「あら!キラ君!!」
そう・・マグカップまで落としそうになって驚いたのは・・マリューだった。
「・・・で、、、誰なわけ?----その坊主と・・綺麗な嬢ちゃんは。」
そう不機嫌そうに声を出したのはムウで、キラは直ぐにこの二人の関係を悟る。
そしてそのヘリオポリスの定員の中には黒髪と・・緑髪の、キラより少し小さい子もいるように思えた。
トントン・・そう、音がして地下から誰かが上がってくる。
「・・・・・ミリィ・・っ!シホも・・!!!!」
そう、驚きを隠せず・・キラも声をあげた。
「カガリ様が処刑されます。」
そう、シホに言われコクンと頷く。
「カガリは・・、何て?」
「シンと・・ディアッカがもう顔が知れているから、この二人で助けて欲しいといっておりました・・しかし。」
その程度で・・倒れるだろうか?それは・・シホもキラも同感だった。
「じゃあ・・あっちにいるのは、アスラン・イザーク・・それに、レイか----・・」
正直、B以下なんて敵じゃないと言い切るキラにディアッカは「お前だけだよそれは」と突っ込む。
そう・・キラの強さは異常なのだ。
それは・・アスランにも言えることだが・・・----・・。
トリプルA、それとS・・それは今まで誰も取った事のない称号だったから----・・。
「・・・って、いうかさ、、、なんで聖母連れ出してんの?」
そう・・ディアッカは思っていたことを口にする。
聖母・・ラクス・クラインは・・ザフトの敷地、というか・・あの大聖堂からも出てはいけない決まりになっていたはずだ。
「・・ザフトのものに・・殺されそうになりましたの、ですから---キラに無理を言って、連れてきていただきましたわ。」
聡明な声に、"こんな子だっただろうか"とディアッカは疑問におもう。
キラも・・少し驚いて見せて、だがラクスはシャキッとした声で話を進める。
「カガリさんを・・死なせてはなりません。あの方も・・聖母です、そして---私はカガリさんに聞きたいことが・・山ほどありますの。」
そう・・自分の意見を言い、ラクスは言う。
「・・・良くない事が起こります、これはハッキリと・・申し上げられますわ。」
「・・予言、ですか?」
そう尋ねるニコルにラクスは微笑んでみせる。
「・・・直感が・・申しておりますの。」
だが・・その瞳には確固たる、その言葉に対する自信があるように見えた。
「じゃあ・・これ以上、事が悪くならないように---考えなきゃね。」
「・・で、具体的には?」
そう・・話が進み、---処刑まで後三日、反乱軍の意見はまとまった。
「でも・・これ、キラだけじゃない?」
そう尋ねるミリィに、キラは余裕の笑みを見せる。
「でも、僕能力風だし----一人のほうが何かと楽だよ。」
それに・・カガリの事となれば、アスランが手を貸してくれるかもしれない。
そう---考えていた。
「・・・いっちゃうの・・アスラン---・・。」
そう・・切なそうな顔をされたって・・困る。
そう感じながら何も答えず馬に乗った。
ミーアと名乗ったこの子は・・悪い子じゃない、が、、、煩い。
ユラとは違う煩さだ。ユラの煩さは・・こっちを楽しくさせてくれる。
この子の煩さは・・まるで、不安をかき消すように・・喚いているようにも思える。
「・・・ま、安心しろって・・俺が面倒見ててやるから。」
そう・・ハイネに頭を撫でられて、ミーアは大人しくなった。
ソレを見て安心し・・馬を走らせる。
道中、三日だが・・馬で飛ばせば間に合うと踏んで色々な所によっていた。
街ではない、川沿いに。
薬草が---きっと沢山生えてるから。
「・・ない、な。」
そうだ、此処はまだプラント領だと思い出す。プラントには・・何故か、植物が生えない。
木は少しは生えるが・・風で折れてしまうような弱々しいものばかりだし。
森も・・あることにはあるが、やっぱりオーブに比べるとずっと少ない。
そういえば・・ここ数年子供の出産率も減っているような気がする。
死神でもいるのだろうか、この土地は。
そう思いながら・・オーブ領へと近づくに連れて、どんどんと植物が増えていった。
「・・・---・・あ・・。」
ハッと見つけたのはあの・・白い花が小さくなったような花で、季節外れなのに近寄る。
「・・・・綺麗だな-----・・。」
ユラのようだと、その花を見て思った。
何故か・・分からない、けど、---ユラだと感じていた。
存在が似ているとでも言うのだろうか??
そう・・思ってその花に手をやると・・少し、萎れているように思える。
「・・大丈夫か?」
<ああ>
「?」
そう・・聞こえた様な気がした。
「イザーク、ごめんな。」
たまたま・・食事を持ってきたイザークにカガリははなしかけた。
「・・何がだ。」
「-----・・ごめん。」
それだけ、言うとイザークはフイッと地下牢の出口に向かって歩いていく。
申し訳ないとは・・本当に思っていた。
アスランと・・離れる事が悲しいように、イザークも・・シホも、哀しいと思ったから・・。
ガチャンと音がして閉まったそこを見られる角度でもなく、カガリは顔を腕に疼くめる。
嫌われるのは慣れている。
五年前・・国を守れなかったとき・・散々言われた。
お前のせいだと。
「・・お父様、お母様。」
今でも蘇る・・あの処刑。
あの時は・・打ち首だった。-----・・それを・・行った者、それは・・
"パトリック・ザラ"
お母様も数ヵ月後・・同じ運命を辿った。
あのときを思い出す。
絶望と・・喪失感、---脱力感も。
もう・・どうにでもなれと、一瞬思ってしまった。
それは・・国民も同じで・・だが。
-------こんな所で・・オーブを死なせてたまるか。
その・・意地だけでやってきた。
お父様、お母様の国。---平和で・・穀物も豊か、平等な国。
壊されてなるものか。
私が----護る、何に変えても。
そう、考えているはずなのに・・カガリには、もう一つ・・とても気に掛けてしまうことがあった。
-------・・アスラン
無事だろうか?
