「・・・ヤマト?」
「ん・・・?」
部屋に帰ってきたヤマトは・・焦点が定まらず、口数が減る。
やっぱり・・・振られたのだろうか・・と、アレックスは思い、傷は剔らない方が良いだろうと早めに消灯をした。
カガリが既に寝た部屋で、ラクスは・・何がどうなって、こうなったのかを考える。
何故、ヤマトはキラなのか。
ラクスは全く分からず・・頭に?を浮かべるが、相手はキラに他ならないような気がしてきた。
取りあえず・・寝ようと思考を中止させ・・ラクスはカガリの隣の布団へと入る。
翌日・・四人は行きと同じように帰り・・次の日からまた"ヤマト"になった相手に、ラクスは夢だったのだろうかと思ってしまう。
大体、非現実的すぎだろうと・・納得して、あの出来事は"夢"で決着を付けた。
「・・・大丈夫か・・・?ヤマト。」
マンションに付くと・・アレックスにそう声を掛けられ、ヤマトはボーっとしたまま・・コクンと頷き黙って自分の部屋へと入っていく。
相当の痛手だったのだろうとアレックスは思い・・・「消えるなよ」と小さな声で呟いた。
翌日・・アレックスは朝食を取りながら、言いようのない物足りなさを感じる。
何かが足りない。
そう・・モヤモヤとした気持ちで学校へ着き、隣の席のカガリを見れば・・珍しく欠席だった。
その次の日、学校へ来たカガリは何処か嬉しそうで・・・自分ともごく普通に話してくれる。
そうやって・・何事もなく日が過ぎ、この頃少しだけ・・カガリの機嫌がいいことをアレックスは察した。
「良いことでもあったのか?」
「まーな・・、、けど、ちょっと嫌なこともあった・・。」
淋しそうに言う姿に・・アレックスは「何?」と内容を尋ねる。
カガリは小さく首を振り「教えない」と答えられて・・アレックスは少し頬を膨らましたくなった。
お昼の時間が来て、一人で自家製の弁当を広げると・・カガリがこちらをキョトンと見る。
「あれ・・・?お前、弁当一人で食べてたっけ?」
「え・・?」
カガリの隣にいるフレイは「ずっと一人だったような気がするけど?」とカガリに言う。
アレックスは・・少し考えて、そのモヤモヤの正体を突き止めた。
「・・・ヤマト・・・・?」
アレックスは誰にも聞こえないように呟き・・弁当をしまい鞄を持って学校から走り出る。
「・・どーしたんだ。彼奴。」
「さぁ。さぼりじゃない?」
優等生だってサボりたくなるときはあるのよ、多分。とフレイは付け加え、カガリはそんなもんか?と首を傾げた。
アレックスは猛スピードで家までの道を駆け抜け・・マンションの自分の階へと登る。
自分の部屋の・・隣り、一つは少し前に空きになった部屋だった。
そして・・もう一隣。
行き切れ切れに・・その表札を確認する。
「・・ッ・・。」
嘘だろ?
