第十四章・・・濡れる



目覚めると・・そこは、アスランのベットの上だった。
アスランは・・---・・そう見渡すと、ソファーの上で寝ているアスランを発見する。
起き上がると・・鈍い痛みが腹を突いて、昨日の出来事を一気に思い出した。

あれから・・どう、なったんだ?

蒼くなって・・でもと急いで自分の横腹に手をやる。
コルセットも・・砂袋も入っている・・。昨日と何処も変わらない。
だが・・---・・。ひんやりとした・・薬草の感覚がある。
起き上がって・・かけていた毛布を持ち、ソファーで何もかけずに寝ているアスランに被せた。

「・・・---一応・・、ありがとな。」

気まずいながらも礼を言って・・その部屋から出て行く。
部屋に戻ると・・シホがいて、ベットの上にはイザークが寝ていた。

「・・すいませんユラ様・・、ユラ様の薬草を少し分けていただきました。」
「いや・・いい、イザークはどうだ?大丈夫そうか?」
「・・・はい、今は寝ています。」

そう淋しそうにするシホを見て、カガリはイザークの肩に手を当てた。
そして一瞬パァッと光が飛んで・・その場所が治る。

「・・・これで・・、大丈夫だ。」

そう言って微笑むと、シホは泣きそうな顔をして「ありがとうございます」と声を出した。
そして・・寝室に行き、鍵をかけて・・アスランに処置してもらったと思われる場所を出す。
コルセットも・・砂袋も、やはりいつも通りあって---でも、
やはり・・腹には薬草が張られていた。
それで大分炎症は治まっていたが、カガリは直ぐに回復の術を自分にも使い傷口を完全に治す。だが・・痕は残ってしまった。

「・・・ばれた・・だろうか。」

そう呟いて、キャミソールのフワリとした服のままベットに倒れこみそのまま寝てしまう。





「・・・---すいません、キラ」

そう・・謝られて、キラはにこりと笑ってそのピンク色の髪を撫でた。
こっちに来てもう数週間経つけど・・・---・・ラクスは・・やっぱりどこか哀しげだった。
ラクスの護衛兼見張り・・というより、ただ・・ラクスとこの大聖堂でゆったりとした時間を過ごしている。

「そういえば・・怪我人・・こないんだね。」

ラクスの代名詞・・それはアビリティ・ストーンと・・その秀でた回復能力だった。
いつもは・・少なくても十数名の兵士が・・ここにいたと思ったんだけど・・。

「私が・・反乱軍だと言う噂が流れまして---・・それいらいプッツンと途絶えましたわ。」

そう哀しそうに笑われて、キラは「ごめん」と謝って・・ラクスに身を寄せる。

「・・・---・・、キラは・・お優しいのですね。」

そうかと、キラは少し理解する。
同情で・・いると思われてるんだ、きっと。

「・・・---僕、ラクスのそばにいると・・落ち着くし・・、好きだよ。」

そう言って噴水の腰掛けたままラクスを抱きしめる。でも・・ラクスは哀しそうに首を横に振ってみせる。

「・・・--嫌ですの・・もう、人を・・信じると、いつか・・裏切られそうで・・」

切実に泣く声に、キラは「・・大丈夫だよ」と優しく諭していた。





夜の訓練を・・逃げ出さなかったのは、何故だろうと・・不思議に思っていた。
だが・・カガリは、休む気もなく・・イザークも他の兵と出ていた。
郊外で・・だまってアスランと歩いていると、アスランは沈黙を破ってくる。

「・・・・ユラ・・、ありがとう。庇ってくれて・・」
「いいんだ・・好きでやったことだし・・。」

そう・・いつも通り微笑んでみると、アスランもいつも通り微笑んでくれる。
見なかったのだろうか?それとも・・見て、遠慮して・・気を使っているのだろうか?
そう考えて・・でも、アスランから言われない限り答えは出ないと割り切ってモンスター狩りに専念する。

