病院って・・・なんでこんなに暇なんだ・・・?
桜も散り終わり、少し肌寒いが燦燦と太陽は照っていた。
『・・・ニュースは以上です、次は・・・・』
アナウンサーの声を聞きながら、これ以上無いほど暇。そうしてため息を付く。
ルナは最初は毎日来ていたのだが、オーブでの仕事をザフトから言い渡されたらしくせっせと働いていた。
ラクス様は少しの間身を隠すとメディアにいいつつも実際この病院に毎日来ていた。
なんとなく気が付いたのだが、どうやらキラさんと付き合っているらしい。
ウィーンと音がなり、このさい誰でも良いと振り向いた。
「シン・・・カガリが此処にこなかったか?」
入ってきたアスランにそう聞かれ
「知りませんし・・今日一度もアスハと会ってませんよ?」
そう言うとアスランは頭をかき「ありがとう」と言って病室を後にする。
大体、アスハは病院の庭すら歩くの禁止だし・・・。たしかこの階しか勝手に歩き回れないはず・・。
だったらすぐに見つかるだろう??
そう思い、何やってるんだアスラン。と悪態をつく。
実際話し相手が欲しかっただけで、別にそこまで怒っているわけでもないのだが。
立ち上がり、点滴を引きずりながらエレベーターで三階まで降りる。
ここには大きな庭があり、人工芝や花や木や・・・とても綺麗なものが沢山あって好きだった。
しかも、とても大きく当たる風も心地よい。
そして自販でソーダを買い呑んでいるととても楽しそうに笑う子供の声がした。
ボーっと見ているとなんて平和なんだ。と嬉しくなってくる。
そして子供の中心に誰かいる事に気が付いた。
「おねーちゃん!コレで遊んで!!」
「駄目だよ!ボール遊び禁止でしょ、ね?だからお姉ちゃん私と遊ぼう!!」
「おいおい!誰かとじゃないだろ?皆で遊ぼう!」
「じゃあ・・・かくれんぼしたい!」
「ジャンケンしよ〜、お姉ちゃん同じ所に隠れようよ〜」
「だから!お姉ちゃんは皆のなの!!ね、お姉ちゃん!!」
「おう!ほら、ジャンケンジャンケン!!」
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・。
・・・!
「アスハ!!?」
思わず立ち上がる。何をやっているのだあの人は!!
どう見ても間違えなく、髪は金髪で、目は琥珀色・・・。
「えっと・・シン!だよな!おはよ!!」
そう手を振られ、思わずげんなりしてしまった。
「おい!お前も混ざれよ!かくれんぼ!!」
「い、いやですよ、何で俺が!」
前から思っていたがアスハはとてつもなく変わっている。
一年前はまるで頼りなかったのに、この前慰めてくれるほど大人になってて、その三年前はここまで男勝りとは・・・。
「お兄ちゃん・・・私たちと遊ぶの・・嫌??」
そう泣かれそうに女の子に言われギョッとしてしまう。
「大丈夫だぞ、コイツ良い奴だからきっと一緒に遊んでくれる。」
アスハにそう答えられムッとするが、子供の前で喧嘩なんてナンセンスだ。
「一緒にやればいいんだろ?」
ぶっきら棒に答えると、子供とアスハまでも目を輝かせて此方を見ていた。
「じゃ!お兄ちゃん鬼ね!」
「え!?」
「逃げろ〜」
そう子供に言われショックを受けながらも目をつぶって数える。
「もーいいかい?」
「「「「まーだだよ!」」」」
重なるような声だが、声の聞こえ具合でどれほどでも場所は特定できた。
「もーいいかい?」
「「「「もーいいよ!」」」」
そういわれ顔をガバッと上に上げると木の陰からビクンと動くのを見たり、ゴミ箱の後ろからスカートがはみ出てるのが見えたり。
それを一つづつ見つけていく。
「みーつけた。」
「僕が一番!?そんな〜」
ちょっと泣きそうな男の子の頭を軽く撫でると、落ち着いたようにニッコリ笑ってくれた。
そうやってアスハ以外全員見つけたのだが、どうしても見つからない。
「お姉ちゃんスッゴク上手いんだ!隠れるの!」
子供の遊びに本気になるなよと言いたいが・・・。
もう見るところは全て見たと思った。もしかして・・違う階?
