「・・そ、そんなこと・・言われたって・・ッ・・困るんだ!!」
言い逃げしようとしたアレックスにカガリは真っ赤な顔で大声を上げる。
私はアスランが好きだ、だからアスランを待つ・・・-------そう決めているのに。
そう・・アレックスを睨むと、相手はこちらを振り向いて優しい笑みを作る。
振られたはずなのに・・相手は嫌に冷静で、自分が馬鹿みたいに吠えていると感じてしまう。
「想うのも・・禁止?」
「え・・・---・・」
カガリが大声で叫んだせいか・・少し周りががやがやとしたが、自然といつものようになる。
カガリは目をパチパチとさせて・・アレックスを見ていた。
「アレックス・・言って振られちゃったの?!」
「ああ・・」
昼休み、ヤマトと食べていると・・ヤマトは「凹んでないみたいだね」と言ってくれる。
実際・・アレックスは凹んでなどいなかった。
「振り向かせる。それだけだ。」
「カガリに鬱陶しく思われちゃうかもよ?」
そのヤマトの言葉に、アレックスは無糖コーヒーのブリックパックの最後の一滴を飲み終え、ゴミ箱へと投げる。
カガリは・・・ウザがるだろうか?
だが、諦められる想いではない。
諦めない。
「・・・まぁ、ストーカーにならないようには気を付けるさ。」
当然でしょ?と・・笑われて、アレックスは梅雨の時期の空を見上げた。
アレックスに・・言われると、まるでアスランが言っているように聞こえる。
当然だ、顔も・・声も、仕草も似ている人なんだから。
ばくばく言った心臓を抑え、カガリは何度も深呼吸をする。
後ろから・・バーーーーーーーーンっと大きく叩かれるまでは、視界に何も入ってなかった。
「ちょっとっ!!カガリ、アレックスからこくられたんでしょ?!!!何で断るのよッ!!!!!!!」
半首締め状態のフレイにカガリはだいぶやられながら・・だって・・と小さく声を出す。
「王子様はね、迎えに来てくれるんじゃないのよ??あんたの幼なじみもそう!!!!」
「・・・アスランは・・」
「アスランは・・じゃ、ないの!!仲良いじゃない?!折角の色男を・・・・・」
アスランじゃないだろ。
顔が一緒だって、声が同じだって。
私が・・・
「私が好きなのは、"アスラン"なんだ・・"アレックス"じゃない!!!!!!!」
アスランがなんな状態なのに、それが自分のせいかもしれないのに・・・
私が好きなのは・・ずっと、アスランなのに。
「他のヤツなんて好きになれるはず無いだろ?!」
そう言ってカガリは駆け出していた。
いつか、アレックスの中にアスランを見てしまいそうで、カガリはそう言い切って自分に言い聞かせる。
長い廊下を走っていると・・誰かにぶつかり顔を上げた。
「・・き・・、、、、あ、ヤマト。」
「・・・・?どうしたの、カガリ。大丈夫・・・?」
心配そうに言われて、やっぱりコイツもキラそのままだとカガリは胸の詰まる思いになる。
ふらついたカガリの手を取り、、ヤマトはニッコリと笑って裏庭へと歩いていく。
「・・やま・・と、」
「休もう、いい場所見つけたんだ。」
そう言われて・・カガリヤマトは五時間目をサボり、その屋寝付きの裏庭の場所へと腰を下ろす。
「ね、此処なら濡れないでしょ?先生にも見つからないだろうし・・」
「・・・・。。」
優しい笑顔に、カガリは面食らって泣きそうになってしまう。
そのカガリに・・・ヤマトはあわあわとして、優しく頭を撫でてくれた。
「・・ラクスも・・僕と居ると、似たような反応するんだよ。」
どうしてだろうと・・少し哀しそうに言うヤマトに、カガリは・・ラクスまで二の舞にならないようにとヤマトに告げる。
「ラクスの・・恋人が、お前にそっくりだからだ・・」
