「おい、アスラン!」
そう大きな声がして・・振り返ると、そこには銀髪の人が立っていた。
3絡み付いた柵
学校に入学して、やっと慣れてきた六月。
食堂に向かっていた四人はその声に振り返る。
「・・イザーク」
「先輩をつけんか、貴様!」
アスランの知り合いらしい。顔は整っているが、少し怖い印象を受ける人だった。
「・・あら、お久しぶりですわ。ジュール先輩」
「・・ラクス嬢・・お久しぶりです。」
アスランへの対応とは裏腹に、イザークはペコリとラクスに頭を下げた。
「・・ジュールっていったら、プラントの評議会の・・」
「・・って事はラクスのお父さんとは同僚に当たるのかな?」
「そう言うことになるな。」
そうコソコソとキラとカガリが話していると、イザークはアスランの首根っこを掴み、今にも殴りかかりそうになっている。
「大体貴様はなぁ・・っ!プライドと言うモノがないのか?!ええッ?軍人としての・・」
「イザーク・・学校で軍の話は・・」
「五月蝿い!腰抜けめ・・っ」
どうやら、彼も軍にいたらしい。
「これは地球軍の罠だ、オーブだって地球の国なんだぞ・・ッ!」
「イザーク!やめろって」
そう後ろから声がして、色の黒い金髪の男がイザークの肩を掴んだ。
そんな事をやっているから、周りの生徒はこちらに注目している。
「邪魔をするなら貴様から殴るぞ。」
「おお、こわっ・・。イザーク、腹立たしい気持ちも分かるがそこらでやめとけって。学校に居づらくなるぜ?」
「ふん、こんな学校いつだって辞めてやる。」
「出来ねーだろ、それが。」
彼も・・アスランと同じ軍人なのだろうか?とキラは首を傾げた。
それにしても、プラントの元軍・・ザフトという名なのだが・・・。からの生徒が多い。
「ザフトは他の国の軍に比べ、若い奴が多いんだよな。・・MSを乗りこなせるのが若くて体力のあるヤツが多いからだけど。」
そうカガリがキラの顔から何かを察して教えてくれる。
それからまた少しイザークという人は怒鳴って、行ってしまった。
「何だったの?軍の誇りとか・・アスランはもう軍人じゃないのに。」
「・・、俺まだザフト軍だけど?」
「へ?」
食事中キラはすっとんきょんな声を上げてしまった。
だって・・
「何で?戦争は終わったんじゃ・・」
「休戦だ、終わってない。」
「けど、オーブが仲介に入って・・それで和解したって・・」
「和解はしたが、休戦しているだけだ。」
政治に詳しいカガリを見ると、カガリはカレーライスを食べながら教えてくれる。
「・・プラント側にだされた和解の条件の中に軍事力の大幅な削減というものがあった。・・それで、だろ?」
「・・察しがいいな、カガリは。」
「え、意味が分からないんだけど。」
「だから、ザフトの軍人を事実上無力にするのに、ここに入れられた・・って事だろ?ここオーブの国立だし。」
そう言ってジュースを飲み干したカガリに、アスランは頷く。
「・・イザークはラクスのことも心配してるんだろう、きっと。」
「何だかんだ優しい方ですからね」
「ええ、プラントの平和の象徴であるラクスに何かがあっては困ると思ってるんでしょう・・。」
「地球軍が狙うには絶好・・って事か。」
「まぁ・・セキュリティーは高いが、地球軍のスパイがどこにいるとも限らないからな・・。俺達ザフトもちゃんと武装はしてないし・・」
キラは目の前で繰り広げられる会話が、どこか遠い国のことのように思えた。
オーブは平和の国、まさか自分の間の前で銃撃戦やら暗殺やらがあるはずがないのである。
「いざとなったら・・ラクスは俺が守り通しますよ。」
「あら、頼もしいですわ。」
この間、少し疑問に思っていたんだった。
ラクス・クラインって・・僕等より一個年上だったはず・・。
・・・きっとアスランと同じ学年に合わせたのかもしれない。
アスランから直接聞いたわけではないけど、アスランはザフト軍のアカデミーを首席で卒業したらしい。
しかもこの歳でネヴェラ勲章という軍事成績を讃える勲章を2・3個持ってるらしい。
流石優秀なアスラン・・だが、幼なじみとして、悲しい気もする。
アスランが、人を殺した数で讃えられる勲章を良く思えるはずがないのだ。
「ラブラブだな、お前達」
「婚約者ですから、ね。アスラン」
「ええ」
いつの間にか予鈴がなる。
「そう言えばアスラン、文化祭の研究発表何にするんだっけ?やっぱりロボット?」
「ああ・・教授がハロを見せたら偉く気に入ったみたいで・・バージョンアップした奴でも作るよ。キラは?」
「んー僕は教授に頼まれたOS創り上げるだけなんだけど・・なんでも代用エネルギーの保存と応用をやるらしいよ?あと3D画像のデータ組み立てと・・」
「へーお前等難しいことやってるんだなー」
「私にもさっぱりですわ」
そう言って、理系と文系組は別れ、キラとアスランは情報の授業に向かう。
「あ、ミリィ!宿題やった?」
「もう、キラまたやってないの?」
「見せて!」
「コラキラ。俺が見せないからって他の人に頼み込むな!」
そのやり取りにミリアリアはクスッと笑う。
「もう、キラったらやれば出来るんだから」
ミリアリアはキラと中学からの友達で、今も昔も仲が良い。
「大変だっただろ?中学の時のコイツの世話」
「うーん、まぁね。」
少し困ったようにミリアリアは笑う。
そうしているうちに情報の先生が入ってきて、キラは授業中泣く泣く宿題をやっていた。
平和だな。
数ヶ月前からは考えられない。
一時でも"戦争"という生死の狭間に立ったアスランは、この日々に退屈こそしないが、何か違う気がしていた。
俺がこうやってのんびりと生活している間に、地球軍はまたプラントを滅ぼす手立てを考えているのかもしれない。
・・俺の父も、地球軍を滅ぼす手立てを考えているのだろう。
"休戦"・・か。なんてくだらない気休め。
「アスラン?」
授業中アスランがボーっとしていることに気が付いたキラは、珍しいと声を掛ける。
・・・平和しかしらない、キラのような人間が少し羨ましい。
でも、何も知らないキラを少し疎ましくも思う。
オーブは平和だが他国は・・生きるか死ぬかの惨事なのだ。
この国を否定するわけではない・・中立の理念は素晴らしいし、コーディネーターとナチュラルが共に生きられたらなんと素晴らしいんだろうとも思う。
たが、所詮は夢物語なのではないか?
そう思ってしまう。・・自分は何人ものナチュラルを殺して、俺だってナチュラルに何度も殺されそうになった。
殺された者の遺族は俺を許さないだろう、俺だって俺を殺そうとした連中と手と手をとって・・とはなかなかいかないのだ。
・・それでもこの国は
「・・平和だな・・」
「?」
みんながキラのように生きられたらいいのに。
そうアスランは思った。