オーブに着き、久しぶりだと一息つく。
いや、実際ほんの少しの間しか離れていないのだが・・・。
アークエンジェルの中ではアスランが傍にいてくれて随分と報われた気がした。
「カガリ・・・大丈夫?」
そう声をかけてくれたのはキラだった。あぁとニッコリ笑い返すとキラは頭をポンポンと叩いてくれる。
「疲れたら、休みとりなよ?いいね?」
そう兄に念を押され頷くとニッコリ笑い兄は自分の隣に立つ。
明日はいよいよラクスがオーブで平和主張をするばんだと思い少し嬉しくなる。
ラクスの意見は平和を願う彼女の歌をきちんとした言葉に直すようなもので、聞いていて癒されるのだ。
しかし綺麗事ばかりでなく具体的にはと行動を起こそうと国民に提案したりと凄い所がある。
正直な話し彼女のカリスマ性は類を見ないものがあると思う。
演説当日、この間と同じようにオーブでも警備の最終チェックに入る。
「ラクスの隣には・・・一応アスランが立つべきだよね?」
当然アスランはラクス様の護衛がいつもの任務だった、なぜこんな事を今更言い出すのか?
「・・・出来ることならカガリの傍にいてやりたかった。」
その言葉を聞き、プラントでの騒動で未だにアスハが傷ついているのを皆に物語らせる。
「それで、僕も今回は会場で護衛するよ。」
その言葉に皆驚く、アスハが不安定な時にアスランかキラさんが隣にいないでどうすると。
「カガリがラクスまで同じ目にあったら大変だって言うから・・・。」
それを聞きあぁと思った。
「じゃあ、カガリさんの護衛は誰がやるの?」
ラクスの護衛は、イザーク・ジュールがやっていた事に気が付く。
「・・・シン・・やって。」
そう言われ最初はふ〜んと思っていたがビックリする。
「な、何言ってるんですか?そんなの俺・・・」
そう言いかけるとまたキラさんの眼がその続きを引っ込めてしまう。
ルナは自分がやりたかったと啖呵を切った。
しかし、どうもキラさんの意見は絶対らしく、すんなりそう決まり少し不快感を覚える。
「・・・シンか・・」
アスハの部屋に入るとそう言われ少し怪訝そうな顔をする。
部屋には大きなモニターがあり、既に演説の舞台が映し出されていた。
それ以外は少し裕福な家のリビングとそう変わらない感じだった。
なんかむかつくので少し悪態をついてやろうとするが、その前に話しかけられ逆に驚く。
「コーヒーと紅茶、どっちがいい?」
どっちでも・・・と思いながらも、紅茶を選択するとアスハは当然のように入れだす。
「・・・国の代表が何やってるんですか?」
「紅茶を二杯入れている。」
揚げ足をとるようにそう言われさらにムカッとする。
「・・・アールグレー・・・らしいが、紅茶の種類って良くわかんないよな」
まるで品のないセリフに驚きながら、変な人だと思い見ていた。
「ソファー座ってろよ?立ってると疲れるぞ?」
大体、護衛が座って紅茶なんて飲めるか・・・。そう思うが、どうせ危険な事なんて起こるはずがないと思い席に着く。
「・・・。」
何となく話すこともないので二人でクッキーや紅茶を呑みながらのんびりと過ごしていた。
始めは自分からぴりぴりとした空気を発していたのだが、面倒になり止める。
そして、疑問に思っていることを聞くことにした。
「あんた・・キラさんと双子らしいけど・・本当なんですか?」
アスハはキラが言ったのか?と確認したうえで
「あぁ、そうだな。本当だ。」
当然の事のようにそう答えられ、さらに疑問をぶつける。
「じゃあ、何で・・・キラさんはコーディネーターであなたはナチュラルなんですか?」
アスハはしばし黙り、紅茶を飲みため息をつく。
「何でって言われても・・・私たちの本当の親がそうしたかったんだろう?」
まぁそれはそうだけど・・・。
「私はよほど小さいときからこの家の子になっていたし・・・。キラの事は三年前まで知らなかったしな」
それはキラさんから聞いたと言い、また沈黙が訪れる。
そしてまた、浮かんだ疑問を投げかけた。
「あんた・・・トダカ一佐って知ってるか?」
アスハは黙ってコクンと頷く。
「俺、アスハに家族殺されてすぐにあの人に助けてもらったんだ」
わざとだった。家族を殺したのはお前だと、そう再認識させてやりたくて言った。
案の定アスハは一瞬悲しそうな顔をして俯く。やっぱり昔と変わらないなと鼻で笑ってやりたくなった。
「・・・知らないって・・こうも恐い事・・・なんだな。」
その言葉にカチンと来る。キラさんにも言われたばかりだったからだ。それに、一体何のことを言っているんだ?