いや、でもザフトでアスランを倒せるものがいるとすれば・・キラだけだ。
そう・・考え直し、カガリは国の行く末に瞑想する。
処刑の日、アスランは久しぶりに遅刻しそうになる。
処刑は丁度今日の正午・・、あと三十分しかない。
そう思って・・オーブの王都に入ると・・その、人々に---アスランは眼を見張った。
-------・・空気が違う。
あの、明るかった雰囲気なんて・・・欠片もない。
皆・・死のオーラをまとっているように見える。
・・それほど、この国の姫・・カガリは・・皆に重要な存在だったのか・・・。
そう思うと何だか申し訳ない。
だが----・・それほど、統率力のある姫を・・ザフトが野放しにしないのは・・当然の事だと思った。
処刑台には・・十字架のような木が刺してあり、周りにも薪がくべられている。
火あぶり・・か、まるで魔女狩りだ。
そう・・のんきに思って、城に馬を走らせる。
「・・・・・---・・キラっ」
城に入り・・まず、驚いたのは・・ラクスを連れ去って追い回されているはずのキラが・・城内にいたことだった。
「アスラン・・!お帰り---ってか、何処行ってたの?」
「ユラに言われて・・あっ---父上と話すの・・」
忘れてた。くそ、ミーアに気を取られていたから・・・・・---・・。
不意にあの、ユラの笑顔が悲しくなるような気がした。・・いや、直ぐ戻って・・父に言えば良い。
そう思い返していると、キラは城から出て行こうとする。
「おい・・もう行くのか?処刑台・・・」
まだ・・処刑される人物も出てないのに・・・
「うん、守らないといけないからね。」
そう・・微笑んで去る親友を・・アスランはどうとも思わず見送っていた。
「・・イザーク!」
今日の段取りを聞こうと話しかけると、イザークは暗い面持ちで顔を上げた。
「・・反乱軍が---でるだろう、だから、ちゃんと備えておけよ。」
「・・分かっている。」
そうか・・ディアッカの事かと、考えて・・アスランも少し神妙になった。
出来る奴だった、それに・・何だかんだ、雰囲気を和ませてくれていたようなきもする。
「・・そうだ、ユラも・・今日の処刑の警護には付くのか?」
そう尋ねると、イザークは静かに頭を横に振り・・答えた。
「・・ユラは、もう、---前線に出る事も、戦う事もない。」
「・・・?」
それは・・司令官の命を全うする事だろうか?
いや・・どちらにせよその方が良い、ユラは女で・・どうしたってあれ以上強くなるのは難しいのだから。
それに・・アスラン自身、大切な人が・・命がけで戦っているのを見続けるのは辛い。
幸せなところで・・のんびりと育って欲しい。---まあそれは無理だが・・。
・・でも、後方に身を引いてくれるだけでも・・生存率はずっと上がる。
「段取りだが・・---お前は、王都の入り口にいけ。反乱軍が・・逃げるのを阻止しろ。」
その言葉には?といいたくなる。入り口?そんな大それた所から・・誰が逃げ出すと言うのだ。
普通、もうどこかに手配されているルートを通り・・逃げる・・---。
「・・どういう事だ?」
「王都の入り口から・・人の形を確認できるほどだが・・処刑は見える。」
「?」
「・・お前はユラと・・仲が良い、からな。」
傍で、見せてやるのは酷だ。
だが・・大切な人の・・死に際が見れないのは・・それはそれでやるせないだろう。
そう・・考えた、イザークからアスランへの配慮だった。
「・・・ユラが、そこにいるって事か?」
ユラは後方に下がると言う・・だが、警護に当たらない訳にはいかない。
だから・・誰も来ないような王都の入り口・・に、いるのだろうか?
「・・・探せば、見つかる。」
そう・・意味ありげに言われた言葉に気が付かず、アスランは王都の入り口へと向かう。
「用意は・・済んだか?」
重さ二百キロ程度ある扉の向こうで・・、死に装束に着替える知り合いに・・イザークは声をかけた。
「ああ、いいぞ。」
この国の姫・・だった、だから---死に際も美しく散らせてあげたいと・・参謀は言っていた。
ギィッと重たい扉を開くと、そこには・・
真っ白なドレスに身を包んだ、ユラが---立っていた。
胸元が開いて、ひらりと広がるスカートは・・綺麗で。
女性だったんだと、イザークは口走りそうになる。
「どうだ?結構いけるだろ!」
そう・・これから起こることなど、全く知らないような無垢な笑顔に・・イザークは言葉を失う。
「・・・さて、久々にドレスも着たし・・--・・ってかやっぱ歩きにくくて嫌いだ!」
素足をぺたぺたと鳴らして・・ユラはイザークの前を歩いていた。
処刑・・だというのに、
いや・・反乱軍が・・巻き返せるとでも思っているのだろうか、ユラは---・・。
そう・・考えながら、ユラ・・いや、オーブの姫カガリの後にイザークは続いていた。