第三話:尊き刹那

そしていよいよ前日、オーブの代表がアークエンジェルで入国すると聞き、市民が港に集まってくる。
そこで、カガリや搭乗員が降りてきた。やはりだが、メンバーはお馴染みの人たちだった。
そしてその入国が一段落して護衛同士対面を果たす。
「久しぶりね、アスラン君」
「お久しぶりです、ラミアス艦長」
頭を下げると、ラミアスはニッコリ笑い手を差し伸べる。
「相変わらず堅苦しいな〜坊主は!」
フラガさんは笑い頭をクシャクシャと撫でてくれる。
「あの、この人たちは?」
シンが不思議そうに質問してくる。
「こちらがラミアス艦長、フラガ一佐、ノイマン・・・」
と順々説明していると、一人自分から自己紹介をした人がいた。
「私はミリアリア・ハウ。よろしくね」
その軍人とは思えない軽々しい態度にイザークとシン、ルナマリアは軽く驚いて見せた。
そしてディアッカは気まずそうにミリアリアを見つめている。
「なーんて顔してるのよ!ディアッカ。あんた引きずるタイプ?」
そう言い無邪気に笑う姿にディアッカは少し頬を染めていた。
「実際護衛に当たるのは、俺と艦長、キラとミリアリアの嬢ちゃんだ。」
そう言われ、シンは少し驚きディアッカはまたしても気まずそうに笑みを浮かべる。
「ところで・・キラは?」
「キラ君ならカガリさんの護衛をしているわ。」
「でだ、警備の話しなんだが・・・」
そうして話し、明日の予定が決まったところでラクスとカガリの明日までの護衛をするべく、皆で立ち上がった。


「こうして演説が出来る日が来るとは・・・嬉しい限りだ」
「そうですわね、カガリの演説楽しみにしてますわ。」
「ありがとう」
車の中で必死に考えていた。実際すでに原稿はあがっているし、問題は無い。
しかし、いつも原稿と違う事を言うのはカガリ自身承知していた。
「護衛の方ですわ。」
そう言われ車を降り紹介されると、そこにはアスランとシンの姿があった。
皆敬礼していたが、シンの目は必死に何かを訴えているような恐さがあったが貫禄を見せるように見つめ返す。
「こっちの護衛はラクスも良く知る人たちだ。」
そう言い艦長たちが少し微笑みながらラクスに敬礼する。
「皆さんお疲れ様でした。どうぞプラントでゆっくりしていって下さいな」
言葉こそ選んだ言い方だったが、ラクスは心を許したもののみに見せる笑顔で言う。
ホテルに入ると、オーナーに此処は安全ですからご自由に歩いてください。といわれ部屋に案内されそこで一息つく。
「ふぅ・・・。」
ため息を着きベットに寝転がると誰かのノックの音がして戸の前に立つ。
「あの・・・すいません。」
「や、やめなさいよ!!」
その声にどこか聞き覚えがあり誰だったか?と開けてしまう。
「あ・・・。」
そこにはメイリンと昔ミネルバで会った赤紫色の髪の女の子が立っていた。
「あの・・カガリさん、お時間よろしいですか?」
「もう!!なに考えてるの!カガリ様はオーブの代表で・・・・」
メイリンは何か尋ねたいようだったので二人とも自室に通す。
「あがっていけ、私も暇をしていたところだ。」
ザフトの赤服を着た赤紫色の髪の女の子はばつが悪そうに頭を下げた。

「えっと・・・メイリンと、お前は?」
そう尋ねるとその子は敬礼をして見せ
「ルナマリア・ホーク。今回ラクス様カガリ様の護衛にあたらせて頂きます。」
「私の姉です。」
たしかに似ていると思い紅茶を二人に注ぐ。
「ルナマリアか・・・少し長いな、ルナと呼んでもいいか?」
そう言うとルナはハイと答え少し恐縮してしまう。
「そう硬くなるなよ。せっかく同年代と喋れるいい機会なんだ。」
笑ってそういうとハイとまた答えられ少し悲しくなる。
「私はカガリだ。プライベートでは様はつけるなよ、気持ち悪いからな」
メイリンは早く質問したいのか小刻みに身体が揺れていた。
「あ、あの!!アスランさんと・・・その・・・付き合ってるって本当ですか!?」
その問いにルナは紅茶を吐き出しそうになりゴホゴホと咽る。
「あんたねぇ・・他人のプライベートに突っ込むような事・・・」
この子はアスランの事が好きなんだと思い、申し訳ない気持ちになってしまう。
しかし、この場でぐらい明確に意思表示はしておかないとと思いハッキリとした口調で言う。
「あぁ。そう受け取ってもらって構わない。」
そう言うとメイリンはガックリと肩を下ろし下を向いてしまう。
「・・・すまない。メイリン」
そう言うとルナはブンブンと首を横に振る。
「カガリ様が気にする事じゃありません。ただ勝手にこの子が・・・」
そうしてルナがフォローしているとまた戸をノックする音が聞こえた。
「カガリ?いるか・・・俺だ」
その声にビックリしカガリは直ぐにボタンを押し開ける。