なにか、自分が知らないことを知っているような態度をとられつい言葉が出てしまう。
「何も知らないのはあんたの方だろう!!」
前々から思っていたことをついに吐き出す。
「俺がどんな思いであの時・・・家族が死んだ時・・どれだけ悲しかったとかそんな事全くわかんなくて・・・」
思わず立ち上がる俺を見て、アスハは黙って瞳を見つめ返す・・しかしその目は恐怖ではなく哀れみの目だった。
「議長のことは・・たしかに俺達が間違ってたかもしれない・・けど!!俺達だって必死だったんだ!!」
その目にキレ、大声で怒鳴るのに、やっぱりアスハは変わらず哀れみの瞳を向ける。
そしてアスハはスッと立ち上がり傍によってきた。
「な・・なんだよ・・・。」
その目が近くに来ると何故か恐かった。真っ直ぐすぎるような目が痛かった。そして直ぐに目を背けてしまう自分がいて、
「お前・・・苦しそうだな。」
その一言に当然だと言い返してやりたくて背けた目をまたアスハに向ける。
こんな奴に負けるわけにはいかない・・、家族や死んだ仲間だってもといえばコイツが・・・。
しかしアスハは何を思ったのか、俺の銃をスッと取り上げそして渡された。
「・・・撃っていいぞ?お前がそれを望むなら。」
馬鹿にされた、そう思い悔しくて思わず銃を取り上げ銃口をアスハに向ける。
しかしアスハは怯んだりせず凛と立っている。その目が、その態度が、・・・言動全てに不快感を覚える。
だが、その気持ちとは裏腹に手は震えていた。何か違うかもしれない、また間違っているのかもしれない。
アスハはそんな俺を見ていた、その目からは怯えも怒りも恐れもも伺えない。
拳銃を握っている手が霞んで見えてくる・・何故だか分からないが涙が目から溢れていた。
泣いてない、泣いてなんかいないと首を横に振り拳銃を構えなおす。
「私は・・お前がどうんな風に物事を考えていたか・・知らない。
お前が何を思って生きてきたのか、どれだけ悲しい思いをしたか・・知らない。」
こんな奴がいう事に耳なんてかすもんかと、必死で心の耳を塞いだ。
「・・・お互い・・知らないことが多すぎる。だからこうも容易く銃口が向けられる相手になってしまう。」
そういい震える腕を掴み銃口が下に下げられる。シンは抵抗することなくその手に従ってしまった。
「お前が今泣いている理由も私には分からない・・・私が憎くて泣いているのか?
今まで死んできた者を思って泣いてるのか・・・それとも・・。」
そんなことシン自身わからない、何で今自分は泣いているんだろう?
アスハが憎いから?ではさっき直ぐに引きがねが引けたのではないか?
