やはり・・そうとしか言いようがない。
爆風に紛れたピンクの髪を後ろに束ねながら、ラクスは悲しげに目を細めた。
4僕にとっての非日常的出来事
秋が始まる頃、文化祭がやってくる。
大がかりな文化祭の為か、この学校に夏休みはない。
夏の間は必死に文化祭の作業へとあてられた。
特に理系であるキラ・アスランはてんてこ舞いである。
キラはOSを書く仕事が速いとか、独創的だとか、よく分からないが評価されてしまい仕事が増え、学校に寝泊まりしたいくらいだった。
またアスランも自分の仕事は早々に終わらせたが、色んな所からピンチヒッターとして呼ばれ、毎日学校へ顔を出している。
ラクスはホールで歌を歌うらしく、文化祭前から話題沸騰。アスランは危険ではないかと懸念していたが・・。
「あーでも良かったよ〜・・当日僕暇で!家帰って寝たいなぁ・・。」
「ラクスの歌聞くんだろ?」
カガリはそれと言って大きな仕事はなかったらしく、楽しそうに文化祭を観覧している。
「アスランは?」
「ああ、アイツは研究発表に付きっきりだって。ラクスが歌うときは心配だから抜けてくるって言ってたけど・・。」
綺麗な校舎は文化祭の間だもの凄くユニークで面白い空間へと変身する。
「うわ、3Dだ!」
「ああ・・僕が設計考えた奴だ・・OS書いたのも僕だけど。」
「ええ!凄いなキラ!」
「んー・・何か教授が"考えて見ろっ"っていうからさ。3Dの映像ってあんまり見ないじゃない?だから作ってみたくて。頑張ったら出来た」
「頑張って出来るのが凄いよ!」
キャッキャと楽しそうに騒ぐカガリに釣られ、キラも次第に仕事の疲れが吹き飛んで、屋外の屋台などをカガリとまわる。
すると、この間の銀髪の人・・イザークと言う人が、茶色い髪の女の子と歩いていた。
「・・シホだ。」
彼女はキラ達と同じ一年生で理系の女子の中でダントツで頭が良いのでキラでもよく知っている。
どちらかと言うとクールで無口なイメージの子。
「何か、あの人女性と歩くイメージないのにな。」
カガリもキラと同じ事を考えていたようで、二人でクスクス笑う。
「そういえば、カガリって・・」
そう言いかけたところで、大きな爆発音と爆風に包まれた。
突然埃と煙、灰が混じった熱風にキラは目を閉じた。
と同時に、カガリに手を強く引かれ、強引に右へと倒される。
直後、ピストルの音が何発も聞こえ、視界が定まらない中をカガリに手を引かれ走り抜けた。
「・・な、何・・?銃声したよね?爆発音も・・っ??」
「黙れキラ!居場所がばれる。」
しっとカガリは指を立てて、何とか校内へ入るが、校内もまたパニックである。
やっと煙が引いてきたと思うと、カガリは校内の各場所に置かれる緊急時用の銃を生徒のIDカードを使って引き出した。
「えぇ・・っ!カガリそんなモノどうするつもり・・」
「私じゃない、お前が持つんだ!」
その銃を渡された瞬間、屋外から声がする。
聞き覚えのある声、イザークだ。
「三階の右から二つ目だ!撃てるな!?」
誰かに指示しているのだろうか?その瞬間また銃声がして、ガラスの割れる音がする。
カガリは少し走って別の場所の銃を同じように引き出し、屋外でピストルの弾を避けながら校内に入ろうとするイザークへ投げる。
「使えっ!」
「・・!」
渡されたイザークは少し驚いたようだったが、直ぐにそこで激しい銃撃戦が行われ、キラは唖然としながら見ていた。
屋外に数人銃を操る連中がいるようだが、イザークは見事に使用者の腕を撃ち抜いていた。
「あぶないっ!」
呆然としているキラに飛んできた弾が間一髪カガリに当たらず、キラはカガリと共に床に倒れる。
「・・クソ、中にもいる」
そう言ってカガリはキラの手を引き走り出す。
キラはまた訳が分からぬまま走り出した。
「ど、どうして僕が走るの?」
「いいから!死にたいのか?!」
「イヤだけど!でも意味が分からないよ・・!」
何とか人の少ない場所へと出て、カガリとキラは柱の陰に隠れた。
「・・お前、ストッパー付けたままじゃ銃は撃てないぞ。」
「え、あ、うん。」
一通り銃の使い方は授業で習っていたので、キラはすんなりとストッパーを外す。
「ところで、何なの?・・突然・・・」