カガリ様と今初めて話し感じた事は前ミネルバで会った頃とはまるで違うという事だった。
偉いはずなのに紅茶を注ぎ、前と打って変わりとても強い眼差しで目が合うだけで畏縮してしまう。
同年代といいつつもそこには大きな差があるように思えた。
アスランが入ってきてこちらの存在に気がつかず話をしていた。
「今日夕食、レストランで一緒にとろうかと思ってな」
しかしカガリ様は首を立てには振らない。暫くして
「しかし、それではまた面倒な質問に答える事になるぞ?」
「ラクスとキラも呼ぶ。これでどうだ?」
その答えにカガリ様は顔は見えないが嬉しそうな声で
「わかった。」
そしていつも私たちには見せないような甘い笑みを落としてアスランは去っていく。
「すまないな、来客が来て・・・。」
カガリ様は自分が偉いという自覚がないのだろうか?まるで友達と話すかのように申し訳なさそうな顔をする。
前、たしかにこの人は頼りないと思った。しかし今はどうだ?まるでちがう。
この人は尊敬の対象に出来るほど立派な人なのかもしれない。
そう思うと少し嬉しくなり、そしてそんな人と話していると思うと更に嬉しくなる。
「カガリ様、あの・・忙しくなければ色々お話をしたいんですけど・・・」
その声にカガリ様はニカッと笑い、「勿論!ゆっくりしていってくれ」と答えてくれる。
そしてショックから少し脱出したのかメイリンも顔を上げ三人で話しだした。
それはとても他愛のない事だったかもしれない。さっきまで萎縮していたが次第に普通に話せるようになってくる。
「そうだ!トランプあるから大富豪しよう!!」
「カガリ様準備良いですね!!」
「負けませんよ!私!!」
そんなこんなで大乱闘にもちかいカードゲームで盛り上がっているとあっという間に夜になってしまった。
「あ!マズイ・・・悪い。夕食の約束が・・・」
カガリ様はもう少しやっていたかったとため息をつく。
「今度また遊んでくださいよ!カガリ様がお暇な時に!!」
そう言うと、あぁと微笑んでくれて一緒に部屋を出る。
「そう言えばお前達夕食とらないのか?」
「私はお姉ちゃん達と一緒に食べに行きます」
「じゃあカガリ様、また明日」
別れ際にカガリ様はニッコリ微笑んで、
「ありがとう。今日は楽しかった」
と言いレストランの方へ歩いていった。


「悪い遅くなった」
そう言い彼女は自分の斜め前席に座る。
「いいえ、ですがお食事が届いてしまわれましたわ」
ラクスは食べ物にナイフを通しながら言う。
「カガリも早く食べようよ」
キラはスープを飲みながら言う。
「いただきます。」
そうして四人で取る夕食はいつも一人でとる夕食より数段美味しく感じる。
「そういえば・・・シンもいたな、護衛の中に」
カガリは少し憂鬱そうに言った。
「シン・・・。ディスティニーに乗ってた子だよね?」
それを聞き少々心が痛くなる。シンはカガリを・・いやアスハを目の仇にしていた。
「大丈夫ですわよ、きっと。歳月は人を変えますわ。」
ラクスはニッコリ笑いそう言うがあのシンがそう簡単に変わるとはなかなか思えなかった。
「いや、いいんだ。あれは私たちにも非があったのかもしれない。守れなかったのが真実だ。」
カガリは恨みも悲しみも込めず言う。この態度が時々まるでキラのようだと思わせる。
キラもカガリもラクスも何か突然変わったように見えた。
キラは泣き虫だったのに、落ち着き中身こそ変わっていないが雰囲気は随分と大人びた。
ラクスも昔はホワホワとした可愛い歌姫の婚約者として見ていたのだが実際はとてつもなくしっかりとし、カリスマ性もある。
カガリは猪突猛進で自分が信じた道を突き進んで、感情が粗く男っぽい。
しかし、今ではまるで大人になり思っても顔に出さず心の中で真実の道を模索する。
皆基盤こそ変わらないが、雰囲気や持つ理想がとてもハッキリしていて自分だけが残されたような気分にしばし陥る。
「どうかしたのか?アスラン・・・。」
カガリのその問いにハッと我に返る。
「いや・・・別に・・・」
「お前の事だどうせハツカネズミにでもなってたんだろ?」
カガリはニッコリ笑い見つめてくれる。やはりその真っ直ぐな瞳は昔から寸分違わなかった。