考えたくなかった、この場から逃げ出し二度と顔が見たくない、どこか遠くに行ってアスハをただ恨んでさえいれればいい・・・。
「・・・解るのが恐いのか?」
この言葉にピンと来る・・解りたくない。・・・過去にアスランを撃った時とてつもない罪悪感にかられたのを覚えている。
相手が知らないただの軍人であれば・・・そう思った。
ステラだって、相手の事をしる由もなく、戦っていて・・その後で出会い好きになった。その後ではステラと戦うなんて
絶対考えられない事だった。
シンは今まで多くの人の命を奪ったという責任を感じた事はあった、しかしどれも知らない奴だから別に・・と
そう安易に考えていたのかもしれない。
知らない奴なら、簡単に殺すことが出来る。
しかし、アスハに実際会いアスランの恋人だと知り、キラさんの双子だと知り、ルナから"良い人だったよ"と言われ
全く悪い印象を受けなかったこの人を自分は安易には殺すことが出来ない。
そうすれば自分の涙のわけも説明がつく、この人を撃ちたくない。だから涙が出たんだ。
スッと気が抜けたようになった。放心し銃を落とした俺を見て、アスハは何を思ったか俺の頭を抱きしめた。
「・・よしよし・・いっぱい泣いておけ、黙っておいてやるから」
その言葉に安心したのか自分でも良く分からない、しかしその直後俺は泣き崩れていた。
暫くして泣き終わるとアスハは黙って腕を解き頭を撫でてくれた。
不思議と不快感はなく、ぼぉっとその場に立ち竦んでいた。
画面ではまだラクス様が立っておらず、演説はまだなんだろうと思った。
「・・・座っていいぞ?」
そう言われソファーに腰を下ろす。するとアスハは俺の隣に座り、また紅茶を飲みだした。
ただ、今は甘えられる存在が欲しくて頭を横に倒すと、アスハは嫌がらずにいてくれた。
そういえば・・・とさっきの質問の続きをしだす。しかし明らかにさっきとは違い、自分には敵意もなにも無かった。
「トダカ一佐・・元気にしてる?」
ビクンとアスハの肩が動く。横目でチラッと見ると少し悲しそうな顔をされてあぁと気が付いた。
死んでしまったのか、あの優しかった人も。
そう思い悲しくなった。あの人にはどれだけお礼を言っても足りないくらい助けてもらったというのに。
「・・・真実って・・いうのはいつでも酷・・・だよな」
アスハはため息を着き泣きたいような顔をする。
「皆何も知らないのかもしれない。結局・・・。ただ戦争になれば国のために戦ってそれでさらに多くの者を傷つける。」
それは自分も身をもって経験した事だった。
「トダカ一佐・・・最後までナチュラルとコーディネーターが一緒に平和に暮らせるよう願っていたらしい。」
あの人らしいとすこし嬉しくなる。こんな俺ですら、立ち上がらせてくれて、プラントに送ってくれて・・・。
そう思うとやるせない気分になってきた、なんであの良い人が殺されなくてはならないのか?
悲しみが怒りに変わり、またアスハに質問をする。
「・・・良ければ・・誰とか・・どの船と戦って・・・とか分かる?」
アスハは大きく目を見開き、シンを見つめ返す。この人の目はどうも嘘がつけないらしい。
「・・・あ、別にそれがザフト軍だったとかしても、構いませんから俺・・・ただ、気になるって話で・・・」
死んでしまった人の命は帰ってこない。誰を恨んでも憎んでも・・・その言葉が今なら何となく理解できた。
「・・・これを・・お前に伝えるのは私は良いことだとは思わない。。」
よく分からないと首を傾げる。覗き込むがアスハは苦しそうに表情を歪める。
「別に・・俺そんなネガティブじゃありませんし・・・。」
それでもアスハは表情を硬くしたままだった。なんだか余計に気になり催促したくなる。
「知ってるんだったら教えてくださいよ。」
その言葉を聞き、アスハは深く深呼吸をした。
「・・・ミネルバ・・・・・いや正しく言うならインパルスだった」
その言葉に大きな衝動を受ける。ミネルバ・・?インパルス?
そんなハズはないと少なくとも俺が・・・?俺があの人を殺すなんて事有り得ない・・!
「宇宙でですか?地球でですか?!」
宇宙なら、ルナマリアだった可能性が高い。宇宙といってくれる事に願いを込める。
「・・・オーブの領海だ。」
その言葉に愕然とする。嘘だ。そんなはず・・そんな事!!
思わず何かに当たりたくなるが、此処には殴れるものも人も残念ながらいなかった。
家族が死んだ時アスハのせいにすれば良かった、そうする事で逆に生きてこれたのかもしれない。
・・・しかし、今はどうだ?全てシン自身のせいでしかない。殴るとすれば自分だった。
あの人は・・まさか助けた少年に殺されたとも知らず、皆の平和を望みながら散っていったのか?