「え?」
ビックリした様子のヤマトにカガリは追い打ちをかけるように続けた。
八つ当たり・・と言うヤツなのかもしれない。
「---・・今、事故で植物人間状態なんだ・・・--私の従兄弟でもある。」
「・・ッ・・あ、、そう--------・・なんだ。」
動揺した様子のヤマトを見て、カガリは我ながら酷いことを言ってしまったと青ざめる。
ヤマトに言ってもどうしようもないことなのに・・・
「ごめ・・ーーごめん。私・・ちょっと疲れてるみたいだ・・・。」
「ううん・・・・、、、何か、ラクスが哀しそうにする訳が・・分かって良かった。」
無理に笑顔を見せるヤマトが、カガリには泣きそうな顔に見えて・・・。
いつか、ラクスに裏切られたと知ったときも・・キラは同じような顔をしていたのかもしれない・・。
そう漠然と浮かび、カガリは涙を流していた。
「え・・ッ・・わ、わ・・カガリ・・泣かないで!!」
ポロポロと泣きだしたカガリに・・ヤマトは焦って必死に言葉を探す。
何か言ってあげなくてはいけない・・・・・そうは分かっているのに言葉が見つからない。
「・・、、だって・・キラに・・・・キラに・・ッ・・そっくり、で・・・」
名前が違うだけ・・・・そう、言えるほど、ヤマトはキラそのままだとカガリは否応なしに感じていた。
これではラクスも参ってしまうだろう・・。
「・・・キラ?・・それ、ラクスの・・恋人?」
その問いに・・カガリはコクコクと頷き、ヤマトは少し眉間にしわを寄せてから・・いつものように戻る。
どんな人・・?と聞かれ、カガリは極丁寧に答えていた。
優しい奴、他人に配慮が出来るヤツ・・・。
何より、自分の本心を隠して、他人に合わせてしまう良くない癖も持っていたと。
「・・良い人・・なんだね、やっぱり・・。」
ラクスの彼氏だもんね・・と、儚く笑うヤマトに・・カガリは率直な感想も銜えた。
「お前と似てる・・だから、、、ラクスも、お前にキラを重ねてるんだと思うんだ。」
「----------・・・・そ・・っか・・。」
カガリが泣きやんだのを見て・・ヤマトはまた、優しく笑ってカガリを立ち上がらせる。
「行こう?6時間目は恐い先生なんだ。僕の所・・」
「・・・ああ・・。」
そう言って、ヤマトとカガリは歩き出した。
帰り道・・妙に元気がないヤマトにアレックスはどうしたものかと考える。
理由を聞くべきか、そうしないべきか・・・。
グルグルと考えている内にマンションに付き・・アレックスは、隣人の表札がないことに気が付いた。
「・・・いなく・・なったのか・・。」
「え?」
「隣の人の表札・・無くなってる。」
ヤマトも・・アレックス同様そこを見て・・「ホントだ」と小さく声を漏らした。
「・・・死んだのかな・・・、、、、生きたの、かな?」
「・・さぁな・・。」
そう話して・・・・・キラは珍しく自分の部屋へと帰っていく。
「夕飯ぐらいなら作って待ってる。」
「・・・ありがとう、、でも・・何か・・僕眠たくなっちゃった。・・・・置いておいてくれると嬉しいな。」
アレックスの不器用な気の使い方にヤマトは少し笑い・・部屋へと入っていった。
病院の目の前で、ラクスに逢い・・カガリは今日のことをラクスに伝える。
アレックスに告白された・・、、ヤマトに・・キラのことを告げた、と。
「・・・そう・・ですの・・」
「ああ・・、、ごめん。迷惑だったか・・?」
その問いに・・ラクスはふるふると頭を振り、カガリを見て優しく笑ってくれる。
「いいんですわ・・揺らいだ・・私がどうかしていたのですし・・・、、カガリも頑張って下さいな。」
自分の納得がいくように・・・と、言われ、カガリはコクンと頷いた。