あんた、やるきないなら帰って良いぞ。」

そう・・シンがとげとげしく言うとディアッカは笑って

「ばーか、んなことしたら・・ミリィにあわせる顔がないだろうが。」
「・・女のためかよ。」

「と、国の為だ。」

そう、付け加えて・・キリッと真剣になったディアッカの顔に、シンは息を呑んだ。


違う人みたいだ。


そう・・シンは、これが実践四度目---まだまだ、経験が浅い。
恐い・・・だが。
死んだ家族の為・・ルナたちを守って、元の生活に戻す為。

-----戦ってやる、何を壊そうと・・人を殺そうと。







「・・ザフト兵を・・城から・・いや、王都から追い出す。街のものには協力してくれるようもう頼み済みだ。」

そういえばと・・今気絶させたザフト兵を見るとすでに住人が担架で外に運び出している所を見る。

「殺さなくていいのか?---あいつ等・・起きたら-----」
「・・殺す・・ってのは、最終手段だよ、シン。---死んでいい人なんて・・一人もいないんだから。」

だが・・それで、街の人が殺されたら?

「誰かを殺したから、相手を殺す。---そんな茶番がしたいわけじゃない・・。お互い、守りたいだけだ。無駄な殺生はしない。」
「・・分かってる・・。」

そうムゥッとしながら頷くとならいいとカガリは笑って・・そして、場内に入った。

「今は訓練中だ・・おそらく、アスランか・・レイ、イザークのうち一人は欠けている・・」
「・・僕とカガリは王の間に---・・道中の敵は倒すから、君達は三人のうち二人を探して」

そう言われて、ディアッカ、シンは頷き・・カガリとキラは一直線に王の間に向かう。







「・・っ・・---・・空か。」

そう・・一階から上り詰め、五階あるのかの三階まできて・・倒した兵の数は軽く二十。
結構出来るじゃん、俺。とか軽口をたたきながらも・・急所を外して戦うのはやはり面倒で、でもと頑張って殺してはいない。

「・・どこだよ、アイツ。」

そうぼやいたのは・・金髪の氷使いへだった。
アイツ・・いつも俺の邪魔ばかりする、絶対俺が倒す。
そう----考えていた矢先。
手が・・ひんやりとして・・直ぐに炎をよんだ。

「・・来た・・-----」

息が上がっていたせいかよく、感覚が働かない・・しかし、直ぐに・・感覚を研ぎ澄ますとそいつの場所が分かった。

「・・そこだな!!!!」

ガッと炎で渦巻き・・その扉を焼く。

「・・-----城落とし・・とは、なかなか豪快なことをするのだな。」

そう・・言いながら、宿敵。金髪の氷使いはシンの目の前に姿を現した。






「ディアッカさん!!!」

そう・・何人の兵に呼ばれたか分からない。
裏切り者・・そんな言葉が良く似合う・・そう自嘲しながらも、しなければいけないことがあると思った。
きっかけは・・ミリィと・・カガリだったと思う。

ほんと---正直に、女なんて気持ちよくなるための道具だと・・子供を生むだけのものだと思っていた。

そりゃ、人だから・・それなりに気も使うが、そんなのベットに入るまでの話で。
それからはただ、気持ちよくなれればいいと思っていた。

だが、----ミリィと、一緒に馬に乗るようになって・・---・・変わる。

視界が・・世界が。




「・・---痛いってば!!」

そう・・怒鳴られて、女のくせにと言い返す。

「お前がちゃんと馬にあわせてケツ上げないからだ!」
「そんなの初めて聞いたわよ!!」

そう・・怒鳴りつけたのにピシャッと怒鳴り返されて・・そして頭でゴツンと顎にぶつかってくる。

「っぅ-------!!このアマ!!」
「な、なによ、アンタが悪いんだからね!!」

そう・・ぎゃいぎゃい言いあって・・街に着くとミリィはフンと声をあげてすぐ・・当時男だと思い込んでいたユラの所に向かう。
それが・・なんだかムカついた。
俺の前だと・・怒ってばっかりなのに・・どうして、ユラの前ではそんなに楽しそうに笑うんだと・・常々思っていて。

だけど・・次の日、ユラも馬に乗ったのに・・---ミリィが乗ってきたのは俺の馬で。

「・・なんで乗ってんだよ。」
「・・・嫌なら下りるわよ。」

そう・・また、ユラのほうへ向かおうとしたミリィの手を掴んだ。

「・・・・何?」
「---・・いや、---あの・・」

なんで・・掴んだのだろう。

そう感じて手を離すと、ミリィはユラの方に・・駆けて行ってしまった。
それで・・不快になるのは、当然で、ディアッカは次の日・・自分からミリィを誘ったのだ。

「何よ、嫌なんじゃないの?」

--------嫌じゃない。
それは・・確かで・・・。
確かにウザかったし・・煩かったし、でも・・楽しかったとも思う。
それにユラの所へ行かれるのは嫌だ。
俺にだって・・笑いかけて欲しい。

「・・・何よ・・変な奴。」

そう・・口で言い、でも、少し・・嬉しそうなミリィに、トクンと何かがなった気がした。

「・・笑えるじゃん。」
「・・・馬鹿にしてんの?」

そうして乗った馬は・・昨日より楽しくて・・・・---。たぶん、それはミリィも一緒で。
時々不機嫌にされると落ち込んで・・でも、笑いかけてくれるミリィが・・何となく良くて。
初めて・・体以外に・・・---好き、を、求めた。
だけど・・・それに気が付いたのは、ミリィと分かれてからだった。だから・・もう一度会いたいと・・あって話したい。
そう・・思っていた。

思いのほか・・意外な場所でそれは叶って・・。

そして・・ミリィを助け、一つ・・願いを持った。
ミリィと・・一緒にいられる世界が欲しい。ミリィが・・ミリィらしくいられる世界が欲しいと。
・・それには、プラントは邪魔で・・・・・---
というより、間違っていて。
・・俺が過去に抱いた女の子だって・・本当はあんな生活望んでない。
みんな・・好きに生きたいはずだと思った。

だから・・・----




同胞を倒しながら、・・イザークの部屋に着いてしまう。


がちゃんと・・開けることなく、剣を構えて・・立っていた。


「・・よ。」

「------・・フン、」



親友・・と呼べる相手と、二度目の戦闘が始まった。







「・・・・ッち、ギルが・・丁度プラントに戻ってるなんて・・」

誤算だ---いや、アイツは知っていたのかもしれない。
私たちが・・攻めてくる事を・・。
そう・・歯がゆくした唇を咬んで、キラに命を告げる。

「・・なんとしても、この城のザフト兵を追い出す。全員・・」

本来ならば・・参謀であるギルをしばき上げ、それに兵を従わせるつもりだったが・・
奴はいない。なら・・全員追い出すしかない。

「・・---・・分かった。」

そう・・頷いて、キラは風のようにその場から立ち去った。































































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あとがき
はっきり言います、ギルは知っていました。(裏情報?)
そして・・逃げました(笑)賢い人なので負けるところには行きません。
2006/05/09