あの時の自分は余りにも愚かだった。ただ、敵が悪なんだと・・そう決め付けて・・・。
そんな自分勝手な力の前にあの人の正しさや信念、命が壊されたとでもいうのか?
やるせなかった、自分を自分で殴ってやりたかった、銃口を自分の額に向けてやりたかった。
でも、そんな事をする勇気も無かった。・・ただ、自分の両手を握り血が滲むほど強く硬く握っていた。
さっきとは違う涙が流れてくる・・・悔しい、やるせない・・自分の愚かさが招いた事なんだと強く自覚せざるおえない。
それが悲しかった、声に出さず肩を震わせて泣いていた。
アスハは黙って肩を抱いてくれていた。
ラクスは舞台に上がると、一礼をしマイクを掴む。
アスランはそんなラクスの後ろで立っていた。
『私はプラント代表、ラクス・クラインですわ』
その顔とは一変ししっかりとした口調にみな一目で彼女がカリスマだと認めたようだった。
『先日、カガリ様がプラントに来た際に起こった事・・・私からも深くお詫びを申し上げます。』
ラクスとカガリはプライベートで仲が良い。この事は世界中の人が知っている事だった。
そしてラクスは今後世界はどうすべきかを具体的に分かりやすく説明をしていった。
隣で見ていていうのも何だが、ラクスやキラは何があっても己の正義を崩す事はないだろう。
暫く話すと、ラクスから会場の人に質問したい事はありますか?と言われ一人の記者手を上げる。
「ラクス様は、カガリ様とアスラン・ザラ氏について政治的に、そして友達、元婚約者としてどうお考えなのでしょうか?」
ラクスは待ってましたと言わん限りにマイクに話しだす。
『政治的に申し上げますと、この中立のオーブでコーディネーターを選択するのは決して間違った事ではないと考えますわ。』
この言葉は賛否両論だった。そうかもしれないが・・・とか、でも・・という声も多く上がっていた。
『以前、ユウナ・ロマ・セイラン氏と結婚が決まった時、国中大喜びでしたでしょう?』
その言葉に民衆はピクッと来る。ユウナは国家反逆罪で捕まった上、運悪く死んでしまった事は皆承知していた。
『彼はナチュラルでした。結局彼女はどちらかを結婚するとなったら選ばなければいけない立場になるのですから。』
まぁそれもそうかと、納得の声が上がる。
『カガリ様自身の事を申し上げますと、嫌がっていましたの。ですが、国のためなら構わないとそう仰っていましたわ。』
この衝撃の新事実に皆唖然とする。
『カガリ様はいつでも、国民や世界の人の命、平和をを第一に考えていらっしゃいますわ、私も少なからず
そうあって行こうと努力はしていますが・・・。』
ラクスはそう言い一息つく。これからラクスは何を言うのかとアスランは直ぐ傍で聞き耳を立てていた。
『此処からは私情を挟みますが、カガリ様はいつでも人のためを思って生きてこられました。
その彼女が、なぜ・・自分が望む相手と自由に結婚できない訳があるのですか?』
この言葉にオーブ国民はギクッとする。
『時々、私やカガリは一人の人として扱われない時があります。国の代表という大きく重たい呼び名。
しかしそれに屈しない働きをしようと、努力はしているつもりでした。しかし・・・!!』
ラクスらしくない主張の仕方に皆驚きを隠せなかった。
『日常ですら、人として扱われなくなったら・・・私たちは人としての存在価値を失うと・・私は考えます。』
この言葉は後々キラとラクスの結婚も兼ねての言葉だと気がつき流石はラクスと感心する。
ラクスはそれだけ言い終えると舞台の袖のほうへ歩いて行った。
今日は何も起こらなかったとアスランはホッと肩をなでおろす。
しかし、事件は別の場所で既に起きていたことにアスランは気が付く事になってしまった。
「お前が全て悪いわけじゃない・・皆ただ敵と戦ったんだ。」
シンは何も言わず俯いていた。今こうやってシンの隣に座って見ていると、どうも昔のキラと被る。
