第七話:狂想曲

この事はマスコミには知られていなかった。
それに、この仕事でカガリは疲れたと称し四日間の休暇を取るとキラは他のものに伝えていた。
「・・・ルナマリアか・・シンのは?」
「今医務室で治療を受けてます・・幸い軽く脳震盪を起こしただけだそうで・・・」
イザークは怒り狂いシンに説教をしようとしていたが余りの落ち込み具合しそんな気も失せたと言い大人しく席に座っていた。
「・・代表を攫った奴の特定は出来たのか?」
皆、会議室に集まりモニターや信用できる部下達をつかい情報を洗い出していた。
「その事だが、どうやらブルーコスモス・・いやロゴスの元メンバーらしいことが判明した。」
その言葉にルナマリアは「・・また?」と怪訝そうに下を向いた。
フラガさんもラミアス艦長もすこし俯き考え事をしているようだった。
「でも、まだ・・幸いメディアに流されたりはしていないみたい・・けど、今後それをネタに何か条件を追加されたりはしそうね・・」
それにはアスランも同意見だった・・・しかし、それ以上に問題があると思った。
「・・それより・・・まず、カガリの身の安全じゃないの?」
キラの意見は最もだった。アスランもさっきからそればかり気にしていた。
ウィーンとドアが開きシンが入ってくる・・・。皆一瞬だがシンの方へ顔を向けすぐに逸らした。
シンはキラの隣に座り、少し俯き口を開く。
「・・・もし、代表を奪還するような事があれば・・俺に行かせてください。」
以外・・・。その一言だった。皆え?と言わんばかりにシンの方見ている。
「俺の責任です。俺がまさか此処に来るはずない・・って油断していたのがいけなかったんです。」
シンは顔をしかめる・・・。本当に申し訳ないような顔をしている。
すると、一つの連絡が入る・・・どうやらミリアリアからのようだった。
「カガリの場所が特定出来たわ・・・。まだ・・オーブ国内にいる・・・。」
その言葉に皆驚く・・普通なら、遠く・・しいていうなら何処かの島にたてこもるかもう宇宙にいるか・・それが普通だ。
オーブ国内にいては遅かれ早かれ確実に見つかる・・・つまり・・・。
「・・・やつらは姫さんを安全に還す気は無いらしいな」
そのフラガさんの声に皆反応する。そういう事になる・・・。その場にいた誰もが息を呑んだ。


目覚めるとそこは何処かの部屋だった。しかし自分の手には手錠が掛けられ、ベットの上に寝ている。
起き上がって見回すと、一人の男が椅子に座り紅茶を飲んでいた。
「起きましたか?代表・・・。」
こいつらが自分を攫ったのかと思い硬直しそうになるがその態度を見せるわけにはいかない。
黙っていると相手はクスクスと笑いこちらに近寄ってくる。
「・・・こんな年半ばもいかない小娘が・・平和主張とは笑ってしまうね」
そういう相手だって三十いっているかいないかくらいだった。
その男は紳士的な態度とは裏腹にとても冷たい目をして笑っていた。
ここで自分がどんなに足掻こうがどうせなるようにしかならない・・そう思いまたベットに寝転がった。

自分は単純馬鹿かもしれない・・。そう思わずにはいられなかった。
あんなに恨んでいたアスハを助けたいと願うなんて・・・。


会議は終わりアスハの位置が正確に特定されるまで、シン達は一時休憩を貰った。
休憩に入ると、キラさんとアスランは特に気が気じゃないらしくそわそわしてキラさんがラクス様に なだめられていたのを黙って見ていた。
「・・シン?」
そう言われて見上げるとルナが心配そうに覗き込んでくれていた。
そして、さっきのシンの発言の意図を聞きたそうな目で見られている事に気が付く。
「・・・良い人・・だと思った・・。俺も。」
俯きそう言うと、ルナはそっか。と言い横に座り体重を軽く俺に乗せた。
やるせない気持ちはたしかにあった。でも、それ以上に助け出したいという気持ちの方がずっと強かった。

三十分もしないうちにまた通信が入る。
位置が特定されたらしく、そこの地図が表示される。
「・・・普通の・・マンション?」
驚いた。まさかただの高層マンションとは・・・。
「一般人も・・巻きぞいにするつもりなのか・・?」
アスランはボソッと呟く。相手はどうも自分も死ぬ覚悟があるらしい。
そして建物の見取り図が写し出される。犯人とカガリは12階の左から三番目の部屋・・・。
「まずはここの住民に非難してもらわないと・・・。」
ラミアス艦長はそういうが・・もしそれが犯人にばれればカガリの命は消えるだろう・・。
「えぇ、そうですね・・。この部屋以外の住人に伝えましょう。出来るだけ時間差をつけて、外出するように」
キラは的確に通信班に指示を出す。通信班は有無を言わずすぐに通信を始めた。
おそらくキラはこの国の影で大きな力を持っているのかもしれない。
すると、キラはルナとイザーク、ディアッカにマンションの周りに怪しい奴がいないか見て来いと言う。
「なんで俺が貴様の指図など・・・」
しかし、イザークの反論もキラの瞳には負けてしまう。
「相手が少人数のはずないからね・・・きっとマンションの外にも何人も仲間がいる・・ しかも、また別の場所で待機してる奴もいるはずだ。」
それを聞き、三人は待機している奴らも捕まえればいいんだろう?と言い部屋を出て行った。


