第3話*物語の起源



カガリは内心怒っていた。

アスランには・・婚約者が居た。
それは、カガリと対照的で・・・・・可愛らしく、上品な女性。


ラクス・クライン


彼女を恨んだときもあった、だが・・・彼女がいい人だと知って、カガリは何も言えなくなっていた。


高一の春・・・再会したとき、カガリは何度も目を瞬かせ、すらっと背が伸び・・筋肉の付いたアスランの姿に見惚れてしまう。
見ぬ間に何でこんないい男になってるんだ?!と激しく突っ込んでいた。

アスランも・・黙って、カガリを見る。


「アスラン、お待たせしましたわ。」


舞う・・桜と同じ色の紙を持った少女が来て・・アスランはそっちと話し始め・・カガリは頭に激しく?を浮かべた。
だれ・・・。あの・・子。
聞くのが恐くて、カガリはその場から逃げていた。

噂で流れるのは・・そのラクスとアスランは婚約者だと言うこと。

アスランと・・カガリは同じクラスだったが・・アスランはいつだって女の子に囲まれ、カガリとは話すことがなかった。
不運にも、カガリは・・アスランと学級委員になってしまう。

カガリはアスランと話したくないと思った。

だって・・・・・彼は私のことなど覚えていない。婚約者を作り・・他の女の子と楽しそうに話している。



「・・・カガリ・・その・・」



委員会が決まった直後、話しかけていた彼を・・カガリは睨みそうになりそれを止める。
でも許せなかった。
私はずっと、ずっと・・覚えていたのに。


「・・なんだ、ザラ?」


そう・・努めて明るく返すと・・彼は「いや・・」と声を止めてしまった。
それから・・・カガリは学級委員の仕事以外、アスランとは言葉を交わさなくなっていく。

無意識に心と体が避けていたのだ。

他の女の子に囲まれる姿も、

婚約者と歩く姿も


カガリには耐え難かった。




「・・カガリ・・元気ないね、どうしたの?」

心配そうに・・聞いてきたキラに、カガリは小さな笑みを作る。
折角・・ずっと逢いたかった人と・・奇跡的に再会したのに。

それはもう、思い出の片隅でもないのだ、相手には。


「・・・転校しようかな・・」
「え?」


「・・うん、、そうしよう。」


「え!ちょ、カガリ・・・・!!!!」



カガリは・・夏休み明けに、それを実行に移す。
親には学校の校風が合わないと伝え・・・何とか許可を貰っていた。
そして、新しくはいる学校は・・中学の時の親友フレイが居る場所を選ぶ。

放課後、学級委員の仕事をしていると・・・アスランはチラリとこちらを見て、カガリに声を掛けていた。


「・・・君・・転校するって・・・本当なのか?」
「・・え?ああ。」

「何で?」


ペンを止めて・・真っ正面から聞いてくるアスランに、カガリは瞳を合わせる。
教室には二人しか居なかった。


「・・ザラには・・関係ないだろ?」

「・・・気になるから聞いてるんだ。」


カガリが鬱陶しそうに言うと・・アスランも負けじと返してくる。
しばしば見つめ合って・・・・・カガリは仕事を再開した。


「・・答えろよ。」


「義務はない。」



カガリの声に、アスランは不安が限界に達していた。
再会した彼女は、自分を見て・・去ってしまった。

何故だかアスランには分からず・・だが、同じクラスで話す機会も多いだろうと、高をくくって居たのだ。

だが・・・色々な女子に捕まり、カガリと話す事がなかなか叶わない。
カガリは、時たまこちらを見るが、すぐに逸らすことが多かった。


早く話したい。


アスランはそればっかりを考える。

小さい頃の約束・・・・、自分の体が弱く両親が忙しかった自分には、本当にカガリしか居なかった。

毎日会いに来てくれた。
毎日・・・外のことを教えてくれた。

小さい頃から・・アスランはずっとずっとカガリが好きで堪らなかった。
カガリも好きだと・・・・言ってくれて、大きくなったら恋人になって、もっと大きくなったら・・結婚しようと・・。
小さいながら、二人で本気で願っていた。

あれを愚かだと思ったことはない。

なんとか・・同じ委員になって、カガリに声を掛ける。

自分だと・・カガリも分かっているはずだ。




「・・・カガリ・・その・・」




昔の言葉は、まだ・・有効だろうか?