「・・・俺が殺した事に・・かわりありません。」
今までシンがどれだけの人を殺してきたかなんて知らない。しかし、知り合いの死を悲しめる奴に悪い奴はいない。
世界中のものと知り合いになるのは無理だが、皆意思があって家族がいて友がいる。
それを壊す事の愚かさを知った者は間違いを起こさないと信じていた。
「昔・・キラもアスランも・・・凄く悩んだ時があったんだ。」
何となく昔話を始める。この二人も昔迷い苦しんで未来への道を開いていった。
「知ってると思うが二人は幼い頃からの親友で、でもザフトと地球軍・・・。互いに知りながらも殺しあった。」
シンは初めて知ったと顔を上げる。
「お互い、キラはアスランの友達を、アスランはキラの友達を・・殺したらしい。」
その言葉にシンは大きく目を開く。一体どんな気分だったのだろうと考えていたように見えた。
「でも、二人は和解した。目指す未来は一緒だと・・・。」
シンの顔は明らかに困惑していた。何故許せる?そう目が語っていた。
「キラとアスランは恨みを捨てた。そして自分達の友達、自分・・望む未来は皆戦争のない平和な世界。」
それでもシンの顔は晴れなかった。
「同じ未来を望む者達が戦う必要はないだろう?」
「でも・・・!」
シンは声を荒げた・・その気持ちも分からなくない。アフメドが死んだ時自分もザフトが許せなかった。
「恨んだって誰も救えない・・・。皆それを知った・・だから手を取り合う事が出来た。」
言葉につまり、シンは口をパクパクとさせていた。
そして、冷静に考えようと俯いてしまう。
「・・・もうじき、ラクスの演説が始まるな・・。」
バンッ!!!!!!!!
そう派手な音がした、ビックリして立ち上がると部屋のドアが開き銃を構えられている事に気が付く。
そいつらは変なゴーグルをかけ、あからさまに防弾チョッキを着ている。
シンはいち早くカガリを掴み、相手の死角になるソファーの裏へアスハと自分を隠し銃を構えた。
しかし、相手の銃を見れば一目瞭然。あの形の銃は貫通性が高い・・・。
つまり、この至近距離ではこの部屋の何処に隠れようと撃たれてしまう。
それもシンは分かっているようでチッと舌を打ち素早くソファーの裾から相手の銃めがけて発砲する。
さすがは赤服・・・。見事に的中し、相手は銃を落とした。しかし、その直後部屋に手榴弾のような者が投げ込まれる。
シンはカガリに覆いかぶさるような形を取るが、それは発光弾と音だけの弾・・・つまり視覚と聴覚を狂わせるのが目的の
ようだった。
何も見えず、ただシンが自分の上に乗っかっている事は感覚で分かった。
しかし、ふいに腕を捕まれ引っ張られる。シンも無理やり誰かに引き離されてしまう。
「離せ・・!!っ!!」
そう薄っすらと聞こえたかと思うとガタンと人の倒れるような音が微かにした。
そして瞬時に鳩尾を殴られ、気を失ってしまう・・・。
無事演説が終わってホッとしたのはアスランだけではない。
キラも、ラクスまで狙われたらと少しヒヤヒヤしていた。
・・これで平和主張も終わり、カガリのもとに帰ろうとする。
カガリの控え室がある廊下に入る・・・。余りの警護の少なさに唖然とした。
それに・・・気のせいだろうか?火薬のにおいがする・・・?
何かあった。そうとっさに判断し廊下を走る。廊下を走っているとやはり警護の者は一人もおらず、壁には数箇所弾の
跡があった。
バンッと勢いよくカガリがいるはず部屋のドアを開ける。
するとソファーに誰も座っていない上火薬の匂いが鼻に付く。
焦って部屋を見回すと、ソファーの陰で誰かの唸り声が聞こえた。
「カガリ?!」
ソファーの後ろに走りこむとそこにはシンが頭から血を流し倒れていた。
「シン?!・・・じゃあ・・カガリは・・?」
どこを探してもカガリはいなかった。呆然とし立ち尽くしていると、ムゥさんが入ってきて唖然とした顔をする。
「・・・カガリが・・攫われた・・。」