第9話*NO.1



海から上がり・・四人は今日泊まる予定の宿舎へと戻っていく。

不機嫌なカガリ・・、そして、切なそうなヤマト。

カガリとラクスはがっしりと手を繋ぎ、アレックスは仕切にヤマトの顔を見る。

凄く・・思い詰めてるようだと、漠然と思った。









「・・大丈夫か、ヤマト。」

宿舎へ着き・・ヤマトとアレックスは同じ部屋で、少し曇り空になった空を見上げる。
ヤマトは終始ぼーっとしていて、風邪でも引いたのか・・・?と、本気で心配になっていた。


「・・・--・・僕・・、、やっぱり言う・・。」


ポツリとヤマトはそう声を出す。
アレックスは・・「そうか」と小さく返した。







今日・・ラクスと話して、彼女が何処か自分に壁を作っていたのを思い出す。

分かっている・・自分はラクスの恋人"キラ"と言う人物にそっくりなのだから。

恋人がいるのに・・自分の気持ちに答えるわけにはいかない・・。それも、分かってる。


でも・・



「・・・2番目でも・・良い・・・・。」



ポタリとアメジストの瞳から雫が零れた。

恋人がいるのなら、自分は二番でも良いから。


側に置かせて欲しい。








独り言のように呟くヤマトに・・アレックスは今は一人にしてやった方が良いだろうと、部屋を出る。



すると・・丁度、ラクスも隣の部屋から出てきて二人でロビーのソファーに向かい合わせに腰掛け、コーヒーと紅茶を飲む。



「カガリさん、泣いておられまわすわよ。」

怒ったような声に・・アレックスも、ヤマトのことを口に出した。

「ヤマトも・・泣いてる。」

「・・・。」


そのアレックスの声が聞こえたのか聞こえないのか・・ラクスは少し伏せ、もう一度顔を上げた。

「貴方は平然としていらしてるのですね。」

相手は貴方にキスされたことに泣いているのに・・と韻を含んだ言い方をされ、アレックスは目をそらす。
ショックじゃない人間がいたら、そいつは相手のことを好きでも何でもないだろう。

「・・傷ついても・・始まらない。傷ついて・・泣いたら何かが変わるのか?・・何も変わらない。」

悩んだって、考えたって・・。


「何もしないのは・・・駄目なんだ。--------・・後悔が増す。」

「まるで、後悔が前にあったような言い方ですのね。」


ラクスは・・そのアレックスの言葉がアスランの言葉に聞こえていた。
アスランの母に・・聞いたところによれば、アスランがずっと思い続けていた人はカガリに他ならない。
幼なじみだったにもかかわらず・・アスランは、カガリは自分のことをどう思っているのか分からず、いつもグルグルと考えていた。

そして、カガリの転校。

何も出来なくて・・駄目になった。


彼自身の身体までおかしくなり・・・・今では・・。




「さぁな・・。」



分からない。
実際・・過去にあったのかもしれない、けど・・それはアレックスにはわかり得ない話だ。


「-----・・後で・・ヤマトが君に話があるそうだ・・、、聞いてやってくれ。」


そう言うと・・相手は少し神妙そうな顔をして・・「・・・・--・・分かりましたわ。」と答える。


ラクスにも・・好きな人がいるのは分かり切っていることで、、、、


そう考えて、アレックスは--まずいんじゃないか?と疑問を持つ。

ヤマトのあの様子だと・・・ラクスに完全に否定されて、、生きる気が失せるとも限らない。


それに・・誰かに必要とされないと・・自分たちは・・・・、、、、--一体どうなるのだろう。


--------まるで存在しなかったように・・消えるのだろうか・・・?


そこまで来て、アレックスは絶対に嫌だと思う。
カガリの記憶にも・・残らない、残ったとしても時を経て消える。
そしてカガリは・・他の人間と人生を歩む。


「・・・眉間に・・・皺が増えましたわよ。」


そうラクスに言われアレックスは思考から離れ、考えを整理する。
自分は一体・・どうすれば、消えずに済むのだろうか。

カガリに-----愛して貰えれば・・・・

そこまで考えてアレックスは立ち上がり、ラクスもその後へと続いた。
その後直ぐに夕食となり・・割に暗い雰囲気で始まるが、何とかラクスはヤマトとカガリを立ち直らせる。
やはりここら辺の気遣いは女の子だなと・・アレックスは深く感心して、やっと機嫌の直ったカガリに話しかけることも出来た。


「ヤマト・・さん、後で少しお散歩しましょうか?」

「え・・?」

"さん"を付けられてしまったが、ヤマトは少し明るい顔になってアレックスを見る。
アレックスは「少し言っただけだ」と目配せで伝え、ヤマトは決心したようにラクスを見て「うん」と答えた。
カガリは何処か不安げにそのやり取りを見て、、その後ラクスが安心させるように微笑み、何とか食事が終わる。


「では・・私達、行ってきますわね。」

「・・気を付けろよ。暗いから。」


「女の子一人守れるぐらいは・・強いよ?」


安心して、と・・カガリに伝えるようにヤマトは言い、アレックスは本当にそれで良いのかとヤマトの顔を覗いた。
アレックスは、それでは駄目だと思う。
二番で良い何て事はない。