「・・なんだ、ザラ?」


----------え?

アスランの背中に、冷たいモノが流れる。


ザラ?


アスランは、続きの語を言えず・・・カガリは興味が無さそうにそっぽを向いて歩き出していた。

---忘れてしまった?

当然なのかもしれない・・幼い日のことだ。
それでも諦められるはずもなく、アスランは何とかカガリと話すチャンスを得ようとしていた。
けれど、彼女はアスランをまるっきり見なくなって・・・・

一緒にいるときも、オーラが"近寄るな"と言っているように見える。


哀しかった。


アスランとラクスが・・婚約者だと学校全体に浸透しだしたときですら、カガリは無関心のようで・・・
アスランも、次第にカガリに近寄るのが恐くなっていた。
自分はカガリに嫌われているのかもしれない。

嫌だった・・、、忘れられて・・嫌われて、俺は一体どうすれば良いんだ?

どうすることも出来なくて、ラクスにも・・・心配を掛けさせて・・・

そんな中、友達から・・"カガリが転校する"と聞いた。


アスランは、居ても立ってもいられず・・カガリに話しかけていたのだ。
どうして・・と、行かないでほしいなんて口が裂けても言えないから。

彼女は・・鬱陶しそうに関係ないと言って、アスランは関係ない分けないだろうと心で思う。


もしも、カガリが、誰にでも自分のような態度をとって・・彼女が"変わってしまった"ならば、アスランにも関係がないことだった。

けど、彼女はあの頃のままなのだ。自分以外の前では。

アスランの病室に来ていた頃と同じ。

誰にでも、明るくて優しい・・・あの頃のまま。


大好きなカガリだ。



「カガリ・・」

声が漏れる。
悲しみの交じった声。


「前から・・思ってたんだけど、カガリって止めてくれないか。」

「-----・・そんなことより・・答えてくれ。」


アスランは苛々していた。
何で、

どうして、


カガリは・・・





「--------幼なじみ・・だろ・・・・?」





言ってしまった。

そう、俺は・・・あの、病室にいた俺なんだと、思い出して欲しかったんだ。


その声に・・カガリはキョトンとしてこちらを見て、一瞬固まる。


「・・・・。」

覚えていたのか。
なのに・・・。




「----------------・・それとコレは・・一体何の関係があるんだ?」




カガリはバンッと終わっていない仕事を置き・・・椅子から立ち上がる。

アスランは・・カガリと言葉と態度に、大きく目を開いていた。



「幼なじみ?そうだな、私とお前は幼なじみだ・・・だから、何なんだ?!」




約束も覚えていない癖に。

もう、婚約者が居る癖に!!!!




今更--------------------!!!



「・・・・・・・・・か・・が・・り。」



覚えていたのか?

なら・・なんで、、、



アスランも絶句する。


覚えていたのなら・・・なんでそんな態度をとるのか、アスランには分からなかった。

なんでそんなに"関係ない"という扱いをするのか、なんで"ザラ"なんて他人行儀で呼ぶのか。






思わず手が伸びて・・カガリの細い腕を捕まえようとするが、それは容易く払われていた。






「触るなッ!!!」

汚いモノに触れられそうな声を出し、カガリは駆け足で教室から出ていく。
アスランは・・たった今払われた自分の手を見返す。


「・・かがり・・・・」


ぽたりと・・アスランの下に置いてあったプリントはシミを作る。


小さい頃、自分はあの手無しでは生きていけなかった。


苦しいときはカガリが傍で、ずっと手を握ってくれていたから。




胸が苦しい。

極度のストレスで、気管が狭まり・・気管支炎持ちのアスランの呼吸は途端にヒュゥと鳴る。
そのまま・・大きな咳をして、アスランはしゃがみ込んでいた。











そして、その翌々日、カガリは転校する。


病は気から・・と言うように、アスランはその日から家で休養を取り・・その一週間後入院していた。































































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あとがき
アスカガすれ違い記念日・・・--スイマセン・・・orz
色々在ったんです。
2006/10/22