「・・その話は後でだ。・・ラクスが心配だな・・、いや、アスランが行くか・・。」
そう言ってカガリは誰かと通信を取り出す。
「こっちは無事だ、ああ、うん・・。爆発はホールか・・ラクスは?まだ控え室に入ってなかったのか・・良かった。」
そうやってしばらく会話すると、カガリはキラの手を握る。
「よし、ラクスとアスランの居る場所に行くぞ。そこが一番安全みたいだ。」
「うん・・、」
「・・多分誰かしら撃ってくるから、気を付けろよ。」
そう良いながらカガリは右足のスカートを捲る。
思わず赤面しかけたキラの目に入ってきたのは、学校とは違う仕様の銃だった。
「こんな時に不謹慎な事考えんなよ。」
「だ、だって・・」
どうして銃を身につけているの?とか、どうして僕が逃げなきゃいけないの?とか色々疑問はあったけど、走り出したカガリに付いていくようにキラも走り出す。
が、カガリが出た途端ピストルの音がして、カガリの足をかすめた。
カガリはそれを気にしないようで、相手を撃ち返す。
反対側にあった柱に隠れ何度か打ち合ってから、銃声が止んだ。
「・・倒したの・・?」
「直ぐに追っ手が来る。今の内に行くぞ!」
そうして階段を上り下りして、何度か銃撃戦になり、その度にカガリが応戦する。
キラは怯んでしまって、一度も銃を撃っていない。
何とかホールの近くに付いた。が、そこには酷く血の臭いが充満している。
ホールからは多くの人が運び出されていた。みんな傷を負ったようで、血を流している。
「・・カガリ!」
そう声がして数名の大人がカガリとキラを囲んだ。
キラは訳が分からず、またキョトンとしてしまう。
「大きな怪我はないようだな・・さ、急いでこっちに。あとは我々が」
「分かった。」
そうして引率されキラとカガリはホールの横の通路にある教室に入った。
「キラ!カガリ・・!」
中にいたのはアスランとラクス。二人とも怪我はしてないようである。
「大丈夫だった・・、よかった・・!」
「・・ホールが爆破された所をみると・・やはりラクス狙いだったみたいだな。」
そう言ってアスランは心配そうにラクスを見るが、当のラクスは全く平気そうにしている。
「・・怪我人の方を見て差し上げたいのですが・・・・」
「何いってるんですか?あなたが狙われてるんですよ?ラクス。あなたが外にでては危険です!」
困ったようにアスランは頭を掻く。
「・・じゃ、キラお前はここにいろ。」
「え?カガリ・・ここが一番安全なんでしょ??外にでちゃ・・」
「私はいいんだよ。」
そう言ってカガリはその部屋から出ていってしまう。
「・・所でキラ、何でお前ここに・・」
「え?よく分かんないけど・・・・僕達さっきから何度も撃たれそうになって・・、でカガリが小型トランシーバーみたいので、ここが一番安全だって、誰かに言われて・・それで。」
そう言うと、アスランは頭を捻る。
「・・キラかカガリが誰かに狙われた・・・?」
そう、それはキラも思っていることだった。
しかも、カガリではない。さっきから狙われているのは僕だ・・と、キラには言い切ることが出来た。でも・・
「・・キラが狙われるわけがないよな。」
そうなのだ、自分が狙われる訳がない。だって僕は普通の高校生。
ラクスのような有名歌姫でもなければ、アスランのような優秀なザフトの軍人でもないのだ。
「・・と言うことは、カガリか?」
そう言って考え込み窓の外を眺めるアスラン。
カガリは余り自分の家の話をしたがならないが、実はもの凄い金持ちの娘とか、そういう可能性は無いわけではない。
けど、カガリじゃなかった。僕が狙われていた。・・カガリは僕を助けるために動いていた・・・。
「キラさん、どうかしましたか・・・?」
「あ、ううん。別に・・・・・・・、ラクスこそ・・」
「私は大丈夫でしたわ、アスランが直ぐに来てくれましたし・・」
「・・そうなんだけど、そうじゃなくて。」
「?」
「・・・ラクスが・・気に病んだんじゃないかって・・、沢山の人が怪我をしちゃったのが・・自分のせいだって思うんじゃないかって・・・」
考え込んでいるアスランには届かなかっただろう。
ラクスは一度大きく目を開き、悲しそうに顔を歪める。
キラは泣きそうになったラクスの頭を数度撫でた。