つい・・・先ほどのことだった。
「ユラ君・・・---------いや、カガリ姫・・とお呼びするのが妥当ですかな。」
そう・・ギルバート・デュランダルに言われて・・カガリは顔が蒼白になるのが分かる。
ばれた・・いや、ばれていた。
そう感じて、キッと睨むと・・ギルは「そういうつもりじゃない」と笑う。
「・・・姫、私は・・姫に今後のオーブと・・プラントについて・・・・相談というか、頼みごとをしたいのだ。」
「・・・どういう事だ?」
動揺を隠し、睨みつけると交わすように笑う相手に苛立ちを感じる。
・・処刑か、極刑か。どちらにせよ---まともな道は・・残されていないだろうと、思う。
だが・・思っても見ない言葉に・・カガリは大きく瞳孔を開いた。
「・・アスラン・ザラを-----殺してくれないか?」
その・・一言に。
驚きとしか言い様のない感覚に・・「何故」と聞き返してしまう。
「君も・・私も、今のプラントの政治を・・いいとは思っていないだろう?」
そうだが・・アスランは別だと・・睨んでしまう。
なんで・・アイツを殺せなど言う。・・アスランを・・。仮にも皇子・・それに---・・。
カガリが・・・・・・・最も、信頼し・・大切だと感じている人を・・・・。
「----・・国王は・・正直な所、いつだって殺せる。・・だが----・・皇子は少し、強すぎてね。」
「・・馬鹿言うな・・・・私のほうがずっと弱・・」
「・・皇子は・・君を、大切に思っている。---そんな相手に・・彼が牙を向けることなどないだろう。」
そこまで・・知っていて、アスランを私に殺せと言う・・ギルの気持ちがまるで理解出来なかった。
アスランは・・きっと、だが・・私を好きでいる・・私だって・・・・・-----・・。
「君は・・反乱軍だろう?---皇子をたぶらかしに来た・・そのはずだ。」
え---------・・。
たぶらかす。
私が・・アスランを・・・?
「・・・・大きな・・読み違いだな。」
「そうかな?実際・・やっていることは同じだろう。」
その答えにムカつきながらも・・ここで戦闘をしても負けると分かっていたので・・剣は引かなかった。
「たぶらかすなどより・・ずっと簡単だと思うのだがね、私は」
だが・・自分に拒否権がないことを・・理解できないほど馬鹿じゃない。
ここでNOと言えば・・・・・---この事がばらされて・・殺されるのが落ちだ。
「もちろん・・私達はそう・・君らがプラントを倒す姿勢を見せてくれるのなら・・全面的に協力しよう。物資や・・武器も」
・・・・・だから・・アスランを殺せと?
「・・・・-----・・断ったら?死・・か?」
そう・・笑うと、ギルも笑う。
「その通りだよ」・・・と言っているように思えたのは---私だけだろうか。
そして・・アスランの部屋に向かった。
殺すためではない。
---別れを・・告げるために。
好きだったから。
もう・・最後なら、蓋をしなくてもいいじゃないかと・・思った。
せめて・・忘れないで。
そう・・告げられれば良かった。
「アスラン-------・・あのな、お願いがあるんだ。」
ベットの中で・・二人、カガリはアスランに・・お願いをする。
「・・プラントに・・もどって、父親に-----・・私との事、伝えて欲しい。」
それは・・と、アスランの顔は明るくなる。
ずっと・・一緒にいたいと・・遠まわしに言ってくれた。そう・・感じたから。
「・・---・・ギルには・・伝えるから、明日にでも---行って欲しい。」
そう・・お願いするような瞳で見ると、アスランは頬を赤く染めて・・優しくキスをしてくれる。
「・・・・ユラ---・・ありがとう。」
微笑みあって・・眠りに付く中、、カガリは・・ひっそりと涙を流した。
こっちいて・・ギルに監視されるより-----------プラントにいたほうがいい・・アスラン。
そう・・願っての・・事だった。
明け方・・アスランは馬に乗り・・カガリはソレを見送る。
「・・・アスラン-----・・気をつけるんだぞ?」
「・・・あたりまえだ、----ユラ。」
その優しい翡翠に涙を零しそうになりながらも・・笑って見送った。
それを・・城の・・上の階で・・あたかも当然のように、ギルは笑って・・見つめていた。
ギルの自室にある・・白のナイトは・・黒のクイーンの護衛から外される。
そして・・盤面の黒の駒は、黒のクイーンと・・黒のポーンだけが・・残っていた。
そして・・黒のポーンの前に立ちふさがるのは・・・---白の・・もう一つのナイト。
「・・・・・シホ、頼みがある。」
そう・・キリッとした瞳に言われ、シホは敬礼をした。
--------時が来た。
そう・・シホは感じた。
そして・・カガリから・・今後起こるであろう事を聞き、ソレに備えての事も---一通り聞く。
「・・分かりました・・」
そう・・敬礼して、カガリ様の瞳を覗く。
「・・・イザークとの事は・・・・本当に・・すまない。」
「大丈夫です、少し----離れるだけですから。」