そう考えていると、重大な事を思い出す。
「やべ!あの人、此処にいたらまずいんじゃ・・・。」
外階許可?というのか、それが無いのにこんな所にいては、それに子供ならよく知らないかもしれないが、
大人が見たら一発でカガリ・ユラ・アスハだとばれてしまう。
幸いなのはこの広場には大人がいない事だった。
そうして子供と手分けして必死で探していると、ある盲点とも言える場所に気が付いた。
この広場は病院から突き出していて、当然落ちないように腰ぐらいまでの高さの壁もある。
そして、その裏・・・。でもそこには壁が無いし、風に煽られれば落ちてしまう。
そう思い、ぐるっと歩いて見ていると、そこに下に細い段がありその上に立っているアスハを見つける。
「・・!!危ないじゃないですか!!何やってるんですか・・・本当に!!!」
怒り口調で上から話しかけると、苦笑いして答えられる。
「いやーもう出て行ってもいいかな〜って思ったんだ・・けど・・・。」
そうして手を上に伸ばすと、ギリギリこの壁の淵に届かない。
馬鹿だ。この人。
「・・・それぐらい考えてから降りてくださいよ。」
「だって、そんな高さないと思ったんだ。」
すこしバツが悪いように言われ、自覚があるならするなと言いたくなった。
「まったく・・・アスハではどういう教育してるんだよ!」
その言葉にカチンときたのか、アスハは言い返してきた。
「シン・・私はカガリだ!!」
そう強い瞳と口調で言われる。
「アスハには変わらない!」
「・・・フン!お前なんか知らない!!」
そういわれ立ち去ろうとしたが、今はそれど頃ではない。
「じゃなくて!!あんたどうやって上がってくるつもりなんだよ!!」
アスハは真っ直ぐ前を見て
「知らん。」
そう短く答えた。
「"知らん"じゃなくて!!!!」
なんでアスハの心配を俺がしなくちゃならないんだ?!
「助ける気があるなら見てないで助けろよ!」
そう言われハァ?と言い返してしまう。
「それって・・物頼む態度ですか?」
「じゃあこのまま此処にいる。」
この人、ヤッパリ変だ。こんな真顔でこんなバカみたいな事言ってる・・・。
怒るよりずっと先に噴出してしまった。
「な、何だよ!失礼な奴だな。助ける気が無いならどっかいけ!」
助ける気が無いわけではない。ただ、あんまり違うから・・・。
大体国を治める人がこうも自分達と変わらないなんて思いもしないし、
お姫様って言ったら金持ちで傲慢なイメージばかりある。
しかし、今この目の前にいる人はどう見ても自分と何ら変わらない一般人ではないか。
「・・・手貸してください。」
「助けてくれるのか!?」
ぱーっと顔が明るくなる。そして引っ張り挙げると、ガバッと抱きつかれた。
「な、何するんですか!!?」
「ありがとな!シン!!」
それを子供フがまじまじと見ていて恥ずかしくなってきた。
そして腕を離され、この人は抱きつき魔かなにかかと思う。
「本当は落ちそうで恐かったんだ」
少しバツの悪そうに言うのも意外で・・・。
「・・・そうですか。」
それだけ言って、アスランの存在を思い出し無理やりエレベーターに乗せ部屋に送った。
「あー何だよ。せっかく抜け出したのに。」
ブーたれながら言うのもそう自分と変わらない。
そう言えば前キラさんが、昔のカガリと君は似てる。って言ってたことが少し分かる。
「でも、今日はお前のお陰で助かった、ありがとう!」
そうやって無邪気に笑うこの人も良いと思った。
気のせいかもしれないが、少しだけ好きになれたような気がした。
「シン?」
「・・・あ、・・・アスラン」
「ん?どうかしたのか??」
(アスラン廃れた顔)
(カガリ頭の上に?)
(シン嫌な汗。)
「・・・じゃあ、俺は此処で・・・。」
「なんだよ!まだお前と遊ぼうと・・・」
「・・・(また脱け出す気なんだ・・この人。。。)」
「お願いだから、安静にしてろよ・・カガリ・・」
そして軽くアスランに同情した。