第10話*始まりはサヨナラ



「・・・ヤマト?」

「ん・・・?」


部屋に帰ってきたヤマトは・・焦点が定まらず、口数が減る。
やっぱり・・・振られたのだろうか・・と、アレックスは思い、傷は剔らない方が良いだろうと早めに消灯をした。







カガリが既に寝た部屋で、ラクスは・・何がどうなって、こうなったのかを考える。

何故、ヤマトはキラなのか。

ラクスは全く分からず・・頭に?を浮かべるが、相手はキラに他ならないような気がしてきた。

取りあえず・・寝ようと思考を中止させ・・ラクスはカガリの隣の布団へと入る。







翌日・・四人は行きと同じように帰り・・次の日からまた"ヤマト"になった相手に、ラクスは夢だったのだろうかと思ってしまう。

大体、非現実的すぎだろうと・・納得して、あの出来事は"夢"で決着を付けた。








「・・・大丈夫か・・・?ヤマト。」


マンションに付くと・・アレックスにそう声を掛けられ、ヤマトはボーっとしたまま・・コクンと頷き黙って自分の部屋へと入っていく。

相当の痛手だったのだろうとアレックスは思い・・・「消えるなよ」と小さな声で呟いた。









翌日・・アレックスは朝食を取りながら、言いようのない物足りなさを感じる。

何かが足りない。

そう・・モヤモヤとした気持ちで学校へ着き、隣の席のカガリを見れば・・珍しく欠席だった。
その次の日、学校へ来たカガリは何処か嬉しそうで・・・自分ともごく普通に話してくれる。

そうやって・・何事もなく日が過ぎ、この頃少しだけ・・カガリの機嫌がいいことをアレックスは察した。


「良いことでもあったのか?」
「まーな・・、、けど、ちょっと嫌なこともあった・・。」

淋しそうに言う姿に・・アレックスは「何?」と内容を尋ねる。
カガリは小さく首を振り「教えない」と答えられて・・アレックスは少し頬を膨らましたくなった。


お昼の時間が来て、一人で自家製の弁当を広げると・・カガリがこちらをキョトンと見る。



「あれ・・・?お前、弁当一人で食べてたっけ?」

「え・・?」


カガリの隣にいるフレイは「ずっと一人だったような気がするけど?」とカガリに言う。
アレックスは・・少し考えて、そのモヤモヤの正体を突き止めた。


「・・・ヤマト・・・・?」


アレックスは誰にも聞こえないように呟き・・弁当をしまい鞄を持って学校から走り出る。

「・・どーしたんだ。彼奴。」
「さぁ。さぼりじゃない?」

優等生だってサボりたくなるときはあるのよ、多分。とフレイは付け加え、カガリはそんなもんか?と首を傾げた。












アレックスは猛スピードで家までの道を駆け抜け・・マンションの自分の階へと登る。
自分の部屋の・・隣り、一つは少し前に空きになった部屋だった。

そして・・もう一隣。


行き切れ切れに・・その表札を確認する。



「・・ッ・・。」



嘘だろ?


そう思った。









「・・結局、アレックス帰ってこなかったわね〜。」
「そうだな。血相変えて帰って・・具合でも悪いのかな・・・・?」

彼奴も・・・喘息だったりするのだろうか・・・?と・・カガリは少し考え頭を振る。


「・・あ、大丈夫なの?あんたの幼なじみ。」

「・・・・何か・・ちょっと病態悪化した・・みたいだから・・、あんまり大丈夫じゃない・・。」


海から帰った翌日、アスランの元に行くと・・医者がいて、カガリに説明をしてくれる。
母から聞いた話では・・小母さん達は海外に研究をしに行ってしまったらしい。
そして、、アスランの病態は、悪い方向へ傾きだした・・・、、と。