・・・・そうだといい、いや、きっとそのはずだと・・シホは思った。
「悪いが・・イザーク君には今日・・城の見回りをして欲しいのだ。」
「・・は!」
何で俺がと思いながら応じた・・その仕事。あとでとても後悔する事となる。
夜・・カガリは、ギルの所へと出向いた。
「・・・・----・・聞いたよレイから・・アスランはプラントに戻ったそうだね。」
「ああ、お前に殺されたら堪らないからな。」
カガリはもう・・薄々感づいていた。・・・・こいつの・・考えている事に。
「・・・さて、君はもう---身の振りを理解しているようだね。」
「まあな。----そこまで馬鹿じゃない。」
そう・・笑って、ギルに剣を構えた。
「・・・望みどおり・・・-----捕まえて、処刑すればいい。」
そして・・ガッと出てきたレイと・・本気で対峙する。
見回りなど・・そう、悪態を付いていると見慣れた人の姿にイザークは驚いて・・思わず駆け寄った。
「・・シホ---なぜお前が・・」
そう・・言うと、シホは優しく微笑んで口にする。
「イザークに・・あいにきました。」
何でこんな所まで・・嬉しい半分で・・でも、今は仕事中だと喝を入れようとすると、シホはキッとイザークを睨んだ。
「・・・シホ?」
「・・ここからでたい。-----・・退いて・・いただけますか?」
その・・殺気に、イザークは困惑を隠せず聞き返す。
「・・どういう事だ・・貴様-------・・」
そう・・うろたえるイザークを・・シホは淡々とした目で睨み、鉤爪のディープアームズを出して見せる。
これを・・装備するのも久しぶりだと思い・・イザークもデュエルを構えた。
「・・・貴様・・・------・・」
イザークの顔には・・もう、驚きではなく・・悲しみの色が浮かんでいることにシホは気が付いていた。
でも、と・・能力を使う。
太い蔦が・・イザークの足を絡め取ってイザークはそれをデュエルでなぎ払う。
だが・・シホはカッと間合いに入り・・爪をイザーク立てた。
そして・・・剣と足が泊まった所を・・・より太い蔦・・というか、もう幹で押さえつけた。
サファイアの瞳と・・パープルが交差して、シホは一言だけ残す。
「-----・・全部・・本当だから----」
愛している事も・・今、こうやって貴方に爪を立てたのも。
全部・・本当の事だから。
止まった相手の頬に、唇をつけて・・最後に哀しく微笑んでシホは走り去った。
「・・・・-----シホ・・?」
なんで・・お前がその能力を使えるんだとか・・なんで城から抜け出すんだとか・・疑問だらけで-----・・。
とりあえず・・巻きついた蔦と幹を剥ぎ取り、イザークは城へと入っていく。
「・・・惜しいね・・、今の戦いは。」
そう・・ギルは手を叩いて、壁に凍りともども貼り付けられたカガリを見た。
「・・安心したまえ-------・・まだ、殺したりはしない。・・君には・・重要な役割があるのだ。」
冷たい中で、アスランの存在を思い出し・・これで善かったのだと笑いが零れる。
「・・・私をだしに・・反乱軍でも呼び出すつもりか-----馬鹿だな。」
そう・・言いつけて、笑うカガリにギルはやせ我慢はみっともないと笑い・・地下牢に閉じ込められてしまう。
そして----隣日、カガリ・ユラ・アスハの公開処刑宣告は・・王都・・いや、プラントに届く全土で・・張り出された。
「え・・・っ」
プラントについて・・まず、第一に驚いたのは・・キラが----・・ラクスを連れ出して、今もまだ逃亡中だという事。
「・・・父上・・では・・ラクスは?」
そう尋ねたのは・・やはり、アビリティ・ストーンがないと・・この国は支えられないと判断したからだった。
「・・彼女は・・ハイネが見つけて帰ってきた。」
そう・・言われて---ならばキラは?と少々不思議に感じる。
キラが・・ラクスを連れ出したのなら・・、ここが安全じゃないという事を意味しているからだ。
今は追われていても・・キラが正しいに決まっている。
----そう、安易に考えていた。
では・・何故、ラクスだけを戻すようなへまをしたんだアイツは。
そう・・考えて、ラクスの元に向かった。
大聖堂。
「あら?アスランっ!!」
ガッと・・音を出して抱きつかれて、「は?」と頭の上に?を飛ばす。
「・・さびしかった・・・----」
そう・・ギュッと背中も抱きしめられて----・・アスランは思わず不快に感じる。
「・・ラクス・・いったい----・・」
どういう事なんだ?
「よ!アスラン」
「・・・・・ハイネ・・。」
イキナリ登場したハイネは意気揚々とアスランに手を振っている。
友達と呼べはしないが・・時々、世話になっていたのも事実である相手に、助けを求めたい気分だった。
「・・・おい・・ラクス様、アスラン困ってるって。」
そう言われ・・ラクスは渋々はなれるが・・アスランの手を握って離さない。
「だってぇ---私は・・アスランと子供を作るのが役目でしょう?」
そう---覗き込まれて、アスランは「はぁ?」と思わず声に出してしまった。