「疲れたっ!!!」
「・・休むか・・」

そう話して、ユラとアスランはいつもの様に寝転がって身体を伸ばした。

「・・・ユラ。」
「ん?」

クイクイと横髪をひかれてアスランを見るとアスランは微笑んで・・そして声に出して笑い出す。

「失礼なっ・・人の顔見て笑うな!!!」

ボスッと叩くと、アスランは更に声をあげて笑った。






結局・・何日もして、アスランは何も言ってこない。


だから・・きっと何も見なかったのだろうと思い、方をつけることにした。





「----・・もう、痛くないですね。」
「ああ。痕だけだ。」

そう・・包帯を取り終わったシホが微笑んでイザークが返し、包帯をしまっているシホにイザークは腕を腹に回して抱きしめた。
ベットの上にいるイザークは「わるいな」と一言だけ言って・・でも、シホにはその一言で十分だった。
シホも優しくその腕に手を駆けて解いてイザークと向き合って・・優しく頭を抱いてやる。
そして・・痕となった赤い線の入り組んだような場所をシホは優しく撫でていた。





「おっ・・・ここは薬草が豊富だな・・」

そう声をあげてモンスターを探しながら草花も探すユラは嬉しそうに声を出す。
アスランも一緒になって、本当だと喜んでいた。

「川がそこに流れているからかもな」

そうしていると・・ざわざわとした感覚に襲われて、二人で剣を構える。
ガッと出てきたそれは・・チンパンジーのモンスターだった。

「・・初めてみるな・・」

そう・・話していると、思いもがけない攻撃が・・飛んできた。

「ッ?!」

なんとか、それを払いのけて・・目の前にぱらぱらと散った氷の残骸を見る。
いま・・アレは、能力を使った。
危険だと判断して、アスランは直ぐに斬りにかかると仲間がぞくぞくと出てきて・・あろうことにユラにいっせい攻撃を始めた。
チンパンジーは頭が良いと聞く・・だから、アスランとユラの力の差をすぐに把握したのかと思い、
急いでアスランは術を使うモンスターを倒していく。

「だーッ・・!!何なんだコイツ等!!」

そう叫んで、足に絡み付いてきた植物の草を蹴り飛ばして、落ちてくる氷の破片を手とルージュで防ぐ。
だが・・--いつの間にか片足に植物のつたが絡みつき、バランスを崩した。

「・・ッあ!」

グランと身体が揺らいで、逆さになったまま川に落ちる。

「ユラっ?!」

焦ってすぐにそこら辺にいた五六匹のモンスターに止めを刺して、ユラのほうに向かう。
足にしがみついた蔦に抗えず、足から上だけ落ちて顔はもう水底に沈んでいる。

「・・・っ・・大丈夫・・---・・。」

そう起き上がらせると、ユラの身体は重く感じられて・・砂袋が水を吸ったからかと納得した。
口に手をやると息をしていなくて、アスランは焦って胸を叩こうとするが・・、叩けるはずもなく・・。
桜色に染まるその唇に、"人工呼吸"と偽って・・キスをする。
すぐにゴホッと音がしてユラの口からは水が流れた。
だが・・、唇は離さなかった。
勝手に-------優しく、ただ・・触れるだけのキスをして・・ボンヤリと空いた眼をあわせる。

「アスラン・・?」

そう・・至近距離で触れながら動く唇に、アスランは微笑んでしまう。

「・・・---人工呼吸をしていた。」
「あ・・そうか、すまん。まさかあんな奴らにやられると思ってなくて・・---」

そう・・カガリは言いながらも、気恥ずかしさに眼を逸らしていた。
だが・・アスランは、まだカガリの身体の上に乗っている。

「----・・・・冷えるぞ?・・--・・乾かしてから・・かえろう。」

そう・・翡翠に覗き込まれ・・提案されては、カガリは何もいえなかった。






「カガリ・・大丈夫かな・・・・」

そうボンヤリと口にしたシンにマリューは大丈夫よと微笑んで頭を撫でてやる。
ムウは「俺にもやってー」とふざけて見せて、ゴツンと殴られていた。

「・・まーユラ・・じゃない、カガリなら大丈夫だろ?・・なんか殺しても蘇りそうな人間だから。」
「それ、スッゴク失礼よ、カガリに」

そうディアッカとミリィも大丈夫だと言い切る。
だけど・・やっぱり心配で、シンは王都に行く事を決めた。

「・・いいけど、気をつけてね?シン」
「分かってる、一人じゃへましないさ・・多分。」

そうして夜の道を、シンはヘリオポリスから王都へと歩き出す。
































































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あとがき
もうじき色々起きる予定(笑)
2006/05/04