そしてまた一時間半後、マンション全ての住民が非難したと報告を受けた。
あまり、大人数で行くのは得策と言えない。なので少人数で行く事にする。
「・・俺は絶対行きます。」
シンは強い目でハッキリとそう言った。するとキラは少し優しい顔をして
「僕も行くよ。」
当然、俺がいかないハズがない。そしてキラはアスランをみて車へと催促する。
車はフラガさんが運転してくれた。
そのマンションはマンション街の丁度中心部にあった。
隣にも同じようなマンションがまるで森のように沢山立っていた。
「いいか、坊主達・・・くれぐれも姫さんを殺させるんじゃないぞ。」
その言葉に皆当然だと言わん限りに頷く。
階段で12階まで登る、さすがと言うべきか三人の息は殆ど上がらなかった。


その男は携帯で誰かと電話していた。
そしてその男の横には紙袋・・・。あからさまなまでに爆弾だと思う。
気が付いた事を挙げれば、此処は何処かのマンションだという事だった。
おそらく、コイツはこれを爆発させて私を殺す気だろう。
カガリ自身死ぬのは恐かった。しかし、マンションの住民が死ぬ方がもっと恐かった。
そう思い身体を起こしその男を見上げていた。するとそいつは携帯を切りツカツカとこちらに寄ってくる。
「カガリ様・・もっと泣くと期待していたのに・・・残念だね」
彼はニコニコ顔でそういう。
「悪いな、私はSには扱いにくい性格でな。」
そう言うと彼はお手上げのポーズを取るそして顎をクッと引っ張られた。
「そんな事ないと思うな〜。昔はよく泣いてらしたでしょ?」
そいつの顔が近くなり、コロンの香りに思わず咽る。
そしてその問いが引っかかり頭の中で考えを巡らす・・・知り合いにこんな奴いたか?
「忘れちゃった?そうだよね〜遠い昔の事だったからね〜」
奴は手を離し背を向ける。遠い昔なんて覚えているはずがない。
しかし、彼はそれでもかというほどクスクスと笑う。何が楽しいのだろう?
「いや・・・君とね最期の時が過ごせるのが嬉しいんだよ」
この男、訳が分からないと思い思わず凝視する。
奴はニッコリと笑い時計を見る。
「でもねどうやら、そんなに話している時間はないみたいだ・・・残念だね。」
爆弾がタイマーを刻んでいるのか、それとも軍が此処に気がついたのか、よく分からなかった。
しかし、一つだけハッキリと分かる。こいつと此処で死ぬ、きっとこれは変わらないのであろう。
逃げ出そうと思った、しかし逃げる行為に何の意味がある?相手だって拳銃くらい持ってるだろう?
そしてまた寝転がる・・・。私は、いつからこんなに諦めが良くなってしまったんだろう?
こんな姿を見たら、キサカはガッカリするだろうし・・・・。
・・・アスランに見られたら多分平手打ちされるだろうな。
そんな事を考えるとやはり死にたくなかった。窓から出ようにもシャッターが下がってる・・・。
どうにかしてこの手錠を外せば活路が見えるだろうか?
色々と考えを巡らせる。でもどれもやはり無理だった。
でも、"無理"という一言で片付ける自分が一番ムカついた。
状態を起こしドアに目をやる。スライド式のドアで電気で動いているわけでもない。それに鍵も掛かっていない・・・。
それを確認し、一気に走りぬける覚悟を決める。
どうせ無理なのかもしれない。でも、その無理を理由にするのは卑怯だ。
それは生きる覚悟が足りないからだ・・・・。
昔、アスランに「生きる方が戦いだ」と怒鳴ったのを思い出す。そうだ、死ぬ事なんていつだって出来るじゃないか。
奴はまだ優雅に紅茶を飲んでいる。しかも自分に背を向けて・・・。
きっとこの男は素人なんだ、もっと黒幕が他にいる・・・。きっと今軍ではそっちの方も調べてくれているだろう。
カガリはそいつがカップを口に運んだ瞬間立ち上がり、ドアへと走った。
その男も気がつき、急いでマグカップを机に置き、ポケットに入っているであろう銃を取ろうとする。
しかし、その素人の男なんかよりずっと早く、カガリはその部屋をでる。
すると真っ直ぐに玄関が見えた。
これならと思い走り出すが、相手も銃を取り出し構えようとしている。
だが、相手はセーフバーを外しておらず、やはり素人だな・・・と横目で見て玄関まで走った。
そして、何回か引きがねを引こうとしても引けない事に気が付いたその男はセーフバーの存在を思い出したかのように それを取る。
ドアにはやはり鍵が掛かっており、体当たりを何度もした。
しかし、ドアが壊れるより相手が発砲したのがカガリの太ももに貫通する方が早かった。