「薬で・・状態意地を続けるらしい・・。。。・・・今日も行く。」


「献身的ね・・。でも、その人だって・・あんたが自分ばっかりに縛られてるのは嫌かもよ?」


フレイのその言葉に・・カガリは「え?」と聞き返す。
フレイは真剣な顔をして・・言葉に説明を付けた。

「つまり、その人もあんたの幸せを願ってるんじゃない?幼なじみだし。献身的な愛も良いけど・・、、それじゃ・・あんた、いつまで経っても自分の幸せ掴めないわよ。」

「けど・・」

「ケドじゃない。」とぴしゃりと言われ・・カガリは言葉を止める。

「せっかくアレックスもいるんだし・・、、ちょっとは自分のためになる恋しなさいよ。」

「・・・、」


・・フレイの声に、カガリはフルフルと首を振るう。
フレイは「呆れた子ね・・」と溜息をついて「あんたがしたいようにしなさい。」と諦めてくれた。

フレイと駅で別れ・・カガリは駆け足で病院へと向かう。



真っ先に行くのはアスランの部屋。

「アスラン・・ッ・・」

駆け寄って、、まず第一に心臓の音を聞くために左胸に耳を寄せる。
トクントクンと・・ちゃんと波打っているのが聞こえ、カガリは一安心した。


「・・・・・悪く・・なった、なんて・・---------・・私が来なかったからか・・?」



自惚れるのも大概にしろよ、と自分に突っ込みを入れながら、カガリはアスランの髪を撫でる。
フッと思い出すのは、アレックスとのキスだった。

「・・お前が・・起きたら、アレックスと同じ事・・してくれたか・・・?」

好きだと言って、キスをしてくれるのだろうか・・。
いや・・もしかしたら・・あんな事を言った私を・・嫌いになって・・・。


ブンブンとその思考をかき消す。


もし、そうだったら・・どうなんだ?

私はアスランから離れるのか?



「・・・・・そんなこと・・私は、絶対しない・・。」



独りぼっちが寂しいと・・幼い頃、泣きそうになりながら言っていたじゃないか。

アスランが・・私を、好きでいても・・嫌いになってしまっても・・誰も傍にいないよりは・・・・・。


それに・・。



「謝らなきゃ・・いけないし・・、、聞きたいことも・・沢山あるんだぞ・・、アスラン。」

小さい頃の約束を・・。



「・・・果たして良いのかな・・・?」



カガリはポツポツと・・思考と口頭で言葉を行き来させ、アスランを見る。

このまま・・・本当に・・。

そう、思った瞬間・・・カガリの目には涙が浮かぶ。




「アスラン・・・ッ・・・。」

アスランの上にふんわりとかけられるタオルケットを握りしめ、カガリは涙を流す。
急に恐くなった。


アスランが死んでしまったら。

本当に・・何も、話せないまま・・・・・。


謝ることは愚か・・・口を利くことさえ、許されない。

こうやって、側にも居られなくなる。




「・・・っ・・・ひっ・・ぅ・・」



アスランの腕を必死に揺する。

起きて、と言葉に出来ない代わりに・・カガリはその手を握り、アスランの胸に泣いた顔をくっつける。


「アスラン・・・」




起きて・・、、一緒に・・・・また。


昔のように、いっぱい喋ろう。




「・・私だって・・淋しい・・ぞ。」


お前一人が、淋しい訳じゃないんだぞ・・と付け加えて、カガリは何とか涙を止めた。











「・・・消えた・・・・・・・・・のか・・・・」


ラクスに振られたから?

本当に・・・彼は、ヤマトは・・。


「・・・っ・・。」


つぅっと頬に冷たいものが流れる。

消えてしまった。

それが・・何よりも、切なかったが・・それと同じくらい悔しい思いがある。


ヤマトが・・存在したことを、自分は忘れていた。


カガリも、、他の人は、きっと全くと言っていいほど覚えていないだろう。
そう思うと、忘れていた自分が許せない・・。


そして・・自分も消えればそうなってしまうんだと思った。

カガリの心にも、残らない。

一人きりになって始めて分かった怖さ。


誰かに・・・、、いや・・。



「・・カガリ・・・・。」



側にいて欲しいと願う。

忘れて欲しくない。

その日・・アスランは一夜泣き明かし・・消えたヤマトのことと自分の今後を案じた。
































































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あとがき
やっとキララク→アスカガに話の主体が移ります(笑
2006/10/30