チラリとカガリを見れば・・まだ根に持っているようで、こちらを見ようとはしなかった。
そう・・アレックスがカガリを覗いていると、ラクスの目が光り、「もしもカガリさんの身に何かあったら・・承知しませんわよ」と釘を打ち二人は宿舎の外へ出ていく。
お嬢様口調撫で優しい物言いなのに、何処か恐怖さえ感じる言い方が出来る人を敵に回すなんて・・自分も馬鹿なものだと少し思う。

カガリの身に・・これ以上のことをするのは、アレックスの良心にも反するので、するつもりはないのだが・・。
チラリとカガリを見ればカガリは「じゃあ・・」と言い残して、部屋へと戻ってしまった。









ラクスとヤマトは二人で夜の海岸沿いの道路をゆっくりと歩く。
何処かぎこちない雰囲気・・。

ラクスはヤマトに顔を合わせようとはしない。

「・・ごめんね。・・・---でも、、自分の口で、言いたかったんだ。」
「・・はい。」


電灯の下で止まり・・ヤマトは、やっとの思いで口を開く。
ラクスも神妙な面もちでヤマトを見上げる。


「・・僕、ラクスのこと好きだよ。」

「・・・・ありがとう・・ございますわ・・、でも・・」


ラクスの動悸が速くなる。
電灯に照らされた相手は何処までも儚げで、切なそうだ。

自分を映す、綺麗な紫色の瞳からは涙が零れそうになっている。


ずきんと・・ラクスの胸が痛んだ。

なんで・・・・この人は、何処までも最愛のキラに似ているのだろうか?


「・・うん、、ごめん・・。でも、僕・・言って・・おきたかったんだ・・。」


流れた涙を必死で腕で拭い、止めどないようで・・胸を掴み顔を伏せる。
苦しく、切なそうに泣く姿に・・・ラクスはどうして良いのか分からず・・そっと相手の頭を撫でた。

抱きしめてあげたかった。


でも、



-----貴方は・・



「・・・一番じゃ・・なくても、いい・・んだ・・。」

嗚咽を吐きながら、言葉を紡ぎ・・ヤマトは自分の気持ちをラクスに伝える。
一番じゃなくても、いいんだ。

僕は・・



「ラクスの・・傍にいたい・・。二番でも良い・・から・・、、、」



そう、、例えば・・。

「・・・・キラさんが・・戻ってくるまでで・・いい、、だから・・・」




"僕をラクスの一番にして。"




痛い・・。

そう、ラクスの胸が軋む。


「・・・駄目・・ですわよ・・---・・、、私が・・愛してるのはキラ・・、、、、貴方は・・」


そう、、キラじゃない。
キラではない・・・なのに、どうして。


「・・ラクス。」



やっと涙が止まり・・次は、ラクスが泣きそうになっていた。

ぽたっと涙が流れて・・ラクスは俯く。




「・・・どう・・して・・・私・・・、、、」




いつも相手を傷つけることしかできないのだろう。

なんで・・二番で良いなんて、相手は言ってくるのだろう。


キラ・・。

キラも・・・・・・・



-------そう思っていらしたの・・・・・?



ヤマトの姿はラクスの中で極限にキラに近くなる。
もしも、同じ事を考えていたのなら。

・・ずっと前から、本当はアスランとの婚約も・・知っていたのだとしたら。

彼は何を思っていたのだろう。


アスランとの婚約の噂が立ったのは・・高一の夏休みにはいる前。
キラと・・付き合いだしたのはその年の秋頃。


ホントは・・ずっと、ずっと知っていたのかもしれない。

今・・目の前にいる・・彼のように・・自分は一番ではないと・・・・・。


「・・・キラ・・っ・・。」



ずっと、ずっと・・・淋しい思いを、苦しい思いを・・させていたのかもしれない・・・。




"二番で良い"


そんな・・・、、、私は・・。




「キラが・・一番好き・・です・・。」




涙ながらにそう言うと・・身体が暖かいものに包まれる。

ラクスはビクッとして・・身体から離そうとするが相手は離れない。



「ラクス・・」


優しく耳元で名前を呼ばれ・・ラクスは、ハッと相手を見る。

マリンブルーの瞳が一瞬光り・・・・相手の目を覗き込んだ。



「・・・よかった・・僕も、ラクスが一番好き。」


えへへ・・っと・・照れたように笑う姿に、ラクスは様々な疑問が吹き飛んでいた。


「・・き・・ら・・---・・?」

「うん?・・・よかった・・ずっと、アスランが好きなんだって・・-------------・ラクス?」

ポロポロとラクスの瞳から涙が落ち、キラは優しくそれを拭う。
そして・・キラは唇をラクスの綺麗な頬に寄せ、ラクスもそれを受け入れる。


「・・・キラ・・っ・・良かったです・・、、」
「?」

キラはよく分からないように首を傾げ・・二人は手を繋いで宿舎へと入っていった。































































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あとがき
アスランの誕生日なのに、10万HITを打つ管理人。
2006/10/29