第二十章四・・・君の味



「「「「「カガリ様!!!!!!!!!」」」」」

バルトフェルトの経営するバーに・・夜はいるとそこからは信じられないほどの歓声が聞こえ正直驚いた。

「ひさしぶりね、」
「ああ、ひさしぶりだ」

そう・・マリューと通称虎が話し合うのを、キラはムウさんがいたら嫉妬するんだろうなと笑いながら見ていた。

「・・・カガリ様っ!!シン!!カガリ様!!」
「知ってるって・・」

そうルナに袖をグイグイと引っ張られてシンは呆れたようにルナを見る。
ルナも・・メイリンも実物としかもこんなに近くで会うのは初めてだった。

「・・カガリ様、お水、もってきました。」
「お!ありがとう・・って、お前は?」
「メイリン・ホークです!カガリ様!」
「そっか〜メイリンか!よろしくな!!」

その妹を見てルナはプッチンと切れたように声をあげる。

「ちょっと!!あんた何抜け駆けしてんのよ!!!!!」
「な、ならおねえちゃんも話せば・・っ」
「メイリンの姉か・・名前は?」

そう・・まさか姫様から話しかけられ、ルナの顔はカァッと赤くなって、でもパッと手を出した。

「ルナ・・ルナマリアです、カガリ様!」
「よろしくな・・ルナっ!!」

そう・・手を握り返されて、ルナは信じられないほど眼を輝かせてカガリを見ていて正直シンは引いていた。
いや・・別に、いいんだけど。

「こっちはラクス。ラクスも聖母だ。」

そう・・紹介された相手をルナとメイリンは見て少し顔を顰めた。
その・・理由は分かる。
だって・・・・・この人がいなければ、オーブは滅んだりしなかったのだから。
ラクスは良く分からず頭に?を飛ばしてみせるが・・直ぐに微笑んで手を出した。

「始めまして、ラクス・クラインですわ---・・まだ、よく分からない事が多いので---色々宜しくお願いいたします。」

そう丁寧に言われてルナは持ち前のカラッとした性格を出した。

「よろしくお願いします!ラクス様!」
「あ、そうだ、---敬語はいいぞ?使わなくて・・な、ラクス」
「ええ、お友達ですから。」
「じゃあ・・ラクスさん、カガリさん・・宜しくお願いします!」

女の子達がワイワイとやるのを、そこにいた客は楽しそうに眺めていた。
だが・・みな、カガリと話したいようでコソコソと話している。

「・・でも・・、頑張ってくれたな・・オーブの国民は・・」

バーにいる人を見てそう・・カガリが言うと、みな嬉しそうに顔を緩めた。
もう少し、もう少しで・・全て終わる。そして----もとのオーブに戻る。
それが・・皆堪らなく嬉しかったのだ。






「不穏な・・動き、ですか?」

そう・・王の間に呼び出されて、言われ・・内心どうだっていいとアスランは思った。

「それに・・私は一度、もどるように王から言われてしまってね-----・・そういうわけなのだ。だから留守の間・・この城を任せたい」

その言葉に「は!」と返すしか道はなく・・だが、イザークとレイもいるので・・別に良いかと思った。

「道中・・護衛しなくて・・」

そうレイが言うとギルは「大丈夫だよ」と笑って答えて、レイはそうですかと引き下がって見せた。

「あちらには・・丁度姫も戻ってしまったし・・もうじきこの城を落とそうとすると思うのだ。」

・・・そんな・・ど派手な事・・するだろうか?
そうボンヤリと聴いて・・でも、ユラ・・いや、カガリ姫ならするかと思う。
戦場では・・会いたくない。
あの・・二人でじゃれていた、草原で会いたい。

意識を外に飛ばしていると、イザークに足を踏まれ現実に戻った。






「馬鹿者。」

そう・・廊下を歩いていると、声をかけられて・・「すまない」と返した。

「すまないで済むか。---気を抜くな、一瞬の事が・・・プラントの命取りになりかねん。」
「ああ。」

そう・・していると、イザークが怒ったように見て・・来いと催促された。

「何処行くんだ?」
「街の・・良いバーを知っている。・・気晴らしだ。」

明日・・ギルはプラントにもどると言う、それからじゃ気が抜けないだろうとイザークは言って「そうだな」と答えた。
鎧のある服を脱いで・・この街にあった格好に着替える。
そして・・夜の街に出た。

「・・カップルが・・多いな。」

間違えなく多い。そう感じたのはイザークもで・・

「おそらく・・昼間は俺たちが見ていると思っているのだろう。・・ここは男女平等だからな。」

分かりきった事・・だが、それが羨ましい。
ユラと・・共に、歩きたかった。
そう・・考えていると一件のバーに付いた。

「・・お前、こんなしゃれた店入ってたのか?」
「・・教えてもらった。」

そう・・静かに言った言葉に・・"ディアッカ"が浮かんだような気がした。
中に入ると・・女の子の店員までいて少し驚く。
ショートとツインテールの赤い髪・・姉妹だろうか?

