第2話*誰かの悪戯。



「・・・はじめまして、・・アレックス・ディノ、です。」


もしも・・この世に神がいるならば。

カガリはその人を殴りたい気持ちでいっぱいになる。

何故・どうして。


彼奴と同じ顔の別人が存在するのだろうか?








アレックスは・・自分の生い立ちを必死で頭の中で復習する。
自分は今まではプラント校に行っていたことになっていて・・。
親は今海外に転勤中。
兄弟はいない。

大まかなことから・・細かいことまで、・・・部屋のアルバムに挟んであった紙を頼りにたたき込んだ。

これが、アレックス・ディノの記憶。



「・・・よろしく。」

「・・よろしく」


アレックスは生憎教材を持っていない・・そして私が見せなければならない。
コレは一体誰の悪戯だろう。

小さく・・小さく悪態を付いた。

だが・・・カガリの悪夢はコレだけでは終わらない。









昼休みだった。

カガリは息の詰まる思いだった授業・・いや、あの転校生アレックス・ディノから解放され・・大きく深呼吸をする。

その当のアレックスは女子に質問攻めだ。


彼奴と一緒だな。


そう思っていると・・ガラガラッ・・ととが開き、カガリの位置からは見えないが・・誰かが急いで入ってきたようだった。



「アレックス!!!うわッ・・人気者!!!」
「ヤマト・・ッ!!」

助けてくれ・・と言わんばかりのアレックスの声より・・カガリは、その、"ヤマト"の声に耳を傾ける。
「-------------・・や・・ま、と?」
キラ?
思わず・・そう、呼びたくなって・・・カガリは駆け出していた。


キラ・ヤマト。


その・・顔を見て、カガリは唖然とする。
一体何故、病室で寝ていた彼が此処にいるのだろうか?



「・・・・・・---・・?はじめまして・・・。アレックス、この子は誰?」

「・・っ!!!!!」


カガリの顔を見て・・不思議そうにする、相手に・・カガリは眩暈が起きた。
相手は・・分からないようで、こちらに手を差し伸べる。


「・・僕はヤマト・ヒビキ。・・君は?」


カガリは手を出せず・・そのまま、数歩下がっていた。
「カガリ?」
アレックスに集っていたフレイは・・・真っ青になったカガリに、声を掛ける。
その場にいた・・人は、見る見る青ざめるカガリを不思議そうに見ていた。

カガリは・・何度も、自分の中でのキラと・・・想い出の人アスランと、そこにいる二人を見比べる。

「・・・・ご・・め、、、急に--------ぐあ・・い------・・・」

カガリはそう・・呟いて、その場に蹲っていた。

これは何の夢?


カタカタと震えたカガリに・・フレイは驚いて近寄り、声を掛けるが・・カガリの耳には届こうとしない。
カガリはフラフラとした足で、教室を出て・・保健室に行こうとしていた。


「待て」
「待って!」

大丈夫・・?と、アメジストに覗き込まれ・・・・・・・・カガリは完全に気を失ってしまった。













「・・・大丈夫?あんた・・・」

「フレイ・・・」


目が覚めると・・保健室のベットで、さっきのあれは夢かと思い直すが・・それは直ぐに玉砕される。
フレイの隣りに二人が立ち・・こちらを覗いていたのだ。


「・・・・みんな・・ゴメン、もう・・大丈夫だから。」

「なら・・いいけど。さっきのあんた、、変だったわよ?」


「・・うん---急に嫌なことが頭に過ぎっただけ。」


そう言って・・二人にも笑みを作る。
無理な笑みだったが・・・二人はよかったと笑って出ていってくれた。
フレイと二人になると・・フレイは未だ何処か青白いカガリを見て心配そうな顔をする。



「大丈夫・・・、、ただ、急にキラの顔が過ぎったんだ・・・--彼奴、大丈夫かな・・・」



別人・・だもんな。そっくりだけど・・。
そう思い、カガリは目を伏せた。

アスラン・キラじゃない。


アレックスとヤマトだ。


モヤモヤとした気持ちのまま・・カガリは早退し、キラの元へと足を動かす。
キラがもし・・記憶を失って学校へ来ていたら・・なんて馬鹿みたいな事を考えたからだった。


本当に似ている。



そう思い・・扉を開けると、キラは当然のようにそのベットに横たわっていた。



「----------・・・キラ。」

キラの名前はキラ・ヤマト。
彼奴は・・・ヤマト・ヒビキ。


--------------別人。


カガリは・・あの二人とは関わりたくない。そう思ってしまう。
似すぎている。


----------顔・・・だけ、、かな・・・?
そう思っていると・・・また、あの子が入ってきた。


「・・・・あれ?早いな・・ラクス。」
「今日は開校記念日なので・・・・。カガリさんこそ・・早いですわね。」

「今日は早退だ。」

「あら・・体の具合でも?」


「---・・いや。」


渋い顔をすると、ラクスは少し笑いカガリの隣のイスに腰を掛ける。
ふと・・カガリは、今日合った出来事をラクスに言いたくなった。
お前の婚約者の瓜二つがいる・・・と。