マンションの周りには案の定見張りのような人が沢山いた。
軽く7人ほどだろうか?隣のマンションの屋上に一人いたのでのしてからそいつが持っていた双眼鏡をかり、 隣のマンションから辺りを見渡す。
『ジュール先輩、そこの・・左の人です。はい。間違えありません。』
怪しい動きを見せたものを無線で先輩達のイヤホンに流す。
『ディアッカ先輩の・・・後ろです、今すれ違った・・サングラスの・・・』
先輩達は手際よく回りに気が付かれないよう銃を向け手を挙げさせていく。
そして自分のイヤホンにマリューさんから無線が入る。
『ルナさん?マンションから出てくる人の中にも犯人の仲間がいると思うの ・・・だから、出てくる人のチェックもお願いできるかしら?』
何となくそうも思っていたのでチェックはしていた。
『今のところ大丈夫です。』
マンションの住民は軍に支持されたように時間をずらして少しずつ出て行った。
階ごとに非難していたのだが、10階の部屋で一部屋人が出てこない。おかしい。
急いでマリューさんに連絡を入れる。
『マリューさん?10階の・・・1003号室って人いますか?』
ここら辺はもうセキュリティーで分かるようになっている事ぐらい知っていた。
『いえ・・・いるはずよ、そう表示されてるわ。』
そして先輩達に指示を送る。
『先輩・・・1003号室・・おそらく犯人の仲間がいます。』
それを聞いたイザークは急いで10階に駆け上がる。
そして部屋の前で銃を構え、足でドアを蹴飛ばした。


中入りリビングに出ると中年の男が誰かと電話していた、
そして、テーブルの上にあった拳銃を急いでとろうとする。
遅い・・。そう思いその男が手を伸ばしている拳銃を撃つ。
『何?どうかしたの?』
携帯からそんな声が聞こえる、仲間か?
そいつに適当に話していろと小さく呟く、男は命欲しさか、固まった口でどうもしていないと答えていた。
間違えない。こいつは犯人の仲間だ・・・。
しかし、電話の相手は話すのを止め電源を切ってしまう。
銃の音で気がつかれたか・・・と舌打ちをしてそいつに銃を向けなおす。
その男はヘナヘナと倒れこんだ、情けないと思い銃を付きつけ立ち上がらせ部屋の外へと出た。


12階についてすぐ、ドンドンと激しく戸にぶつかる音がする。
すぐにカガリだと思いその部屋の前に行こうと駆け出した。


バンッ!!!

そう銃声がしたかと思うと、犯人がいると思われる部屋から銃弾が貫通した。
するとそのドンドンと激しくぶつかっていた音はとたんに止む。
アスランもキラもシンも一瞬みな真っ青になる。
しかし、衝撃をうける時間すら勿体無い。そう思い戸の鍵を拳銃で撃つ。
そして戸を引いた瞬間、自分達の方へ人が倒れこんでくる。
紛れもなくその人物はカガリである事を確認する。
そしてそれを抱きかかえようとすると、またしても銃声が鳴り、カガリの身体にそれが掠るのを見る。
腕を伸ばし、カガリを抱き寄せる・・そして相手の死角になるようにドアの横へカガリを持ってくる。


「・・・カガリ・・?」

カガリから返事はない、ただ呼吸を荒げて目を硬く閉ざしていた。
直ぐにカガリの左足が真っ赤になり血を流している事に気が付く。
カガリを抱きかかえ、すぐにでも見てもらわないととエレベーターに行こうとするのを カガリは必死になって止める。
「何するんだカガリ!!早くいかないと・・・」
その間キラとシンは犯人と撃ち合っている、相手は素人なのか二人とも部屋に侵入しようとしていた。
「・・へや・に・・・ばく・・だん・・・・み・・んなにげ・・・・・」
その蚊が鳴くような声にアスランは驚く。
犯人は部屋のリビングの中に隠れてしまった。
「奴は爆弾を持っているらしい!!いったん引くぞ!!」
そうキラとシンに大声で伝える、二人とも撃つのを止め、カガリの無事を確認すると急いで階段に走ろうとする。
アスランもカガリを抱き、二人についていこうとした・・
・・しかし、その瞬間爆弾が作動したのか物凄い爆風と炎がやってくるのを肌で感じた。





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あとがき
更に続け無理な展開!!
有り得ないからこそ打つんだ!(エ?
つうか、セーフバーだっけ?銃撃つときに外すのって・・・?