そう思った。
「・・結局、アレックス帰ってこなかったわね〜。」
「そうだな。血相変えて帰って・・具合でも悪いのかな・・・・?」
彼奴も・・・喘息だったりするのだろうか・・・?と・・カガリは少し考え頭を振る。
「・・あ、大丈夫なの?あんたの幼なじみ。」
「・・・・何か・・ちょっと病態悪化した・・みたいだから・・、あんまり大丈夫じゃない・・。」
海から帰った翌日、アスランの元に行くと・・医者がいて、カガリに説明をしてくれる。
母から聞いた話では・・小母さん達は海外に研究をしに行ってしまったらしい。
そして、、アスランの病態は、悪い方向へ傾きだした・・・、、と。
「薬で・・状態意地を続けるらしい・・。。。・・・今日も行く。」
「献身的ね・・。でも、その人だって・・あんたが自分ばっかりに縛られてるのは嫌かもよ?」
フレイのその言葉に・・カガリは「え?」と聞き返す。
フレイは真剣な顔をして・・言葉に説明を付けた。
「つまり、その人もあんたの幸せを願ってるんじゃない?幼なじみだし。献身的な愛も良いけど・・、、それじゃ・・あんた、いつまで経っても自分の幸せ掴めないわよ。」
「けど・・」
「ケドじゃない。」とぴしゃりと言われ・・カガリは言葉を止める。
「せっかくアレックスもいるんだし・・、、ちょっとは自分のためになる恋しなさいよ。」
「・・・、」
・・フレイの声に、カガリはフルフルと首を振るう。
フレイは「呆れた子ね・・」と溜息をついて「あんたがしたいようにしなさい。」と諦めてくれた。
フレイと駅で別れ・・カガリは駆け足で病院へと向かう。
真っ先に行くのはアスランの部屋。
「アスラン・・ッ・・」
駆け寄って、、まず第一に心臓の音を聞くために左胸に耳を寄せる。
トクントクンと・・ちゃんと波打っているのが聞こえ、カガリは一安心した。
「・・・・・悪く・・なった、なんて・・---------・・私が来なかったからか・・?」
自惚れるのも大概にしろよ、と自分に突っ込みを入れながら、カガリはアスランの髪を撫でる。
フッと思い出すのは、アレックスとのキスだった。
「・・お前が・・起きたら、アレックスと同じ事・・してくれたか・・・?」
好きだと言って、キスをしてくれるのだろうか・・。
いや・・もしかしたら・・あんな事を言った私を・・嫌いになって・・・。
ブンブンとその思考をかき消す。
もし、そうだったら・・どうなんだ?
私はアスランから離れるのか?
「・・・・・そんなこと・・私は、絶対しない・・。」
独りぼっちが寂しいと・・幼い頃、泣きそうになりながら言っていたじゃないか。
アスランが・・私を、好きでいても・・嫌いになってしまっても・・誰も傍にいないよりは・・・・・。
それに・・。
「謝らなきゃ・・いけないし・・、、聞きたいことも・・沢山あるんだぞ・・、アスラン。」
小さい頃の約束を・・。
「・・・果たして良いのかな・・・?」
カガリはポツポツと・・思考と口頭で言葉を行き来させ、アスランを見る。
このまま・・・本当に・・。
そう、思った瞬間・・・カガリの目には涙が浮かぶ。
「アスラン・・・ッ・・・。」
アスランの上にふんわりとかけられるタオルケットを握りしめ、カガリは涙を流す。
急に恐くなった。
アスランが死んでしまったら。
本当に・・何も、話せないまま・・・・・。
謝ることは愚か・・・口を利くことさえ、許されない。
こうやって、側にも居られなくなる。
「・・・っ・・・ひっ・・ぅ・・」
アスランの腕を必死に揺する。
起きて、と言葉に出来ない代わりに・・カガリはその手を握り、アスランの胸に泣いた顔をくっつける。
「アスラン・・・」
起きて・・、、一緒に・・・・また。
昔のように、いっぱい喋ろう。
「・・私だって・・淋しい・・ぞ。」
お前一人が、淋しい訳じゃないんだぞ・・と付け加えて、カガリは何とか涙を止めた。
「・・・消えた・・・・・・・・・のか・・・・」
ラクスに振られたから?
本当に・・・彼は、ヤマトは・・。
「・・・っ・・。」
つぅっと頬に冷たいものが流れる。
消えてしまった。
それが・・何よりも、切なかったが・・それと同じくらい悔しい思いがある。
ヤマトが・・存在したことを、自分は忘れていた。
カガリも、、他の人は、きっと全くと言っていいほど覚えていないだろう。
そう思うと、忘れていた自分が許せない・・。
そして・・自分も消えればそうなってしまうんだと思った。
カガリの心にも、残らない。
一人きりになって始めて分かった怖さ。
誰かに・・・、、いや・・。
「・・カガリ・・・・。」
側にいて欲しいと願う。
忘れて欲しくない。
その日・・アスランは一夜泣き明かし・・消えたヤマトのことと自分の今後を案じた。