第二十二章・・・置き去りのナイト



「「「「おかえり、カガリ様パーティーッ!!!!!!!!」」」」


そう・・ヘリオポリスのマリューたちの店で一斉に言われて・・在ろうことに、旗まで振られている。
マリュー・・ムウ、シンもニコルも---ミリィ・ディアッカ・・シホ。

「ただいま」

その者たちの顔を見て・・一気に気持ちがゆるゆると解ける。
ザフトでの生活は・・楽しかった、が、やはり気の抜けるものではなかったから----・・。

「キラさん、ひとりで行くって言い出したとき・・・ぶっちゃけ不安だったけど・・取り越し苦労みだいだなー」
「あはは、キラは最強だぞ?」

ディアッカはムウと祝い酒を飲みだしたらしく・・軽く酔っている、ミリィはディアッカに掴まり苦く笑いながらも面倒を見ていた。
そしてシンは酒臭さに鼻を摘まんでニコルとマリューは笑いながらその光景を見ていた。

「おかえりなさい、カガリ様」

シホにも深々と頭を下げられて・・カガリは微笑み返す。
そして------・・。


「こんにちわ、カガリさん。」


桃色の・・髪、一度だけ----顔をあわせたその子。

「・・ラクス・・か、カガリとして会うのは初めてだな!」

そうして・・二人の聖母は手を取り合った。







「予想通り・・なのだがね、姫の演説は痛いものがあった----」

そう・・独り言を言う。だが・・それ以外は実に計画通りだ。
オーブの姫そして最強の戦士キラ。
今世界を束ねる、パトリック・ザラ・・・・そして、・・その子供アスラン・ザラ。
----そういえば、ラクス・クラインは・・オーブの姫とか。
それはそれで楽かもしれないと感じる。
もしも邪魔になったら・・一掃するのに----・・ちょうど良い。





「・・・---・・まったく・・驚きだった・・だが、あそこで動くのはお前の役目だったはずだ。」

そう・・イザークに責められても・・グゥの音もでない。
それより、なにより---・・イザークにまで「ユラはカガリ・・オーブの姫だ」と言われた事にショックを受けていた。
キラも・・ユラも---もう、傍にはいない。
イザークは・・仕事仲間として認め合っているが・・人としてではない。
寧ろ・・同じ隊長同士だからという仲間意識が強いように思える。
友達・・と呼べたはずのキラ。
恋人・・そう、思っていたユラ。
もう・・二人はいない。
アスランを・・"アスラン"だと・・言ってくれる人は・・いない。

-----それが・・どうしようもなく、哀しかった。





"虚ろ"その言葉が此処まで似合う奴が他にいるだろうか?
そう・・思いながら、イザークはアスランを見る。
まあ・・当然だな、親友二人に・・裏切られたようなものだ。
そう・・思うと、イザーク自身・・ディアッカとシホを手放しているわけで結構おあいこかとも思う。

だが----元来、イザークは一人でも生きていける人間だった。

傍にいなくても平気・・と、いうのだろうか?
だが・・イザークには、シホも・・ディアッカも自分を嫌いになったようには思えない。
敵・・だ、だが、深いところで信用している、だから---平気だと、思った。
たとえ---殺しあう事になっても。
きっと勝った方が負けたほうを気遣ってくれる。何だかんだ・・生き延びるのだろう、そうやって自分達は。

「別れは永遠ではない、ただ・・立場と言うものが人にはある。」

人生を悟ったわけではない・・だが。

「お前は皇子・・ユラは・・カガリ姫だったと、そしてキラはその兄だったと言うだけだ。」

それだけ言って・・イザークは、アスランの前から姿を消した。






「・・いや、ユラ君の事は・・本当に残念だったね。」

残念?

「・・・はい」

そんな言葉で・・片付けて欲しくない。
そう・・思って睨んでいると、ギルはほくそえんだ。

「姫とは・・仲が良かったようだね?男女間で---・・」
「なっ」

何でそんな事。

「・・・可哀相に・・君も----・・。騙されていたのだから。」


「・・・・え?」


思わず声をあげると、ギルは「それいがいないだろう」と微笑んだ。

「君は次期王だ・・・---恐らく君を利用して・・再建させようとしたのだよ、国を。」


王・・と、して?

違う、違う、


ユラは・・っ


「・・ありない・・そんなっ!!!!」

俺を・・アスランとして・・見てくれた人だ。
王や皇子にとらわれない。
俺を見て、俺を・・愛していると、言ってくれた。
それが・・・・っ

「それこそ、君のために作っていたのだよ。"ユラ"を。」
「違ッ-----ユラはッ・・俺を---」

「・・今の・・君のような感情では・・カガリを殺せないだろう?」


「・・!!」

「それが・・"敵"の狙いさ。」


そんな・・はず-----ッ。

「・・・そうだな、言うなれば・・死んだのだよ、君のユラは。」

「!!!!」


相変わらず・・落ち着いた表情で、相手は淡々と憶測を述べている。
だが・・半ば憶測とも言えない節があるのは・・仕方のないことだった。
ユラが・・俺を騙して・・、隣に立ち続けたのは・・事実だ。
でも・・だが---ユラは・・俺の隣で、笑ってくれた-----ユラは・・?

「裏切られた・・のだよ、ユラに----・・君は。」


・・裏切る?