「・・おおっ!久しぶりだねぇ、銀髪の彼---お?今日は男か?」

そう言われて、今日は男・・の部分に反応する。
カウンター席に腰をかけると、イザークは早速注文をする。

「・・パープルの瞳、で、」
「・・OK」

カクテル名だろうか?よく分からないが、そのマスターはシャカシャカと作り出していた。

「そっちの彼は?」

そう・・聴かれて、メニューも見ていないのにと思っていると、ツインテールの少女に

「適当に名前言っちゃえば・・マスターが適当に作ってくれますよ」

そういわれて・・フッと頭に浮かんだ言葉をいった。

「・・白い花の君」

その言葉に、おっと声をあげて・・マスターは微笑んで見せた。
少しもせず、イザークの前には透き通ったパープルの中に・・さくらんぼが二つ入ったカクテル。
アスランの前には・・白と、層を分けて透明の黄色のが入ってさらに何かの花びらが入ったカクテルだった。
その・・色に、アスランは先日見た・・カガリ姫の姿を思い出した。
真っ白なドレス・・そして・・太陽に反射する金髪。

「・・白い花・・なのに、黄色が入るんだな」

そう・・イザークが見たままの事を口にして、マスターはニッコリと笑った。

「ああ、白い花は・・オーブのシンボルだからね---・・その君といえば一人しかいない。」

そう・・言われて、アスランはビクッとする。
ユラ・・、カガリ---・・カガリのことだ。
そう・・思いながらそのカクテルに手をつけて呑むと・・甘酸っぱい味がした後じわりと喉が温かくなった。
白の層に入ると・・・その味には甘さに拍車が掛かる。
・・ユラの・・イメージそのままだと・・思った。
最初は・・弟のようで放っておけなくて、でも・・女の子で・・そばにいるだけで・・暖かくなれる。
それに・・あの夜は、本当に甘くてあたたかくて・・・たぶん一生忘れる事はないだろう。

「さて、次は?」

そう・・オーダーをせかされて・・アスランはまた・・ユラを・・、カガリを考えていた。






「・・・---・・カガリ、ディアッカ---こっちこっち。」

そうキラに小声で呼ばれてカガリとディアッカは店のカウンターに入る為の扉を少し開けた所から覗いた。

「・・うそ---だろ?」
「・・・っ」

アスラン・・それに、イザークも------・・。
そういや、とディアッカは思い出したように口にした。

「前・・ミリィとシンを逃がした時、たまたま貰ったこの店のタダ券だか半額券だか・・イザークに渡して取っ払ったんだった。」

そう・・言われて、その二人を・・アスランを、カガリは眺めていた。
よかった、殺されてない。
それだけで・・今は十分だった。


「・・---。」

酒に弱いらしく・・イザークは五杯目にして寝息を立てていた。
そして・・アスランもさっき呑んだのが少々きつくて・・でも、イザークほどではなく、、だが確実によって視線をフラフラとさせる。
一瞬、
綺麗な・・金褐色が、マスターの後ろのドアから・・見えた気がして、意識がハッと戻った。

「・・どうされたのかな?」
「いえ・・えっと、」

そして・・次なる注文をする。

「金褐色の恋人。」

そう言うと、マスターは「想いのひとかい?」と聴かれ「ああ」と答えた。
イザークが起きるのを待って・・その、店を後にする。
最後に呑んだ・・"金褐色の恋人"は・・今日ので一番きつかったと思った。
だが・・それが、また--ユラに見つめられて、射られたときに似ているとも思える。
こんどもう一度行きたいな、あの店に。 そう考えながら・・城に戻った。




「しっかりしろ、イザーク」

そう・・部屋まで運んでベットの上にバンと横たえてやると・・寝言のようにイザークは声を出した。

「・・し・・ほ。」

シホ?
そう・・考えていると、イザークは枕を抱き寄せて・・ギュッと抱きしめている。

「シホ-----・・」

そして・・イザークが注文したものを思い出す。
パープルの瞳。
それは・・ユラと同じ日に姿を消した・・シホのことなのだろう。
そういう・・関係だったのか。と内心突っ込みながら・・コイツもつらいのかと考えていた。


部屋に戻り・・火照った体を冷ますように、水を飲んで・・パタンとベットに倒れる。

「ユラ・・」

今日呑んだもの・・全て、ユラに関係のあるものだった。
・・甘酸っぱい味、深みのある味・・甘い味。
時に苦くそして、熱い味。
全部・・ユラだった。

"カガリ・ユラ・アスハ"

君は・・どんな味・・なのだろうか?


ユラと同じ・・・---・・それとも、



違う?































































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あとがき
アスランが不憫に見えてくる今日この頃。
早くカクテル飲めるようになりたいな〜美味しそう!!
2006/05/07