「・・今日・・さ。」



ポツリ・ポツリと言葉を紡いだ。
信じられないほど似ていた。声も・・仕草も話し方もそっくりで、眩暈がして・・----------------・・。


「・・・アスランと・・・キラ、、ですの・・・・・?」

「---・・いや・・アレックスと・・・ヤマト・ヒビキ・・・・・別人だ・・当然だけど。」


そう言えば、と・・・カガリはアスランのことをラクスに訪ねる。



「・・彼奴・・元気か?」


ラクスは、、、その質問に小さく首を横に振って答えた。
「・・彼奴のことだから・・発作でも起きたか・・、、ま、直ぐ良く・・・・・」

「・・それが、、なりませんの・・・・・--------・・。誰かが、一度呼吸装置を抜いたらしく・・」

「え?!」


カガリはガッと席を立ち上がっていた。
「医療ミス・・と、言うか・・・・・アスラン自身が抜いた、と・・・・」

「まさか!!!!何で・・・」

「・・・良く・・私は分かりませんの・・でも、、、そうなる数日前・・・・・・・・アスランは凄く、哀しいお顔をされていましたわ。」


カガリには・・何故かその顔が容易に想像できる。
いや、、いつも・・・小さい頃、カガリが病室を去るときに・・していた顔。

アスランは小さいとき喘息で・・まともに小学校に行けなかった。

だから・・カガリはいつも、宿題や・・今日あったことをアスランに説明して・・いつの間にか好きになっていて・・・。
アスランにそれを告げると"僕も"と、、小さいながらに頬を染めてくれたのを今でも覚えている。


「・・・今、自分で呼吸が出来なくて・・意識も・・・」
「・・・嘘・・だろ・・」


心配で・・・カガリは居ても立ってもいられず・・・・・頬に涙が伝う。


「・・ラクス・・--アスランに・・・付いて・・・やってくれよ・・・」


彼奴が独りになってしまう。
例え意識がなくたって・・・独りは淋しいはずだから・・。


「---・・・・・私・・は・・。」

ラクスは、小さく俯いて・・・キラの頬を触る。
その手に、カガリは無意識の怒りを覚えた。

ラクスは・・・・・


「お前には・・・アスランだろ・・・・・?」

「・・・・---・・いいえ。」


マリンブルーの瞳は・・カガリの目を見て、小さく瞬く。
カガリは・・ラクスの・・その発言に、、耳を疑ってしまう。

「アスランは・・・ずっと、違う女性が好きでした。ですから・・・私はお飾りでしたの。」
「え・・・」
「・・私が好きなのは・・・キラ、ですわ。」

なのに・・・と・・彼女は言葉を紡ぎ、キラの手を握る。
「わた・・くし、気が付きませんでしたの。・・・キラが・・・怒っていること、悲しんで・・いた、事・・・・・」

誰かに攻めて欲しかった。
そう・・ラクスはそれを、キラの従兄弟である・・キラを大切に想っている彼女にして欲しかった。
そう思って・・・自分がしてしまったことをカガリに吐き出す。

アスランと婚約者であることを隠して・・・キラと付き合っていたこと。
夏頃から・・・何かに悩みだしたアスランを放っておけず・・ずっと傍について、キラを置き去りにしたこと・・。
そして・キラは、、自分とラクスは遊びだったと・・誤解してしまった・・と。


「でも・・キラから・・そう、お電話有ったとき・・・アスランが・・発作で倒れて・・・わたくし・・・キラの電話を切って・・---」


次の日、彼は事故にあっていたそうだ。

カガリも・・・・秋転校して以来、キラとの連絡が途絶えて・・・そんなことがあったなんて知らなかった。


「・・・ですから・・私・・ずっとキラのお側にいると決めましたの。いつ目覚めても謝れるように・・・」

「でも・・・それじゃ・・・・アスランは・・・」


独りぼっち?
また・・・


真っ白で、何もない・・・・病室で・・・・?

独りで泣いていないだろうか・・・・。




----------昔のように。




「・・アスランは・・・525室にいますわ・・」

そのラクスの声に、カガリは動き出していた。
もしかしたら、自分は・・・彼を傷つけたのではないだろうか?


カガリは今の今まで・・アスランは、ラクスが好きなんだと・・・昔の自分との約束も忘れて・・・・


ガラッと個室のドアを開ける。
そこには・・酸素マスクをして鼻に管を入れる・・アスランの姿があった。


「アス・・・」

昔より・・酷い姿。



昔と変わらない・・・誰もいない病室。





「アスラン!!!!!」





カガリは大声で叫ぶ。






そして・・昔のように、アスランの手を握っていた。































































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あとがき
10万ヒット・・・・これから動きます。アレックスとヤマトも。
2006/10/22