「哀しいだろうが・・君はばねにしなければならない・・将来国を支えるのは君なのだから。」





ばねにする・・。

それは・・ユラや・・キラを恨んで・・・・プラントの為に・・あの二人を・・特に"カガリ"を殺せという事なのだろう。


-------・・殺す・・のか?ユラを---カガリを・・・。


"アスラン!!"


嘘でも良かった。
アスランと・・認めて-----くれる人なら。
愛してると・・・自分に、言ってくれる---・・ユラなら。

ユラが--------傍に・・いてくれたら・・。

嘘だとしても


幸せだったのに。






「さて、宴会が終わった所で・・・・・、、、ってもうムウとディアッカ君は駄目ね。」

酔いつぶれて寝ている二人を細めで睨んで、マリューは続ける。

「これから・・だな、」

そう・・カガリが切り出す。

「----・・ラクスが狙われたと言ったな・・・ザフトのものに・・」
「うん、なんでかはよく分からないけど・・---」

そうキラが言って、・・・カガリは考え込んだ。
アスランを殺せと命じて脅しながらも私を処刑しようとした。
・・ザフトの中に・・ラクスを殺そうとしたものがいる。

-------・・と、いう事は・・・・---・・。

「・・・アビリティ・ストーン・・聖母・・・・---ですわね、カガリ。」

そう・・力強く言ったのは・・ラクスだった。






「で・・カガリ・・アンタ一体ザフトに潜り込んで・・何してきたんだよ?」

そう・・シンに---ベランダで風に当たっている時に言われ、カガリは微笑んだ。

「・・意識革命起こしにな・・・・それにキラにも会えたし。」
「・・意識革命?」
「ああ。」

ザフトの・・上の者達の意識を変えれば・・戦争をしなくて済むと思った。
だから・・行ったのだ、狂ったモラルを戻す為に・・・---それに・・それでアスランとも・・---出逢えて、想いを同じにする事が出来た。

「・・・カガリらしい・・けど、死んだらどうするつもりだったんだよ!!!!」

急に怒鳴られて、カガリはきょとんとする。
そう・・本来ならば・・シンとカガリは仲が悪かったはずだ。
五年前・・戦いに負けて、カガリに・・最初に罵声を浴びせたのは・・この少年だったから。

"あんたら王家が・・アスハが・・っ国を守れなかったせいだ!!!!"

シンの・・家族は、五年前の戦争で死んだらしい。そして・・怒りの矛先はカガリに向けられていた。
その時・・哀しくて、悲しくて・・・---・・キリリと胸が痛んでいたのを今でも覚えている。

「いいか、あんた---一応、姫で・・次は皇女になるって事忘れんなよ!!」

そう・・いいながらカガリ自身の事を心配してくれているシンにカガリは笑みがこぼれる。

「なっ・・なに、笑って----・・」
「いや、ありがとうって、思って。」

そう・・言えばシンも少し恥ずかしそうにだが微笑んでくれた。



部屋に戻り、待っていたラクスと・・キラに話をする。

アビリティ・ストーンの話・・・。

人間と自然を繋ぐもの。
そしてその繋ぐのに必要なのが聖母の力。
聖母は・・もとより自然に属する者で、だが人間であるという事。
難しい話はさておき・・要するにはアビリティ・ストーンは----・・自然の力を吸収して使うという事だと説明する。

「・・・吸収・・ねぇ?」

そうキラが実感がわかないらしく、頭に?を飛ばす。
そしてカガリは説明を続けた。
自然の力は消耗品であり・・使いすぎれば自然環境に影響をきたす。
たとえば・・プラントは不毛の地・・それは明らかにアビリティ・ストーンの使いすぎから来るものだった。
しかし、オーブのように自然の力は---有り余ると人間より自然と近い、動物・・虫と連動してしまいモンスターを生む。
だから・・プラントには全くいないモンスターが・・---この国にはウヨウヨしているのだ。

「だが・・使っているものが死んで---・・その者のアビリティ・ストーンを私やラクスが持っていれば・・その力はまた・・元に戻る。」

それを聞いて納得したようにラクスは頷くが・・「では・・何故私たちを殺そうとするものがいるのでしょう?」と聞かれた。

「分からない・・だが、私とラクスのせいで・・土地が荒れると---ギルは、考えたのかもしれない。」
「・・ギルバート・デュランダル?」
「ああ・・あいつは私にアスランを殺せといった・・だが、結局・・アイツは私を殺そうとした。」
「・・つまり・・その人は・・」

"プラントも・・オーブも、両方を滅ぼすおつもりですの?"

「--------かも・・しれない。それとも・・罠だったか・・。」

相手の考える事など・・完璧に把握する事は不可能だ。
ましてや・・アイツ、ギルバート・デュランダルなんて-----・・。

「まあ、私は・・オーブを元に戻して・・プラントにいる人も・・少しでもマシな生活を送って欲しいだけなんだが・・」

そう・・言うとラクスは笑って「そうですわね」という。


その・・癒すような笑顔に、カガリも自然と笑顔になった。































































+++++
あとがき
ギルは何を考えているのだろう・・?

補完:
自然の力を使いたい→その為に自然と人間を繋ぐ→聖母→自然の力を使う
→自然の力が消耗する。→自然力の源が減る。
→自然が減る、またそこで生きる人も減る。(自然の力がなくなって命が生まれない状態になる。)
(例えるならFF7のライフストリーム(だっけ・・?)に近いイメージで(笑))
2006/05/06