夜に少しブラブラしたいと思いロビーに出る。
するとそこにキラの姿があった。
「キラ、どうかしたのか?」
そう声をかけるとキラはニッコリ笑って、
「ちょっとね」
と言いそれ以上何も語ってくれない。不満げに見ていると仕方ないと言わんばかりにひそひそ声で教えてくれる。
「ラクスの部屋が分からなくて」
それを聞き、ビックリする。
「おい・・・まさか・・・」
キラは何も悪びれず、頷く。
「ラクスから来るように言われたんだけど、部屋何処にあるか聞くの忘れてね」
このラブラブカップルは・・・と少しため息をつき、部屋を教える。
「ありがとう、アスランもどうせだからカガリのところいったら?」
悪戯に笑ってキラはラクスの部屋の方へと駆けて行った。

「ルナ・・・遅かったね、何やってたの?」
そうシンに言われ何とかカガリ様に行きつかないようにしなければと頭を働かせる。
「カガリさんとトランプやってたの」
そうあっけらかんと答える妹を少し睨みつつシンと目を逸らす。
しかしあからさまにシンは不快な顔をして見せた。
「思ってたより良い人だった。明るくて優しくて・・・。」
それを言うとメイリンは当然だと言わんばかりで頷く。
「・・・ふーん。」
シンは納得できなさそうに背を向けてしまった。


戸からまたノックが聞こえた。
何となく察しがつき何も言わずスイッチを押し戸を開ける。
「やっぱりアスランか」
そう言いにっこり笑うと彼も微笑み返してくれる。
「・・・上がっても構わないか?」
そう言われ、そういう気があってきてるのか?と思うが嫌ではないのでコクンと頷く。
飲み物を出し、ソファーに座りしばしばお互いを見ていた。
何も会話しないこの空間がこの時が好きだった。
お互いの存在が近くにある。その事が自分達にとっては幸せだと思っている。
「今日は寝に来た訳じゃないんだろ?」
「男的には痛いけどな」
少しはぐらかしたような曖昧な態度に少しムッとする。
「なんとなく一緒にいたいだけだ。」
そう言われると逆に恥ずかしくなり、少し赤面する。
するとアスランは手招きをして、自分の足の間に座るように言い流してくる。
ちょこんと座ると、後ろから腕を回されアスランにスッポリと収まる。
背中と胸板で服越しに触れる体温が心地よかった。
少しアスランに重心をずらし、アスランの手を掴む。
時々直接耳に掛かる息がくすぐったくてまた気持ちが良い。
その体勢で十分ほどすると、アスランの息がやけに規則正しいものに変わる。
横目で見るとアスランは寝てしまったようだった。
やれやれと思い、自分もアスランに身体を預け寝る体勢に入った。

しばらくして目を覚ますと、寒さで身体を震わせてしまう。
そこまで寒くはないが、寝ていると自分の体温が高くなるせいか寒く感じた。
「んっ・・・・。」
アスランはその振動で起きたのか目をこすり、意識を取り戻してしまった。
「悪い、起こしたな・・。」
そう謝ると彼はいや・・・と少し眠たそうな声を出した。
「カガリ・・・手冷たいな・・。」
そう言われてみればそうかもしれない、手を摺りあわせているとアスランは両手ごと包み込んでくれた。
「風呂・・・入るか?」
その質問に少し動揺したが、
「いいが・・・襲うなよ。明日の演説は立ってやるから腰にきたら困る。」
アスランは分かったと言い、二人で風呂に向かった。

恥ずかしかったが、アスランは約束を破らない奴だと知っていたから安心して行動できた。 風呂に入ると二人で背中を流したり、髪を洗ったりと面白かった。
浴槽に二人で浸かる。最初は互いに見つめあっていたが、アスランがカガリに「俺の間に来いよ」といわれ素直に従う。
それはさっきのソファーの時の体勢と同じで、この体勢が大好きでまたアスランに寄りかかる。
さっきとは違い生で触れるのも悪くないと思った。
そして足や腕が自分より二周りも三周りも大きく長い事に気がつく。
それがまた男らしくてやっぱり良いと少し笑みがこぼれる。
「やっぱりカガリは女の子だな」
それはどう言う意味だと聞き返す。こいつ、まだ私を男か何かと思う時があるのだろうか?
「いや、可愛いとおもって。」
コイツは私がこういうセリフに対して切れることを知っていても言うから驚きである。
「何いってるんだ・・・恥ずかしい!!」
少し暴れるとまるで子供をあやすかのように頭をポンポンっと触られる、それがまたムカつき少し睨むと
見かねたようにアスランはお腹に手を回し首筋にキスを落す。
「おい・・襲わない約束だろ?」
少々流されそうになりながらも講義する。
「分かってるよ、襲わない。」
アスランは腕を解き、ニッコリ笑い浴槽から出て行く。
それが唐突過ぎて少し驚き長めていると、アスランは振り返り
「これ以上こんな状態でいたら、本当に襲うからな」
と恥ずかしそうにいい、部屋を出て行ってしまった。




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あとがき
えっと・・・イチャイチャ?に入ります?
アスカガ好きーなので、やっぱり書きましたよラブラブ。
でも、実際の男の人が此処まで来て止まる訳が無い。
と苦笑しながら打ってました。